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232・はじめての きのこ

|д゜)雨を渇望する昔のお百姓さんの

気持ちを理解(涼しくなるから)




「やっと帰って来たか!」


「無事だったのか!」


ウィンベル王国東の海から、子船で沖へ

向かい―――

母船となる大型の帆船に戻った男たちは、

仲間たちから心配そうに声をかけられる。


彼らは大ライラック国のスパイたちで……

シンたちに捕獲された後、ラーシュ陛下の

計らいで公都『ヤマト』を監視付きではるが

観光し、


その後解放され、同じく諜報活動についている

仲間たちと合流した。


「つもる話はあるが―――

 まず隊長に報告させてくれ」


「ああ、それにしてもよく帰った。

 捕まったんじゃないかと心配したんだぞ」


「捕まっていたよ」


「……は?」


その答えに、周囲にいた男たちは顔を見合わせ、

彼らはそのまま船内にいる、隊長と呼んだ男の

元へ向かった。




「ウィンベル王国のラーシュ陛下に

 拝謁(はいえつ)しただと?」


戻った八名の報告を受け、彼らの『隊長』は

その想定外の答えに聞き返す。


「はい。真にこの国の事を知りたければ―――

 公都『ヤマト』へ行け、と」


「我々が王都で調べ上げた事がバカバカしく

 なるくらいの、情報と実物を入手する事が

 出来ました。


 持ってきた物は全て購入したものです」


そこには、蒸留に必要な実験器具の他、

各種の素材、そして現物と共に作り方や

運用方法まで書いたマニュアルもあり、


「これらが普通に売っていた、というのか?」


「はい。ただ……

 発酵や魔力通信機に使う糸などは、

 魔族や他種族に頼るものも多く、


 我が大ライラック国では、再現不可能なものが

 あると思われます」


指揮官クラスの男は報告を聞きながら、

彼らが持ち帰った品物を一つ一つ手に取り、


「没収された物は?」


「ありません。


 調べ上げた書類、メモ1つにいたるまで―――

 不具合を起こした自決用の魔道具までも」


その言葉に、彼は指摘された魔道具を手に

持ってみるが、


「……なるほど。

 ほとんど魔力を感じないし、ウンともスンとも

 いわん。


 全部が全部こうなったのか。

 理由はわかるか?」


隊長の問いに誰もが視線を落とすが、ただ

一人だけが頭を上げ、


「『万能冒険者』が現場におりました。


 すさまじい『抵抗魔法(レジスト)』の使い手であり、

 そのせいで、とは思うのですが」


「だがいつまで経っても『抵抗魔法』が解けん。


 そんな魔法、存在するのか?」


「だが現にそうなっている」


「効果が恒久(こうきゅう)に続くなど―――」


そこで彼らに議論が巻き起こるが、


「事実……だ」


隊長の一言で現場は静まり返る。


「現にこうして『抵抗魔法』で爆発しなかった

 魔道具が目の前にある。


 ちょうどいい研究対象だ。

 これも持ち帰るぞ」


「信じて頂けるのですか?」


一人が疑問形で返すが、


「おかしな事を。

 そもそも我々は情報を得るだけ。


 見て聞いた事を報告するのみだ。

 そこから先は上の仕事よ。


 それと―――」


彼は八名の顔をそれぞれ見回って、


「自決しようとしたのだろうが、こうして

 生き延びて帰って来たのだ。


 ならばお前たちがやる事は……

 一度大ライラック国まで戻り、自分たちの

 口から情報を伝える事。


 わかったらしばらく休め。

 ここから先はどうせ海の上だ」


「は……っ」


「はは……っ!!」


その言葉に彼らは全員頭を下げる。


「しかし、この釣り竿とかいうものか?

 これで魚を捕まえられると―――


 海でも出来るのか?」


「確か海釣り用のものもあったはず」


「1日だけですが、経験してきました」


すると船内の部屋にノックの音がして、


「あー、食事の用意が出来ましたが……


 『お土産』を使いましたけど、

 アレ、いいんですかい?」


「ん? 何だ?」


料理人とは言い難い、恐らくただの

食事番らしき人物が入って来ると、

彼は頭をかきながら、


「いや、凍らせた食材を頂きましてね。


 ただ温めるだけでいいってんで、

 実際に火で少しちょっと焼いてみたら、

 それだけですごくいい匂いが」


「ああ、それはハンバーグというヤツだな。

 すでに調理済みのものを凍らせただけだから、

 それでいいんだ」


「ケチャップを付けると数段美味くなる。

 調味料も用意してくれ」


すでに王都・公都で食事を経験した彼らは、

慣れた様子で注文をつける。


「ずいぶんと食道楽になったようだな。

 いくら使った?」


隊長の言葉に彼らは苦笑を浮かべ、


「それは認めますが、道楽と言える

 ほどかどうか」


「貴族の食事はわかりませんが―――

 普通に平民が、今日は何を食べるか

 迷っていましたからね。


 食うか食わないかで迷っているんじゃ

 ありません。

 『何を食べるのか』、その選択肢が

 多いんですよ」


彼はその説明に首を傾げる。


大人になれば魔力と引き換えに生命維持は

可能なこの世界……

当然、大ライラック国も例外ではなく、


ましてや庶民が―――

食事を『楽しむ』事など、考えられなかった

からだ。


「隊長。例えば卵ですが……

 どうもあちらの卵は魔物の物を一般的に

 使うようなんです。


 その卵が、子供の小遣い程度で買える、

 と言えばわかりますか?」


「何だと?」


この世界、各国共通で卵は貴重品である。

栄養価が高く、薬の代用品として使えるほどの

食品として、経験として理解しているのだ。


「『プルラン』という魔物鳥を使って、

 大量生産しているとの事です。


 さらにその魔物鳥も売っておりました。

 当然、購入してあります」


「売っている、という事は……

 別に隠すつもりも無いという事か。


 底が知れない国よな」


「はい。

 そういえばワイバーンに乗った時に見た、

 異常に長い陸橋も―――」


そこで彼は制すように手を挙げ、


「取り敢えず話の続きは食べながらにしよう。

 この匂い、ガマン出来ん」


そうして彼らは船室から出て……

食事の用意されている部屋へと向かった。




「……というわけで、依頼は無事終わりました」


浮遊島の護衛で、『魔力溜まり』を無効化した

私は、家族と一緒に冒険者ギルド支部へと

報告に来ていた。


「まあちょっとしたトラブルはあったけど」


「そこはシンが何とかしたでのう」


東洋風と欧州風の顔立ちの妻二人が続き、


「結局はおとーさんが解決しましたっ!」


ショートの黒髪に、燃えるような赤い瞳をした

娘が(しめ)る。


「まあ、ご苦労だった」


白髪交じりのアラフィフのギルド長が、

年齢に似つかわしくない筋肉の腕で、

書類に何かしら書き込む。


次いで次期ギルド長の黒髪・褐色肌の青年と、

その妻である丸眼鏡をしたタヌキ顔の女性が、


「そういえば『鉄道』はもう見たッスか?」


「来週には、王都との路線が結ばれる

 そうですよ」


うわ、もうそんなに進んでいたのか。


「ドーン伯爵領経由の路線も同時進行で

 進めているからか、結構遅かったがな」


ジャンさんの言葉に、思わず片方の肩が

ずり落ちる。


そういえば公都を新たに囲む石壁も、

あっという間に完成したし―――

やはり魔法というアドバンテージが、

あると無いとでは全然違う。


それプラス、ドラゴンやワイバーンという

重機代わりもいるんだものな。


「その開通式にはお前さんも当然出席するん

 だからな。

 体は空けておけよ」


ジャンさんの言葉に私はうなずき、


「しかし、王都と公都がたった1日で、

 行ったり来たり出来るようになるッスか」


「少し前まで考えられない事ですね……

 いえ、ワイバーンやアルテリーゼさんの

 『乗客箱』もありましたけど―――


 陸路を短時間で結ぶ交通用の魔道具って、

 多分我が国が初でしょう」


レイド君とミリアさんが、夫婦そろって

感心しながら語る。


「まあ動力は魔法じゃなく、獣人族の

 脚力にかかっているんだけどね」


「お披露目の日を楽しみに待っていようぞ」


「ボクも乗っていいのかなー?」


家族もそれぞれ話題に乗り、その後は雑談に

移行し、しばらく支部長室で過ごした。




「おとーさん、おやすみなさーい!」


「ああ、他の子たちにもよろしく」


浮遊島の依頼から数日後……

自宅の屋敷でラッチがおやすみのあいさつをして

廊下を駆けていく。


今は夜。だいたい9時くらいか。

今日は他の子供たちが寝泊まりに来ている。


こういった(もよお)しは、児童預かり所の子供たちが

独立する際、一人で寝泊まりする事に慣れる

ため、定期的に行っていたのだが、

(■49話

はじめての まうんてん・べあー参照)


その回数が結構増えて来ていた。

それというのも―――


「今日は30人くらいだっけ?」


「そうだな。

 相室だから十分足りるけど」


メルの質問に答えると、同じく妻である

アルテリーゼも話に入って来て、


「公都の方針であるし、それに我が家は

 人気が高いのじゃ。

 しばらくは仕方なかろうのう」


その言葉に私とメルもうなずく。


というのも、アルテリーゼの言う通り、

これは公都の方針が絡んでいる。


スラムの住人たちを引き入れた事で、人口は

一気に四倍に増え、当然子供たちもそれなりに

多くなった。


児童預かり所は一施設として独立していた

事もあり、拡張工事が行われ……

さらに元スラムの土地にもいくつか新規に

施設が作られ―――

収容そのものに問題は無かったのだが、


新たに来た元スラムの子供たちと、元々いた

子供たち……

それが新旧仲良く出来るのかが問題となり、


しかも元スラムの子供たちの方が数が多いのだ。

下手をすれば(いびつ)な力関係が生まれてしまう。


そこでドーン伯爵様、ジャンさん、

元公都長代理と現公都長代理、そこに私が加わり

議論が交わされ、


連帯感を高める事、郷土愛を強める事を目的に、


積極的に子供たち同士で宿泊、共同生活を

送らせる案が出て来たのである。


特に推奨(すいしょう)されているのは、他種族の家に

寝泊まりする事で、


亜人・人外専用居住区は元より、ドラゴンや

ワイバーンの巣に行く事も公都がバックアップ

している。


この公都に住んで長い住人なら、彼らに対する

嫌悪感や恐怖は無いが、


元スラムの人間である彼ら、『新顔』から

すれば―――

やはり圧倒的な能力差がある他種族は、

危険であり脅威の対象なのだ。


そうした事情から、子供のうちから他種族に

慣れ親しむよう、こちらで環境を整え、


そして子供たちが仲良くなれば……

大人たちの警戒心も薄れるだろう、

という方針で動いていた。


「特に(ウチ)は、人間の姿になったばかりの

 ラッチがいるからなあ。


 ドラゴンとはいえ少女の姿なら、親御(おやご)さんも

 預けやすいだろうし」


「自分より年下の子はみんな、弟か妹扱い

 しているからねえ」


「実際、ラッチは30才以上だから、人間の

 未成年はほぼ年下なのだが―――


 まあお姉さんとしての自覚が出てきたのは

 よい事よ」


家族で娘の成長をしみじみと実感する。


「じゃあ寝室に戻るか」


「そーいえば、寝室にラッチがいないって

 何か新鮮だね」


「いつも一緒に寝ておったからのう。


 しかしもうあれだけ成長したとなると、

 そろそろ個室で眠らせる事も考えねば」


そんなやり取りをしながら、私たちは

ラッチが去った方向とは正反対の方へ

足を向けた。




「シン殿!」


「申し訳ない、シン殿。

 急な呼び立てで」


翌日、私とメル、アルテリーゼは……

ワイバーンの巣へとやって来ていた。


出迎えたのは、真っ赤な長髪と瞳を持つ

ワイバーンの女王、ヒミコ様と、


その夫である―――

淡い紫色の短髪の青年、エンレイン王子様だ。


「子供たちが行方不明、とギルドでは

 説明されましたが、何がありました?」


そう、私たちは子供たちの宿泊訓練を

引き受けた次の日の昼、


ワイバーンの巣の拠点から、魔力通信機で

緊急連絡があったと聞かされ、


それが、遊びに出かけた人間と獣人族、

ワイバーンなどの子供たちの混合組が

行方不明という事で、


あらゆる手続きを省略して、アルテリーゼの

『乗客箱』で文字通り飛んで来たのである。

(ラッチは『ガッコウ』行き)


「正確には、一昨日出かけた子供たちが、

 まだ戻って来ていないのだ。


 今は我らも総出で捜索しているが」


「ワイバーンも今は子供たちに至るまで、

 ほとんどが人間の姿になれます。


 逆に言えば元の姿で飛び回れると、

 その行動範囲が余りにも広く……」


説明する女王と王子の夫婦の表情に、

その困難さがうかがえる。


そうか。子供とはいえワイバーンなら、

同じくらいの他種族の子供なら、二・三人は

乗せるか抱えるかで余裕で飛べるだろうし。


「行先に心当たりは?」


「ワイバーンの子供がいつも行っている

 遊び場とか―――」


妻二人の質問にヒミコ様は、


「そこを重点的に探させておる。


 ただ、人間の姿になられると厄介なのだ。

 小さくなれるから、高所にある岩穴とか

 洞窟に入られると目視が効かぬ」


「拠点の人間たちも捜索に協力してくれて

 おりますが……


 こちらは戦闘能力はさほどありませんし、

 ワイバーンたちも人間の姿になると、

 戦い方が制限されてしまって」


二人の言葉にこちらは、『あ~……』と

そろって声を上げる。


人間なら小さい場所も入っていけるが、

戦力としては当然ワイバーン以下だ。


そしてワイバーンも人間の姿になれば、

岩穴でも洞窟でも入っていけるが、

その姿では全力を出せない。


「それで思い余って―――

 シン殿に助けを求めた次第なのだが」


「あ!

 そ、そうえば人間か獣人の冒険者も

 呼べば良かったかも……!」


ヒミコ様の後にエンレイン様が、思い出した

かのように続くが、


「場所がある程度特定されているのなら、

 人海戦術もアリでしょうが―――


 ワイバーンの動ける範囲、それに高所も

 含めてとなると、効果は薄いかと。


 それにもし高所だとしたら、下手に人数を

 突っ込ませると二次災害の恐れがあります」


「そ、そうか……」


微妙な表情で彼はうつむく。


「レイド君は?

 範囲索敵(サーチ)持ちでしょ?」


「おお、そうであったな。

 こちらも慌てていたので失念していたが」


妻たちの言葉に、ワイバーンのトップ二人は

顔を見合わせ、


「魔力通信機を!

 彼なら、相棒の『ハヤテ』さんか

 『ノワキ』さんと一緒に、すぐ来てくれる

 はず!」


そして公都に再び連絡を入れる事になった。




『あ~……

 無理ッスね、それは。


 木々や茂みの中ならまだしも、岩穴とか

 洞窟の中を感知するのは』


公都にいるレイド君に問い合わせると、

申し訳なさそうに彼の答えが返って来た。


『入口付近にいるとかなら、まだ可能性は

 あるッスけど―――』


「わかりました。

 とにかくこちらへ急行してもらえますか?


 その遊び場以外に行っている事も考え

 られますので」


そこで通話を終え、私は同室の四人に

振り返る。


「だ、ダメか」


落胆するヒミコ様に私は、


「落ち着いてください。

 救出する側が冷静さを失っていては、

 助けられる者も助けられません。


 それにワイバーンの子供主導であれば、

 その遊び場で間違いないでしょう。


 とにかく、何でもいいから彼らの痕跡(こんせき)を」


と、そこまで言ったところで……

恐らくワイバーンの一人であろう、

人間の姿の青年が駆け込んで来て、


「ゆ、行方不明になっている子供たちの所持品と

 思われる物を発見!


 やはり遊び場の岩穴の入口付近に

 ありました!!」


その報告に全員が振り向く。


「よくやった!!」


「そ、それで子供たちは!?」


ヒミコ様とエンレイン様が立て続けに

問い質すと、


「そ、それが―――


 な、中に入った者が帰って来ないのです。

 それで急遽(きゅうきょ)報告を」


帰ってこない?


いや、確かに人間の姿になれば弱体化はするが、

それでも通常の人間よりは遥かに強いはず。

それが帰って来ないとなると……


すると、メルとアルテリーゼが私の両肩に

手を置いて、


「シンー」


「出番のようだぞ?」


その言葉に、報告に来た青年が、


「シン……?


 も、もしかして『万能冒険者』の

 シン殿ですか!?


 ぜひとも同道をお願いします!!」


彼に頭を下げられると、続けてワイバーンの

トップ二人も、


「すぐに向かってくれ、シン殿!」


「私からもお願いします!」


二人の頼みを受けて、私たちは現場へと急いだ。




「シン殿!!」


「『万能冒険者』が!?

 良かった、これでもう大丈夫……!」


到着した先はとある岩山の頂上付近で、

ワイバーンと思われる二十代くらいの男女が、

五人ほど集まっていた。


「すいません、中に入ったのは一人ですか?」


彼らに問うと首を左右に振り、


「止めるのも聞かず、さらに2人ほど

 入って行ってしまいました!」


「この中に、行方不明になった子供たちが

 いるのは間違い無いと思います」


そこで私は情報収集のために彼らに質問する。


「この辺りで、魔物が出るとかは?」


「聞いた事はありません」


「ビートルの類なら確かにおりますが、

 こんな高所を巣穴にはしないはずです。


 いるとしたらもっと下のはず。

 ここまで飛んで来ないとも限りませんが」


そういえばワイバーンの巣近くに拠点を

作った際、ルーメン・ビートルの群れに

襲われた事があったっけ。

(■102話 はじめての ごむ参照)


ただあの虫はワイバーンに取っては

オヤツ代わりと言っていた。

いくら人間の姿になったとはいえ、

勝てないほどなのだろうか?


「とにかく中を捜索します。


 あなたたちは救出した子供たちや、

 他のワイバーンをすぐに運べるよう

 待機していてください」


「わ、わかりました」


こうして私とメル、アルテリーゼは―――

三人で岩穴の中へ足を踏み入れた。




「真っ暗、というわけでも無いんだな」


「ところどころ裂け目があるから、

 それで日光が入ってくる感じだねー」


「まあそうでなければ、遊び場にはなって

 おらぬだろうて」


ゲームのダンジョンの中を歩くように、

私たちは奥へ進んでいく。


分岐した道もあったが……

そちらはすぐ行き止まりになっており、

特に迷う事なく歩き続ける。


すると―――


「あれは!?」


私の声に、メルとアルテリーゼもそちらへ

目をやる。


そこには、恐らく行方不明になったであろう

子供たちと、捜索に来たと思われる大人が

三名。


「大丈夫!?」


「すぐ行くぞ!」


と駆け出そうとする妻二人を、私は片手で

制するように止める。


「待ってくれ。様子がおかしい」


周辺に魔物らしい姿は見えない。


ここまでやって来た時も、それらしい気配は

感じなかった。


それに入口の広さなどを考えると、大型の

魔物は入れないだろう。


ビートルであったとしても、倒れている彼らに

外傷は見られず……

衰弱してはいるが生きているようだ。


こうなると、まず考えられるのは酸欠。

一酸化炭素とか空気が悪くなっている、もしくは

溜まっていて―――

というケースがあるが、


でも私たちはここまで無事にやって来ているし、

あちらとの段差はほとんど無い。


目を凝らして周囲を確認すると―――

洞窟の壁にキノコらしきものが生えていて、


「……? メル、アルテリーゼ。

 あれ、見えるか?」


「んー?」


「どれどれ」


そこで彼女たちにも確認してもらうと、


「え? 何あれ?」


「ものすごい魔力量……

 いや、違う!


 あのキノコ、魔力を吸っておるぞ!?」


妻たちの説明で私も理解する。


この洞窟の奥が、あの魔力を吸収するキノコの

群生地となっていて、


まず子供たちがダウン。


この世界の子供たちは魔力をうまく扱えない、

というだけであって魔力はある。


ただうまく循環・変換出来ないので、その分を

外部供給、食事に頼る必要があるのだ。


だから新生『アノーミア』連邦のマルズ国首都・

サルバルで発生した魔力収奪(しゅうだつ)装置による

テロ事件では、子供たちの方が生存率は

高かったのだが、

(■110話

はじめての まるずこく(おうと)参照)


そこでも子供たちは動けなくなっており―――

やはり一気に魔力を持っていかれるというのは、

何らかの異常をきたすものらしい。


そして大人は言うに及ばず……


「ど、どうする? シン」


「あっちから一人一人、こちらまで引きずって

 来てもらえれば」


メルとアルテリーゼが心配そうに話す。


「いや、子供たちはもう一昨日から何も食べて

 いないんだ。

 時間は少しでも惜しい。


 それにどの範囲まで安全かわからない。

 ここは―――」


そこで私だけその場に近付き、


「魔力を吸収する、魔力を吸い取る。

 そんなキノコや生き物など、

 ・・・・・

 あり得ない」


そうつぶやくと、


「おっ!」


「シン、やったぞ!」


妻たちもその無効化を確認したのだろう、

駆け寄って来る。


「じゃあ、私は何とか大人1人かつぐから」


と、近くのワイバーンであろう青年を起こそうと

すると、


「もー、無理しないで。

 シンは身体強化(ブースト)も使えないんだから」


「子供たち2人を頼む。

 後は我らが運ぼう」


そう二人に言われ―――

子供の一人を片方の肩に、もう一人は

片腕で腰回りを持ち上げるようにして

連れて行き、入口まで急いだ。




「シ、シン殿!!」


岩穴を出ると、入口付近で待機していた

ワイバーンであろう青年たちが集まって来たが、


「全員無事です。

 子供たちは少し衰弱していますので、ひとまず

 ここで介抱を」


それを聞いて、彼らはホッとした表情になる。


「それと誰か至急先行して、魔力通信機で公都に

 連絡してください。


 子供たちはみんな無事で、命に別状は無いと」


子供たちの親や保護者が待っているからな。

まずはそちらを安心させないと。


「わ、わかりました!」


そしてワイバーンの一体が飛び出すと、


「うぅ~ん……」


「ここは……?」


そこで子供たちが気が付いたようで、


「あ、シン。目が覚めたようだよー」


「取り敢えず水からだな?」


まず彼らに水を飲ませ、そして遭難者救助用に

持って来たココアや豆乳、コーンスープなどを

飲ませる事にした。




( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

本作品は毎週日曜日の16時更新です。

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― 新着の感想 ―
[一言] (*ゝω・*)つ★★★★★  人力鉄道は下手な内燃機関よりーエネルギー効率が良さそうです。 特にこの世界、魔力があるからなおさらですね。
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] 雨で思い出しました。 宮沢賢治の「雨にも負けず」でしたか。 日照りの夏にはオロオロし…ってところ。 ラジオで言っていましたけど 「宮沢賢治は東北の出身だから「…
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