〈第三十話 新たな発見〉
このダンジョンが発見されたのは、一年前。
発見したのは、王都を守護する騎士だちだった。
当時、新人騎士たちの訓練の一環として、この地に演習に来ていたらしい。
この一帯は、森もあり平野もある上、王都から然程離れていない。とはいえ、徒歩で帰ることが難しい距離(ここ、すごく重要)。ましてや、ここを通る荷馬車は少なく、民間人もあまり通らないことから、騎士の演習先として重宝されていた。
ぽっかりと奥まで続く洞窟を発見した騎士たちは、それを直ぐに王都にいる陛下、ジェイと、この大陸の要たちである宰相、魔術師長、騎士団団長に伝えた。
〈ダンジョンの発見の可能性あり〉と。
ダンジョンは突如、姿を現す。
つい先日まで何もなかった場所に、洞窟が現れたり、塔が出現することもある。何故いきなり現れるのかについては、今だ謎のままだ。「そういうものだ」としか、言えないらしい(シュリナ、ココ談)。
その後、「ただ……世界が、バランスをとっているのだ」と、シュリナは教えてくれた。
報せを受けた王都は直ぐに、ハンターを中心として調査団をくんだ。
そして調査した結果、この洞窟を新種のダンジョンと断定。以後、多くのハンターがここを訪れている。
調査が行われ攻略されたのは、二十三階層まで。予想としてはその倍の階層があると考えられている。
係員の地図によると、一番近いセーブポイントは五階。
この五階層までは、主に、EかDランクの魔物が出没するようだ。
「洞窟のダンジョンって、初めてだよね」
ワクワクしながら話しかける。
襲ってきた魔物は、スライムと魔犬ぐらいだ。魔石を拾いながら、サクサクとダンジョンを進んで行く。
『『主様、楽しそう! 私たちも嬉しいで(しゅ)す!』』
双子たちも楽しそうだ。その声を聞いて私も嬉しくなる。
(やっぱり、ナナはどこか舌足らずだよね。ちゃんと、魔物の命を吸わせたはずなのに。これって、個性かな。でも、個性があるってことはいいことだよね)
「目的を忘れるでないぞ」
双子たちのことを考えていた私に、シュリナが釘をさす。
その堅苦しい口調とは反対に、どこか楽しそうだ。ワクワクしている感情が伝わってくる。よく見れば、何も言わないが、ココもサス君もウキウキしている。歩き方で何となく分かった。
……君たち、もしかしてダンジョン好き?
新たな発見だ。私は自然と顔を綻ばせる。
「分かってるって。……でも、こんな所にお店とかあるのかな?」
一応、何があるか分からないから、最低限の用意はいつもしていた。それでも、ダンジョンに潜るのは別だ。ましてや、何十階層もあるダンジョンなら、特に入念な準備が必要だろう。特上ポーションも七本しか残ってないし。
(ここで、一旦引き返すべきかな……)
今、私たちは三階層にいる。悩みどころだ。
係員からもらった地図をよく見ると、各セーブポイントから、直接地上に出れるルートがあるらしい。どうやら、一方通行のようだけど。それでも、帰りのルートがあるのはラッキーだよね。当然と言えば当然かもしれないけど。だったら……
(取り合えず五階層まで行って、一旦戻らないといけないよね。準備何もしてないし。転移魔法で直接ここまで来れるから、大丈夫だよね)
声に出さずに、私はこれから先のことを考えていた。
「途中で戻る? あり得ん」
また私の考えを勝手に読んで、シュリナが反論してきた。
「めんどいのは分かるけど、最低限の準備しかしてないんだよ。ちゃんとした準備をしてから、潜るべきじゃない」
間違ったことは言ってない。
「こういうダンジョンには、大抵セーブポイントに、お店とか簡易宿屋とかがありますよ」
サス君が教えてくれる。
へぇ~~そうなんだ。なら、そこで補充出来るかも。楽しみ!
そうと決まれば、五階層にレッツゴー!!
「その前に、あれをどうにかせぬとな」
シュリナが前方を見据えたまま言う。
「確かにね」
私はニヤリと笑った。
本当に、お待たせしました。
今回、短めです("⌒∇⌒")
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




