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228・はじめての けむり

|д゜)空中空母構想というのがあってですね

(ミリタリーネタ好き)


ウィンベル王国公都『ヤマト』―――

その昼食時間に、ちょっとしたトラブルが

起きていた。


「オイ! 前にいる連中ジャマだ、どけ!!」


昼食を取りに行くのにみんなが並ぶ中―――

十三・四才の少年が怒鳴り声を上げる。


そこへラミア族の女性がやって来て、


「あなたね、入学時に何を聞いていたの?

 ここは身分関係無く、人であれ人外であれ

 誰でも平等に学ぶ場だと教えられたはずよ?」


自分より身長が上の、そして年上の女性に

たしなめられ、彼は一瞬ひるむが、


「ハッ! そんなのは建前だろう。

 俺は王都の貴族の長男だぞ?


 実際に俺に逆らって、ただで済むと思うのか?

 なあ?」


それでも少年は傲慢(ごうまん)な態度を崩さず……

周囲はそんな彼に眉をひそめるが、


「王都の貴族―――ですか」


「貴族なら、貴族らしい振る舞いをして

 もらいたいものですけど」


そこへ、並んでいた列の中から……

騒ぎを起こした少年と同じくらいの年齢の、

背中にまで伸びた純白に近い髪を持つ男の子と、


彼に続いて、ショートのブロンドの少女が

出て来た。


「あぁ? 何だてめぇらは?」


するとその少年少女はゆっくりと会釈し、


「いえ、同じ高貴な身分の者として、黙って

 いられなくて」


「貴族であれば、民の手本となり――――

 きちんと並んでください」


すると彼はチッ、と舌打ちして、


「だから手本を見せてやっているんだろうが。


 俺は平民や身分の下の人間に合わせるなんて

 ゴメンなんだよ。

 それが貴族ってものだろ?


 第一礼儀をどうこう言うのなら、

 まずは名乗ったらどうだ、あぁん?」


それを聞いた二人は微笑み、


「失礼いたしました。


 私はナイアータ・ウィンベルと申します」


「アタシは妻のファムと申します。

 以後お見知りおきを……」


深くお辞儀をする少年少女を見て、


「いい心掛けだ。

 では俺も名乗ろう。ブルーム子爵家の―――


 ……ウィンベル……?」


途中まで生意気な態度に終始していた彼は、

一気に顔を青ざめさせる。


「はい。

 父上はラーシュ・ウィンベル陛下―――

 この国の国王です」


ナイアータ殿下の言葉を聞いた瞬間、

彼の全身にブワッと嫌な汗が噴き出る。


「あなたが身分がどうこう言うのであれば、

 私の方もその規則(ルール)に沿った行動を取らせて

 頂きますが」


「殿下への暴言、それに無礼極まる態度……

 国法に照らし合わせればどれだけの罪が

 加算されるでしょうか?


 それがお望みでしたら」


ナイアータ殿下夫妻の説明に、彼はブンブンと

残像が見えるくらに首を左右に振る。


「ではきちんと後ろに並んでください」


「アタシたちも並び直しましょう、あなた」


騒動を起こした少年は一目散に列の後方へ

駆け出すと、それを見届けたように各自、

元の列の位置に戻り始めた。




「って事があったんだよー!

 ナイアータ殿下もファム様も

 カッコ良かったー!」


ショートの黒髪をした、女子中学生くらいの

ラッチ(人間Ver)が興奮気味に語る。


「あー、ライオネル様がやっていた……

 正体を隠して行動、おバカさんが来たら

 自己紹介ってヤツ?」


「国王の息子だからのう。

 そ奴も威張る相手を間違えたものよ」


同じ黒髪の―――

童顔の人間の妻と、堀の深い顔立ちのドラゴンの

妻が感想を述べる。


「その子はどうなったんだ?」


私がその後について聞くと、


「校長先生のところに連れて行かれて、

 お説教されたみたい。


 これで多分大人しくなるんじゃないかなー」


「そうなんだ?

 でも、校長ってクーロウさんだったよね。

 彼も平民だし、よくお説教を受け入れた

 ものだなあ」


私が両腕を組むと、妻二人が、


「あー、多分お説教の場には……

 ラミア族やら魔狼(まろう)やら鬼人族の人も

 いたと思うよー」


「そうでなくとも彼は、シンが頼み込んで

 『ガッコウ』の校長となっておるからのう。


 多分、そ奴の本家が事の次第を把握したら、

 全身全霊で詫びの品を用意するだろうて」


まあ確かに、ただでさえ王族に無礼を

働いたのだ。


その上、私につながる人外の人脈まで敵に回す

ような判断はしないだろう。


実際、その事を知ったブルーム子爵家から、

『ガッコウ』宛に多額の寄付金と膨大な

物資が届いたのは、一ヶ月後の事であった。




「おお、シン殿!」


「ヴィオラさん、お久しぶりです」


数日後、私は白翼(はくよく)族の浮遊島に家族と一緒に

やって来ていた。


国からの依頼で、白翼族の住まう地―――

浮遊島の技術を利用した空中拠点開発の研究と

実験を手伝うためである。


「今回はウィンベル王国の依頼で参りました。

 またお世話になります」


私が、長い金髪のいかにも天使といった風体の

彼女に頭を下げると、


「いや、こちらも下界からの献上品は大変

 役立っているからな。


 我らからも少しは歩み寄らねばなるまいて」


上から目線だが、白翼族のプライドの高さを

知っている家族や、他にワイバーン便で来た

王家直属の研究メンバーはスルーを決め込む。


「相変わらず偉そーだね、おねーちゃん!」


ただ一人、人間Verのラッチを除いて……


「だ、誰だ? この無礼な娘は」


するとメルとアルテリーゼが歩み出て、


「ラッチちゃんです」


「つい先日、人間の姿になってのう」


すると遠くから複数の白翼族が押し寄せて、


「ラッチちゃん来たんだー!」


「ドラゴンの赤ちゃんだよね!」


「ってアレ?」


ラッチは白翼族が公都に来た時に、可愛がって

もらった事もあるので―――

その時のメンバーが来たのだろうが、

(■206話

はじめての くうちゅうせん(だんたい)参照)


その時はまだ人間の姿にはなれなかったから、

混乱しても無理はないか。


「ラッチだよー♪

 人間の姿になりましたー!」


娘が元気よく挨拶すると、


「わー! 女の子だったんだー!」


「可愛いー!!」


「ね、ウチらの衣装着てみない!?」


と、どこかへ連れ去れられ……


「はぁ……まったく。

 後でわたしから注意しておこう。


 さて、浮遊島に関する実験だったな?

 長老から許可は取ってある。

 我らの監視下で行うなら問題ない」


「すいません。

 それと、各種のお土産も持って来ましたので」


「おお、それは助かる。

 さっそく運ばせよう」


と、私とヴィオラさんのやり取りを見ていた

妻二人が、


「……これはあれかな?」


「ウム。妙に落ち着きが出てきておる。

 という事は―――」


そこで私と位置を入れ替わるようにして、

メルとアルテリーゼが彼女に近付き、


「いい人が出来たんだねー」


「なっなななっ!?」


それを聞いたヴィオラさんは顔を真っ赤にする。

『いい人』、という事は結婚したのだろうか?

目出度い事だと思っていると、


「やはりそうか。

 それではじっくり聞かせてもらおうかのう。


 何、もちろんタダでとは言わん。

 夜の技術と引き換えでどうじゃ?」


「……いいだろう、こちらへ―――」


謎の取り引きが行われたかと思うと、

彼女たちは去ってしまい、


一家の中で残ったのは私一人で、


「えーと、シンさん。

 作業は進めても?」


「あ、はい……

 多分、手伝いや護衛なら私1人でも何とか

 なると思いますので」


そして私は研究メンバーと監視役の白翼族と

一緒に、実験を見届ける事になった。




「魔導回転羽根、組み立て完了しました!」


「台座固定、ヨシ!」


「動力関係、異常ナシ!!」


浮遊島の端に、巨大な扇風機のような魔導具を

設置していく。


地球でいうところのプロペラだ。

一応、安全対策としてガードで覆っている。


また東西南北四ヶ所に設置し、魔力通信機で

連携を取り合い―――

前進・後退はもとより、水平であればある程度

自在に推進出来る仕組みだ。


「準備完了。いつでも発進出来ます!」


そこで研究メンバーのリーダー格の人が、

私に目配せしてきて、


それに応じるように私もうなずく。


「実験開始します! 発進!!」


「実験開始!」


「実験開始、発進!!」


すると、浮遊島が動き始めた。




「ふむう、風で押し出しておるのか。

 しかも我らが制御するよりも速く感じる。


 こんな方法があったとは……」


四十代後半に見える女性―――

長老がやって来て宙を見つめる。


「元の位置へは、同じ時間・同じ速度を

 逆進して戻します」


「そのための速度計や、コンパスも

 開発してありますれば」


研究員たちが書類を片手に彼女に説明する。


「風魔法の使い手ではダメであったのか?」


魔法前提のこの世界での当然の疑問を、

長老は口にする。


「可能ではありますが」


「その場合、恐らく植樹してある木を背に

 するか、固定台となる棒か何かで使い手を

 拘束して、風魔法を使ってもらう事に

 なるかと……」


それを聞いた彼女は苦笑する。


確かに、地上や船上では無いのだ。

何も無い空中にあるこの浮遊島で、しかも

島を動かすほどの風力を使うとなれば、

自身を支える何かは必要だろう。


「機動停止!」


「機動停止します!」


「停止後、総点検開始!

 問題が無ければ逆進をかけ、元の位置に

 浮遊島を戻す!!」


「「「ハッ!!」」」


こうして実験は進められ、私はその終わりまで

見守っていた。




「機関完全停止を確認しました。

 異常もありません。


 これで魔導風力推進装置の実験、1回目―――

 無事完了です」


リーダー格の青年がそう宣言した事で、

研究メンバー、そして白翼族の監視役や

長老に安堵の表情が浮かぶ。


「これで全部終わりですか?」


私が研究メンバーのリーダーに問うと、


「そうですね。後は交渉次第と言いますか」


「交渉? 何かあるんですか?」


そこで彼はチラ、と長老や白翼族の方を向いて、


「実は、実験用に小さな浮遊島をもらえないか

 本国から打診されているんです。


 可能ならば、という事ですけど……」


他のメンバーも話に加わり、


「浮遊島を構成する土は、宙に浮く性質の

 鉱物を含んでいる、というところまでは

 わかっております。


 再現するのなら我々だけでも難しくは

 無いと思われますが」


「ただ高度をどのように保っているのか、

 どうやって安定して制御しているのか

 までは不明でして」


ある程度王国側でも分析は進んでいるようだ。

だが、コントロール面までは理解の外らしい。


「うーん、でも―――

 そういう事ならやっぱり、白翼族の方の

 協力必要だと思いますよ?」


そこで話を聞きつけた長老がやって来たので、

私の方から事情を説明すると、


「ふぅむ、それならばその浮遊島に何人か、

 白翼族の者を乗せねばならぬな。


 グレムリンどもの脅威はシン殿が片付けて

 くれた事もあるし……

 それに今は、空を飛べない種族を見下す

 傾向もそれほどでは無くなっておる」


と、前向きな姿勢を見せる。


「では、小さな浮遊島の提供は」


そう言う研究メンバーの一人を手で制し、


「慌てるでない。

 交渉次第、とそちらも思っておるのだろう?


 ならばまずは交渉じゃな」


ニカッと笑う長老に率いられ、私たちは場所を

広い屋敷へと移す事になった。




「ほーん。で、結果は?」


夕方になり、用意された宿泊施設に帰った

私は家族と食事がてら、情報を共有する。


「お酒や保存の効く食べ物を中心に、白翼族の

 要求を叶える事で何とかなったよ。


 小さな浮遊島を2つ、そこにそれぞれ

 白翼族を2人ずつ乗せて提供するそうだ」


実験後、長老の屋敷で私を仲介役・第三者として

双方の交渉が設けられ、


ウィンベル王国の要求はほぼ通った。


見返りとして白翼族は、やはりというか食料を

メインとして各種様々な衣装や娯楽といった

文化面もリクエスト。


お互いに納得できる形で落ち着いた。


「空中拠点か。シンの世界にはあったか?」


「さすがに無いなあ……

 空を飛ぶ飛行機械は存在するけど、

 空中に浮かぶ施設なんてものは無い。


 ある意味この状況は、向こうよりも

 進んじゃっているとも言えるな」


妻たちとそう受け答えしていると、


「あ! そーだおとーさん!

 こっちでも今、おかーさんたちと一緒で

 子供が出来た人いっぱいいるんだってー」


「ん? そうなのか」


ラッチの言葉に思わず聞き返す。

こっちでもベビーラッシュなのか。


じゃあ今日決めた白翼族が要求した品の

中に、ベビー用品を追加するかと考えて

いると、ある事に気付く。


「……あれ?

 確か白翼族って女性しかいない種族

 だったんじゃ。

 いったいいつの間に―――」


するとニヤけた表情のメルとアルテリーゼが、


「それなんだけどさー。

 ほら、以前公都『ヤマト』に来た時、

 男の調達方法をいくつか話したじゃん」


「そこでハーピー族が男狩り……

 もとい男の盗賊や犯罪者を捕まえたら

 好きにしていい、という事になっていたで

 あろう?


 で、白翼族も希望者が参加しておった

 らしい」


へえ、そんな事になっていたのか。

まあ自分も国がやっている事を全部把握して

いるわけじゃないけど―――


「それでヴィオラさんなんだけどね」


「結論から言うと彼女も参加しておった。

 で、もう結婚しておる」


二人の報告に、思わず飲み物を音を立てて

飲み込む。


「え? で、でもヴィオラさんでしょ?


 犯罪者なんて、差し出されてもお断りだ、

 みたいに言ってなかったっけ」


何せ公都に直接襲撃をかけるほどの、

地上種族を見下す派のトップだったのだ。


いくらか態度が和らいだとはいえ、そう簡単に

意趣変えしたとは思えないのだが……


「それがねー、彼女の夫クンにも会って

 来たんだけど」


「まだ人間の姿のラッチと同じか、それより

 下くらいかのう。

 すいぶんとベタベタに甘やかしているのが

 丸わかりだったわ」


メルとアルテリーゼの言葉に目を丸くする。


ラッチと同じって……

要は中学生くらいかそれ以下の少年と

結婚したって事か。

まあギリギリ『そういう事』は可能な年齢

なんだろうけど。


「……ん? でも捕まえたのは盗賊とか

 そういった連中だろう?


 何でそんな子供まで」


「それがねー、確かに盗賊団の中にいた

 らしいんだけど―――

 幼い頃に、そいつらに村を丸ごと滅ぼされた

 生き残りの子でね……


 その子はまだ小さいからって、雑用係として

 生かされていたんだって」


「だが助けられたとはいえ、そういう事情

 だから―――

 帰る場所も身寄りもいないしのう。


 そりゃ『一緒に来るか?』と言われれば、

 一も二も無く合意するであろうよ」


妻二人が真顔になって事情を説明する。


「それにその子にしてみれば、ヴィオラさんは

 村の仇を取ってくれた上に……

 助けてくれた恩人でもあるわけでしょ?


 しかも綺麗で強い年上のおねーさん。

 そりゃーコロっといくと思う」


ラッチがウンウンとうなずきながら語る。

ていうか『コロっと』とか、どこでそういう

事を覚えてくるんだか。


「ま、まあ当人たちが幸せならばそれで

 いいんだけど」


そこで私は話をいったん区切り、


「それで今後の事なんだけど―――

 実験は予定通り終了、後は公都に戻って

 報告すれば依頼完了なんだけど、


 浮遊島を公都及び王都上空まで、

 引っ張っていきたいらしいんだよね」


「それって、アルちゃんやワイバーンで?」


「我は別にいいが、その浮遊島はいつ

 出来るのだ?」


メルとアルテリーゼの疑問に対し、


「時間はかからないらしい。

 というより、ベビーラッシュに備えて

 拡張している最中だから、その部分を

 切り離して渡すだけだって言っていた。


 だから今日はこの浮遊島で一泊して、

 翌日帰る事になると思う。ただ……」


「?? ただ、何? おとーさん」


ラッチの問いに私はため息をついて、


「……多分、引っ張って行くとなると、

 そんなに速度を出せないと思う。


 空中に浮かんでいるから重さは関係ないと

 思うけど、安全性という意味でね」


ミニ浮遊島を安定させるためには白翼族が

乗っていなければならず―――

猛スピードでそれを引っ張ったらどうなるか、

想像通りになってしまう可能性がある。


「そりゃ困ったねえ」


「う~む……

 まあ、どれだけの速度に耐えられるか、

 それも試しながら飛ぶしかあるまい」


ヤレヤレ、という雰囲気の中―――

私たち一家はそこで夜を過ごした。




「じゃあこちらはアルテリーゼ殿が……

 こっちはワイバーンでお願いします!」


翌日、朝食を済ませるとすでにミニ浮遊島は

準備出来ているとの報せが入った。


向かってみるとそこには―――

直径五十メートルほどの浮島が、船のように

本土の浮遊島に係留ロープでつながっていて、


「白翼族の方は……」


「すでに乗っております」


見ると、すでに小さな家のようなものも、

ミニ浮遊島には用意されており、


「なるほど、わかりました。


 ではさっそく『出航』するとしましょう」


「うむ。また来られるがよい。

 いつでも歓迎しよう」


長老以下、白翼族の方々と別れの挨拶を終え……

私たちはそれぞれのミニ浮遊島を『乗客箱』に

つないで出発した。




『のう、シン。

 意外と速度を上げても大丈夫そうじゃぞ』


「そうだな。

 だけど念のため、安全第一で飛んでくれ」


小一時間後、慎重に飛んでいた『乗客箱』の

中で―――

伝声管を通して、アルテリーゼとやり取りする。


「制御が上手くいっているんじゃないかな?

 ワイバーンの方も安定しているしー」


「でもおとーさん、おかーさんロープで

 ミニ浮遊島と繋がっているでしょ。


 どうやって休むの?」


メルの後に、ラッチが心配そうに聞いてくるが、


「それなんだけど、その浮遊島で休むよ。


 あの程度の大きさなら白翼族が1人、

 1回制御のために魔力を投入すれば、

 数日は浮かんでいられるんだってさ」


自分もそこは気になったので予め質問して

きたのだが……

浮かんでいる事自体にそれほど魔力は使わない

らしい。


まあ浮かぶのに維持している魔力が無くなる

=落ちるだから、そう簡単に墜落するようには

出来ていないのだろう。


そしてそのままアルテリーゼとワイバーンは、

お昼くらいまで飛び続けた。




「こうして見ると普通の家だねー」


「ここが空だという事を忘れるわ」


「来た時は途中で森の中で寝たから、

 野宿みたいだったもんね」


数時間後、私たちは昼食と休憩を取るために

ミニ浮遊島にいた。


家の中は一通りそろっており、窓の外の

景色を抜かせば、地上と何ら変わらない。


「本当にあの浮遊島のミニ版といった

 感じだな」


王国が空中拠点、と呼ぶのもうなずける。

『乗客箱』も普通に停車しておけるし、

この規模ならドラゴンやワイバーン、ハーピーと

いった飛行種族の駐屯基地(ちゅうとんきち)となり得るだろう。


そんな事を考えていると、


「シ、シン殿!!」


血相を変えて、外を見張っていた白翼族たちが

入って来た。


「何事ですか?」


「と、とにかく外へ出てください!!」


もう一人の白翼族に促され、一家で私たちは

家の外へ駆け出た。




「うあ、何アレ?」


「雲……か?」


「魔力を感じるー」


そこで私たちが見たものは……

巨大な雲のような煙の塊が、ところどころ火花を

散らしながら浮遊島と向かい合っていた。


「『妖煙火イグニス・ファティウス』です!

 まさかこんな時に出くわすとは―――」


「気を付けてください!

 あれに触れたら、(しび)れるか毒気(どっけ)にやられて

 しまいます!」


どうやら白翼族の人は知っている魔物らしい。


「対処は出来ないんですか?」


私の問いに、彼女たちは顔を曇らせ、


「強力な風魔法であれば撃退する事は

 出来ますが……」


「ここでは足場が小さ過ぎて不安定である上、

 私たちは攻撃特化の風魔法しか使えないの

 です―――


 それに浮遊島を制御しようにも、速度は

 それほど出せず、逃げ切れません……!」


それを聞いた妻たちが顔を見合わせ、


「あー、踏ん張りが効かないって事?」


「確かに『風刃(ウインドカッター)』では、

 効果は薄そうじゃ」


あの巨大な浮遊島であれば、いかに強力な

風魔法を使ったところで―――

やや上方に撃てば、使い手がその反動で

吹き飛ばされるという事は無いだろうが、


下手をすればその何十分の一かというサイズの

この島では、強風は出せないという事か。


それに気体の魔物だ。

『風刃』で切り裂いたところで、ダメージは

無いに等しいだろうし……


「クソッ!

 こっちからあの魔導具で何とか出来ないか?」


「無理です!

 すでに分解済みなので、組み立てるにも

 時間が……!」


向こうの浮遊島で休んでいた研究グループも

異変に気付き、何とか対処しようとしてくれて

いるようだが―――


例の魔導風力推進装置とやらも、バラして

運んでいたから、すぐに準備は出来なさそうだ。


私は頬をポリポリとかくと、


「あの魔物って結構ヤバいんですか?」


白翼族は必死の形相でこちらに振り向き、


「は、はい!

 何せ体が煙のようである上に、毒や麻痺させる

 性質を持っていまして」


「どこの隙間でも入って来れますので、

 このままでは……!」


あー、気体ってそういう事だもんなあ。

という事は自分が何とかするしか無いか。


「あ、じゃあメル、アルテリーゼ」


私が妻たちに振り返ると、


「りょー」


「ラッチと白翼族の2人は我らが守るゆえ、

 思う存分やってくれい」


そう言って彼らを保護するようにつかまえ、

私から距離を離すと―――


「魔力で動く煙、もしくは気体のような体を持つ

 魔物など……

 ・・・・・

 あり得ない」


小声でそうつぶやくと、


「はっ!?」


「えっ?」


白翼族の二人の目の前で『妖煙火』とやらは、

横殴りの風に吹かれて―――

そのまま遠くへ消え去っていった。




( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

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[一言] (*ゝω・*)つ★★★★★  キャプテンスカーレットの基地っぽい!?
[一言] ・「アタシは妻のファムと申します。  以後お見知りおきを……」 見知りおくチャンスを貰えて良かったね。 ・空中に浮かぶ施設なんてものは無い。 ギリギリでISSが該当しそうな。浮かんでいると…
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