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236・はじめての くーでたー

|д゜)そろそろクアートル大陸がキナ臭く

なってきます。



沼精霊(スワンプ・スピリット)様……ねえ」


公都『ヤマト』冒険者ギルド支部で―――

そこのトップである筋肉質のアラフィフの

ギルド長が、私の報告を聞いてつぶやく。


「当面の間は、土精霊(アース・スピリット)様と氷の精霊(アイス・スピリット)様で

 お世話をするそうなので……


 様子が落ち着いたら、多分児童預かり所にも

 顔を見せるようになるでしょう」


それを聞いた褐色肌の青年と、ライトグリーンの

ショートヘアの丸眼鏡の女性―――

時期ギルド長夫妻は、


「それはチビたちも喜びそうッスね」


「でも沼精霊様、ですか。

 そこかしこを沼地にされても困るんですけど」


ミリアさんの言葉に私はうなずき、


「ですから、精霊としての力の扱い方が

 わかるまで……

 あのお2人が預かるという事です。


 それに、お米って湿地帯で作る作物ですから、

 そのヘンちょっと期待しているというか」


「あー、確かあれだけ泥土で作っていたもんな。

 他の作物より大変そうだったし―――


 それにこれから人口も増えるわけだから、

 農地もどんどん開拓していかねーとな」


私の答えにジャンさんも同調する。


「そういや、俺は見て無いッスけど……

 泥精霊様ってどっちだったんスか?」


「?? どっち、とは?」


レイド君の質問に私が聞き返すと、


「いや、男の子と女の子、どっちだったの

 かなーって」


「ラッチや妻2人から聞きましたが、

 男の子だったそうで」


するとミリアさんが両腕を組んで、


「そういえば確か現場には、

 風精霊(ウィンド・スピリット)様もいたとか―――


 ……あの子はどっちなんでしょうね?」


それを聞いて全員が考え込み、


「ん~……

 未だに不明なんですよね」


「ダシュト侯爵家が嫡男(ちゃくなん)の嫁に、って言っている

 ヤツだろ?

 跡継ぎ問題もあるから、さっさと判明

 させないとマズいんだが」


「明らかに楽しんでいるッスからねえ、アレ」


そこで全員が微妙な表情となるも、

解決策が出るはずもなく―――


その後はしばらく、近況の雑談をして

私はギルド支部を後にした。




「レオゾ枢機卿(すうききょう)

 ここに呼ばれた理由はおわかりですか?」


「はて?

 すぐに来るようにと言われましたので、

 はせ参じたのですが……


 どういったご用件でしょうか。

 メルビナ大教皇様」


二十歳前後に見える、遠目で見れば女性にも

見えそうな中性的な顔立ちの青年と―――


レオゾ枢機卿と呼ばれた、同じくらいの

年齢の……

病的なまでに痩せた顔に、青白い肌の青年が

対峙(たいじ)する。


ここはモンステラ聖皇国、首都・イスト―――

その中央にある大聖堂の大広間で、他に複数の

重鎮(じゅうちん)も集められていた。


「ここしばらく、大ライラック国の使者と

 密かに会っているとの事ですが。


 それは(まこと)でしょうか?」


「密かに、とは人聞きの悪い。


 お考えの違いから、あまりお聞かせ出来る

 話でもありませんでしたので……

 独自にこちらで処理していただけですよ」


若い枢機卿はあっさりと認めながらも、

悪びれる事なく語る。


「とぼけおって」


「あくまでも(しら)を切る気か?」


他の要職に就いていると思われる面々は、

非難めいた言葉を彼に浴びせる。


「一体何の話でしょうか」


そう言うレオゾ枢機卿の前に、数枚の書面が

置かれ、


「亜人や人外を奴隷にし、兵士とする―――

 『隷属兵化(れいぞくへいか)計画』。


 大ライラック国と組み、あなた主導で

 進めている事は把握しております」


メルビナ大教皇は伏し目がちに彼に伝える。


「何の事でしょうか?


 亜人や人外を奴隷にし、兵士とする……

 ですか。

 そのような計画、私は知りませんねぇ」


「ふざけるな!!」


「ここまでの証拠を突き付けられて、

 なおも言い逃れするか、貴様!!」


他の枢機卿や要人たちは激高(げきこう)し、立ち上がって

怒鳴る者も出て来たが―――

レオゾ枢機卿はいたって涼し気な顔で返す。


「あくまでもそんな事はしていない、と

 言い張るのですか、枢機卿」


「ええ。

 まあ、何もしていないワケではありません

 けどね。


 ですが、物事は正確に把握してもらいたい

 ものですな」


そこで彼は片手を挙げると、


「っ!?」


「何だ、貴様らは!!」


それを合図として、大広間に軍服を着た男たちが

扉を開けて続々と乱入して来て、腕を構える。


「全員、側へ!!」


大教皇が命じると同時に、要人たちはこぞって

彼の周囲に集まる。


次の瞬間、軍人たちから攻撃魔法が発動され、


「……!」


大音響の後、煙が上がる。

しかしその煙幕が徐々(じょじょ)に薄れて来ると、


「な……」


「無傷だと!?」


メルビナ大教皇を中心に、半円形の透明な膜が

周囲を囲み―――

その中にいる人間や床、調度品は傷一つ付いて

おらず、


ただその範囲外は人間も物も惨憺(さんたん)たる有様で……


「く……!」


「おやおや、さすがに腐っても大教皇様だ。

 『聖なる壁(ホーリー・プロテクト)』はご健在のようで」


からかうように話すレオゾ枢機卿を、

メルビナ大教皇はにらみつける。


「やはりあなたが大ライラック国と組んで、

 あのような計画を―――」


「ああ、そうそう。

 一応誤解は解いておきましょう。


 亜人や人外を奴隷にし、兵士とする計画

 でしたっけ?

 半分正解、と言ったところでしょうか」


半透明な『聖なる壁』の直前まで近付くと、

彼は続けて、


「計画の正式名称は……


 『隷属および兵器化計画』でございます」


「な……っ」


驚いて息を飲むメルビナ大教皇を前に、

レオゾ枢機卿はため息をつき、


「なぁんで私が、あのような者どもをわざわざ

 兵士になんてしなければならないんですか?


 それより、武器にして道具という用途で

 使ってやった方が、あの者たちにしても

 幸福でしょう。


 しかし、調べるのならちゃんと調査して

 頂きたいものですよ」


そのあまりの言い様に、大教皇はわなわなと

肩を震わせ、


「そのような事、大精霊様が許すはずが

 ありません!!」


「ほぉ、ではその大精霊様とやらは?

 大教皇様がこのような事態になっても、

 どうして現れないのでしょうか。


 ご自分の身を心配した方がよっぽど

 よろしいかと。

 その『聖なる壁』とて、いつまでも

 継続出来るものではありますまい」


いつの間にか、大ライラック国の者であろう

軍人たちが、その周囲を囲み、


「取り敢えず、場所を移した方がよいのでは?


 それなりの待遇を用意いたしますので」


「く……」


悔しそうにつぶやきながらも、メルビナ大教皇は

軍人たちの誘導に従い、『聖なる壁』を発動

させたまま、他の要人メンバーと共に大広間を

後にした。


「さてと、じゃあ大ライラック国に伝えて

 くださいませんか?


 今後、モンステラ聖皇国の実権は―――

 このレオゾ枢機卿に移った、とね」


「了解しました!!」


枢機卿の言葉に軍人の一人が最敬礼し、

急いで大広間を出て行った。




「おやシンさん。

 どうかしました?」


「いやあ、ラッチを迎えに……

 どうせ児童預かり所(こちら)に来ているでしょ?」


数日後の夕方、私は児童預かり所を訪れていた。


メルとアルテリーゼは買い物に行ったので、

私はラッチを迎えにここへ―――

そしてもう一つ目的があった。


「すいませんが、これは差し入れで」


私が差し出すお土産を、薄い赤色の髪をした

五十代くらいの上品そうな婦人が受け取る。


「まぁまぁ、いつもすみません」


「それはそうとリベラ所長……

 あの、泥精霊様の様子は」


これがもう一つの目的だった。


公都まで連れて来て、パック夫妻に預けたのは

自分だが―――

完全に精霊化してしまった後は、研究・観察

対象としてずっとあの二人の屋敷に置いておく

わけにもいかなくなり、


また今後の事も考えて、早いうちから公都の

子供たちに慣れさせておこうと……

児童預かり所に任せる事にしたのである。


「あ! おとーさん!!」


ちょうどそこで聞こえたラッチの声に

振り返ると、


「おぅわ」


娘を見た私の第一声がそれだった。


女の子らしく着飾っていたはずの我が娘は、

どこで転んだと聞きたいくらいに、泥んこで

汚れまくっており、


その横には3・4才くらいの外見の、

可愛らしいカエル顔をした沼精霊様もいた。

そして後ろにはぞろぞろと泥だらけになった

同じ年くらいの子供たちも―――


「行きなさい、お風呂場へ」


リベラ先生の指示の下、みんなは

「「「はーい」」」と元気良く答え、

言われた場所へ向かい……

所長もまたそれに続き、


「あ、応接室で少々お待ちくださいね」


そう言うと、私一人がその場に残された。




「お待たせしました」


「おとーさん、お待たせー!!」


待機していた室内に、リベラ所長とラッチ、

そして泥精霊様も入って来た。


「し、失礼します」


「疲れたなのー」


さらに、グリーンの髪にエメラルドの瞳をした

少年と―――

透明のような真っ白い長髪の少女……

土精霊(アース・スピリット)様と氷の精霊(アイス・スピリット)様も

同行していて、


「えーと、何があったんですか?」


そこで私は、彼ら一同から説明を受ける

事となった。




「はあ、泥精霊様が」


「その性質からか、泥遊びが一番大好きな

 ようでして……

 他の子供たちまで巻き込んでしまい、

 申し訳ありません!」


深々と土精霊様が頭を下げ、


「やっぱり、精霊化する前の影響なんで

 しょうか?」


「んー、でも精霊化前の記憶はほとんど

 無いっぽいのー。


 元いた場所とかも忘れているっぽいしー」


次の問いには氷精霊様が答える。


「いーなー、精霊様同士だと言葉わかるんだー」


「まあ人間でも、これくらいの子供は

 まだうまくしゃべる事が出来ませんから」


ラッチと所長の話によると、どうも意思疎通

出来るのは精霊様同士だけっぽい。


そして泥精霊様はというと、出されたお菓子を

口いっぱいに頬張り、


「健康は大丈夫なんですね?」


「は、はい。

 完全に精霊化もしましたし、特に異常とかは

 見当たりません」


「元気いっぱいで困るの、もー」


精霊様二人が疲れ気味に話す。

何というか、手のかかる弟の面倒を見る、

お兄ちゃんお姉ちゃんという感じだ。


「でもねー、おとーさん。

 全然この子、精霊っぽい事はしないんだよー」


ラッチがそう言うと、リベラさんが

困ったように、


「あちこち泥だらけにされても困るだけですわ。

 まあここには幸い、お風呂もありますから

 いいですけど―――」


実際、自分自身びっくりしたものなあ。

よくあそこまで泥だらけになるものだと

感心する。


ラッチこそ、かろうじて服や手、顔とかに

泥が目立つ程度だったけど……

土精霊様を始め、他の子供たちは泥人形かと

思うほど汚れていた


そして彼らをあっという間に綺麗にした、

所長の手並みには尊敬の念すら覚える。


「まあ、精霊としての力の使い方は……

 ボクたちがおいおい教えていきますので」


「でもあちこちを泥だらけにして、

 何か使い道あるのー?」


土精霊様の後の氷精霊様の質問に、


「今、お米を作っているでしょう。

 基本泥土や湿地で作っていますからね、アレ。


 それを手伝ってもらえたらなあ、って。

 一回作ってもらえれば、後は継続して

 使えますので」


「ああ、確かにお米はそうでしたね。


 他の作物よりはいろいろと手間だと聞いて

 おりますけど―――

 もう公都の主食の1つになっていますし」


「あ~、何か聞いてたらお米食べたく

 なってきた。


 おとーさん、夕飯はどんぶりモノにしてー!」


「お母さんたちの買い物次第かなあ」


こうして、しばらく雑談に興じた後……

私とラッチは自宅へと戻った。




「まったく、そんな事でメニューを

 決めるなんて」


「まあご飯ものであれば手間はかからん

 からのう。

 買ってきた食材が良かったわい」


セミロングの髪の狐っぽい細目の女性と、

長髪の欧州モデルのような目鼻立ちの同性―――

二人の妻が、私とラッチの話を聞きながら

苦笑する。


ちなみに肉系を買って来ていたので、

そのまま夕食はカツ丼になった。


「そういえば2人とも、具合はどう?」


妊娠が発覚してから二ヶ月以上経過し……

妻たちのお腹はそれなりに目立つようになって

来ていて、


「今、3ヶ月から4ヶ月ってところだって」


「だから来年―――

 冬から春にかけての出産になるのう」


今が初夏くらいだから、それくらいになるのか。

しかし異世界に来て自分が人の親になるなんて、

考えもしなかった。


そう思っているとラッチが私の方を向いて、


「ねーねーおとーさん!

 おとーさんはどっちがいい?」


「いや、健康で生まれて来てくれれば

 もうそれで……

 男の子でも女の子でも」


「ボク、絶対弟がいいなー!

 あ、でも弟と妹、両方がいいかも!」


それを見たメルとアルテリーゼは

困ったように笑い、


「そういえばラッチちゃん。

 弟といえば、ヘンリー様とダナン様が

 いるけど」


「どっちにするのじゃ?」


ヘンリー様はサイリック大公家の跡継ぎで、

ダナン様はユラン国の王子様。


未来の旦那様―――という事だろう。

私がハラハラしながら聞いていると、


「ん? どっちもじゃダメなの?」


その答えに私は思わず口の中の物を吹き出す。


「い、いやどっちもって、ラッチ」


「だっておとーさんも、おかーさん2人

 いるじゃん」


「そ、それとこれとは話が……」


私は思わず妻二人に助けを求めるように

視線を送ると、


「おーおー、いいじゃん。

 2人とも自分のモノにして逆ハーレム

 したれ!」


「我もシンが2人目の伴侶だしのう。

 いざという事もあるからキープして

 おくがよい」


「ええぇえええぇええええええええええぇえ」


そこからしばらくプチ家族会議となり―――

私は改めて、この世界の貞操観念(ていそうかんねん)を思い知った。




「どうしたんですか?

 急なお呼び出し……

 それに、わざわざ移動手段として『ゲート』を

 指定してまでの事とは」


プチ家族会議という名の修羅場があった数日後、

私はメルとアルテリーゼ、ラッチと共に―――

王都・フォルロワの冒険者ギルド本部へとやって

来ていた。


「まあ、呼んでおいて何だが……

 あともう2人来る。

 それまでちょっと待っていてくれ」


白髪の混じったグレーの短髪を持つ、

ギルド本部長の後方には―――

いつも通りの二人、金髪を腰まで伸ばした童顔の

女性と、同性の眼鏡をかけたミドルショートの

黒髪の……

サシャさんとジェレミエルさんが控え、


「緊急事態です」


「同盟諸国にも関わる事なので、今各国と

 連絡を取り合っているのですが」


二人の言葉に、家族で顔を見合わせる。

真剣な表情だがラッチをしっかりとその間に

置いて―――


「もしかして……

 大ライラック国かモンステラ聖皇国が、

 宣戦布告を?」


「いや、そこまでの事態じゃねぇ。

 ただ今後の動きによっちゃ、それを覚悟

 しなければならん」


私の問いにライさんが答えるのと同時に、

室内にノックの音が響き、


「待たせた」


「し、失礼いたします」


そこに入って来たのは、身分の高そうな

ブロンドの短髪の青年と―――

パープルの長髪の前髪を眉毛の上で揃えた

痩身(そうしん)の女性……


ラーシュ・ウィンベル陛下とティエラ王女様で

あった。


「国王陛下まで!?」


「何があったのだ?」


さすがにメルとアルテリーゼも驚き、


「それは、わたくしの口から説明させて

 頂きたいと思います」


王女様がライさんの隣りに、陛下はその対面に

座って―――

私たちは対角線上の席で話はスタートした。




「モンステラ聖皇国で政変が?」


「はい。

 メルビナ大教皇様が軟禁されたとの話が、

 ドラセナ連邦を通して入って来ました。


 難を逃れた者が連邦まで落ち延び、

 救援を求めているとの事で……」


「それを知ったティエラ王女殿が、至急

 『ゲート』を使って王国まで来られたのだ」


王女様と陛下が状況を確認するように話す。

どうも聖皇国とやらで、クーデターがあった

ようだ。


「んじゃ、依頼はその大教皇様とやらの

 救出?」


メルの質問に、王族である三人はこぞって

視線を下に向ける。


やがてライさんが苦々しい表情で口を開き、


「どうもその政変のバックにゃ―――

 大ライラック国が一枚()んでいるようだ。


 そしてウィンベル王国とその国は同盟関係じゃ

 ねぇが……

 かと言って明確に敵対しているわけでもない。


 モンステラ聖皇国も同様だ」


「つまり、下手にこの件に介入すると……

 この二ヶ国に口実を与えかねないのだ。


 それで同盟諸国と緊急会談を魔力通話機で

 行ったのだが、


 どの国も腰が重かった。

 唯一、魔王・マギア様だけは救出に賛同の意を

 示してくれたものの―――

 各国の足並みを乱すわけにはいかないとの

 事でな」


ラーシュ陛下も疲れたように語る。


それはそうだろう。

自国が明確に攻撃を受けたわけでも無し……

最悪、戦争のきっかけにすらなりかねない案件に

好んで手を出そうとする国は無い。


「おとーさんに依頼は出せないって事?」


ラッチがきょとんと首を傾げるが、


「その依頼を出した者―――

 そいつの所属する国はどこだ?

 という事になりますから」


「引き受けるにしろ、今度は引き受けた冒険者が

 所属する国に目が向きます。


 無関係、とはいかないでしょう」


サシャさんとジェレミエルさんが、無表情で

ラッチの疑問に答える。


「だからもし救出するのであれば……


 誰にも見つからず痕跡(こんせき)を残さず、

 密かに侵入し、救い出し、脱出する。


 そういう『奇跡』が必要ってワケだ」


ため息のように声を絞り出すライさんに、


「『あれ』は使えませんか?」


『あれ』、とは―――

創設されたばかりの『見えない部隊』の事だ。


家族にすら秘密にしている機密事項なので、

(メルとアルテリーゼは知っているが、

ラッチにはまだ言っていない)

詳しくは言えないが、それを察した本部長は

首を左右に振り、


「あちらさんもバカじゃあるまい。

 大教皇を拘束した以上、警備は強化している

 はずだ。


 空も、地上も、海も……

 特に国境付近は厳重にしているだろう。


 どこから来て、どの方面に逃げたかくらいは

 すぐ把握する。

 仮に潜入出来ても脱出するのは困難だ。


 それこそ、天に上るか地に潜るかくらい

 しないと」


つまり、国境を越えた場合は確実に気付かれる。

それがうまくいっても、大教皇様を連れての

脱出は困難という事か。


「そして仮に救出・脱出に成功したとしても、

 そこに第三国の関わりがあったと知られたら

 意味が無い。


 同盟諸国の同意が得られない以上―――

 我が国だけがうかつに動く事は出来ない」


ライオネル様に続き、ラーシュ陛下も沈痛な

面持ちで語る。


「……現状、我が国の魔導具で魔力の接近って

 どのくらいわかりますか?

 例えば高度とか」


不意の質問だったのか、王族メンバーは

少し間を空けて、


「広範囲索敵なら高度関係無く反応するはずだ。

 地上を確認して何もいないなら次は空、

 という感じで視認となる」


「そうですね。

 我が国でも魔導具の魔力探知はあくまでも

 接近を感知するのみで―――

 後は範囲索敵(サーチ)持ちが出動する、という形です」


ライさんとティエラ王女様の説明に私は

トントン、とテーブルの上を指で叩き、


「例えば、こんなふうに二重で異なる高度差で

 接近して来た場合、どんな感じになるで

 しょうか?」


片方の手をテーブルの上に置き、そして

もう片方の手をやや上の方で平行に浮かせる。


「それは……」


「多分、同じ点として表示されるんじゃねぇか?

 同じ位置で接近しているみたいに」


ティエラ様の後に、前国王の兄が答える。


「シン、何か考えついたの?」


「もったいぶらずに、早く教えるのじゃ!」


妻二人が先を促すが、


「ちょっと難しい話になりますので……

 サシャさん、ジェレミエルさん。

 向こうでラッチの面倒を見てもらえますか?」


それとなくラッチの退席を二人に頼み、


「わかりました。

 じゃあラッチちゃん、こちらへ~♪」


「ここから先は大人の話し合いになるから」


ラッチは『えー!』と不満顔だったが、

彼女たちがなだめながら連れて行き、


そして扉が閉まるのと同時に私はテーブルの

上に半身を乗り出すようにして、


「浮遊島を使います。それに船も。

 出来ればドラセナ連邦の協力があれば……


 それと浮遊島の動力である魔導具を手動方式に

 したものを。


 『見えない部隊』に高度からある程度

 魔力無しで飛び降りる訓練も―――

 可能であれば、途中まで自由落下させて

 空中で魔力発動、着地後に魔力を消させる

 などの……


 それと、新規の道具開発も同時に―――」


私の説明にメルとアルテリーゼ、ラーシュ陛下、

ライさん、ティエラ王女様が聞き入った。




( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] (*ゝω・*)つ★★★★★ 益々、キナ臭くなってきましたね。 如何に穏便に収束されるか今後の展開を楽しみにしております。
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] おーおー、空挺もさせますか。それもHALO(高高度降下低高度開傘)とは一気に侵入するようで。 それなら近隣の国の軍が国境近くで演習をして陽動役をするのも効果的…
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