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第四話 災厄と恵みの雨

 書き直しましたm(__)m



 猶予は日没までーー。



 太陽はまだまだ高い位置にある。


(……後、八時間ってとこね)


 でも、時間がない事に変わりはない。


 第一目標は無事クリア出来たけど、問題はここからだ。そう……ここからが重要になる。



 私にとって生まれて初めての魔法ーー。



 ジュンさんが見せてくれたから、何となくだけど発動のプロセスは分かる。


 まず、使う魔法の呪文を詠唱して魔方陣を描く。ジュンさんは【ファイアボール】や【ウォーターボール】とか、短い単語を使っていた。 


 そして、描いた魔方陣に魔力を流し魔法を発動する。


 重要なのは、呪文を詠唱しただけでは魔法が発動出来ない点だ。


 ジュンさんは詠唱と同時に、魔方陣に魔力を流していた。つまり詠唱える同時に魔法が発動していたわけ。


 いとも簡単にやってたけど、それって超高度な技だと思う。だって、たった数文字の単語を言う間に三つの工程をこなし、その上、流す魔力の微調整もしてたんだから。さすが、魔法使いだよね。


 さて……問題なのが、果たして自分にそれが出来るかどうかだけど、まず無理でしょう。ってか、絶対無理。


 ジュンさんレベルは無理だとして、せめて、スムーズに魔法が発動出来るようにはなっておきたい。後八時間で。自分で自分をかなり追い込んでると思うが、甘ったれた泣き言を言う時間は到底なかった。


「……緊張してきた」


 掌が汗でベトベトだ。ローブと胸当てで隠れているから見えないけど、白いTシャツが汗で張り付いてる。


「緊張するのは分かるけどさ。そんなに固くならないでいいよ。ものは試しに、ジュンがやってた通りに参加するしてみたら」


 ココが促す。


「そだね……」


 魔法を覚えた時の状況ならはっきりと覚えている。真似をするだけなら出来るだろう。でも、それじゃ駄目だって事は嫌でも分かる。


「大丈夫ですよ。睦月さんなら出来ます」


 不安になれ私を、サス君が応援してくれる。


 真っ直ぐに私を見詰める目が、とても優しくて温かい。時には厳しいけど。いつも、私の事を一番に考えてくれる。それがどれ程、私を励ましてくれてるのか、サス君は分かってるのかな? 


 サス君とココが信じてくれるから、何としても成功させたいと思う。


「…………」


「睦月さん?」

「ムツキ?」


 難しい顔をして考え込む私を、サス君とココは心配そうに見上げる。その視線を感じながら、私は必死で考える。


 ジュンさんは詠唱と同時に微調整しながら魔力を流してたけど、素人の私がいきなりその域に達するのは、まず不可能に近い。


 といって、詠唱と魔力を流すのを別々にしたら、スムーズとはいえないし。反対に、詠唱の時間を長くして、同時に行うのが本来はベストだと思うけど、それじゃ時間がかなり掛かる。時間にゆとりがあるなら、それでもいいけど……。今回はその方法は使えない。


(代わりに、何か打開策を練らないと……)


 今私が出来る事は、魔力を自由に流し集める事だ。


 魔法使いになる事を決めた時から、師匠に言われて訓練してきた。だからそれは、わりかしスムーズに出来る。


 実際、ハンター試験の時に会ったあの失礼な戦士の時は、目に少し魔力を流してその動きを見切ってた。魔犬に追い掛けられていた時は、多めに魔力を足に流していた。


(その時、魔力の調整もしてたよね。……ん? それって使えない? そうだよ!! 別に三工程に拘る必要はないんだよ!! 要は、魔方陣に魔力が短時間で流れればいいんだから!!)


 唐突に思い付く。勿論、速攻で試してみる。


「……やってみる」


 緊張を解すために二回程深呼吸をしてから、私は右手に魔力を少し流しておく。これ一番大事。



 その後で、小さな声で「ファイアボール」と唱えてみた。声の小ささは自信の無さかな。小ささは声でも唱えてみたら、ジュンさんと同様にボワッと炎の塊が掌に現れる。


(……で…………きた……)


「やった~~~~!!!!」


(成功したよ!! ジュンさん、伊織さん(前店主と現店主(師匠)))


 私がやったのは、三工程ではなく四工程。一つ工程を増やしてみた。


 あらかじめ魔力を手に流しておけば、詠唱と同時に魔方陣に魔力が流れるのではないかって考えた。


 だって……魔方陣は掌の先に描かれてるからね。上手くいけば、結果は近いものになる。理論上はね。


 現に、言い終わると同時に炎が現れた。


 ジュンさんの域には到底無理だけど、近付ける事は十分可能だって証明された。一秒でも早く魔力を流し集める事が出来れば、その分、魔法が発動する時間が短縮される。今までしてきた訓練を続ければ、より早く発動出来る筈。


 何となくだが、道が見えてきた。


 ホッと胸を撫で下ろす。



(あれ? サス君、ココどうしたの? 段々離れてるけど。……ん? 何見てるの?)


 視線の先にあるのは私の手でした。


 サス君もココも私の掌に浮かぶ炎を凝視している。


 熱くないから、完全に忘れてた。出したままだったよ。あれ? それ、少し大きくない? まるで、


 ーー炎の塊。


 そう塊だった。


 ジュンさんが見せてくれた倍以上の大きさで、最早それは玉ではなく、掌の上で燃え上がる炎の塊。


「えっ! えーーーーーー!!」


(少ししか魔力を流してないのに、何でこんなに大きいの!?)


 流した量はハンター試験の時と同じぐらいなのに。


 怖くなって、慌てて炎を握り締めた。ジュンさんがそうしていたからだ。だけど、炎の勢いは弱まるが消えない。魔方陣も崩れていない。


「消えて!! 消えてってば!!!!」


 プチパニックを起こしていた私は上下に手を振る。


「「うわっ!! 危ない!!」」


 ココとサス君も距離をとる。


(サス君もココも酷っ!!)


 涙目で、ココとサス君を睨む。その間も手は振り続けている。


「「ムツキ(睦月さん)手を振るな!!」」


 又しても綺麗にハモッた狛犬と黒猫。


 プチパニックを起こしてた私には、サス君とココの、悲鳴に似た注意は耳には届かない。ただただ炎から逃れたくて、必死で手を振るだけだ。今自分が、サス君の結界内に居る事なんてすっかり忘れてた。


「「「あっ…………!?」」」


 今度は全員の声が綺麗にハモッた。辿る目線も一緒だ。


 スルリと私の手から放たれた炎の塊は、弧を描くように空を飛んで行く。


 サス君が慌てて結界を解いたので、結界内で爆発する事はなかった。


 爆発してたら、洒落になんないよ。



 爆発する事はなかったが、塀を越えて隣に落ちた炎の塊は、偶然にもハンターに追われて隠れていたゴブリンの集団の上に落ちた。


 突然降ってきた災厄に、ゴブリンたちは阿鼻叫喚の悲鳴を上げる。


 ーー逃げ惑うゴブリンたち。


 直撃したゴブリンは即死。


 周りは炎の海。


 突然降ってきた炎で逃げ場を失ったゴブリンたちは、炎に焼かれながらも、命からがら路地から飛び出して来たところを、他のハンターたちに呆気なく倒された。


 中には、壁をよじ登ろうとしたゴブリンもいたが、殆どが途中で力尽き落ちた。唯一、もう少しで登れそうなゴブリンもいたが、私たちを見た瞬間、手を放し落ちてしまった。正確には、サス君を見てだけど。


 ゴブリンたちにとっては災厄だが、ハンターたちにとっては恵みの雨になった。炎だけど。


 壁越しに聞こえてくる悲鳴と、興奮したハンターたちの喧騒に唖然とする私たち。


 いち早く状況を把握し復活したサス君とココは、私の側まで来ると怖い顔をして厳しい声を発した。


「「戦闘時以外の攻撃魔法は使用禁止!!!!」」

「直ぐに、パニくらない」

「ココの言う通りです。戦闘時は特に冷静さが求められるんですよ」


 私はココとサス君に厳重注意を受けました。


「分かりました。以後気を付けます」


 乾いた土の上で正座させられ、私は何度もコクコクと頷く。


 ようやく、ココとサス君の説教が終わった。正座を解き足に付いた砂を払っていた時だ。


「これ、あんたがやったの?」


 突然、頭上から声が降ってきた。


 声がした方向に頭を向ける。壁の上に若い男が膝を屈め、私を見下ろしていた。


 あれ? どっかで見た事があるような……。


「もしかして、フェイさん!?」


 そうだ。間違いない。このガラの悪そうな目付きは、フェイさんだ。第一印象は猫のような人だって感じていた。口が悪かったのも記憶している。


 彼は、私がこの世界に来て、初めて会った人たちの一人。あの方向音痴の。


 人をくったかのような見た目と態度だが、実は正反対で優しい人だ。だって、私にパンフレットをくれたのがフェイだからね。彼もハンターで、職業は狩人。通りで、こんな足場の不安定な場所で平然と出来る訳だ。ほんと、猫のようだ。


 フェイが居るって事は、皆も一緒だよね。会えたらいいな。


「…………」


 だがフェイは、無言のまま私たちを見下ろしている。その表情は険しい。気にしつつも、会ったら言おうと決めていた事を口にする。


「その節はお世話になりました。無事、試験に合格しました」


 頭を軽く下げる。


「そんなの、見たら分かるだろーが。んで、初クエストがBランクとはね……」


 おどけたような口調だが、どこか棘があるように感じるのは私の気のせい。


「…………」


 今度は私が黙り込む。会話が続かない。


 黙り込んだ私に苛ついたのか、フェイは私に向かって魔石を四個投げてよこした。


「それ、あんたの分」


 そう言い残すと、フェイはヒラリと壁から飛び降り消えた。


 楽しみにしていた出会いは、苦いものになった。


 




 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 ほぼ全文書き直しました。


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