231・はじめての くんれん(ふゆうとう)
|д゜)まだ35度が続くのか(絶望)
「ん!? 何だい、この人たちは。
見た事無い顔だねぇ」
髪を後ろで束ねた女性が、入って来た
複数のお客さんを見るなり声をかけ、
「ああ、外国の商人さんたちだ。
商売のタネになる物を見たいってんで、
護衛兼案内をしている。
王都の本部ギルドからの依頼っつーんで、
俺が出る事になっちまった」
アラフィフの筋肉質のギルド長が、
頭をかきながら答える。
宿屋『クラン』に現れたのは―――
大ライラック国のスパイ八人と、それを
率いるジャンドゥだった。
『真にこの国の事を知りたければ、王都ではなく
公都『ヤマト』へ行くべきだった』
『百聞は一見に如かず、だ。
魔力封じの腕輪を外してやる事は出来ないが、
公都『ヤマト』で一日過ごしてくるがよい』
ラーシュ・ウィンベル陛下からそう言われた
彼らは……
公都『ヤマト』にワイバーンで移送され、
ギルド支部長というお目付け役と一緒では
あるが、観光をしていたのである。
「へー、そうなのかい。
しかしあんた直々にそんな依頼を受けるって、
珍しいねえ」
「だから好きでやってんじゃねぇって。
ちょうどそういう仕事を任せられるような
メンバーが出払っていてな。
それより今日は何があるんだ?」
宿屋の女将さんであるクレアージュと、
ギルド支部長であるジャンドゥが話している
間に、『商人』たちは席に着く。
「日替わりは、海鮮丼と冷やしうどんの
セットだよ。
今日は少し暑いからねぇ」
「じゃ、それを9人前―――
それとビールをもらおうか」
「あいよ!
日替わりとビール、9人前ー!!」
大ライラック国のスパイたちは戸惑いながらも、
その喧噪に流されていった。
「昼はこんなものか。
お前さん方、夕方にゃワイバーンで
王都に戻らなきゃいけないんだろう?
他に何が見てぇ?」
昼食後、大通りを歩きながら支部長の男は、
『商人』たちに話しかける。
「……子供たちのいるところはカンベンして
もらいたい」
「ああ、特に獣人や魔狼の子供たち相手は
身がもたん」
「こっちは今、身体強化すら使えないんだぞ」
と、苦笑しながら彼らは抗議する。
実はスパイたちは朝イチで公都に移送された後、
依頼を受けたジャンドゥが、
『まずは児童預かり所へ行ってみるか』と
彼らを連行―――
新顔の『商人』たちは子供たちの遊び相手と
して、散々振り回され、
昼食時、宿屋『クラン』に入る頃には、すでに
ヘトヘトになっていたのである。
「じゃあ買い物でもしていくか?
『商人』さんたちよ。
ここで買えるものにご禁制品は無い。
生モノも冷凍してもらえるから、10日間は
普通に持つぜ」
それを聞いた彼らは考え込み、
「まったく、潜入していた自分たちが
これじゃバカみたいだぜ」
「器具は言うに及ばず……
レシピ本まであるというのだから」
「他国に持ち出され、真似されたらいったい
どうするつもりなのだ?」
情報を探る、という事を生業とし、
文字通り命がけでそれらを持ち帰る彼らに
取って、それは理解不能な事で、
「どんな物だって、最初から完全に独自って
モンは少ないだろう?
それにここにある物は、人間だけで
作った物ばかりじゃない。
ボーロは獣人族、酒や発酵食品とかは
魔族の協力があってこそだ。
ちなみに合同軍事演習で見せた、
水中・空中両用のゴーレムは―――
ドラゴンの研究者が作ったモンだぜ?」
それを聞いた大ライラック国のスパイたちは、
目を丸くして驚いた表情になる。
「あ、あのゴーレムはドラゴンが
作っただと!?」
「そんな重大な機密を我々にバラしても
いいのか!?」
「いや別に秘密じゃないし」
ジャンドゥの即答に、彼らはポカンと
口を開ける。
「まっ、お前さんたちもいろいろあるん
だろうが……
まずは情報を持ち帰りな。
後はお前らのお偉いさん方が勝手に判断
するだろうよ」
その言い様に毒気を抜かれた『商人』たちは
気を取り直し、
「じゃあ、ギルド長殿……
あんたのオススメは?」
「俺か? そうだなあ。
ヒマな時はよく子供たちと釣りに行くが」
スパイたちはその言葉に顔を見合わせ、
「ああ、確かよくしなる棒の魔導具を使って、
魚を獲るヤツだな」
「ランドルフ帝国で見た。
我が国でもチラホラと入ってきているが」
「それをやってみようか。
子供抜きでお願いするよ」
「何だよ、根性ねーな」
言い返すジャンドゥに全員が苦笑で返し、
その一団は公都内にある釣り場へと向かった。
「それで、その後は?」
「釣り竿の魔導具が気に入ったのか、
全員分購入していったぞ。
後は保存食を中心に、いくつか冷凍された
食品、そして酒を購入していった」
翌日、私たちが公都に帰って来てギルド支部に
報告しに行くと―――
例の大ライラック国のスパイたちを公都に移送、
そこでの人々の暮らしぶりを見せた上で、
昨日の夕方王都に送り返したらしい事を
ジャンさんから聞かされた。
「ちょうど私たちと入れ違いかな?」
「まあ国は国で考えがあるのだろう」
メルとアルテリーゼがギルド長の話を聞いて
うなずく。
ちなみにラッチは公都へ到着すると同時に、
児童預かり所→『ガッコウ』へそのまま
向かった。
「しかし、お前さんも大変だったらしいな」
「どちらかと言うと2人をなだめる方が……」
私とジャンさんのやり取りを、アジアンチックな
童顔の人間の方の妻、そして西洋風な顔立ちの
ドラゴンの方の妻が二人して笑顔で聞いている。
結局あの後―――
私が来るタイミングで動力源専用の魔導具の
実験を行った研究員たちに説教したのだが、
私を平民と侮ってか、外見で舐めたのか、
ヘラヘラと聞く耳を持たなかった。
だが途中からメルとアルテリーゼが殺気を
飛ばし始めた事で、土下座せんばかりに
謝る体制に移行。
最後の方は私が研究員たちをかばう形となり、
二度とこういう事はしないと約束させて、何とか
事態を収拾させたのである。
「そういえばレイド君とミリアさんはー?」
「2人とも姿が見えぬのう」
妻二人が疑問を口にすると、
「あー、ようやくカルベルクとエクセの2人が
戻るらしいんでな。
その前の買い物に付き合っているんだ」
「そうなんですか。
てっきりこのまま、出産までいるのかと」
するとジャンさんはプッと吹き出し、
「そういうわけにゃいかねえだろうよ。
現ギルド長と次期ギルド長だぞ?
次に来る時は身重になってからだな」
「エクセさん、妊娠したの私たちと
同じくらいって言ってたし……」
「ま、来年の春までには産まれるんじゃ
ないかのう」
メルとアルテリーゼの言葉で私も考える。
となると来年は新年早々、ベビーラッシュ
だなあ。
もともと公都は出産が増加傾向にあったと
聞いているけど、そこに自分が加わるとは
思ってもみなかったよ。
「それまでに向こうの大陸も落ち着いてくれれば
いいんですけどね……」
「そうだなあ。
最悪、戦争回避してくれりゃあそれで
いいんだが」
俺とギルド長が顔を見合わせると、妻たちも
うなずいた。
「それでは、お世話になりました」
パープルの長髪、その前髪を揃えた痩身の
女性が、『ゲート』を前であいさつする。
彼女はティエラ王女様だ。
今回、大ライラック国やモンステラ聖皇国の
動きを伝えに来てくれたのだが、
大ライラック国のスパイたちへの対応を
見届けた後、彼女も帰国する事になった。
王都フォルロワにも『ゲート』はあるのだが、
わざわざ公都『ヤマト』に来て、そこの
『ゲート』からランドルフ帝国へ戻るという。
そしてその理由は―――
「またずいぶんと荷物多いねー」
「初めて来た時より商人っぽいぞ……」
(■148話 はじめての いかりょうり参照)
メルとアルテリーゼの言う通り、ティエラ様は
大量の荷物を背負われていて、
「だってだって仕方ないじゃありませんか!
ここ、来る度にいろいろな物が新しく
売られているんですものー!!」
子供が駄々をこねるように王女様は叫ぶ。
実際、人間はネタを入手したらそれを元に
いろいろ作り出すもので―――
食事もかなりアレンジ料理が増えて来たし、
また鬼人族や天人族、白翼族との交流で
デザインも相当変化して来た。
「だよねー。
今、おとーさんだけじゃなくいろんな人が、
新商品販売しているよー」
ラッチも追認するように話に加わる。
ちなみに今回、ティエラ様が購入したお土産は、
その大半が肌着か下着。
何でも布素材と伸縮性の高いゴム素材を合わせた
ものが、女性陣に人気で、
特にベルト部分をゴム仕様にしているものは、
着替えの手間が省略され……
重宝されているとの事。
「い、一応あちらでの女性同士のつながりも
ありますし。
じ、人脈を持っておくのも―――」
彼女は苦しい言い訳をするが、一応それも
正論と言えば正論なので、それ以上は深く
突っ込む事はせず、
「そうですね。
あと、大ライラック国のスパイ連中の対応や、
その他の情報、浮遊島についても……
陛下及び軍部とも共有をお願いします」
幸いティエラ様は、帝国武力省将軍である
ロッソ・アルヘン様や、
魔戦団総司令であるメリッサ・ロンバート様とも
関係は良好なようなのと、
それに王族である彼女の口から、情報提供して
もらえるというのは有難い。
こうして、ティエラ王女様は『ゲート』で
ランドルフ帝国へと帰っていき―――
平穏な日常が訪れた。
「浮遊島に乗って欲しい?」
数日後、冒険者ギルドに呼ばれた私は、
指名依頼の説明を受けていた。
「ああ。例の『鉄道』を通すルートだが、
道中、巨大な湿原というか湿地帯に出くわした
らしい。
なるべく避けるルートを取るようだが、
その調査に念のため、『万能冒険者』である
お前さんに同行して欲しいとの事だ」
支部長室にはジャンさんの他に、短髪の黒髪に
褐色の肌を持つ次期ギルド長と……
その妻である、丸眼鏡をかけたタヌキ顔の
女性もいた。
しかし、ウィンベル王国最大の未開拓地域なら、
以前依頼を受けて偵察したはず。
(■220話 はじめての てつどう参照)
それがまた―――
しかも浮遊島を使ってというのは、どういう
依頼かと思っていると、
「浮遊島で低空飛行をして、その一帯を
確認したいって事らしいッスが」
「何せ広いのと、未開拓地域なので……
どんな事態になっても対応出来るようにと、
『新交通部門』の大臣・ニーフォウルさんの
直々の依頼です」
レイド君とミリアさんの説明にうなずく。
そういえば今はラミア族の長―――
ニーフォウルさんが『鉄道』関係の最高責任者
なんだっけ。
(■221話 はじめての だいじん参照)
「しかし、そのために浮遊島を使うなんて」
あれはつい最近導入されたもので、同盟国でも
上層部しか知らない―――
私の秘密である、『異世界人』に匹敵するほどの
トップシークレットなはず。
もちろん大臣であるニーフォウルさんなら
知っていてもおかしくはないが、
そうポンポン使えるシロモノではないだろう。
「多分だが、浮遊島を操縦する人員の訓練も
兼ねているんだろうよ。
湿地帯の偵察というのは建前で、
むしろそれがメインじゃねぇのか?」
ちょうど王都の研究機関での出来事があった
ばかりなので、少し微妙な気分になる。
まあこちらは、予め依頼を出してくれているだけ
マシだけど……
「あまりそう自分を頼るというか、
依存されると困るんですけどねー……」
私の行動方針の一つに、
『自分がいなくなったら出来なくなる事は
後世に残さない』
というのがある。
これは、いざ自分が死んだ時に機能しなく
なったり、解決出来なくなる事を残さない
ためだが―――
「まあそう言うな。
今のところあの浮遊島は2つしか無いし、
その訓練に世界最高の安全を保障してくれる
人材を乗せるのは当然っちゃ当然だ」
ギルド長が私をなだめるように話し、
「それに、あの2つの浮遊島の移送に際し、
おかしなモンスターを退けたと聞いたッス」
「実績からしても、シンさん以外に頼む人が
いないんですよ~」
レイド夫妻が拝むように私に手を合わせる。
「仕方無いですね。
それに『鉄道』が絡んでいるのなら、
私と無関係というわけでもありませんし」
そこで私は話題の方向性を変えて、
「そういえば、公都を外のスラム地帯と一体化
してから、だいぶ経ちますが……
今どんな状況でしょうか?」
するとミリアさんが泣きそうになりながら、
「聞いてくださいよシンさん~!!
今、『ヤマト』の冒険者ギルド支部の
登録人数、3千人以上ですよ~!?
4桁ってだけでもヤバいのに、
絶対事務処理能力超えてます~!!」
よほど溜まっていたのか、大声で叫ぶ
ミリアさん。
私はジャンさんとレイド君の方を向くと、
「一応、元スラム地帯にも詰め所をいくつか
作って、そこを2号支部3号支部というふうに
対応させているんだが」
「公都の人口、一気に4倍くらいになったッス
から―――
公都に滞在している貴族家の使用人も
駆り出して、何とか対応している状態ッス」
なかなかスゴい事態になっているようだなあ。
特にミリアさん、妊婦なんだからあまり精神的に
キツいのはちょっと……
そこで彼女はちょっと落ち着いて、
「……まあ、『ガッコウ』を卒業した人が
公都に30人ほど残っていたので、
その人たちで何とか対応出来ている
感じです。
正直、この人たちがいなかったと思うと
ゾッとしますよ」
卒業生なら、読み書き計算をきちんと覚えて
いるからなあ。教育って大事。
そこで私は少し考え、
「今、一番何とかして欲しい事って
ありますか?」
その質問にミリアさんはパアッと目を輝かせ、
「一番は人手ですけど―――
まあそれは無理だとわかっています。
書類記入も職員が基本やりますので、
それほど苦ではありません。
やっぱり問題は計算、でしょうか」
彼女の答えに、ギルド長がウンウンと
うなずいて、
「そうなんだよなあ。
いや、これでもひと昔前に比べりゃ、
各段に楽になっちゃいるんだ。
元々、ブロンズクラスの連中は日銭稼ぎも
いいところで、その都度依頼金を払う必要も
あったが、
今じゃほとんど1年契約で、定期的に
賃金をもらう方式を選んでいるからな」
「ただ、それだけ計算する額が増えて
いるんスよ。
個別にならともかく、ギルドとしては
総額を出さないとならないッスから。
予算やら支出やらで……」
続けての次期ギルド長の説明に、私は思案する。
組織として、そこは絶対把握しておかなければ
ならないからなあ。
税金や計画、方針も絡むだろうし。
「計算能力は個人によりますから―――
しかもそれをさらに集めて、総合計すると
なると、ミスも出ますし」
それはそうだよなあ。
しかもこちらの世界、電卓やPCといった
便利な文明の利器は無い。
こちらの世界でも作れるものと言ったら……
あ! あれなら出来るか?
確か自分も学んだ事があるので、再現は
可能なはずだ。
「ちょっと紙とペンを貸して頂けますか?
職人に作ってもらいたい物があります。
それを頼んでください。
その間に、私は依頼をこなして来ましょう」
そして私が紙に何やら書き出すと、彼らは
その絵にくぎ付けとなった。
「同行して頂き感謝します、シンさん」
例の、浮遊島を移送する時にもお世話になった、
研究者グループとそのリーダー格の男性が
頭を下げる。
今回は公都上空に留めておいた浮遊島を使い、
『鉄道』ルートに向かうという話で、
当然、制御を担当する白翼族の二人も
同行していた。
「しかし、こうして見ると本当に地上の家と
変わらないねー」
「まったくだ。
外の景色さえ見なければ、ここが空だと
いう事を忘れるわい」
「飛ぶっていうより、浮かんでいる感じ
だもんねー、ここ」
浮遊島の上に建設された建物の中に、
私たちはいた。
前回は簡易的な小屋みたいな造りだったのだが、
あれからまだそれほど日が経っていないにも
関わらず、
地上からの物資運搬がスムーズなためか、
ちょっとしたお屋敷くらいにグレードアップ
していたのである。
「そういえば―――
低空飛行で湿地帯を調査するという
依頼でしたが」
私が話を切り出すと、
「はい。ただ私どもの方で制御出来るのは、
前進・後退と左右移動のみですので、
上昇・下降に関しては、白翼族の彼女たちの
協力が必要となります」
それを聞いて、近くに待機している天使のような
姿の二人がうなずく。
地上や水上とは異なり、空中・水中では
三次元移動が必要となる。
空を飛ぶ種族ならそれを自然と行えるだろうが、
何せこっちは飛べないのだ。
ドラゴンやワイバーンに乗れると言っても、
それは彼ら任せである事が大きい。
ましてそれを複数で連携して動かすとなれば、
相当な訓練が必要となっただろう。
「間もなく目的地上空です!
下降、よろしくお願いします!」
「「心得ました!」」
研究員たちの号令を聞くと、彼女たちはその
制御に集中するためか、目を閉じた。
「目的高度まであと少し……!
停止! 停止してください!!」
例の魔導風力推進装置とやらを必死に操作
しながら、研究員たちが指示を出す。
そして恐らく高度五メートルもないところで、
浮遊島は止まった。
「すごいですね。
本当に停止して浮かんでいる」
「改めて見ると不思議な感覚だよねー」
私とメルが眼下の湿原を見下ろしながら、
感想を口にする。
「我も空中待機出来るが―――
多少は動いたりするものだからのう」
「そうだねー。
上下に動いたり、進んだりするもん」
アルテリーゼとラッチも話に加わる。
地球でいえば、気球が近いのだろうが……
あのような不安定さは無い。
空中でも水中でも、『その場に留まり続ける』
という動作は非常に難しいもので、
それが出来るヘリコプターは、飛行機よりも
ライセンス取得が困難だと聞く。
だから低空に効果、目的地上空で滞空を
成功している彼らはかなりのレベルだと
いう事になる。
「さて、どのように調査するか―――」
私がそう言うと、研究員のメンバーの一人は
申し訳なさそうに、
「目視確認で構いません。
シンさんには、万が一の時のための護衛で
来て頂いたようなものですので……」
まあ、元々避けるルートとも言っていたし、
ジャンさんの言うように操縦訓練の護衛が
メインだったのだろう。
「目視、と言ってもねー」
「広い湿原じゃのう、としか」
メルとアルテリーゼも周囲を見回していると、
「おとーさん、アレ何?」
「んっ?」
ラッチが私を呼び、そちらへ視線を向けると、
「な、何だアレは?」
「何かが噴出しているようだが……」
他の研究員たちもそれを見て驚く。
気泡のようなものがボコボコと、その場所から
吹き出していて―――
『ボコン!!』
「!?」
と、何か巨大な球体のような物が姿を現し、
『パン!!』
と破裂した。
「あ、あれはいったい……!?」
「魔力を感じますが」
白翼族の二人もそれを見て困惑する。
するとメルが私の裾を引っ張り、
「シン、あれ―――
もしかすると『魔力溜まり』かも知れない」
「えっ!?」
彼女の言葉に思わず声を上げてしまう。
「うむ、これはマズいかも知れん」
続けてアルテリーゼも深刻な表情となる。
これまでにも何度か見た現象だが、
どれもこれも悪影響を及ぼす類のものだった。
魔物や動物が狂暴化したり、正気を失ったりと、
『良くない物』である事は確かだ。
それが泥の底に溜まっていて、ガスのように
地上に噴き出て来ていたら……
「っ!! 上昇!! 上昇お願いします!!」
すぐに研究員たちが、魔導風力推進装置に
叫びながらダッシュで飛びつく。
「上昇!!」
「上昇させます……!」
白翼族の二人も緊急事態と判断したのか、
ゆっくりと浮遊島は動き始める。
だが―――
「シン、あれを!!」
「おとーさん!!」
周囲の湿原に目をやると、あちこちから
まるで私たちを待っていたかのように、
ボコボコと気泡が浮かんでくる。
となると、次に来るのは……!
『ボコン!!』
『ボコン!!』
『ボコン!!』
と、次々と巨大な球体が浮き上がり、
まずい、と思った私は、
「理性を保てなくなる、正気を失う、
狂暴になる……
・・・・・
そんな魔力などあり得ない」
と、急いで口にすると、
『プシュッ』
『ポンッ』
『シュ~……』
と、先ほどの破裂とは異なる、間の抜けた
音が聞こえ、
「は?」
「へ?」
「え? えっ?」
それを見ていた周囲はポカンと口を開けるが、
「おとーさんが何とかしたの!!
早く上昇して!」
「はっ、はいっ!!」
ラッチの号令で、浮遊島は上昇スピードを
上げていった。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
本作品は毎週日曜日の16時更新です。
休日のお供にどうぞ。
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それが何よりのモチベーションアップとなります。
(;・∀・)カクヨムでも書いています。
こちらもよろしくお願いします。
【ゲーセンダンジョン繁盛記】【完結】
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【かみつかれた】【完結】
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【ロートルの妖怪同伴世渡り記】【毎日更新中!】
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