258・はじめての よていび
|д゜)まだ産まれません
(あくまでも予定日だから)
「ありがとうございました、シン殿!!
この御恩、エドガー・タリス伯爵……
いえ、タリス伯爵家は末代まで忘れる事は
ありませんぞおぉおお!!」
四角顔のアラフォーの貴族が、土下座せん
ばかりに頭を下げ、
「いえあの、私の『抵抗魔法』がたまたま
通用しただけですので」
平民の私に頭を下げさせ続けるわけには
いかないので、こちらも必死にそれを何とか
止めさせようと慌てる。
「タリス伯爵殿。
そうされては却ってシン殿が困ろう。
それより―――
ルミナ嬢、もしくはタリス伯爵家が
恨まれるような理由に心当たりは?」
セミロングのブロンドヘアーをした、
ラーナ・ルトバ辺境伯令嬢がそれをなだめて、
さり気なく別の方向へ話題を誘導する。
「そ、そうですな……
ですが、ワシにもさっぱりわからないの
ですよ。
ましてルミナやモニカも、命に関わるほど
恨まれる事など、とても」
ようやく姿勢を直して、彼はソファに座る。
「でも変な要求だよねー?
領地から出て行け、だっけ。
お金とか高価なものじゃなく、そんな要求
するの」
黒髪ショートに赤い瞳を持つラッチが、
その話に乗っかる。
「ええ。
ご存知の通り、ここはかなり環境が厳しい
土地でありまして―――」
「特別な名産品もありませんし、最近
何か見つかった、という話も聞きません。
せいぜい、あの『鉄道』が領地近くに
作られた事くらいでしょうか」
薄いブロンドの髪をお団子ヘアでまとめた
モニカ夫人と、
母譲りの髪を姫カットのしたルミナ令嬢が
首を傾げる。
「あれ?
『鉄道』って領地内に通っているんじゃ
ないんですか?」
「領地内ではありませんな。
近くではありますが……
そもそもここは自然環境が厳しい土地。
管理出来る面積も少ないのですよ。
それで『鉄道』自体は、近くの未開拓地域を
通っておりますな」
タリス伯爵様も妻と娘と一緒に疑問の声を
上げる。
「じゃあ、隣接している他の領地とかも」
「それもありません。
だからこそ要求がわからないのですよ。
もしここを他の貴族が手に入れたとて、
飛び地になって管理も面倒な事にしか
ならないと思うのですが」
その言葉に私はうなずいた後、
「取り敢えず、解決した以上―――
王国に報告したらどうでしょうか。
状況が状況でしたし、情状酌量の余地は
あるでしょう。
緊急避難、という事で……」
「それについては、私からも国に進言しよう。
それに『万能冒険者』―――
シン殿も関わったのだ。
決して悪いようにはならないと思う」
それを聞いたタリス伯爵家の三人はそろって
頭を下げ、
「よ、よろしくお願いいたします!」
「それと、ルミナ令嬢につけられていた
魔導具の首輪、頂いても構いませんかね?
王家直属の研究機関に知り合いが
おりますので、調べたら何かわかるかも
知れません」
「何から何まで、ありがとうございます。
しかしこのままお帰ししてはワシの気が
済みません!
どうか何でも仰ってください!」
なし崩しにお礼を受け取らないように
していた事を見抜かれたのか、タリス伯爵様が
懇願するような顔で迫る。
どうしたものかと悩んでいると、横から
ラッチが、
「ねーねーおとーさん。
そういえば味噌と『奴隷殺し』?
それらがなかなか普及しないって悩んで
なかった?」
「え?
あ、うん。確かにそうだけど」
娘の突然の言葉に少し混乱するも、
味噌はあの外見だからかなかなか受け入れが
広がらず……
『奴隷殺し』も名前が最悪で、積極的に
導入しようとするところも少なかった。
「味噌か。
今や騎士団や軍の携帯食には、なくては
ならないものとなっているのだがなあ」
「ああ、アレですか。
ワシも味はいいと思うのですが、調理前の
状態を見た料理人や民の反応が今イチで」
するとモニカ夫人が片手を挙げて、
「それなら、我がタリス伯爵家で率先して
使ってみてはどうでしょうか。
貴族が使うものだと知れば、民も安心して
使うようになるかも知れませんし」
と、前向きな提案をしてくれ、
「あとは『奴隷殺し』か―――
あれも名前が酷いからな。
特に奴隷制の改善をしようという
同盟諸国では、二の足を踏むのは
仕方がないが……」
ラーナ様が眉間にシワを寄せると、
「あっ、あの! ラーナお姉さま!」
「む? どうした、ルミナ」
彼女が聞き返すと、タリス伯爵家令嬢は
顔を赤らめてもじもじしながら、
「その、『奴隷殺し』の由来は何でしょうか?」
その問いには私が片手を挙げて、
「もともとはランドルフ帝国の禁忌の食材
だったのです。
収穫する時に無数の枝葉を触手のように
動かして抵抗し、またそれには猛毒が
あるので、
死ぬのを前提に奴隷を使って、捕獲する
ものでした」
(■178話
はじめての えっけん(らんどるふていこく)
参照)
私の説明に、タリス伯爵家一家はドン引きする
表情を見せるが、
「あ、でも今は土精霊様の手によって、
無害なただの植物みたいになっています。
なので栽培には何の問題も無いのですが……」
「ああ、あれは美味しいんだよなぁ。
刻んでスープにするだけでも旨いが、
すり潰して熱するとさらに極上に―――」
どういう特性かわからないが、『奴隷殺し』は
刻んでスープにするとコンソメ味に、
すり潰しておかゆのようにするとポタージュの
ようになるのだ。
(■180話 はじめての せんぞがえり参照)
すでにルトバ辺境伯様の地では導入済みであり、
彼女は思い出しながら、その味を力説する。
「で、でしたら……
名前の由来を変えてしまっては
いかがでしょうか?」
「変える、と言いますと?」
ルミナ嬢の提案に私が聞き返すと、
「『奴隷殺し』という名前で印象が悪いので
あれば―――
『奴隷でも死ぬほどお腹いっぱい食べられる』
とか?
『奴隷でもそれだけ食べられるほど、安くて
美味しい』とかにすれば……」
「おー、なるほどっ!」
と、まず真っ先にラッチが反応し、
「いい考えだぞ、ルミナ!
すごいじゃないか!
それならどこも受け入れてくれるに
違いない!」
ラーナ様がルミナ様に抱き着くようにして、
彼女を褒める。
抱きしめられているタリス伯爵家令嬢は、
恍惚の表情で、
「え、ええと、では―――
タリス伯爵領で、味噌と『奴隷殺し』の栽培を
やって頂けますか?
後ほど、『奴隷殺し』の種と土精霊様を
派遣いたしますので」
「お、お任せください!
必ずや我が領地の特産品にしてみせ
ましょうぞ!!」
その後、ルトバ辺境伯領の味噌とタリス伯爵領の
『奴隷殺し』は……
ウィンベル王国でも有数の名産品となっていくの
だが、それはまた別のお話。
「というのが今回の経緯と結末です」
「おう、お疲れさん。
ルトバ辺境伯令嬢もご苦労だった」
白髪混じりのグレーの短髪に―――
歴戦の猛者といった風貌のギルド長と、
「お疲れ様でした」
「今回はシン殿、そしてラッチちゃん……
ルトバ辺境伯令嬢の共同依頼として、
処理させて頂きますね」
秘書ふうの女性二人―――
腰まで伸ばしたブロンドを持つ童顔の女性と、
ミドルショートの黒髪の眼鏡の同性が、
私たちに頭を下げる。
ここは王都・フォルロワの冒険者ギルド本部。
タリス伯爵領における王国の懸念が片付いた
事を、みんなで報告に来たのである。
「シン殿、別に私は良いぞ?
あれはシン殿が1人で解決したような
ものではないか」
「いえ、それもタリス伯爵様がラーナ様の
旧知であった事で、スムーズに会えたような
ものですし」
「それを言うのであれば、私こそ礼を言わねば
ならん。
タリス伯爵殿の娘を救ってくれ、そして
税の不払いの真相も明らかになったのだ」
お互いにペコペコと頭を下げるという、
日本人ムーブになりつつあるところ、
「そーいえばライおじさん。
タリス伯爵家ってどうなるの?」
ラッチが肝心の話に切り込み、
「まあ事情はわかったがな。
無罪というわけにはいくまい。
ただ娘の命が危険に晒されていた事を
考慮して……
向こう3年、税を2割増しで払う―――
くらいが落としどころじゃねえかな。
王国でも同様の判断をするだろう」
本部長の言葉に、思ったより厳しいものでは
なくてホッとする。
「冒険者ギルド本部からの報告書も
ありますからね」
「『全属性』の本部長のお墨付きであれば、
信頼も高いかと」
ラーナ辺境伯令嬢は、ギルド本部長である
ライオットさんの正体が、前国王の兄・
ライオネルという事は知らないので、
少し回りくどい話し方になる。
「そういえば税金って、各領地はどういう
納め方をしているんですか?」
自分は平民冒険者という身分なので、
確か税は全てお金で支払っているけど……
ふと興味が湧いたので聞いてみる。
「ルトバ辺境伯領だと―――
木材や魔物の素材が中心だな。
各地、領地で獲れる資源を収支に応じて
納める仕組みだ。
同等の価値の銀で納めるやり方もある」
なるほど。確か石材や自然素材も貴重だと
聞いた事があるし……
それを納めるか、もしくは銀に換えて
支払う、という事か。
という事は経済として、銀本位制の一歩手前
くらいなのかな?
と考えていると、
「もー、おとーさん。
また何か考え込んでるー」
と、ラッチは頬を指先でつついて来て、それで
我に返る。
「ご、ごめん」
私はラッチに謝った後、他の四人に
振り返り、
「しかしタリス伯爵様ですが、どうして
狙われたんでしょうかね?
私から見ても、恨みを買うような人物とは
思えなかったのですが」
「ああ、それは私も思った。
領地を手放すよう脅迫されていたらしいが、
タリス伯爵領で何か貴重な資源が見つかった
という話も聞かないし―――」
そこまで話を聞いていたライさんが、
「ちょっと待て。
確かタリス伯爵領は、この前開通した
『鉄道』沿線の近くだと言っていたな?」
「そういえばそうでしたね。
おかげで、見つけやすかったのですが」
すると本部長は『う~ん』と考え込み、
「……それが狙いかも知れねぇなあ」
「?? 『鉄道』の近くという事が?」
ラーナ様が彼に聞き返すと、
「今、『鉄道』沿線は開拓ラッシュなんだ。
ちょっと目端の効くヤツなら、その土地の
価値が上がると理解するだろう」
「でも、タリス伯爵の領内ではなく、
あくまでも近くですよ?」
「近くの未開拓地域、だろ?
つまり、どこの領地でもないんだ。
そこに近ければ、開拓も容易になる。
なるほどなるほど―――」
と、そこで本部長室の扉がノックされ、
「あの、本部長。
今、女性騎士団からの使いが来ておりまして。
ラーナ・ルトバ辺境伯令嬢はいつお戻りに
なられるのか、と」
女性職員がおずおずとメッセージを伝えると、
「む?
アイツら、よくここがわかったな」
「あー、女性騎士団と冒険者ギルドは
ちょっと縁があるんだ。
以前、誘拐された王都の子供たちの
救出依頼で、絡んだ事があってな」
(■68話 はじめての にげきり参照)
「そうなのか?」
ライさんの言葉に意外そうに驚き、
「やれやれ……
では私はこれで失礼するよ。
アイツらも、なかなか甘え癖が抜けなくて
困ったものだ」
何だかんだ言いながらも、面倒見がいいの
だろう。
そこでラーナ様は退室し、
後には私とラッチ、そしてギルド本部組が
残され、そして話が再開される。
「つまり、今後の発展を見越しての犯行だと、
ライさんは見ているわけですか?」
私が改めて話を振ると、
「それくらいしか、利害と動機が思いつかねぇ
からなあ。
公都だっていったんバカのように発展したら、
その周辺の村や開拓地で土地や家を買う、
貴族や金持ちどもが殺到しただろ?」
そこまで説明され、私はやっとああ、と
理解し、
「地上げ、か―――」
「え? おとーさん、『じあげ』って何?」
ふとつぶやいた言葉を、ラッチがすかさず
聞いてくる。
「ん? ああ、私の元いた世界で……
似たような方法というか行為があるんだ。
大規模な計画で土地を確保したい時や、
もしくはこれから土地の値段や利用価値が
上がる、という事が見込める時―――
いろんな手段を使って購入や立ち退きを
求める事でね。
ただ……」
「ただその手段の中に、今回のような
非合法なものも含まれるわけか」
本部長が理解し、私もそれに無言でうなずく。
「そもそも『鉄道』を推進したのは私ですし、
原因の一端は私にもあるような」
影響の事はなるべく考えるようにしていたが、
地上げがある事までは気付かなかった。
同じ人間、同じ考えに行き着く事は難しくない。
ましてや公都や開拓地の件もあったのだ。
それに気付かないとは―――
そう私が自省していると、
「そこまで背負い込む事はねぇよ。
それなら、あの魔力動力源用の魔導具が
お前さんの協力で開発されていたからこそ、
ルミナ嬢が助かったんだし。
それにあの『鉄道』計画はウィンベル王国が
必要だと認めた事だ」
暗にお前の責任ではないとライオネル様から
言われ、少し気が軽くなる。
「んで、確かシン。
犯行に使われた魔導具の首輪を持って来て
いたな?」
「これだよー」
ライさんに対し、ラッチがそれを渡して、
「サシャ。
王家直属の研究機関があっただろ。
そこにこれを届けて来てくれ。
ジェミエルはタリス伯爵領の周辺の、
貴族の調査を頼む」
「はっ!」
「直ちに!」
女性秘書二人は仕事モードの顔になって、
すぐ部屋から退出し―――
そしてライさんはと言うと、いそいそと
上着を着始め、出かける準備に入る。
「本部長もどこかに行かれるのですか?」
「おう。
ちょっと甥っ子と話をしに、な」
甥っ子……
前国王の兄であるライオネル様が甥っ子と
言えば、それは現国王であるラーシュ陛下の
事に他ならない。
つまりこの件、王族に上げるという事か。
まあ国家の威信をかけた一大プロジェクトでも
あるし、それでこのような真似をされるのは
見逃せないのだろう。
そして用事が無くなった私とラッチも、
ギルド本部を後にした。
それからしばらくして、タリス伯爵領周辺の
貴族や豪商が、地位をはく奪もしくは降格という
処分が下る事になるのだが、
私がそれを知るのは、ずっと後の事となる。
「そろそろ、ですか」
「ええ、恐らく1ヶ月以内でしょう。
早ければ10日以内にも。
シンさんの提案で、乳幼児専用の施設も
ちょうど出来上がりましたので―――
出来る限りの準備は万端です」
私が王都から戻って来て、十日ほど経った頃。
パック夫妻から、妻の予定日についての説明を
受けていた。
「シャンタルさんも大丈夫ですか?」
私は、同じ白銀の長髪を持つ夫妻の、妻の方に
声をかける。
「わたくしもだいたい同じ頃ですね。
まさか卵じゃなく、直接産む事になるとは
思いませんでしたが」
「そういう意味だと、シンさんのところの
アルテリーゼさんも、人間の姿での初産、
という事になるでしょうか」
アルテリーゼもシャンタルさんも……
ドラゴンだものなあ。
やはり初めての事は心配なものだ。
「でも、シン殿の世界では―――
もっと詳しくわかるのでしょう?
お腹にいる時から男女の区別とか、正確な
出産予定日まで」
シャンタルさんがうらやましそうに聞いて来る。
「それでも、完全にわかるというわけでは
ありませんから……
予定日も前後しますし、こればかりは」
私の言葉に、医療従事者である夫婦がうなずく。
「そういえば、魔狼のリリィさんにお参りは?」
魔狼のリリィさん―――
彼女の子供は一度、女の子が危ない状態で
産まれたのだが、
私の心肺蘇生で何とか一命をとりとめた
過去があり、
(■82話 はじめての そーす)
それで公都の人たちからは、安産祈願の対象と
なっていた。
(■86話 はじめての おとぎばなし参照)
「あ、年明けに行こうかと思っていたのですが」
「じゃあ今のうちに行っておきませんか?」
「そうですねえ」
そこで私たちは、リリィさん参りのための
予定を話し始めた。
「まさか、本人自らのお出ましとはな……」
「……必要とあれば、自ら動きます……
ましてや軍王ガスパード様がお相手となれば、
使者で済ませるわけにはいきませんからね……」
大ライラック国、首都・マルサル―――
中世の軍服のような衣装に身を包んだ面々が、
長テーブルを囲む中、
そことは別に用意された丸テーブルで、
六十代くらいに見える老人と、
その対面に、病的と思えるほどに痩せた、
細面の白髪の青年が座っていた。
「提案がある、と聞いたが。
それはどのようなものか?
レオゾ枢機卿」
軍王の相手は、モンステラ聖皇国の実質上の
トップであり……
つまり大ライラック国・聖皇国の、
クアートル大陸における二大強国の
トップ同士の会談が行われていた。
「現状、大ライラック国は大陸の北……
そして我が国は東に位置しております。
そこで、大ライラック国は西の
ランドルフ帝国へ……
モンステラ聖皇国は南のドラセナ連邦へ
攻め入る……
そのご相談に参りました……」
――――――クアートル大陸位置――――――
海岸線
――――――――――――――――――――――
| 北 |
| |
| 大ライラック国 |
| ■ |
| |
| |
海| 未開拓地域の森 |海
岸| □□□ |岸
線| ■ □□□ ■ |線
|ランドルフ □□□ モンステラ|
| 帝国 聖皇国 |
| |
| ドラセナ連邦 |
| ■ |
| |
| 南 |
――――――――――――――――――――――
海岸線
彼の言葉に、大ライラック国の面々は
ざわつき始め、
「大陸の四大国を巻き込んで戦争を起こす
つもりか!」
「歴史上でも無かったぞ、そんな事は……!」
と、非難にも似た声が巻き起こるが、
「静まれ」
ガスパードの鶴の一声で、沈黙が訪れる。
「総力戦をするとでも言うのか?
それほど勝算があるとでも?
それに、ランドルフ帝国はドラセナ連邦、
そして辺境大陸の諸国連合とも同盟を
組んでおるのだ。
あの軍事演習で見た連中が―――
もし彼らが救援に駆けつければ、我が国は
国家存亡の危機に陥る。
容認出来る事ではない」
それを聞いた枢機卿は軽く首を左右に振って、
「ランドルフ帝国は一度……
辺境大陸に大船団で攻め込んだ事があるのは
ご存知ですか……?」
「それは聞いておる。
それで帝国は方針転換したようだな」
(■172話 はじめての かいせん参照)
そこで彼はいったん、小さくため息のような
息を吐いて、
「……あの侵攻は、ただの新兵器の訓練渡航で
あったと……
それで辺境大陸とランドルフ帝国は和解した
そうです……
まあ裏で、どれだけの賠償が行われたかまでは
知りませんが……」
「それがどうかしたのか?」
早く先を言え、とばかりに軍王は促す。
「……これは、軍事行動ですら……
そういう形にしてまで、衝突を避けた……
という事でもあります……
……それと同様の事をしてみては?
という事です……」
「我々も、新兵器の訓練という名目で
攻め込めというのか?」
軍王ガスパードが聞き返すと、レオゾ枢機卿は
苦笑して、
「……万全を期すのであれば……
義勇兵、という形を取った方がよろしい
でしょうね……
融和政策に反発する若手が、このまま
滅ぶのを座して待つくらいなら……
それで暴走してしまった、と……
我が国ならば……
大精霊様以外の支配は
認めない、と……
過激な狂信者が出た、という事にでも
しておきましょうか……
ああ、念のため……
ある程度情報は、あちらに流してやった方が
いいかも知れません……」
「本気であたるわけではないという事か。
だが、そんな事をして何になる?
いたずらに相手を挑発、刺激する事に
なりかねんとも思うのだが」
軍王はあくまでも国のトップとして、慎重な
姿勢を崩さない。
「……こちら……いえ……
『我々』はすでに、一線を越えてしまって
いるのですよ……」
「例の亜人・人外の兵器化計画か?
それはそちらだけであろう。
勝手にお仲間にされては困るのだがな」
ガスパードの言葉に、重鎮たちの間から苦笑が
広がる。
「……そうでしょうか?
以前、我が国とそちらの国の『調査隊』が、
魔法・魔力を無効化されてしまった事が
あったと記憶しておりますが……
果たしてあちらに、そのような区別が
ついているのでしょうかね……?」
「む……」
枢機卿の指摘に、軍王は言葉が詰まる。
しかし、すぐに立ち直って、
「そこまでする目的は何だ?
理由も聞かずに行動は出来ん」
「……軍事演習を見せつけられたように……
我々も、それなりの戦力を見せつける必要が
あると考えたのですよ……
このままでは一方的に押し切られます……
傍観者のままでは、発言権を失います。
そうならないためにも、行動が必要だと言って
おります……!」
その言葉の後、軍王ガスパードは沈黙し―――
重苦しい空気が室内を支配した。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
本作品は毎週日曜日の16時更新です。
休日のお供にどうぞ。
みなさまのブックマーク・評価・感想を
お待ちしております。
それが何よりのモチベーションアップとなります。
(;・∀・)カクヨムでも書いています。
こちらもよろしくお願いします。
【女性冒険者パーティーの愛玩少年記】
https://kakuyomu.jp/works/16818093088339442288
ネオページ【バク無双】
https://m.neopage.com/book/31172730325901900
【ゲーセンダンジョン繁盛記】【完結】
https://kakuyomu.jp/works/16817330649291247894
【指】【完結】
https://kakuyomu.jp/works/16817330662111746914
【かみつかれた】【完結】
https://kakuyomu.jp/works/16818093073692218686
【ロートルの妖怪同伴世渡り記】【完結】
https://kakuyomu.jp/works/16817330666162544958





