表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/316

第十二話 交わることのない視線

 


 ……温かい。


 何か温かいものに包み込まれている。


「う……ん…………」


 フワフワしてて、モフモフしている何かが、私を優しく包み込んでいる。それが気持ちよくて、私は無意識にその温かみに顔を埋めようとした。


「ムツキ!!」

「睦月さん!!」

「「「ムツキちゃん!!」」」


 名前を呼ぶ複数の声が眠りを邪魔をする。


(うるさいなぁ! もっと、このモフモフを味わいたいの! 邪魔をしないで!!)


 心の中で文句を言いながら、モフモフに顔を埋めている私を、何度も、何度も、呼ぶ声がうるさくてとうとう私は顔を上げた。



「ムツキ!!」

「睦月さん!!」

「「「ムツキちゃん!!」」」


 一際大きな声で名前を呼ばれる。


 あまりにも五月蝿うるさくて起きて文句を言おうとした。うっすら目を開けると、私を覗き込む皆の顔がクシャと歪んだ。


「……サス君……ココ…………皆……」


 皆の顔がホッとした安堵の表情へと変わった。


「やっと目を覚ました……。気持ち悪いところとかない!?」

「苦しいとこない!? 大丈夫!?」

「遠慮なく言うんだぞ!」


 ゼロとアンリ、そしてショウが、上半身を起こす私に手を添えながら次々と尋ねてくる。


 上半身を起こして私は思い出した。私はブラッキッシュデビルを倒し、気を失い倒れたことを。


 そして、今私たちがいるのはセーブポイントのようだ。


 私を包み込んでいた温かみの正体はサス君のお腹だった。


(あれ? アキとフェイがいない……周囲を見回りにでも行ったのかな。あの二人は特に身が軽いからね)


「ムツキちゃん?」


 アンリが心配そうに覗き込んでくる。


「大丈夫。苦しいところはないよ」


 私は皆を安心させるために微笑んでみせた。


「どうして、自ら危険な場所に飛び込む真似をした!? 方法はいくらでもあっただろ!!」


「自分の命を軽んじらないで下さい……」


 私の笑みを見て、堪えていた気持ちのタガが外れてたのだろう。今まで声を荒げたことのないココが声を荒げ、サス君はまるで自分が傷付いたように苦しそうな声で私に願う。


「……ごめんね、ごめんね……本当にごめんね」


 心配させてしまった。


 かなり、無茶をした。結果的にはOKだったとしても、一歩間違えば私はこの場にいない。相談もしないで、一人立ち向かったことに、ココとサス君は怒っているのだ。それだけ、私のことを大事に思ってくれてる。思っている分だけ、傷付き、腹が立ったのだ。


 私はココを胸に抱き、もう一度、サス君に体重を預けながら、何度も、何度も、謝った。


「目が覚めたばかりで悪いが、ムツキ動けるか?」


 ショウが、サス君とココに謝り続ける私に尋ねた。


 一晩、ドーンの森の中で過ごすことは、いくら今セーブポイントにいたとしても避けたい。泊まる準備もしていないし。動けるなら村に戻っておきたい。陽があるうちに。


 私はココを地面に下ろし腰を上げた。立ち眩みもしないし、ふらつくこともない。体は少し重いかな。倦怠感は残っているけど、動けないほどではない。


「大丈夫みたい。自分の足で歩けるわ」


 私の様子を見て、再度皆はホッと胸を撫で下ろしたようだ。その時、アキとフェイが戻って来た。


「近くに魔物はいない」


「こっちも大丈夫だ」


 やっぱり、身が軽いアキとフェイが、周囲を見回りに行ってたみたいだ。ショウに報告する。


「大丈夫か? ムツキ」


 アキが目を覚ました私に声を掛ける。私は頷くと、アキは安心したように微笑む。


「私は大丈夫だから、一旦、村に戻ろう」


 その声を合図に、皆荷物を片付け背負う。


「しんどくなったら、遠慮なく言うんだぞ」

「ムツキちゃん、無理はいけないからね」


 ショウとゼロが出発する前に、私に声を掛けてくれた。私はもう一度、皆に向かって頷いた。


「フェイ、心配かけてごめんね」


 さっきから、私と目を合わせようとしないフェイの態度を気にしながらも、明るい声で謝った。


「ああ」


 しかし戻ってきたのは、素っ気ない一言。「大丈夫か?」の一言もない。言って欲しいとは思ってもいないけど……。その一言以外で、一度もフェイと視線が交わることはなかった。


 ちょっとだけ寂しさが胸を過る。胸の奥で、鋭い痛みが走った。


 無言のまま歩く。幸いな事に途中倒れることなく、私たちは無事ドーンの森を脱出した。







 ゼロは一日予定を伸ばすことにした。


 どうにか宿屋に戻った私は、お風呂に入ってからベットに倒れ込む。思ってたより疲れてたようだ。泥のように眠った。夢も見ずに。次の日も、一日の大半をベットの上で過ごした。


 そして翌日。


 私たちとショウたちのパーティー、雇い主ゼロと一緒に、遺跡に向かうためにドーンの森にもう一度足を踏み入れた。


(蘇生草、生えてるといいなぁ……)





 お待たせしました。

 最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。


 それでは、次回をお楽しみ(*^▽^)/★*☆♪

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ