〈第十八話 シルバータイガー〉
幾つもの空気の刃と、サス君が放った複数の雷が、シルバータイガー全体を襲う。
前衛で魔法攻撃に耐性がないシルバータイガー(A)が、二重攻撃を避けきれず、空気の刃で数ヵ所切り裂かれていた。急所を避けたとはいえ、かなりの深手を負っている。血が滴り、地面を赤く染めながらも、倒れることなく、私たちを威嚇していた。
(浅かったかな……)
止めを刺すために、もう一度、私は【ウィンドボール】を放とうとした。
その瞬間、魔法攻撃に耐性がある小柄なシルバータイガー(B)が、私に攻撃を仕掛けてきた。運動能力を最大限に活かし、大きな口を開け、私に飛びかかってきたのだ。
私はニヤリと笑った。
シルバータイガー(B)の行動は完全に読めていたからだ。
私は体を一歩横にそらすと、右後方にジャンプする。流れる動きで避けた。双子の力だ。
サス君も俊敏に移動し、私の背後にいる。シュリナはココを抱き上げ、上空に待機済み。一応、幻影魔法をかけ、姿を認識出来ないようにして。ここ重要。
実は、シュリナには大事なことを頼んでいた。
シルバータイガーが逃げ出さないように、周囲に結界を張り巡らせている。なんとしとも、ここで討たないといけない。手負いの獣程、厄介なものはないからだ。
(上手いことバラけた!!)
私はまたニヤリと笑う。
全てが計画通りだった。
私はしゃがむと、地面に手を添えた。【アースウォール】を唱える。
再度飛びかかってきたシルバータイガー(B)の前に、土で出来た壁が出現した。
激しく土壁に体を打ち付ける音がする。
土壁はシルバータイガー(B)の前にだけ出現したのではない。土壁はシルバータイガー(A)と、物理と魔法攻撃の耐性を持っている、シルバータイガー(C)の前にも現れた。
そう、これが狙いだった。
私たちと猛毒の付加があるシルバータイガー(D)を取り囲むように土壁で覆う。
空気の刃とサス君の雷で四頭をバラバラにし、まず最初に倒すべきシルバータイガー(D)を切り放したうえで隔離したのだ。シルバータイガーは牙を剥き、唸り声を上げ、威嚇する。体長は三メートルを有に越えていた。
(ブラッキッシュデビルと同じぐらいの大きさかな?)
ドーンの森で倒したSランクの魔物を思い出す。
「牙と爪には気を付けて」
再度、私はサス君に注意する。サス君は頷く。
『セッカ、ナナも頼むね』
『『お任せて下さい!!』』
双子は元気よく答える。
私は笑みを浮かべると、もう一度【ウィンドボール】を唱えた。
二度目の攻撃だ。シルバータイガーは容易に避ける。当然、想定済み。
(……なら、これならどう?)
連続で放ち、且つ軌道を変える。四方八方から襲ってくる空気の刃に、シルバータイガーは避けきれない。傷を負いながらも、飛びかかってくるシルバータイガー。
私は双子の力を借りて、シルバータイガーの攻撃を紙一重でヒラリと避ける。そして、距離をおく。距離を置いてから、また同じ攻撃を繰り返す。地味だが、確実に力を削いでいく。
段々、動きが鈍くなるシルバータイガー。
遂に、その動きが止まった。
私はその瞬間を見逃さなかった。私は直ぐに【ウォーターボール】を放つ。
放たれた水の塊はクリーンヒットし、シルバータイガーは弾き飛ばされた。土壁に激しく体を打ち付ける。
「これでおしまい」
その声を合図に、サス君が雷を放った。水に濡れた体は、雷の力をより倍増し通す。白い毛皮は黒色に変色し、その体から湯気が上がった。そして、ピクリとも動かなくなった。青白い光りを放ち、シルバータイガー(D)は姿を消した。
「まず、一頭」
私は呟くと、サス君に特上ポーションを飲ませた。勿論、毒消しの付加が付いている方だ。気付かないうちに、爪がかすっていたら大変だから。飲ませながら、念のために【ステータス】で確認する。
毒には冒されていない。
(よかった、大丈夫そうだね)
ひと安心だ。私も念のために一本飲んでおく。
『外はどう?』
私はシュリナとココに話しかける。
『何度も体当たりしているぞ。最初の魔法で傷付いた奴は、瀕死一歩手前だ。体当たりしている内に、怪我が悪化したようだ。所詮、獣か』
『一番体躯がいい魔獣は、離れて力をためているようだよ』
シュリナとココは細かく報告してくれる。
(ほんと、念話覚えといて正解だったね)
私は心からそう思った。
「サス君。そろそろ、第二ランド開始しようか」
「そうですね」
サス君が楽しそうな声で答える。
私はクスッと笑うと、双刀を抜き構えた。そして、【アースウォール】を解いた。
まずは、瀕死なシルバータイガーに魔法を叩きつけようか。
お待たせしました。
最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




