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230・はじめての かいはつふぐあい

|д゜)1回半分ほどデータが巻き戻った

(放心、という言葉を身をもって理解)



「え、何だそりゃ。

 その程度で終わっちまったのか?」


大ライラック国のスパイたちを捕獲し、

いったん王都・フォルロワへ戻った私たちは、


彼らをギルド本部の一室に密かに拘束すると……

本部長であるライさんに報告していた。


「その程度って何だい!

 任務は達成したんだから、別にいいだろ?」


「そりゃあそうかも知れねえけどさ。

 もうちょっとこう盛り上がりってモンが」


不満顔のライさんに、この任務の責任者だった

ブロウさんもまた、不服そうで―――


「えーと……ライさんはどんな事を想定して

 いたんですか?」


私がたずねると、


「あー、だって魔力ゼロと魔力あり、両方いて

 混ざっているんだぜ?


 範囲索敵(サーチ)もいたはずだが、自分が感知した数と

 実際の数が合わねぇんだ。

 そりゃ混乱しまくるだろうよ。


 混戦になりゃなおさらだ。

 だから俺はそれを期待したんだが―――」


本当に残念そうに話す彼に妻二人も、


「まーまー。

 だってアレは緊急事態? みたいなモン

 だったし」


「自爆されたら元も子もなかろう?

 シンは良い判断をしたと思うぞ」


代表として他に、ジャーヴさんや獣人族、

ワイバーンの方も来ていたが、


「そういやブラウさんの未来予知(プレディクト)は?」


「自爆の事かい?

 もちろん見えたけど一瞬だったからね。

 多分、すぐにシンさんが無効化してくれた

 おかげだろうけど」


「とにかく敵味方、これといった被害は

 無かったんですから……

 初任務成功、としましょうや」


すると、誰からともなくあくびが出て、


「もう夜遅いですしね。

 話は明日からにしましょう」


「そうだな。

 ところで、大ライラック国の連中は?」


私の提案に本部長が聞き返すと―――

アジアンチックな顔立ちの妻と、対照的な

欧米風の顔立ちの妻が、


「ギルド本部の地下の一室に入れたよー」


「もちろん、魔力無効化の腕輪付きじゃ」


次いで他の『見えない部隊』の人たちも、


「ま、シンさんの『無効化』が効いているんで、

 意味は無いでしょうけど」


「一応、ちゃんとロック付きのヤツをはめて

 ありますんで……」


その説明にライさんも大きなあくびをして、


「ふわ~あぁ……

 そうだな、続きは明日にすっか。


 あ、それと―――

 お前ら、初任務ごくろうさん」


その言葉に、全員がそろって一礼する。


「じゃあ私たちも寝ますか。


 あ、もし小腹が空いたという人がいるなら、

 私が何か作っても」


「「「お願いします!!」」」


と、なぜか本部長までそろって頭を下げ、

ソーメンを作る事になった。




「おとーさん、昨日はどこ行ってたの?」


翌朝になって……

冒険者ギルド本部の食堂で朝食中、


中学生くらいの少女の姿になったラッチが、

ショートの黒髪を揺らしながら―――

昨夜いなかった事についてたずねてくる。


「ちょっとした依頼だよ。

 もう終わったけどね」


『見えない部隊』に関してはトップシークレット

なので、身内とはいえラッチにも伝えられない。


「そういえばラッチ、どこか行きたいところとか

 無いのー?」


「仕事は一段落したしのう。

 どこでも好きなところへ行けるぞ?」


すかさずメルとアルテリーゼがフォローに回る。


「どっか行くの? ラッチちゃん」


「それなら、先に行って欲しいところが

 あるんだけど……」


そこへ、腰までブロンドの髪を伸ばした童顔の

女性と―――

黒髪ミドルショートの眼鏡をかけた同性、

サシャさんとジェレミエルさんがやって来た。


「?? また何かあったんでしょうか」


私が聞き返すと、二人は首を横に振り、


「いえ、依頼とかじゃないんですけど」


「サイリック大公家から要望が届いて

 おりまして。


 人間化したラッチちゃんを一目見たいと、

 ヘンリー様が……」


あー、なるほど。

そういえば彼とは、去年の『はろうぃん』

以来か。


「ヘンリー君かー。

 あの子とっても可愛いんだよね~。

 会ってあげてもいいかな?」


イタズラっぽく笑うラッチに、


「おー、気になる?」


「年下じゃが、まあラッチからすればたいてい

 年下になるか」


異性を意識した話に妻たちが突入する。


「い、いやー?

 まだラッチは相手を決めるとか、そういう

 話は早いんじゃないかな?」


父親の立場からそう発言すると、


「でも相手は貴族様ですからねえ」


「下手をすると、生まれる前に相手が

 決まっている事も珍しくないので……」


と、ライさんの部下の女性二名が追い打ちを

かけてきて、


「ま、まあ合意であれば―――

 でもまだ結婚とか考える年でも」


「いやー、あっという間だよシン」


「子供の成長は早いからのう。

 特にラッチは、ドラゴンの姿と比較しても

 大人びておるし」


ニヤニヤしながらメルとアルテリーゼは、

さらに私を追い詰め、


「ラ、ラッチはお父さんをおいて結婚

 しないよな?」


「んっ? ガンガンするよ?」


その答えに私はテーブルの上に突っ伏し、


「うあー、ラッチちゃんなかなかエグい♪」


「でもこっちのラッチちゃんも好みかも♪」


サシャさんとジェレミエルさんが続き、


「あの『万能冒険者』も、娘にゃかなわないか」


「父親に取って、娘ってのは特別だからねえ」


「でも相手は大変だろうなー。

 何せ『万能冒険者』の娘だし」


周囲の野次馬も加わって、しばらくはラッチの

相手の話題で盛り上がった。




「お前たちか。

 我がウィンベル王国に来た訪問者とやらは」


冒険者ギルド本部、その地下にある一室……

そこへやたら身分の高そうな青年が来て、

『彼ら』と相対する。


一見してただの貴族ではない―――

そう感じた大ライラック国のスパイたちは、

礼儀として(ひざまず)く。


「報告によると、自爆・自決しようと

 していたとか。


 その忠誠心、なかなかのものよ」


「それをご理解してくださるのであれば、

 ぜひ、最期(さいご)まで忠誠を(つらぬ)かせて頂きたい。


 名は存じませぬが、それなりの要職に()いて

 おられるのでしょう」


彼らは改めて自決の道を切望するが、


「すまぬ。礼を失したか。


 余はラーシュ・ウィンベル。

 この国の国王を務めておる」


短いブロンドの、三十代くらいの青年を前に、

彼らは全員床に視線を落としさらに頭を下げる。


「こ、国王陛下……!?」


「そのようなお方が、なぜこんな場所に?

 いや、我々ごときと話を」


封建制が色濃く残るこの世界において、

身分差というものは絶対であり―――

潜在敵国にも関わらず、彼らはひれ伏す。


「構わぬ。余の方から訪ねて来たのだ。


 それより王としては、国外の評価というのが

 気になってな。


 お前たちから見て、この国はどう映った?」


急な質問という事もあったが、何より

いきなり国のトップと謁見(えっけん)するという事態に、

彼らは対応出来ず……


「いろいろと驚いた事であろう。


 だが、聞けばまだ王都に潜入したのみとか。

 それでこの国の事を全て知った気になられては

 かなわぬと思ってな」


王が何を言いたいのかさっぱり予測出来ず、

大ライラック国の者たちは戸惑うばかりで、


「そ、その―――


 我らとしましては、このまま処断して頂ければ

 有難いのですが」


やっとその中の一人が声を発し、希望を伝える。


「そんなに死にたいのであれば、国に帰ってから

 死ぬが良い。


 ただお前たちが調べた事は中途半端だ。

 真にこの国の事を知りたければ、王都ではなく

 公都『ヤマト』へ行くべきだった」


「公都『ヤマト』……?」


スパイの一人が聞き返すと、


「国の実態というものは―――

 意外と見えないものだ。


 その国の首都が栄えている反面、

 地方都市や町、村……

 そして平民の暮らしが犠牲になっている

 場合もある。


 それは真の繁栄とは呼べぬ」


彼らは黙ってその話を聞き続け、


「あらゆる層の幸福を考え、実現する事こそが

 国家の施政者(しせいしゃ)としての義務である。


 百聞(ひゃくぶん)は一見に()かず、だ。

 魔力封じの腕輪を外してやる事は出来ないが、

 公都『ヤマト』で一日過ごしてくるがよい。


 ワイバーンによる移動を許可しよう。

 それと商人の身分証もな」


それだけ言うと、ラーシュ陛下は去っていった。

後に残された大ライラック国のスパイたちは

顔を見合わせて、


「どういう事だ?」


「まあ、冥途の土産にゃ悪くは無いか―――」


「どうせ死んだも同然の身。

 それにどうも、見せたいものはその公都

 『ヤマト』とやらにあるっぽいしな」


彼らは達観した様子で状況を受け入れ……

すぐに公都『ヤマト』へ移送される運びと

なった。




「おお、シン殿!」


「お久しぶりです、サイリック前大公様」


冒険者ギルド本部まで迎えに来た馬車に乗って、

王城近くにある貴族街の一角……

大公家の屋敷へと到着した私たちは、


七十歳過ぎの、年齢の割にはしっかりした

老人の出迎えを受けた。


「万能冒険者殿、この度は招きを受けて頂き

 感謝を―――」


「……ってアラ?

 もしかしてその子がラッチちゃん!?」


ゴールドに近い黄色の短髪をした紳士、

サイリック大公家現当主、シュヴァン様と、


銀と金の中間色のような長髪を持つ、

大公夫人、マルテ様もおり、


「えっ!?

 えーと―――ラッチ、お(ねえ)、ちゃん?」


そして父親譲りの色の短髪の、7・8才くらいに

見える少年、ヘンリー様も娘を見て驚く。


「そーだよ! ヘンリーちゃん。

 ボク、お姉さんになりましたー!!」


そう言うとラッチは飛びつくように、

ヘンリー様を抱き寄せる。


「ラッチちゃんって、お姉ちゃんだったんだ?」


「あはは、年上はダメかなー?」


年上も何も、私と出会った時点で三十過ぎ

だったのだが。


「あら、ウチは大歓迎ですわよ!

 それくらいの年の差夫婦なら、いくらでも

 おりますし……」


そこで私やシュヴァン様、サイリック前大公様の

表情が一変する。


そうだ、確か以前も―――

ラッチをどうしてもヘンリー様の嫁に、という

話をマルテ様がして、何とかうやむやにしたん

だっけか。

(■134話

はじめての ちょうさいらい参照)


それの再燃を恐れ、一気に緊張が高まるが、


「だから言ったではないか。

 ドラゴンに強制など出来ぬと」


「そ、それに基本、両者の合意があれば

 特に親としては口出ししない方針でして」


私と前大公様がやんわりと『その話はするな』と

彼女を説得するが、


「えぇ~!?

 だって前は、性別がわからないから、って

 話だったでしょう?


 私はわかっていましたよ!

 ラッチちゃんは女の子だって……!

 それなら、もう婚約出来ない事は

 ございませんでしょう!?」


その言い訳をしたアルテリーゼが、

『あちゃー』という表情になるが、


「ヘンリーちゃん?

 ボクの事、好きなの?」


「えっ!? は、ははい!

 ラッチお姉ちゃんが……好きです!」


突然のラッチの質問に、少年は顔を真っ赤にして

答え、


「そっかー、じゃあ―――


 ヘンリーちゃんが『ガッコウ』を卒業して、

 その時までにヘンリーちゃんがカッコイイ

 男になっていたら……


 その時はお嫁さんにしてもらおうかなっ?」


それを聞いたヘンリー様は、ぐっ、と表情を

引き締め、


「……うん!

 絶対なるよ僕、カッコイイ男に!

 そしてお姉ちゃんをお嫁さんにするから!」


「うふふ、待っているよー♪」


そこで私はホッと胸をなでおろす。

うまい事、『子供の頃の約束』に落とし込んで

くれたと思い、


「(いやー、よくごまかしてくれた。

 これで少なくとも今すぐ、婚約とかそういう

 話にはならないだろうし―――)」


そう、小声で妻二人に語ると、


「(いやいや……

 アレ、完全に男を手玉に取るタイプでっせ)」


「(魔性(ましょう)の女になりそうじゃのう。

 我が娘ながら末恐(すえおそ)ろしいぞ)」


メルとアルテリーゼは微妙な表情で、同性である

娘の評価を下し―――


「(そ、そう……なのか?)」


父親と母親の評価が分かれ、微妙な空気で

サイリック大公家の接待を受ける事となった。




「ただいま戻りました」


「疲れたー」


「お腹ぺこぺこじゃあ」


「ボクもー」


一家4人で宿泊している冒険者ギルド本部に

戻って来たのは、夕方で―――


受付に顔を出し、ギルドの食堂へ向かおうかと

思っていたその時、


「シンさん!!」


「シンさん来ました!!」


と、受付がバタバタし始め……


「何かあったんですか?」


「いえ、見えたら至急向かって欲しいところが

 あるとかで……!」


どうやら緊急性の依頼らしい。

しかし妙だな?


もし緊急事態であれば、私たち一家が

サイリック大公家に行った事は知っている

はずだし、そちらに連絡が向かうはず。


という事はさほど差し迫った状況ではないと

いう事か?


「えぇ~……

 ご飯食べてからじゃダメ?」


「帰ってきたばかりなのにこれでは」


「そだよー。

 他の冒険者じゃダメなの?」


と、家族は当然の不満を口にする。

しかし受付にいる複数の女性は困惑顔で、


「んー……

 じゃあ、みんなは先に食べていてくれ。

 どうも私に向けての指名らしいし。


 あ、行く前にオニギリお願い出来るかな」


「は、はい! ただ今!!」


それを聞いた受付の女性職員の一人が

駆け出すが、


「ちょおーっと待ったぁ!!」


「我らにも同じヤツをくれい。

 夫がそう言っているのに、我らだけ待つ事など

 出来ぬわ」


「あ、出来ればお味噌汁もー」


と、メルとアルテリーゼ、ラッチも付き合って

くれる事になり、


1分もしない内に、オニギリとお味噌汁が

漬物付きで、人数分運ばれて来た。




「おお、シン。すまないな」


オニギリをみんなで頬張っていると、

グレーの短髪に白髪交じりの、ここの本部長が

やって来た。


「ライさん。緊急依頼って聞いてますけど」


「緊急は緊急なんだがな。

 別に今日明日どうこうなるって話でも

 ないらしい。


 だいたい、もし本当にヤバかったら

 サイリック大公家に早馬を飛ばしているよ」


それを聞いた家族は食べながら、


「ぶーぶー、何それー」


「戻って来たばかりですぐに向かえって、

 こっちは言われたのだぞ?」


「ポンポン呼び出さないで欲しいよー」


と、家族が不満を隠そうともせず口にする。


「いったい依頼主はどこなんです?」


お味噌汁をすすりながら、ライさんに質問を

続けると、


「王家直属の研究機関だ。


 とにかくシンが見えたら来て欲しいの

 一点張りでな。


 まあ確かにあそこは、いつ何があっても

 おかしくないところではあるんだが……」


私はお味噌汁を飲み干すと、お椀を置いて、


「あそこですか。

 いろいろ頼んでいる手前、無下には

 出来ませんね」


すると家族も一通り食べ終わったのか、

それぞれお椀を置いたり、手を()いたりして、


「じゃ、腹ごなしがてら行きましょうかあ!」


メルが気合いを入れるように声を上げると、


「悪いな。

 研究施設行きの馬車はすでに用意してある。

 それに乗ってすぐ行ってくれ」


本部長の言葉にアルテリーゼとラッチも続き、


「それはありがたいのう」


「じゃ、行ってくるねー!」


そして私たちは家族で、王家直属の研究機関へ

急行する事となった。




「シン殿!

 急にお呼び立てして申し訳ない」


施設に到着すると―――

()せた白髪の老人……リオレイさんが

出迎えてくれた。


ここの所長であり最高責任者―――

そして私が『境外の民』・別世界から来た

存在だと知っている、数少ない人間の一人だ。


「ホントだよ、もー」


そこでラッチが空気を読まずに、本音を

ストレートでぶつけ、


「ええと、この少女は」


「知り合いの子でしょうか?」


他にいた、複数の研究員らしき人たちが

質問して来て、


「ははは……

 あの、この子はラッチです。

 ドラゴンの子供の―――」


「そーだよ!!」


その説明に所長始め、研究員たちは目を丸くして

驚くが、


「それより、依頼内容は?」


「そ、それは見てもらった方が早いじゃろうな。

 ついて来てくだされ」


そう言うや彼は廊下を進んで行き……

私たちは所長を先頭に、施設の奥へと向かった。




「ここは……」


そこは研究室というより、頑丈(がんじょう)な石造りの

壁に囲まれた、倉庫のような部屋。


そして冷蔵庫のような長方形の魔導具が置かれ、


「あー、もしかしてこれが依頼?」


「魔力が暴走して()れ出ておる」


「それにスゴい魔力量……

 これ大丈夫なの?」


メルとアルテリーゼ、ラッチがそれぞれ

感想を口にする。


もっとも自分は魔力も無く、感じる事も

出来ないのでわからないのだが。


「これは何ですか?」


「動力源専用の魔導具じゃよ。


 最近、魔導具も広く普及し始めてな。

 高くても売れるようになって来た。


 同時に大型の物の開発も進めて来たのだが、

 魔石に貯め込む形式だと、魔石そのものが

 大きくなって来てのう。

 それだけ場所を取られてしまうのだ。


 それでシン殿が言っていた―――

 動力源を別に持つ、という方法で進めて

 いたのだよ」


リオレイさんの言う事に、周囲の研究者たちが

うなずく。


確かに、映像用の魔導具の大型化とか、

そういう方面でも私は頼んでいたしなあ。


となるとこれはさしずめ……

大容量の大型バッテリーの開発中に、不具合が

発生した、という事か。


そしてその場合はたいてい、破裂とか爆発―――


「……大丈夫なんですか、これ」


「恐らく、計算では3日以内に壊れる事が

 確定しております。


 ここに置いてあるのも、言ってみれば

 それに対する処置でして」


なるほど。一応いつ爆発してもいいように、

頑丈な倉庫にしまったというわけね。


「でもそれなら、何でシンを呼んだの?」


「そうじゃ。

 失敗したのなら、好きに処理すれば

 いいだけではないか」


妻たちが当然の疑問を口にする。


リオレイ所長は何か言い辛そうにしていたが、

やがて意を決したように口を開き、


「まず、シン殿に何とか爆発しないように

 してもらえれば―――

 壊さずに原因を詳細に調べられます。


 ですが、わし自身はシン殿を呼ぶ事に

 同意していなかったのですよ」


眉間にシワを寄せながら老人は語る。


「それは何でー?」


ラッチが無邪気に聞き返す。


「お恥ずかしい話ですが……

 ここは王家直属の施設。


 当然、選び抜かれた人員で構成され、

 実力もそうですが、気位(きぐらい)も同じくらい

 高い者もいて」


ウィンベル王国としてはトップオブトップの

研究機関だろうし。

それはわかるのだが―――


「それが、この依頼とどういう関係が?」


「それがですな、この開発はもっと後で行われる

 予定だったのですよ。


 ですがシン殿が王都に来たという情報を

 聞きつけ、それで強行したようなのです」


その答えに私は首を傾げるが、


「あー……つまり~?」


「何か起きてもシンを呼びつければ、

 大丈夫だろうと思って……?」


メルとアルテリーゼが微笑みながら話す。


ちょっとヤバいかも。

これ、二人ともガチ切れしている時の顔だ。


確かに自分も、この施設で巨大化した魔物を

何とかした事もあるし―――

(■210話

はじめての きょだいか(ちくさん)参照)


それで期待というか、この人がいれば

たいていの事は収めてくれると思われても

仕方が無いけど。


さらにプライドも高く、こっちは平民だし

身分的にいつでも呼びつけられると思っても

不思議は無い。


「それはちょっとねえ……


 とにかく、この魔導具を止めましょう。

 そして後でその方たちはお説教ですね」


そう言って私が魔導具へ歩み寄ると、


「さー、じゃあみんなはこちらー」


「我らの後ろに隠れてくれい。

 シンの事だし、万が一の事もあるまいが」


「リオレイさんも、ボクの後ろに!」


そして家族がうまく私から周囲の人を引き離して

くれると、それを確認した後、


「魔力を貯める、蓄積する―――

         ・・・・・

 そんな魔導具などあり得ない」


そう私がつぶやくと、


「お、おおっ!!」


「魔力暴走が止まったぞ!?」


「さ、さすがは『万能冒険者』……!」


家族の後ろから、恐る恐る研究員たちが

出て来て、安堵した声を上げる。


私はそちらの方へ振り返ると、


「さて、リオレイ所長。


 ……この動力源専用の魔導具を開発していた

 連中を、ちょーっとここへ呼び出して

 くれませんか?」


「う、うむ。わかった」


そしてリオレイさん他、研究員たちが

退室し―――


その後、問題の連中が連れて来られると、

私は小一時間ほど、説教タイムに入った。



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

本作品は毎週日曜日の16時更新です。

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― 新着の感想 ―
[一言] (*ゝω・*)つ★★★★★  オー!今回は内容が濃いですね~ そしてラッチちゃんが魔性の女の片鱗をっ!?
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] 身分がありますので平民から貴族以上に応じるときには 「お側の方まで申し上げます」 と言ってから問われた事に答える形を取っていたそうです。直接答える事は不敬に当…
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