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第十五話 初報酬

 


 泥のように眠って目を覚ましたのは、翌日の昼を少し過ぎた頃だった。


 よく寝た。寝過ぎて体が怠い。怠い体を引きずってお風呂に入る。ついでに洗濯を済ませた。少しスッキリとした顔で階段を下りてきた私に、ジュンさんは甘いカフィオレを淹れてくれた。


「いただきます!」


(はぁ~~落ちつく……)


 砂糖の甘さとカフィ(コーヒー)のほろ苦さが身にしみる。無事帰って来れたんだね。


 私がカフィオレにホッと心を和ませているうちに、ジュンさんは遅めの昼ご飯を用意してくれた。いつもありがとうございます。


 あんまり食欲はなかったけど、昼ご飯を見た途端、お腹がグーと大きな音をたてる。ジュンさんに笑われた。恥ずかしい。


 昨日の夕方から何も食べてないんだから鳴って当然かな。それでも、恥ずかしい事にかわりはないんだけどね。一応、これでも乙女なんだから。と思いつつ、乙女らしからぬ一気食いに、ココとサス君は呆れ気味に見ている。ジュンさんは優しい目で、微笑みながら見ていた。


「美味しかった~~!! やっぱり、ジュンさんのご飯が一番美味しいです!」


 最後に、コーンスープを一気に飲み干すと、私は満面な笑みを浮かべる。


「ありがとう、ムツキちゃん。いつも美味しそうに食べてくれて。私も嬉しいわ!……それで、今日は一日ゆっくり休むの?」


 ココからマドガ村の経緯を聞いている筈だ。ジュンさんは私の食欲に安心したようで、嬉しそうに微笑んでいる。


「この後、ギルドに行こうかなって、思ってます」


「ギルドに?」


「はい! ドロップアイテムの買い取りと討伐料を貰いに。ついでに、報告も兼ねてこようかなぁって、思ってます」


 ギルマスと一緒だったから、クエストの報告は別に必要ないけど。新米ハンターとしての、一か月一回の更新はしとかなきゃいけないからね。めんどいけど。


 まだ日はあるし、急ぐ事じゃないから、一日休もうかとも思ったけどギルドに行くことにした。ハンターとしての報酬が早く欲しかったからだ。


 それに、正直じっとしとくのは苦痛だった。


 どうしても思い出す。鮮明に映像として脳裏に焼き付いている。


 血に染まった、防具。地面に染み込んだ血。落ちていた剣。剣の柄はしっかりと握られていた。


 それは、全部シンの所持品だった。


 ハイオークをギルマスが倒した翌朝、その場にいたハンター全員と動ける騎士さんたち、そして副団長さんと、行方不明の騎士(シン)の行方を捜索した。その時に発見された。


 一日捜索して、発見されたのはそれだけ。だが、ハイオークのスキル、そして発見された物と状況から、ギルドはシンの死亡を確定した。


 私の初クエストは、後味の悪い結果で終わった。


「明日でもいいんじゃない?」


 心配そうなジュンさんに、私は「大丈夫」と笑って答え店を出た。


 マドガ村の件を別にしても、ギルドには顔を出そうとは思っていた。


 私が稼いだお金で、ジュンさんに立て替えてもらっていた雑費の代金を早く払いたかったからだ。それに、部屋代も払いたかったし。ジュンさんの優しさに甘えたままじゃいけないって、ずっと考えていた。








(何度見ても、やっぱり雑貨屋さんだよね~~)


 そう思いながら、私たちはギルドに足を踏み入れた。


 いつ来ても、ギルド内は騒がしい。そして色んな熱気で、ある意味暑苦しい。


 女の人もいるんだけどね。男の人が断然多い。男社会なんだとつくづく思う。


 よくいうと、実力主義。


 そこに男女の隔たりはない。でも、必然的に男が有利になる。まぁ、ギルドが実力主義じゃなかったらおかしいけどね。


 取り合えず、先にドロップアイテムの換金をしとこうかな。新米ハンターの更新受付は混んでるし。


「すいません。ドロップアイテムの換金したいんですけど?」


 目の前を歩いていた係員さんを捕まえると、私は尋ねた。


「それなら、こちらです」


 係員さんが案内してくれた。親切だ。


 ハンター試験の列を横切った室内の一番奥に、特別なブースが設置されていた。思った程人は少ない。直ぐに私の番がきた。


「アイテムの換金ですね」


 にこやかな笑みを浮かべ、係員のお姉さんが対応してくれる。


「はい。それと、討伐した魔物の討伐料と依頼の代金も、ここで受け付けてますか?」


「ここで全て受け付けてますので、ご安心下さい」


 よかったぁ……。役所みたいに、要件事にそれごとに違うブースに顔をだすのは、正直疲れる。


「じゃ、魔石47個と牙13本の買い取りを、まずお願いします」


「魔石47個と牙13本ですか!?」


 驚く係員さん。


「はい」


 私は鞄から魔石47個と牙13本を取り出し、カウンターに置いた。


 私が初めて止めを刺した魔犬の魔石は大事にとってある。時間があれば、加工して自分の御守りにしようと考えていた。


「畏まりました。それでは、すみませんがハンターカードの提示をお願い致します」


 私は言われた通り、ハンターカードを懐から取りだす。


 銀色のハンターカードを見て、係員のお姉さんは再度驚き、鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔で私をまじまじと見詰める。


 驚く係員のお姉さんを見て、何も言えず居心地の悪さを感じた。愛想笑いで誤魔化す。


 そんな私の表情を見た係員のお姉さんは、ハッと我に返り、「申し訳ありませんでした」と謝ると、仕事モードに戻った。


「……魔石ですね。中サイズが18個。小サイズが29個。これで、銀貨83枚になります。牙ですが、これは銅貨15枚で買い取りさせてもらいます」


 銀貨83枚と銅貨15枚。


 以外に高値で買い取りしてもらった。ココが予想してたのより、少し高い。ラッキー!


「次に討伐料ですが、C級ランクの魔犬18頭と、D級ランクの魔犬が5頭、ゴブリン19匹、E級ランクのゴブリンが5匹てすね。魔犬は銀貨28枚に、D級ランクの魔犬、ゴブリンは1匹銅貨34枚、他のゴブリンは銅貨1枚になります。合計、銀貨31枚、銅貨5枚になります」


(へぇ~~。魔石やドロップアイテムの方が、討伐料より高いんだ)


 需用があるからかな。勉強になる。


 取り合えず、ドロップアイテムと魔物の討伐だけで、銀貨114枚と銅貨20枚。


 銀貨10枚が金貨1枚だから、金貨11枚か。金貨1枚で一か月は遊んで暮らせるから……か……かなりの金額になる。


 それを、たった三日で稼いだ。


 完全に引いた。マジ怖くなる。もう、乾いた笑みしか浮かばないよ。


「……それから、今回の依頼の代金ですが、金貨十枚「金貨10枚!?」」


(マジですか!?)


「はい。討伐クエストとは別に緊急クエストの分も含まれています。……全部で、金貨10枚。銀貨114枚と銅貨20枚ですね。銀貨110枚を金貨11枚に両替なさいますか?」


「はい。お願いします」


 数えるのが楽なので、今回は両替して貰った。


「はい。畏まりました。では、どうぞ!!」


 にっこりと微笑むと、係員のお姉さんは硬貨でパンパンになったた革袋を差しだした。


 私は革袋を受け取る。そのずっしりとした重さにビクビクしながらも、鞄の一番底に隠すようにしまった。今ここで、固定スキル【銀行】を使うわけにいかないからね。


「ムツキさん。帰りに、依頼の受付口に寄って下さいね。そこで、カードの確認を行いますので」


「……分かりました」


 係員のお姉さんに頭を下げ、私は買い取りブースから離れた。







 その背中を見送りながら、係員のお姉さんは「フゥ~~」と息を吐く。


「マジ、可愛い。初々しいし、可愛いし、綺麗だわ。もう、最高!!〈銀色の冒険者〉を生で見られるなんて、超ラッキー!! 皆に自慢しよ!!」


 私には、お姉さんの独り言は聞こえなかったが、サス君とココにははっきりと聞こえていた。


 サス君とココが大きな溜め息を吐く。具合が悪いのかな?


「サス君、ココ。どうかしたの?」


 私は気になって尋ねた。


 サス君は「いえ、何でもないです」と言葉を濁す。ココは何も答えてくれない。


(何か、心配事でもあるのかな?)





 最後まで読んで頂き、本当にありがとうございますm(__)m


 それでは、次回をお楽しみ(*^▽^)/★*☆♪

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