238・はじめての くうていさくせん2
|д゜)今回はシルヴァ提督が大活躍。
アレ……主人公……
「そうですかい、首尾よく行きましたかい。
だが相手もバカじゃねえ。
すぐこっちに探りを入れて来るでしょうよ」
モンステラ聖皇国・カービング港……
そこに停泊している一隻の船の上で、大柄な
体格をした男が黒々とした口ヒゲをさすりながら
魔力通信機の端末に向かって語る。
『はい、それは想定しています。
ただもうこちらはそちらの船と上下、重なる
位置についてますので―――
魔力感知器にも1つの存在としてしか映らない
でしょう。
つまり魔力使い放題というわけで。
シルヴァ提督の船が出航次第、こちらも
合わせて移動しますから』
彼の通話先は、ウィンベル王国のシンで……
遥か上空にある浮遊島から、魔力通信機を
糸電話のように垂らし、それで相互に連絡を
取り合っていた。
「それじゃあ、もう魔力通信機を使うのは
控えた方がいいでしょうな。
健闘を祈っておりますぜ。
メルビナ大教皇様にもよろしく」
『はい、ありがとうございます。
提督も気取られないよう注意してください』
「わかっていますぜ。
そんなヘマはしませんや」
そして彼らは通話を終え、まだ夜の闇が明けない
中、通信機の片方の端末はスルスルと上空へと
上がっていった。
「ク……ッ、なぜです!?
どうしてまだ見つからないのですか!?」
モンステラ聖皇国、首都・イスト―――
その中心にある大聖堂の中で、病的なほどに
痩せた細面の青年が叫びながら
立ちすくんでいた。
「レオゾ枢機卿様、落ち着いてください!
間もなく夜も明けます。
そうなれば探索も容易に……
それに首都の門という門は封鎖しました!
脱出は不可能です!」
部下らしき男が、なだめるように彼に
意見を述べる。
すると枢機卿は深く息を吐いて、
「失礼、少々見苦しいところを見せて
しまいました。
そういえば、どうして各所の魔導具や
仕掛けが故障したのか―――
原因は判明しましたか?」
「ハッ、それが……
外部から細工をされたとか、何らかの衝撃を
受けた形跡は全く無いとの事で―――
調査には今しばらく時間がかかりそうだと」
その答えに彼は眉間に人差し指をあてて、
「……わかりました。
引き続き調査、そしてメルビナ大教皇様の
行方を追ってください」
「ハッ!!」
一人になった部屋で、レオゾ枢機卿はイスに
腰掛け、天井を見上げる。
「(いきなり大聖堂中の魔導具が故障?
それも同時に?
故障していたというのならいつから?
侵入者が脱出するまでの時間を考えると、
あまりにも短過ぎます。
内通者がいたにしろ、外部からの侵入にしろ、
ここまで騒ぎを起こす意味も理由も
わかりません)」
一人思考の海に潜り、解答を求めるものの、
これといった正解は思いつかず、
「(とにかく、何でもいいからこれまでの中で、
思い当たる異常を―――
しかし、メルビナ大教皇様の部屋、そして
そこに至るまでの通路の仕掛けも私が命じた
事……
見落としなどあろうはずも)」
そこで彼はハッとして目を見開き、
「誰か! 誰かおりませんか!?」
枢機卿の声に慌てて衛兵が駆けつける。
「どうかしましたか、レオゾ枢機卿様」
「確か―――
カービング港にドラセナ連邦の船が
入港したとの報せがありましたね。
一応、その船を調査しなさい。
船内もくまなく探すように……」
タイミング良くやって来た他国の船。
彼の頭脳に即座にそれが引っ掛かり、
すぐに調べるように指示を出す。
「わかりました。
港湾管理者に命令を飛ばします」
「頼みましたよ。
……いや、待ちなさい。
やっぱり私自身も向かいます。
緊急用の高速馬車の用意を。
今からなら1日以内で着けるはず……!
先行する者に伝えなさい。
私が行くまで、船を出航させるなと」
こうして、改めて運び入れられた魔導具の
照明の中―――
彼は眠気と戦いながら、移動するための準備を
始めた。
「……もう夜明け……
ここは―――」
浮遊島の上の施設で、中性的な顔立ちの
二十歳くらいの青年は目を覚ました。
「お目覚めですか、メルビナ大教皇様」
側には、青い髪を後ろで三つ編みにした女性が
心配そうにイスに腰掛けていて、
「そう、か……
私は救出されて、ええと」
大聖堂の最奥の部屋で軟禁されていた私は、
ティーネも含めた亜人・人間混合の一団に
踏み込まれ―――
脱出は無理だと説得するも、我関せずという
ような態度で、
急に魔導具の照明が消え、あれよあれよという
間に魔導爆弾が仕掛けられた拘束は外され、
外まで脱したかと思った時、今度は
彼らの中の何人かが、突然ワイバーンの姿に
なったかと思うと……
そのまま空へ連れて行かれ、浮遊島と呼ばれる
雲の上の島へと運ばれた。
その後、軽食を勧められ―――
助け出されたという安心感と、何がどうなって
いるのかわからない疲労感からか、
食事を食べ終えた後、泥のように眠ってしまい、
そして目が覚めたこの現実が、昨夜の事が夢では
無い事を証明していた。
「大丈夫ですか?
すごくお疲れになっておられたようでした
ので……
今すぐ食事をお運びしますね」
ティーネの言葉に私は片手を振り、
「いえ、すっかり休めましたので、体調に問題は
ありません。
それより、私を救い出してくれた方々に
改めてお礼を―――」
私はベッドから降りようとしたが、上半身を
起こす事すらままならず、
「とにかく、今は静養に努めてください。
ランドルフ帝国まで行けば一安心ですので」
彼女が優しく布団をかけ直してくれる。
「そ、そんな事を言っている場合では
無いのです。
レオゾ枢機卿と、大ライラック国の『計画』、
あれは何としてでも早く止めないと……」
「今はただ、何も考えず休んでくださいませ」
それでも私は身を起こそうとしたが、思ったより
疲労がたまっていたのか起き上がる事は出来ず、
まぶたが重くなると同時に意識を手放した。
「なんだぁ? 船の中を見たいって?」
その日の夕方―――
カービング港で船を停泊させていた
シルヴァ提督は、モンステラ聖皇国の首都から
来たと言う使者に訝しい表情を向けていた。
「どういう事だよ?」
「中なら昨日、さんざん見て行ったはずじゃ
ねぇのか?」
海賊のような乗組員たちも出て来て、いかにも
宗教者といった体の使者を取り囲む。
「そ、それは危険物が無いか念のため、
通り一遍の調査だったので……
今一度本格的に調べさせて頂きたいのです」
使者も命令で来ているだけで、詳しい事は何も
知らされておらず、気圧されながらも要求を
伝える。
それを見た提督はボリボリと頭をかいて、
「明るいうちに修復出来るところは直したいん
だがな。
まぁいい、突然やって来たのはウチだし―――
ただ危ない個所があるから気を付けてくれ。
ケガしても文句言うんじゃねぇぞ」
「は、はい!」
要求が通ってホッとしたのか、使者は胸を
なでおろし、
そして次々と、シルヴァ提督の船に調査する
一団が乗り込んでいった。
「……亜人や人外たちが?」
「は、はい……!
レオゾ枢機卿の話では、人間以外の種族を
『兵器化』する計画が―――
大ライラック国の後押しの元、進められている
ようなのです。
それこそ、女子供まで関係無く……
だから一刻も早く彼らを救い出さねば……!」
同じ頃、メルビナ大教皇は体を引きずりながら
ベッドから這い出て―――
『見えない部隊』に要請を訴えていた。
「まだ胸糞悪ぃ話があったのかよ」
「もっと大暴れしても良かったぜ」
それを聞いた彼らは怒りをあらわにするも、
「……お気持ちはわかりますが、我々は
大教皇様を救出する以上の準備はして来て
おりません。
それに、まだモンステラ聖皇国から完全に
脱したわけではありませんので―――
全てはここを出て、無事ランドルフ帝国に
着いてからです」
「……わかりました。
申し訳ありません、わがままを言って」
私の言葉を聞いた彼は、ティーネさんに
支えられながら、無念そうにうなずいた。
翌日、ドラセナ連邦のシルヴァ提督の船は、
未だカービング港にあった。
「レオゾ枢機卿様?
お偉いさんが、いったい何の用で?」
彼の前にいたのは、体格が対照的な―――
細身の青年で、
「……いえ、我が国では最近警備を強化して
おりましてね。
その様子見……とでも言いましょうか」
恐らく昼夜わかたず駆けて来たのであろう、
彼の目の下にはクマが出来ており、
「そいつぁご苦労さんな事で。
アンタのところの奴らは仕事熱心でいいなぁ。
ウチの連中にも見習わせてやりたいぜ」
提督は憎まれ口で枢機卿に返す。
「……あなたがこの船の責任者か?」
「ああ。ドラセナ連邦所属、シルヴァ提督だ。
どうぞお見知りおきを」
うやうやしくあいさつする彼に、レオゾ枢機卿は
書類を見ながら、
「……確かに、船内はもう調べられたみたい
ですが……
少し質問してもよろしいでしょうか?」
「俺の船についてなら何でも答えるぜ。
どうぞ」
両手の手の平を上にし、小ばかにするような
仕草で提督は答える。
「……ご協力感謝します。
船内を調べたところ、荷物が極端に少ない、
との事ですが……」
ジロリ、と枢機卿が書類から目を上げると、
シルヴァ提督は事も無げに、
「捨てたんだよ」
「捨てた……とは?」
聞き返されると彼は続けて、
「聞いてねぇのか?
魔物に襲われたって言ったはずだが?
だから船のあちこちが壊れているん
だろうが。
逃げるために、船を軽くしなけりゃ
ならなかったんだよ」
筋の通った理由にレオゾ枢機卿はうなずき、
「……それは災難でしたね」
「まったくだぜ。
おかげで、こんな居心地の悪い国で
足止めされちまっているしよ。
さっさと出航したいんだがなぁ」
先ほどのお返しか、今度は提督が彼を
にらみつける。
「……ここを出て、どちらへ?」
「ん? 最初はランドルフ帝国へ向かう
つもりだったんだよ。
あちらは辺境大陸との貿易で、珍しいモンが
今、バンバン入っていやがるからな。
まあこうなった以上、いったん連邦へ帰るしか
ねぇが」
それを聞いた枢機卿は眼光を鋭くして、
「……ドラセナ連邦からランドルフ帝国へ?
方向が正反対ですが……
いったいどうしてモンステラ聖皇国へ?」
その質問にシルヴァ提督は大きくため息をつき、
「だから、来たくて来たんじゃねぇよ。
ドラセナ連邦から沖合いに出たところで―――
海中にいた魔物に襲われちまったんだ。
後は魔物から逃げるのに必死でよ。
アンタの国まで来ちまったってワケさ。
理由は俺たちを追いかけ回した魔物に
聞いてくれ。
俺にはヤツの言葉はわからねーからな」
やれやれ、と両手を広げる彼にそれ以上
問い詰める事も出来ず……
レオゾ枢機卿は一文字に口を結ぶ。
「……わかりました。
そうなると、一応船底や海中まで調べた方が
良さそうですね」
「アンタらがやってくれるってんなら、
そりゃ有難い。
ただあまり時間をかけるのなら、滞在費とか
出してもらえねぇかな。
本来ならもう船は動かせるはずなんだよ」
基本的に彼らは全面協力しており―――
拘束する理由は何も無い。
ただレオゾ枢機卿には……
今回のメルビナ大教皇の救出劇に、彼らが
関わっていると強く疑っており、
そのために何とか時間稼ぎを画策していた。
「……申し訳ありません。
宿泊費や飲食代はこちらで持ちますので。
出来れば今日1日、よろしくお願いします」
それを聞いたシルヴァ提督はくるりと彼に
背を向けて、
「おーい、野郎ども!
船から上がれ!!
レオゾ枢機卿様からのご厚意だ!
明日まで飲み放題、食い放題だとよ!!」
その声に船員たちから一斉に歓声が上がり、
わらわらと船から降りて来た。
「……それで、状況は?」
「は、はい。
それこそ船内は元より海中まで潜り、隅々まで
探したのですが―――
怪しいところは何も……」
深夜に至るまでシルヴァ提督の船は徹底的に
調べられたものの、目ぼしい手掛かりは何も
見つからず、
港湾管理施設の一角で、レオゾ枢機卿は
焦りの色を濃くする。
「……絶対にいるはずなのです。
どんな手段、方法かは不明ですが―――
あの者たちがメルビナ大教皇様の行方に
関わっている事は間違いありません」
それは彼のカンではあったが、今回それは
当たっていた。
問題はあくまでも関わっているだけであり、
本命は空の上にかくまわれているなど、
思いもよらず……
「ドラゴン、もしくはワイバーンによる
脱出は考えられないでしょうか」
調査に連れてきたのは、レオゾ枢機卿の息の
かかった部下たちであり、彼らは『実情』を
知っていたが、
「……ですが、それなら首都・イストに
侵入した時点で魔力探知機に引っ掛かる
はずなのです」
「こちらから見えないほどの上空で、
待機しているのでは」
「……ここの港湾管理者に聞いたところ、
確かに異常な魔力反応があったと言って
おりましたが……
ならば数日、上空で待機し続けている、
という事になってしまいます。
そんな事は不可能でしょう。
またその反応は内陸に向かっていたらしく、
海に出る魔力は感知していないのとの事です」
先日より雲の層は薄くなっていたものの、
まだ雲はまばらにあり、それが浮遊島を
見え辛くしていた。
さらに彼らの目は船に集中しており、空まで
それほど気を配っていなかったのである。
そこで枢機卿は大きく息を吐き、
「隠蔽か隠密という事は―――」
それでも部下の男は可能性を模索し、
「……なるほど、考えられなくはありません……
ですがあの船が到着してから数時間後に、
大聖堂での事件は起きています。
もし引き渡す手段があったとしても……
とても往復出来る時間では……
だが時間の問題さえ何とかすれば、
ありえる話です……!」
彼はその可能性に解決を見出し、
「では―――」
「……何とか理由を付けて、あの船をこの港に
留めましょう。
いつかボロを出すかも知れません……」
方針が決まるとレオゾ枢機卿は立ち上がり、
「……とにかく、監視を強めるように……
あの船の乗組員は全員、です……!」
「ハッ!!」
部下はその命令を他の者にも伝えるべく、
部屋から飛び出していった。
「んあ? まだ時間がかかるってぇ?」
日付が変わり、シルヴァ提督以下船員たちが
船に戻って来ると―――
さらなる『延長』を彼らは告げられ、
「まだ何か調べる事があんのかぁ?」
「オイ、嫌がらせでケンカ売ってるのなら
こっちは買うぜ?」
口々に不満がドラセナ連邦側から噴出する。
「まあ、待て待て。
それで? いったい後どれくらい船は
出せねぇんだ?」
彼らのトップである提督が手で制しながら、
問い質す。
レオゾ枢機卿と部下数名は能面のような
表情を崩さず、
「……失礼である事は重々承知していますが、
警備を強化している最中に寄港した、貴殿らの
運が悪かったと思って頂きたい……
適当に返しますと、今後の船も同様の対応で
通さなければなりませんので……」
正論っぽい言葉に、荒くれ者たちは黙り込むも、
「当然、滞在費はそっち持ちだろうな?」
「はい、もちろん」
「ご協力感謝します」
シルヴァ提督の問いに枢機卿の部下たちは
即座に答える。
そしてすぐその場を離れたかったのか、
話を切り上げようとするが、
「待てよ」
提督の言葉に、一瞬で緊張が走る。
「……何でしょうか」
「あとどれくらいここにいりゃあいいんだ?
いつまで、というのがわからないのもちと
問題だと思うが。
あまり長引きゃあ本国のドラセナ連邦だって、
何があったと思うだろうし」
レオゾ枢機卿とシルヴァ提督は再び
向き合い、
「……さあ、それは……
数日、もしくは10日ほどかかるかも
知れませんが」
その答えに黒ひげの男は大きく目を見開き、
「はぁ!?
いやちょっと待ってくれ。
いくら滞在費をもらえると言っても、
そりゃちょっと長過ぎじゃねぇか?」
そこで提督はいったん大きく息を吐いて、
「それに、何で急に警備強化なんかしたんだよ。
何かあったのか、この国に?」
「……いえ、別にそのような事は……」
枢機卿は一瞬表情を固くするも、すぐに
冷静に返す。
「か~っ、とんだ事になっちまったぜ。
ちょっと本国に連絡を取れねぇか?
女帝イヴレット様に説明しなけりゃならねえ。
これこれこういう理由で遅れます、ってな」
「……!」
ドラセナ連邦トップの名前が出てきた事で、
レオゾ枢機卿はさすがに内心動揺するも、
それは顔には出さず、
「……そうですね。
首都・イストに使いを出しましょう。
書面を頂ければそこから内陸伝いに、
連邦にお届け出来るかと……」
「出来りゃ、アンタの一筆も欲しいな。
枢機卿様のお墨付きがあれば、俺も
それほど怒られずに済むだろう。
いやマジこえーのよ、イヴレット様」
一転してシルヴァ提督が拝むように頭を
下げて来たので、緊張は緩むが、
「おっ、そうだ!
じゃあ俺も首都・イストに行って
メルビナ大教皇様にお目通り願おうか。
どうも長期滞在になりそうだし、こうまで
世話になっておいて、あいさつも無しで
素通りは出来ねぇしよ!」
突然の爆弾発言に、枢機卿以下部下たちは
顔色を変える。
「ん? どうした?
まさか提督ごときにゃ、お顔を拝見する事も
許されないってか?」
「そ、そういうわけではありませんが……
その、今大教皇様のお体の具合があまり
優れられず……」
カバーストーリーとして、メルビナ大教皇が
病気で伏せている事は国内では通達させており、
彼は思わず言い訳としてそれを口にするも、
「あ! そういえばそんな事を聞いたっけな。
これは是非ともお見舞いに行かなければ!
悪ぃな、気が利かなくてよ」
「え!? い、いえそれは……
きゅ、急な申し出なので……
面会を受けて頂けるかどうか」
レオゾ枢機卿は何とか一般論でやんわりと
断ろうとするも、
「いやいや、アンタだって宮仕えしているん
だからわかるだろ?
こんだけ世話になったってのに―――
その国の一番お偉いさんの見舞いにも
行かなかったって、イヴレット様に
知られた日にゃ……
どんなお叱りを受ける事やら」
「で、ですから具合がお悪いという事もあり……
それに、今から首都・イストまで往復すると
なりますと、時間が……」
「あぁん?
時間ならアンタが言っただろう、下手すりゃ
10日くらいかかるってな。
それだけありゃあ十分じゃねぇか?」
シルヴァ提督は相手の言った事も交えて、
枢機卿を追い詰めて行く。
ドラセナ連邦は海賊を出自とする国家だが―――
船で交易してきた歴史も長い。
ただの船乗りではなく、いわば商人としての顔も
兼ね備えており、タフな交渉人でもあった。
「とと、とにかく大教皇様に謁見するので
あれば、手続きもいろいろ必要となります。
まずは申請してみますので……
お待ちください」
「おう、待っているぜ」
シルヴァ提督が片手を挙げて振ると―――
レオゾ枢機卿以下数名は、逃げるように
その場を去っていった。
その後、港湾管理施設の一室に戻った
レオゾ枢機卿とその部下たちは、改めて
話し合いを行っていた。
「……どう思いますか?」
上役の言葉に、下の面々は顔を見合わせ、
「あれだけメルビナ大教皇様に会わせろ、
というところを見るに、彼らは今回の件、
関わっていないのでは」
「滞在が長引く事自体、拒否も抵抗もして
おりませんし―――
キッチリ滞在費なども要求しておりますから、
別目的で留まろうとする意志も無いのかと」
彼らの言葉に、レオゾ枢機卿は考え込み、
「……だとしますと、このまま彼らを港に
置いておくのは……
藪をつついて蛇を出す、という事に
なりかねませんね。
魔力探知機による監視を強化してください……
彼らは明日にでも帰らせ、沖合いに出るまで
妙な動きが無いか見張りを……」
ここに次の方針が決定し―――
部下たちは一斉にうなずいた。
「ん? 調査が終わったって?」
「は、はい。
ご不便をおかけして、申し訳ございません。
いつでも出航して頂いて結構です」
シルヴァ提督の船に出港許可が下りたのは、
次の日の昼で―――
レオゾ枢機卿の姿は無く、彼の部下数名が
船までやって来て、通達を伝える。
それを聞いた船乗りたちは、
「なんだなんだぁ、10日かかるって話じゃ
なかったのか?」
「あーあ、タダで飲み食い出来る生活も、
これで終わりかぁ」
と、今度は別方面の不満を口にする。
「ガタガタ抜かすんじゃねえ、やっと『仕事』に
戻れるんだからよ。
オイ、魔導拡声器で全員に伝えろ。
出航するってな」
「へーい」
乗組員の一人に指示を出すと、シルヴァ提督は
通達に来たモンステラ聖皇国の使者に向かって、
「メルビナ大教皇様にお見舞い出来なかったのは
残念だが―――
くれぐれもよろしくと伝えてくれ。
世話になった、ありがとうよ」
「いえ、こちらこそ……
警戒強化にご協力して頂き、感謝して
おります」
提督が頭を下げると、使者の面々も頭を下げる。
するとその瞬間、
『ピー!! ガガッ!! ピギーピピィ!!』
不快な爆音が響き渡り、使者たちは思わず
耳をふさぐ。
「何だ何だぁ!?」
「これ、魔導拡声器じゃないですかい!?」
「クソ!! アレまでぶっ壊れていたのかよ!」
その不快な大音響は十秒ほど続いた後、
すぐに収まり、
「ったく、最後の最後まで……
申し訳ねぇ、使者殿」
「い、いえ。
魔物に襲われたという話でしたし、魔導具が
故障してもおかしくはありません。
どうか良い航海を」
そこで使者は離れ―――
シルヴァ提督の船は帆を張り、沖に向かって
動き出した。
「シンさん!
シルヴァ提督からの合図です。
間もなく出航すると思われます」
魔導拡声器の大音響は、打ち合わせしていた
ものであり、
それを上空でキャッチした浮遊島は行動を
開始する。
「わかりました、こちらも動きます。
獣人族のみなさん、浮遊島を始動させて
ください」
「お任せを!!」
「行きますぜ!!」
シンの号令に、足漕ぎの動力機に
『見えない部隊』メンバーがまたがり……
海上の船と同期させながら、ゆっくりと
移動し始めた。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
本作品は毎週日曜日の16時更新です。
休日のお供にどうぞ。
みなさまのブックマーク・評価・感想を
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それが何よりのモチベーションアップとなります。
(;・∀・)カクヨムでも書いています。
こちらもよろしくお願いします。
【ゲーセンダンジョン繁盛記】【完結】
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【指】【完結】
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【かみつかれた】【完結】
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【ロートルの妖怪同伴世渡り記】【毎日更新中!】
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