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263・はじめての せんごしょり

|д゜)評価pt17,000突破しました!

応援ありがとうございます<(_ _)>


ていうか今週一気に300ptくらい

上がっているのはなぜ(;・∀・)



「えーと……


 人員が3万くらい、魔導ゴーレムがおよそ

 1,000、それと誘導飛翔体が―――」


「攻撃魔法の使い手も3,000ほど。

 魔力はありますので、すぐにどうこうは

 無いでしょうが……

 生命維持に魔力が使えないとなりますと、

 食料の心配が」


義勇軍総司令の完全降伏を受け、戦闘は停止。

そして彼らの処遇を決めるため―――

ライオネル様とティエラ様が書面に目を通す。


「兵器群がちょっと多過ぎます。


 これらを鹵獲(ろかく)・移送用に帝国から大軍を

 派遣してもらうのも何ですし……」


「大ライラック国に通達して、引き取りに

 来てもらうのも手かと」


ニコル様とアリス様も、捕虜と兵器の多さに

頭を抱える。


私が魔法そのものを無効化してしまったので、

義勇軍はリッバー総司令以下全員が

『ただの人』に、


そして魔導具・兵器群はガラクタとなり―――

置物と化していた。


唯一、魔導ゴーレムだけは機動部分が車輪で

出来ていたので、馬があれば牽引(けんいん)は可能だろう。


「ったく、倒すより後始末の方が面倒だとは」


「まあまあ。

 敵味方、双方に被害が出なかっただけでも

 よしとしましょう」


シーガル様がグチるように言うのを、

私が(なぐさ)め、


「す、すいません師匠!

 そんなつもりでは……


 で、捕虜は全員ランドルフ帝国に収容、

 でいいんですね?」


「ええ、そうですね。

 ですが、いくら帝都グランドールといえど、

 これだけの人数を一気に入れたら食料が

 足りなくなる心配があります。


 私も、そこに考えが至りませんでした」


以前も、ランドルフ帝国の数千の捕虜を

収容した事があったが、


ウィンベル王国だけでは足りず、各国に

振り分けて面倒を見る事になった。


「取り敢えずは帝国に連絡して―――

 食料輸送と同時に、帝都もしくはその近郊に

 彼らを収容する手筈(てはず)を整えてもらわんとな」


「ワイバーンがおりますので、連絡や

 緊急輸送は大丈夫かと。


 穀物類も豊富にあるとは思いますが……

 どういう料理が出来るかは」


未来の夫婦であるウィンベル王国の前国王の

兄と、ランドルフ帝国の王女様がやり取りをし、


ひとまず彼らを落ち着かせるため―――

いったんここで、食事を取らせる事となった。




「おお、これがミソスープというものか!」


「保存食しか無かったので、どうなるかと

 思っていたが……」


「肉も野菜も何でも合う!

 便利なものだな、これ」


夕暮れ時、大ライラック国の義勇兵たちが

料理に舌包(したづつ)みを打つ。


結局、事態の収拾のため私たちは現場に留まり、

帝国と連絡を取り合っていたのだが、


捕虜を帝都まで歩かせて来るのは十日ほど

かかり、その度に食料を輸送するのは

非効率だと判断。


なので、ワイバーンのコンテナ便で捕虜を

帝都までピストン輸送する事となり―――

その準備が出来上がるまで、現場待機と

なったのである。


「ズルズル、しかしこの麺類というのは」


「小麦粉が、パン以外にこんなものに

 化けるなんて」


「これが帝国の保存食か……

 大ライラック国とは違うな」


彼らの言う通り、緊急輸送させたのは

味噌と乾麺。


とにかく味がついて腹に溜まる物、

という事でそのチョイスとなった。


水は水魔法が使える人間さえいればいいので、

それプラス火魔法が使える人間も派遣して

もらって、


さらに義勇軍が持っていた保存食も使い、

何でも味噌煮込みにしたのである。


で、肝心の味はというと―――

聞こえてくる声で、彼らにも評判が良いと

いう事がわかりホッとし、


私は義勇軍の上層部と、ライさんたちがいる

テントへと向かった。




「こんばんは、お料理は食べていますか?」


リッバー総司令や他の幹部とみられる方々も、

ちょうど食べている最中で、


「ああ、頂いている」


「これが簡易食とはな……

 つくづく、帝国の底力を思い知らされるよ」


「しかし腹が減ってたまらん。

 これもフェンリル様の(たた)りだというのか」


そう言いながらも、彼らはフォークで

ズルズルとすすっていく。


同じように、ライさんとティエラ様も食事を

とっていたが、


「そういや、シン。

 ドーン令嬢が探していたぞ」


「え? そうですか?」


「航空管制担当である彼女には、次々と

 情報が舞い込んでいますから―――


 なるべく情報共有してください」


「はい、わかりました」


と、二人から言われ……

私は外の航空管制『騎』であるコンテナ箱へと

足を向けた。




「あ、シンさん」


「ちょうど良かったです。

 ライさんたちにはすでに報告済み

 なんですけど」


コンテナ箱の中で―――

シルバーヘアーの少年、ニコル・グレイス様と、

ブラウンのショートカットの女性、

アリス様がこちらに視線を向け、


「何かありましたか?」


「はい。

 例のモンステラ聖皇国の狂信者たちで

 構成された軍ですが」


「メルビナ大教皇様やアウリス様率いる部隊と、

 ドラセナ連邦の連合軍とで向かい合ったそう

 ですが、その……」


言い辛そうにする彼らに私は首を傾げ、


「まさか、敗れたとか?

 それとも犠牲者が」


最悪を想定して聞き返すと、二人は首を左右に

振って、


「いえ、こちら側の死傷者はありませんでした」


「??」


という事は無事に終わったという事だと思うが、

それにしては歯切れが悪く、


するとアリス様の後にニコル様が、


「何でも、大精霊様を模した森の精霊様を

 始めとして―――

 水精霊ウォーター・スピリット様や土精霊(アース・スピリット)様、

 氷の精霊(アイス・スピリット)様が全面に出たそうです。


 すると、あの精霊様たちは偽物だとする

 勢力と……

 いや本物だという勢力とで仲間割れが

 起きたらしく―――」


あ~……

いわば盲信的(もうしんてき)な過激派を集めたような

集団だもんな。


向こうに取っては多分、()き付けたり

扇動(せんどう)したりして、好き勝手に動かせるとでも

思っていたのだろうが―――


こういう時制御不能になるのが、宗教の怖さ

だよなあ……


「それで、どうなったのでしょうか」


「はい。

 水精霊様がとにかく水を浴びせまくった後、

 土精霊様がぬかるみを強化し、彼らの足を

 止めて、


 その後にドラセナ連邦軍が取り囲んで

 降伏勧告、そして捕縛(ほばく)―――

 という事になったみたいです」


「なので、こちら側には損害は出ません

 でしたが、聖皇国側には死傷者がそれなりに

 出た模様です」


ニコル様、アリス様の報告を聞いて

深く息を吐く。


向こうは、敵味方双方に被害を出さず……

というわけにはいかなかったか。


「こちら側に被害が出なかっただけでも、

 望外の結果です。


 それでその聖皇国の捕虜たちは?」


「半数はメルビナ大教皇様に降伏しました。

 いったん、彼らを連れて帝国側に戻って

 来るとの事です。


 その輸送は、ドラセナ連邦が船団を出して

 くれるそうで」


「もっともこちらは、精霊様たちを本物だと

 信じている勢力で―――

 もう半数は信じていない方ですので、

 そっちは連邦がいったん収容し、

 モンステラ聖皇国へ送り返すとの事」


「その数は?」


「やはり万を超える人数との事です。


 なのでこちら側から……

 義勇軍の捕虜と同様、ワイバーンによる空輸を

 提案しています」


ふむふむ、と私がうなずいていると、

伯爵様と令嬢も続けて、


「順番としましては、まずこっち側が

 片付かないと、どうにもならないでしょう。


 帝国への義勇軍捕虜のワイバーンによる

 輸送が終わった後―――

 ドラセナ連邦への聖皇国捕虜の輸送、

 という事になりましょうか」


「その後、メルビナ大教皇様に降伏した

 聖皇国捕虜も船団で帝国へ……


 ただ問題は、聖皇国側はシンさんが

 無効化させたのではないので別に

 いいのですが、


 義勇軍の方は食事が必要となりましたので、

 帝都の人口が一気に数万増えるとなると、

 食料が―――」


と、やはり二人も食料の心配を口にし、


「それは……

 土精霊様に頑張ってもらうしか無いで

 しょうね。


 彼なら、一気に作物を実らせたり、

 一時的に収穫を増やす事も可能で

 しょうから」


やれやれ、という表情になる私に同調し、

ニコル様もアリス様も苦笑いした。




「ただいまー」


一週間ほどして、私は公都『ヤマト』の

乳幼児施設へとやって来ていて、


「あれ、シン。

 もう片付いたの?」


「意外と早かったのう」


それぞれ子供を抱いた、童顔の妻と

大人の色気を持つ妻二人が、ベッドに

寝たまま返して来るが、


「いや、またすぐ向こうに行かなければ

 ならないと思う。


 収容した捕虜の食料問題とかいろいろ

 あってね。

 こちらからも『ゲート』を通して、

 様々な支援を行うつもりだし」


「ああ、そういえばそんな事をギルド長が

 言ってましたね。


 戦闘自体はすぐ終わったものの―――

 後始末が大変だと」


ライトグリーンの髪をショートボブにした

丸眼鏡の女性が、メルやアルテリーゼと同じく

赤ちゃんを抱きながら、近くのベッドから声を

かけてくる。


「大体の事は、先に帰って来たギルド長から

 聞いてはいたけど」


「シンの場合、ほぼ敵味方無傷で解決して

 しまうからのう……


 敵の面倒まで見なければならぬとは、

 ある意味厄介(やっかい)な事よ」


「シンさんだからこその苦労ですね」


ミリアさんも話に加わり、自分は何とも

微妙な表情となる。


「あっ! おとーさん!!」


そこへ、黒髪ショートに燃えるような赤い瞳の

娘が入って来て、


「ただいま、ラッチ。

 元気にしていたか?


 とは言ってもまた向こうから連絡があったら、

 すぐに行かなければならないんだけどね」


飛びついてくる彼女を抱き上げながら、

今後の事を話す。


「でも数日はいるんでしょ?」


「まあ新たに何か起きなければなあ。

 すでに解決した事でもあるし。


 この件について、ランドルフ帝国と

 ドラセナ連邦が話し合うそうだから―――」


ラッチを抱きながら、妻たちやミリアさんにも

情報を共有していると、


「ミリア! ただいまッス!!」


そこへ褐色肌の青年、レイド君が駆け足のように

入って来て、妻と娘に一直線に向かうと、


「レイド!

 手は洗ったんでしょうね?


 それとまだまだ寒いんだから、手を暖めて

 来なさい!

 ミレーヌがびっくりしちゃうでしょ!」


と、妻が赤ちゃんを片手で、もう片方の手で

夫の顔面を引き離す。


自分は部屋に入る段階で、それはすでに

やっていたんだけど、彼は妻と娘に会える

嬉しさで、突っ込んで来ちゃったんだろうな。


そしてとぼとぼと入口近くにある、

『浄化水』用のスプレーで手を洗う彼に、


「レ、レイド君ももう戻って来たんですか?」


「あ、そ、そうッスね。

 ドラセナ連邦への、モンステラ聖皇国の

 捕虜輸送も一通り終わりましたんで。


 あと近くランドルフ帝国とドラセナ連邦の

 会議がセッティングされるそうッスから、

 そこに当事者として呼ばれる事に

 なるらしいッスよ」


共に今回の作戦に当たった者同士、そして

同じ父親として彼をフォローする。


「子供が産まれたら少しは落ち着くかと

 思ったが……


 これじゃ、隠居はまだまだ先のようだな」


そしてアラフィフの筋肉質のギルド長、

ジャンさんも合流し―――

しばらく雑談に花を咲かせた。




「……では、これで我がランドルフ帝国と」


「ドラセナ連邦の協定書を締結いたします」


義勇軍と狂信者の集団との戦闘から

二週間後―――


ランドルフ帝国帝都グランドール、その

王宮の一室にて、


ランドルフ帝国皇帝マームード・ランドルフと、

ドラセナ連邦女帝イヴレットが、互いに握手を

交わし、


会議場からは大きな拍手が沸き起こった。


本来の議題は、大ライラック国義勇軍と、

モンステラ聖皇国の捕虜の取り扱いについて

だったが、


明確にクアートル大陸の四大国の衝突が

明らかになった事で、


これを機に両国は安全保障や同盟体制を強化、

また栽培や漁、各自貿易や提携を進めるべきだと

考え……


トップ同士の会談が行われ―――

各種様々な条約や提携が推進されたのであった。




「おお、シン殿!」


「お久しぶりです、イヴレット様」


三十代前後の、真っ赤な長髪を持つ

ドラセナ連邦の女帝が、気軽に手を振って来て

私を呼び止める。


「しかし、まさか直々にご出席なされるとは

 思いもしませんでした」


いかに重要な会談とはいえ、トップが出て来た

事に驚いていると、


「まーもともとアタシは身軽な方だからね。


 ホラ、合同軍事演習の時だってアタシ

 出て来ていたじゃん」


とてもドラセナ連邦の最高責任者とは思えない

くだけた言葉で、私に話しかけてくるが、


その度に周囲の、恐らく各国の重鎮たちが

目を見開いてこちらを見守る。


自分は平民だし止めて欲しいと思っていると、

つっ、と彼女が近付いて来て


「(あー、アタシと気安く話せる立場って

 いうのは、別に悪い事じゃないと思うよ?


 それにアンタが今回の件の裏にいる、

 って事は、わかるヤツにはわかっちまう。


 それなら……

 『自分に手を出すと後々厄介ですよ~』、

 『変に介入すると痛い目にあいますよ~』って

 匂わせておいた方がいい)」


そう小声で言われ、それもそうかと納得し、


「そういえば、その―――

 捕虜たちは大人しくしていますか?」


連邦にはモンステラ聖皇国の、大精霊様を

偽物と断じた方の集団がいる。


しかも義勇軍のように魔法を無効化させた

わけでもないので、気になっていたのだが、


「んー、今は水精霊様と氷精霊様が、

 引き続き見張ってくれているからね。


 それと収容した際、アタシの二つ名……

 『雷嵐を呼び起こす者サンダーストーム・ワン』として

 軽く雷魔法(サンダー)を遠くに落としてやったら、

 素直に言う事を聞くようになったわ♪」


そういえば大精霊様=森の精霊様は

中央地帯の森へ帰り、

土精霊様は帝国の穀倉地帯へ出向いているって

話だったけど、


あの二人はそんな事をしていたのか。

それを聞いた私は小声で、


「(えーと、手に余るようでしたら、

 私が行って『抵抗魔法(レジスト)』させますけど)」


「(いや、『本物』の精霊様たちがいる

 おかげで、日に日に態度が軟化してきて

 いるって話さ。


 それにウチらに協力してくれるってんなら、

 そっちの大陸の特産品とか交易してくれる

 方がいいかなー。

 帝都に来た時もいろいろな旨いモンがまた

 増えていたしさ!)」


もしかして帝都グランドールまで来たのは、

それが目的では、と思いつつ―――

適当に雑談をした後切り上げて、私は

会議場を後にした。




「それで、どうなったのだ?」


大ライラック国、首都・マルサル……


そこで軍王ガスパードを中心として、先の

義勇軍作戦に対する会議が行われていた。


中世の軍服に身を包んだ面々が、長テーブルを

囲うようにして席についていたが、


その表情は誰も彼も重苦しく―――

なかなか話を切り出せずにいて、


「やれやれ。

 こうも(おび)え切っていては話にならん。


 では質問に答えろ。

 それくらいなら出来るだろう」


それまで視線を軍王に向けられなかった

列席者が、その言葉に思わず顔を上げる。


「まず、義勇軍に対し向かってきた戦力だが、

 どのくらいいたのだ?」


するとようやく一人が書面を片手に立ち上がり、


「は、ははっ!!


 み、見張りの報告によりますと……

 ワイバーンライダーと思われる編隊が5騎。


 後方にもいたと思われますが、見張りは

 義勇軍の索敵に引っ掛からない距離から、

 遠目で確認していただけですので―――

 正確な数は把握出来ておりませんが、


 どう見積もっても10騎かそこらかと」


「ふむ。10騎だけか?」


聞き返すガスパードに彼は続けて、


「そ、その後、義勇軍の中央に1騎の

 ワイバーン……

 これは大きな箱を抱えていたとの

 報告がありますが。


 さらにその中から数名出て来て、

 交渉を行った模様です。


 その途中、義勇軍総司令がいたであろう

 テントが吹き飛ばされ―――


 け、結局のところ、人数は20名に

 満たないと思われます!」


その言葉に、静まり返っていた室内は

少しざわつき始める。


「数万の軍勢が、たった20名足らずの

 者たちに、か」


「し、しかしそのような事が……」


誰かが(しぼ)り出すように声を出すが、


「今のところ、それを事実として考えるしか

 あるまい。


 それとも否定する情報でもあるというのか?」


軍王の言葉に、再び室内は静まり返る。


「そして次に……


 ランドルフ帝国は、あの魔導ゴーレムを

 持ち帰ってもいいと言ったのだな?」


「は、はい!


 『どうもそちらの国の物らしいし、

 邪魔だから持ち帰って欲しい』と

 小馬鹿にしたような通達で」


それを聞いたガスパードはふぅ、と

軽く息を吐いて、


「感情的になるでない。

 問題は別にある。


 それで―――

 その魔導ゴーレムは持ち帰ったのか?」


「す、全てではありませんが……

 30体ほどを先に急いで回収しました!


 そ、その、現場のゴーレムは全て故障、

 起動しなくなっており、誘導飛翔体までもが

 原因不明の不具合で―――」


緊張か困惑か、報告者は声を(ふる)わせながら

語る。


「その原因究明は終わったのか?」


「ちょ、調査は行ったみたいですが、中の

 魔導機構が一切反応しないとの事で。


 魔力反応はありましたので、魔力切れでは

 ないという事しかわかっておりません。


 これは、誘導飛翔体も同様かと思われます」


「以前も同様の現象が起きたと記憶しているが。

 それとの関連性は?」


「い、未だ何も―――」


その言葉を最後に彼は視線を伏せる。


軍王ガスパードはそこで大きく『ふー……』と

息を吐いて、


「3万の軍勢に、1,000を超える

 魔導ゴーレムでも効果が上がらなかった。


 多少なりとも敵に損害を与えれば、

 どれくらいの増員をすればいいかわかる

 ものだが、


 それすら確認出来なかった、とあらば」


次の言葉を待ち受けるように、幹部の面々は

ゴクリと喉を鳴らす。


「これ以上の戦力投入は無意味だ―――」


彼らはそれを事実上の敗北宣言と受け取り、

ため息をつく者、両目を閉じる者、天井を

見上げる者などが続出したが、


「何をしておる?


 断っておくが戦闘は継続中だぞ?」


「……は?


 い、いえ、しかし」


意味がわからず側近の一人が聞き返すと、


「わからんのか。


 殴り合いで勝てぬとなったら―――

 頭で勝つしかあるまい。


 貴様らの肩の上に乗っているのは何だ?」


その言葉に、彼らは互いに顔を見合わせる。


「で、ですが頭と言いましても」


部下の言葉に、軍王は何度目かわからない

大きなため息をつき、


「まずはランドルフ帝国へ釈明を打診しろ。


 義勇軍が迷惑をかけた事と……

 こちらは全面的に敵対するつもりは無いという

 文面でな。


 ようやくアレが役に立つ。

 『亜人・人外の隷属(れいぞく)および兵器化計画』が」


「あ―――」


幹部の一人が、弾かれたように身を乗り出す。


「やっと、モンステラ聖皇国のその計画、

 その全容をつかんだ事にすれば」


「その事を知った陛下が計画に猛反対され、

 聖皇国との関係を見直してる最中だと」


「さらにそれを、各支配地域の他種族の懐柔(かいじゅう)

 使えるよう、噂を流せば……!」


部下たちが口々に意見を言い出したのを見た

ガスパードは、


「ようやく調子を取り戻したようだな。


 我々は数千万の国民の命を背負っておるのだ。

 武力で勝てなかったと言って、国家を諦める

 事は出来ん。


 考えて考えて考え抜け。

 自治独立を(つらぬ)けるようにな―――」


トップである老人の言葉に全員が立ち上がり、


「「「拝命(はいめい)しました!!」」」


彼らは最敬礼し……

帝国への『事情説明』のために動き始めた。




「……仲間割れとは……


 ……どうしてこう、信仰以外に頭を使う事が

 出来ないのか……」


一方、モンステラ聖皇国首都・イスト―――


その大聖堂の一角にある部屋で……

ドラセナ連邦侵攻の顛末(てんまつ)の報告を聞いた

レオゾ枢機卿(すうききょう)は、頭を抱えていた。


「……現れた大精霊様や他の精霊様たちが、

 本物かどうかで味方同士で相争(あいあらそ)ったと……


 ……それで、たった1日で崩壊……

 半数はメルビナ大教皇様に投降……

 もう半数はドラセナ連邦の捕虜……


 ……どこまで無能なら気が済むのか……」


真っ白な髪の、病的に痩せた細面の青年は、

眉間に指先をあてる。


「お困りのようねぇ」


そこへゆらりと、ミドルショートの赤髪を

揺らしながら、物陰から一人の女性が姿を

現す。


「……サマリ司祭……」


名前を役職と共に呼ばれた彼女は、片手を

ヒラヒラとさせて、


「そんなあなたに朗報よ?


 大ライラック国が派遣した義勇軍部隊も、

 1日で全員が降伏、捕虜になったらしいわ。


 今、ランドルフ帝国では―――

 彼らの面倒で大忙しみたいねぇ」


「……それくらいは聞いています……」


無表情で彼がそう返すと、


「あらそう。

 じゃあ、この話は聞いた?


 大ライラック国なんだけどね、あなたの

 『亜人・人外の隷属および兵器化計画』?


 それについて、『そのような事を行う国

 だったとは』と非難して―――

 水面下で進めていた同盟体制を全て

 破棄(はき)すると、帝国へ送ったそうよ?」


「…………」


彼女の説明に枢機卿は無言で返す。


「ま、今回の件―――

 モンステラ聖皇国とあなたに全ての責任を

 負わせて、手打ちにするっていう算段(さんだん)

 なんでしょうね。


 起死回生(きしかいせい)の策はおありかしら?」


からかうように言葉を続けるサマリに、


「……メルビナ大教皇様に、言伝を頼まれて

 くれませんかね……」


「あら? 遺言(ゆいごん)?」


女性司祭が彼に顔を近付けると、


「……今回の件、全て私に責任がある事……


 ……モンステラ聖皇国のクーデターの

 非を認め、大教皇様に国権(こっけん)を返す事、


 ……私の身柄を大教皇様に引き渡す事。


 ……どうかこの事を伝えてください……」


それを聞いたサマリは、さすがに面くらった

表情になり、


「どういう風の吹き回しかしらぁ?」


「……下手をすれば今回、聖皇国は……

 ランドルフ帝国・ドラセナ連邦・

 大ライラック国の三ヵ国を敵に回す事に

 なります……


 ……私に野望はありますが、国を道連れには

 出来ません……

 それくらいの愛国心はあるつもりです……」


すると彼女は両腕を組んで、


「それにしても、諦めが早くない?」


そうサマリ司祭が言い返すと、

レオゾ枢機卿は苦笑し、


「……私の手元には……大ライラック国との

 水面下交渉の記録がありますからね……


 下手に私やモンステラ聖皇国を糾弾(きゅうだん)すれば、

 自分たちに飛び火する……

 そう、大ライラック国は考えるでしょう……


 ……同じ理由で、ランドルフ帝国や

 ドラセナ連邦にも……

 手心を加えるよう要請するでしょうね……」


「私が大ライラック国なら―――

 そんなあんたを生かしておくわけには

 いかないと考えるけど?」


彼女がそう言い返すと、


「……ご心配なく……


 ……まだしばらく私は生きていたいので……」


言外に、その準備は万端だと話す。


「もし自分が死んだら、各所に情報を流す

 手筈は整っているってわけかい。


 わかったよ。

 メルビナ大教皇様に伝えて来てやるさ」


そう答えると彼女は姿を消し―――

騒動は一気に終息へと向かう事となった。



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

本作品は毎週日曜日の16時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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(;・∀・)カクヨムでも書いています。

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【女性冒険者パーティーの愛玩少年記】

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【ロートルの妖怪同伴世渡り記】【完結】

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― 新着の感想 ―
(*ゝω・*)つ★★★★★  冷戦と言うか情報戦フェーズに移行ですか。 今後、主人公氏がどう関わるか楽しみにしています。
多過ぎる捕虜は手に余るだけですからねぇ。 捕虜の返還時に一般的な食費の半額程度なら請求しても良い気がします。
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