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250・はじめての せいれいか2(てんくん)

|д゜)2と付ければ『はじめて』でも

大丈夫(安易)



「う~ん……」


「ううむ……」


公都『ヤマト』、冒険者ギルド支部で―――

私とジャンさん……

アラフォーとアラフィフの男が同時にうなる。


メルとアルテリーゼの妊娠発覚から、はや半年が

経とうとしており、


当然、産まれてくる子供の名前をそろそろ

考えなければならない時期に来ていた。


「男の子と女の子―――

 いや、両方ともそうだった時の事も想定

 しないと」


「俺もレイドとミリア、ギルとルーチェから

 頼まれているしなぁ……


 リベラも考えてくれちゃいるが、

 何せ一生モンだ。


 まったく頭が痛いぜ」


グチを言いながらも、その口元の端は

上がっている。

まあギルド長にしてみれば、幼い頃から面倒を

見て来た子供同然の四人だ。

産まれて来る孫の名前を考えるような

心境なのだろう。


「レイド君はどこに?」


いつもなら、彼と一緒に支部長室にいる彼が

見当たらないので、たずねてみると、


「今はミリアのところにいる。

 ちょくちょく時間を見つけては、様子見に

 行っているらしい。


 父親になるんだし、妻を気遣うのはその

 自覚が出て来た、って事だろう」


私だって気が気じゃないからなあ。

それで、遠出の依頼は断っているし。


「そういえばジャンさんは、どっちが

 いいですか?

 男の子と女の子」


「ああ?

 ま、月並みだがどっちでも元気で産まれて来て

 くれりゃ、それでいい。


 アイツらの子供なんだ、悪いヤツには

 ならないだろうしよ」


ぐいっ、とギルド長が飲み物をあおると、

私もそれにつられて口を付ける。


「おう、そういや―――

 ダナンってガキがいただろ。

 ホレ、あのユラン国の王子サマ。


 そろそろ国に戻して欲しいって打診が

 来ているんだよ」


ダナン王子……

私の妻の一人、メルに身分がどうのと因縁を

つけて、ラッチ(と私)の逆鱗(げきりん)に触れた

子だっけ。

(■233話 はじめての かいつうしき参照)


「いいんじゃないですか?

 そもそも、お仕置きと再教育のために

 一時預かりだったようなものですし」


「それがよ、お前のとこのラッチに

 すごく懐いているようじゃねぇか。


 あとこっちでの生活にどっぷりハマったのか、

 ユランに帰るのをすごく嫌がっていてなぁ」


あー、それはよくわかる。

そういえば捕虜で来たナルガ辺境伯も―――

こっちに残りたがって大変だった。

(■50話

はじめての ごえいtoばしゃ参照)


「向こうにしてみれば、本格的に寒くなる前に

 戻って来いというのもあるんでしょうね」


「こっちに来たのは夏に入る前の頃か?

 もう4ヶ月も経つんだな……


 とっくに反省はしているだろうし、

 王族だからこそ、ワガママは許されない

 だろうよ」


「そうですねえ―――


 まあごねるようでしたら、ラッチにも頼んで

 帰ってもらうようにしましょう」


そこで私はしばらくジャンさんと雑談した後、

冒険者ギルド支部を後にした。




「うっうまい!!

 こんな料理まで出来るなんて、スゲェ!!」


「噂には聞いておりましたが……

 『万能冒険者』殿は、『料理神』でもあると。


 まさかこの口でそれを確認する事になるとは」


ブラウンの短髪に三白眼(さんぱくがん)をした少年と、

初老の男性が食事をしながら絶賛する。


数日後―――

私はダナン王子様と、そのお目付け役というか

お守り役の、ルディオさんを自宅に招待し、

料理を振る舞っていた。


「今日はラッチも手伝ってくれましたから」


「ハンバーグはボクのお手製だよ!」


黒髪ショートに燃えるような赤目の娘が、

威張るように胸を張る。


「ラッチちゃんも腕を上げたねー」


「今は我らがこういうお腹だし、とても

 助かっておる」


同じ黒髪の、アジアンチックで童顔な妻と、

モデルのような彫りの深い顔立ちの妻が、

お腹をさすりながら語る。


「これ、ラッチの姉貴(あねき)が作ったんですか!

 とても美味しいです!」


「おとーさんの料理を食べて育ったからねー。

 その娘のボクが、メシマズになるわけには

 いかないから」


メシマズなんて言葉をどこで覚えて来たんだか、

と思いながら、成長を実感する。


「そういえばおとーさん、聞いて聞いて!

 ダナンねー、ソロバンも覚えたんだよ!」


「そうなのか!?

 すごいじゃないですか!」


最近導入されたソロバンだが、それなりに

数字に強い人間ではないと苦労する。


「ま、まあ……

 俺の場合、ある程度読み書き計算を一応

 勉強していましたから。


 でもあの計算機は本当にすごいです!

 絶対国に持ち帰って、普及させますよ!」


あー、そうか。

王族ではあるし、教育も高度なものを

受けていたのだろう。


しかしちょっと引っ掛かった言葉がある。

国に持ち帰って?


「ダ、ダナン坊ちゃま!

 ユラン国にお帰りになる決心がついたの

 ですか!?」


ルディオさんが驚いて彼に確かめる。


「俺は王族だし、いつまでもワガママは

 許されないだろう。


 それにここ数ヶ月、肌で文化というか

 文明の差を思い知ったよ。

 これらの身に付けた物を持ち帰るためにも、

 勝手な事は言えないさ」


「おおー」


「成長したのう」


メルとアルテリーゼが純粋に彼を()める。

すると彼は照れながらもラッチの方を向いて、


「だ、だからその、俺―――


 ユラン国に戻る前に、ラッチの姉貴に

 聞きたい事があったんだ。

 それを聞いたら国に戻るから」


「ん? なーに?」


一大決心のようなダナン様の言葉に、娘は

軽く聞き返す。


いったい何を聞くつもりなんだ?

そう私が身構えていると……


「あ、あのさ、ラッチの姉貴は―――


 ど、どんな男が好きなんだ!?」


突然の恋愛思春期話への移行に、私は一瞬

時間が止まるが、


「好きなタイプ?

 んー、そうだね」


あっさり答えようとするラッチに注目が集まり、


「……年上かな?」


その言葉に、私と妻二人はガクッと

肩を落とす。


「ラッチちゃん、あのねぇ~……」


「ドラゴンで言えばそうでもなかろうが、

 お前の年齢―――

 30才というのは人間だと、『ガッコウ』の

 先生くらいの年じゃぞ……」


今度は少年と老人が顔を見合わせ、


「え? 30才?」


「ラッチ様が、ですか?」


まあ当然そういう反応になるだろう。


「あー、ラッチ。

 ちょっとドラゴンの姿に戻れるか?」


私が頼むと、娘は小さなドラゴンの姿に

変身し、


「ドラゴンでいえば、まだまだ

 子供なんだけどねー」


「これくらいでも(よわい)30を超えるのじゃ。

 我らの中では、50才くらいまでは

 子供じゃのう」


目を丸くする彼らに対し、妻たちは

フォローを入れ―――


「ですからまあ、年上年下というのはあまり

 気にしないでください。


 ラッチもドラゴン目線で何か言うのは

 気を付けるように……」


そうたしなめると、『ピュッ!』と元気に

鳴き声を上げる。


やれやれ、と思っているとその姿のまま、

ラッチはふわふわとダナン王子様のところまで

飛んで行き、


「……え?」


娘はドラゴンの姿のまま、彼の頬にキスして、

そして口を離すと人間の姿に戻る。


「えっ? えっ?

 あ、姉貴!?」


彼が顔を真っ赤にして、今の出来事を必死に

理解しようとしているのがわかる。


「そーだねえ。


 年上とか年下とか関係無いのなら―――

 カッコイイ男の人が、ボクはいいかな?」


それって、かつてサイリック前大公家で

ヘンリー様に言った事と同じじゃ……

(■230話

はじめての かいはつふぐあい参照)


いやそれより、義理とはいえ父親である私の

目の前でいったい何を!?


「あ、ヤバ。

 シンの目が娘を他の男に取られそうな

 父親の目になっておられる」


「お、落ち着くのじゃシン!

 初めてのキスじゃが、ドラゴンの姿じゃし

 無効じゃ無効!!」


それを聞いた少年は顔をさらに赤くして、


「え? は、初めての……キス!?」


「そういえば、おとーさん以外の男の人とは

 そーかな?」


その事実に、彼はさらに顔を紅潮(こうちょう)させる。


「ダナン君……!

 もしラッチを妻にするつもりなら、この私を

 倒してからにしてもらおうか!」


「は、はぃい!?

 『万能冒険者』殿を!?」


私の言葉にルディオさんが目を白黒させ、


「ねー、おかーさんとメルおかーさん。

 おとーさんこの前、女の人とご飯食べてたよ」


「えっ」


「えっ」


待って、いきなり何を言い出すのこの娘は。


「シ~ン~?」


「それは本当かのう?」


メルとアルテリーゼは疑いの目を

私に向けて来て、


「い、いやそんな事は……って、あ」


「心当たりが」


「あるのじゃな?」


「ちち、違う!

 あれは児童預かり所の会合で、リベラさんも

 その場にいたし―――」


確か他の保護者の方々との集まりで、

出席した事はあるのだが、


「じゃー何でそんなに(あせ)っているの?

 おとーさん?」


「お前絶対楽しんでいるだろ!!」


しばらく動揺と混乱が続き……

この会食の後、ダナン王子様とルディオさんは

後日、無事(?)ユラン国へと帰って行った。




「ほう、レオゾ枢機卿(すうききょう)がねぇ」


大ライラック国、首都・マルサル―――


中世の軍服に身を包んだ面々が、長テーブルを

囲うようにして席につく。


「同盟と称するのであれば、こちらの軍も

 そちらで受け入れよ、か。


 なるほどなるほど」


そのテーブルの先端に座るのは、六十代に見える

老人、軍王ガスパードその人であった。


「何らかの抵抗はあるかと思いましたが」


「思ったよりも強硬(きょうこう)に反発して来ましたな」


ある程度の予想はしていたのか、そこまで

驚く声は出て来ない。


「あれほどの苦労をして獲った国だからな。


 協力や服従ならともかく、()われるくらいなら

 話は別だと覚悟もするであろう。


 しかし、さすがに支援という名目とはいえ……

 軍を無条件で内側に入れるような馬鹿でも

 無かったという事か」


軍王は落胆というより、どこか楽し気な

表情で語る。


「支援は欠かさずモンステラ聖皇国に対し

 行っているな?」


「は、はい!

 それは軍王様のお言葉通りに」


「しかし、警戒心を持たれてしまったのでは

 ないでしょうか。


 そうなれば、支援自体あまり意味が」


消極的にだが異を唱える意見が出て来ると、


「それで良い。


 言ったであろう。

 モンステラ聖皇国は大ライラック国の

 防風林(ぼうふうりん)だと。


 地理的にあの国はドラセナ連邦からの

 通り道。

 なれば、連邦を防いでさえくれれば

 それで構わん」


「そうですね。

 それなら、反対の東南にあるランドルフ帝国に

 こちらも集中出来ます」


同調する意見が出て、会議は落ち着いた

雰囲気となる。


「それと―――

 『亜人・人外の兵器化計画』の詳細及び、

 『支配地域の他種族の懐柔(かいじゅう)』は

 どうなっておる?」


ガスパードの言葉に担当であろう数名が書類を

取り出して、


「ハッ!!


 例の『亜人・人外の兵器化計画』に

 つきましては、その施設の職員複数から

 情報を入手しております!」


「ふむ、そうか。

 内容は?」


続けて軍王は先を促し、


「洗脳および自爆も含めた……

 『使い捨て用』の兵士作成、とでも呼べば

 いいのでしょうか。


 ドラゴンやワイバーンなどの、高度な脅威と

 なり得る種族は見られませんでしたが―――

 ハーピー族が捕らえられており、空中戦力も

 視野に入れていたと思われます」


「また鬼人族やラミア族などの基本的な

 戦闘能力の高い種族、

 獣人族や半人半馬など、地上で機動力の高い

 種族も兵器化予定だったと思われ、


 もし成功していれば、クアートル大陸の

 軍事バランスを大きく崩していた可能性が

 あります」


その報告を聞いて、眉をひそめる者、

無表情の者など様々な反応が見られ、


「十分、非人道的行為と呼べるものか」


「それは間違いなく」


それを聞いたガスパードは何の反応もせずに

うなずき、


「それで、それらはこちらで再現は

 出来そうか?」


軍王の言葉に、周囲の何人かは強張った

表情になるが、


「この計画に従事していた者を何人か、

 引き入れる事が出来れば可能かと。


 現時点で、かつ一からこちらで、となると

 時間がかかるとの事で……」


不可能ではないが、現実問題として

新規のプロジェクトを起こすのは、

膨大なリソースが必要となる。


まして戦争が間近に起こるかも知れない

状況では、新機軸だの新技術だのに

関わっている余裕は無いのだ。


「ではそれは当初の予定通り―――

 『手札』として残しておけばよい。


 分析は引き続き継続せよ。

 知る分に関しては何の問題もない」


「かしこまりました」


発言していた担当者は、メモにガリガリと

急いで書き込んでいく。


すると他の一人が片手を挙げて、


「続けてよろしいでしょうか。


 『支配地域の他種族の懐柔』について

 ですが」


「うむ」


恐らく、一番苦労するであろう案件に、

全員の視線が集まる。


「検討いたしましたが、やはり困惑が大きいと

 予想されます」


それまで問答無用で、『弱いから支配』してきた

大国が、急に方向転換して来ては、

『何が狙いだ?』と疑われもするだろう。


口にこそ出さないが、多かれ少なかれ……

出席した人間は同じような考えを抱いた。


「ランドルフ帝国でも同様の政策を行った

 はずだが―――

 それはどのようなものだ?」


「は、はい。


 自治権の拡大を認める事と、同時に

 奴隷制の待遇の改善を進めていたため、

 多少の混乱はありつつも、受け入れられて

 いたと思われます」


それを聞いた彼らは顔を見合わせ、


「自治権の拡大と奴隷待遇の改善……」


「何と思い切った手を」


ざわつく軍人・幹部たちを前に軍王ガスパードが

口を開き、


「我が大ライラック国でそれは可能か?」


担当者はその問いに一瞬息を詰まらせたように

固まるが、


「……困難です……!」


振り絞るような声で彼は答える。


周囲も、現実には不可能であるという事を

認めざるを得ず、沈黙する。


「さ、さらにですが」


「む? まだあるのか?」


ガスパードが意外そうな言葉を発すると、


「は、はい!


 その自治を認めると同時に、各地に対し、

 適応した農作物や産業を推進したとも

 聞いております。


 で、ですが……」


「何だ? そんなに特殊な事を行ったのか?」


老齢の武官が問い質す。すると、


「せ、精霊を現地に同行させ、その土地で

 農作物の成長を促進させたり―――

 荒れた農地を立て直したりもしたとか。


 か、確認は取れていませんが……」


一同はそれを聞いてポカンと口を開け、


「ハッハッハ!

 確かに我が国は、精霊まで支配下には

 入れておらんのう」


軍王が笑うと、それにつられて苦笑にも似た

笑いがあちこちから発せられ、


「良い、懐柔は進めよ。


 それと各地の税の引き下げを検討しろ。

 それくらいならすぐに出来るであろう?」


「ハハッ!! 直ちに!!」


担当者は前の報告者と同じく、ガリガリと

メモに書き込んでいく。


「では戦力増強、それに例の自爆用の魔導具が

 発動しなかった件について、何かわかった

 事はあるか?」


「それにつきましては、こちらから

 報告が―――」


そして軍王主導の下、議題は進められて

いった。




「テン君が?」


「はい。多分あのままだと、自然に

 精霊になると思います」


久しぶりに宿屋『クラン』で、家族と食事を

楽しんでいたところ、


中性的な、グリーンのサラサラした髪と

エメラルドのような瞳を持つ……

10才くらいの少年の姿をした、土精霊(アース・スピリット)

そう教えてくれた。


「ほーん。あの子がねー」


「そういえば精霊が気にかけておったと

 聞いているが」


テン君、というのはかつて羽狐(ウィング・フォックス)たちが

いた山―――

キクラゲや舞茸の採取にいった事のある山の、

そこの主の息子で、


フェンリルであるルクレセントさんの影響を

受けたのか、人間の姿にもなれるテンに似た

幼い獣の事だ。

(■159話

はじめての こきょう(はぎつね)、

■190話 はじめての おに参照)


「あー、あの狐耳の子かー」


ラッチも児童預かり所で面識があるのか、

自然に受け入れる。


「まあ山の主の息子だし、そもそも野生の魔物?

 というのでも無かったんだろう。


 元から精霊様に近い存在だったのかも」


「それはあるでしょうね。


 それに、沼精霊(スワンプ・スピリット)とは違い、

 人間に近い自我がありますので……

 精霊化するにあたって、混乱は無いかと」


沼精霊様の時は、ちょっとしたごたごたが

あったものなあ。

(■234話 はじめての そろばん

■235話 はじめての せいれいか参照)


「そういえば沼精霊様は?」


「今は氷精霊(アイス・スピリット)が付きっ切りで

 面倒を見ているような感じです。


 あれ以来、巨大化するような事も

 ありませんし―――

 心配はいらないかと」


メルの質問に少年姿の精霊が答え、


「弟が出来て、落ち着きが出来た姉という

 感じかのう」


「そーだね。

 結構ベタベタに可愛がっている感じがするー」


アルテリーゼとラッチが感想を述べる。


「それで、テン君の両親である山の主様にも

 報告に行こうかという事になりまして。


 もし時間があれば、シンさんにも同行して

 頂きたいと」


その問いにチラ、と家族の方を見ると、


「ワイバーンで行けば半日で帰って来れる

 山でしょ?」


「我らの事は気にせず行ってくるがよい」


「よいー♪」


と、三人から許可が出され、


「行くメンバーは決まっていますか?」


「今のところはボクが事情を説明しに、

 例のキクラゲ・舞茸採取の方々についていく、

 という事になっています」


それなら一人くらい増えたところで、

どうという事は無いか。


私は同行に同意して、その日を待つ事になった。




「父様! 母様!」


「おお、テンか!」


「お帰りなさい」


真っ白な短髪をした、平安時代のような衣装を

コスプレのように身にまとったアラサーくらいの

男性と、

やや灰色に近い白色の長髪を持つ女性に、


純白のやや長めの髪に、狐目狐耳の5,6才

くらいの少年が飛びつく。


ここはかつて、羽狐たちが住処とした山。

今ではキノコ類を採取するのと、

山の主夫婦にテン君が会いに行くため、

ワイバーンで定期的に往来するように

なっていた。


「土精霊です。

 恐らく、お会いするのは初めてかと」


エメラルドグリーンの瞳が礼儀正しくあいさつ

すると、


「おお、テンより聞いております」


「そういえばシン殿は、お2人の奥方に子が

 出来たそうですね。

 おめでとうございます」


イスに座りながら、夫婦そろって頭を

下げてくる。


ここは彼らの希望によって、キノコを採取しに

来る冒険者たちの避難場所も兼ねて作られた

山小屋のような家で、


ただ設備は公都基準であり、不自由なく

生活が送られるように出来ていた。


「しかし、テンが精霊となるとはな。


 これはもう、一人前になったと見て

 差し支えなかろう」


「あなた、それは」


夫の言葉に、妻が心配そうに聞き返す。


「ええと、何かあるのですか?


 一人前になるための儀式とか、

 どこかに行かなければならないとか」


かつて、ラッチのドラゴンの試練を思い出した

私は、その事についてたずねる。

(■223話

はじめての もっていくもの参照)


「いえ、そのようなものはありませんが」


「そうですね……

 取り敢えず、テン。

 この山の頂に向かいなさい」


やはり儀式的なものがあるのか?

と身構え、


「そこでテン君はいったい何を?」


私の問いに、山の主夫婦はきょとんとして、


「いえ、特に何も―――」


「ただそこで、自分を(はぐく)んだ自然に

 感謝を述べてくるだけです。


 私たちは山の主。

 何か事があれば、そのようにしてきました。


 それをテンにもしてもらうようになった、

 という事です」


人間で言えばご先祖様にご報告、みたいな

感じなのだろうが?


小さいテン君は今までそれには加わらずに

いたが……

夫妻がやって来たそれに、改めて参加する、

という事かな。


「それ、ボクたちが同行する事は可能で

 しょうか」


土精霊様が問うと、


「ええ、構いませんよ。

 特に制限はありませんので」


「そもそも、精霊化するという事自体、

 こちらには初めての事ですから―――」


まあそれもそうか、と納得し、


「では今から行きますか?」


テン君の言葉に私と精霊様は顔を見合わせ、


「そうですね……

 今からなら、採取に行っている冒険者たちが

 戻って来るまでに」


それを聞いた山の主夫婦は、


「わかりました」


「私たちは留守番しておりますので、

 どうぞテンをよろしくお願いします」


そこで山小屋を離れ、テン君と私と土精霊様は

山頂へ向かう事となった。




「あまり時間はかかりませんでしたね」


「まあ、ワイバーンに運んでもらった

 ところが、すでに山の中腹くらい

 ですので」


一時間もしないうちに山頂に到着した

私たちは、一息入れる。


しかし深山といおうか。

霧が立ち込めて絶景とは言い難いが、まるで

非現実的な世界に迷い込んだかのようだ。


「えーと、じゃあ感謝を―――」


そうテン君が言いかけた時、


「……うっ!?」


「どうかしたんですか?」


急にお腹を抑えて彼はうずくまる。

同時に、人間化が解けて元の獣のような

姿となり、


「こ、これは!?」


見る見るうちに、テン君は巨大化する。

しかし体が制御出来ないのか、そのまま

倒れ込んでしまった。


「ま、まさかここも―――

 精霊化するのに適した土地だったと!?」


土精霊様の言葉に、かつて沼精霊様が

巨大化した時の事を思い出す。


考えてみればそうかも知れない。

それに、彼は沼精霊様よりもずっと長く、

公都で暮らしていたのだ。


それが生まれ故郷に帰って来て、さらに

この場所が何らかの精霊化の条件に適合

していたとしたら……!


「シ、シンさん!」


「ええ、わかっています!」


恐らくこれは、沼精霊様の時と同じ症状だ。

となると、巨大化を何とかしつつ、精霊化を

ジャマしないようにしなければならない。


現に彼は横たわり、口から舌を出して呼吸も

弱々しくなっていて―――


私はテン君のそばに近寄ると、


「精霊化するに際に……

                ・・・・・

 動けなくなる、苦しくなる事などあり得ない」


魔力、という条件は入れず……

あくまでも精霊化するにあたり、苦痛を

取り除く形で条件を選定する。


するとその巨大な獣の姿が光に包まれる。

これは沼精霊様の時も起こった事。


「シ、シンさん!

 これなら―――」


土精霊様も安心したような表情を私に向ける。

そして光が収まった時、


「……え?」


「……あれ?」


そして光が完全に消え去ると、そこには―――

真っ白な髪に狐耳と、それはテン君の特徴として

合ってはいたが、


なぜか小学校低学年かそれ未満の姿から、

中学生くらいになった少年が横たわっていた。





( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

本作品は毎週日曜日の16時更新です。

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【女性冒険者パーティーの愛玩少年記】

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【ゲーセンダンジョン繁盛記】【完結】

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【指】【完結】

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【かみつかれた】【完結】

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― 新着の感想 ―
(*ゝω・*)つ★★★★★  コン君、肉食獣(ショタコンのお姉さん)達の餌食になりそうな予感…w
なんというか、一休さんの「このはし わたるべからず」みたいな。 条件の抜け穴探しが大変かも。
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