第三話 スキル※
加筆修正しました。
魔犬の体に深々と突き刺さったままのナイフ。
私はその柄を握ったまま、敢えて引き抜こうとはしなかった。その必要がないからだ。下手に引き抜いて、浴びなくていい返り血を浴びる必要ないでしょ。
何故かこの世界では、魔物の骸は時間と共に消滅する仕組みだ。
骸全体が青白い光に包まれて消える。
諸説(手引き書)によれば、骸は魔石に変化するだけだと述べている学者もいるが、本当はどうなのかは誰も知らない。ただ……私たちが日常で使用する魔法具の要は、魔石だ。
魔石が、魔物の命そのものだという事は間違いない事実。
その魔石で、この世界は動いている。
地面に小さな魔石三個と牙が二本落ちていた。
立ち上がった私はナイフを鞘に仕舞い、魔石と牙を拾うとそっと鞄にしまった。
自分でも不思議に思う。
あれだけ、魔犬を殺す事に抵抗があったのに……今は妙に冷静な自分がいる。といって、平気な訳じゃないけど……。考え出したら止まらない気がしてきた。今は考えるの止しとこ。今日一日でやるべき事が沢山あるからね。取り合えず、その前に……
「……得た経験値で魔法を習得しなきゃね」
そう呟いた時だった。
あれ? 何か、空気が変わった気がする。
「結界を張ってますので、そちらに集中しても大丈夫ですよ」
(結界!?)
「えっ!? そんな事も出来るの!?」
「はい」
少し照れくさそうにサス君は答える。
(サス君って、絶対チート持ちだよね……)
さすが、最高霊獣。この世界じゃ、フェンリルの亜種って認識されてるけどね。
「ムツキ。早速、ハンターカードで確認してみたら?」
ココがいつものように私の体をよじ登ってくる。爪が当たってちょっと痛かったけど、首筋にココのサラリとした毛の感触がして、気持ち良いので全然平気。
安心して、ハンターカードを懐から取り出した。落としたら困るので、常に首から下げている。
さてと……どうなってるかな。
【ムツキ=チバ 14歳(女) 出身トコヨ】
レベル 3
HP 510
体力 255
敏捷 425
知力 524
魔力 610
魔耐 554
運 80
職業 冒険者
(S級ランクの職業につける可能性大)
〈スキル〉
炎魔法 水魔法 風魔法 土魔法 雷魔法
回復魔法 浄化魔法
レベルは3上がり、ステータスも大幅に上がっていた。魔犬一頭で。
(冒険者って、経験値が稼ぎ易いって言ってたけど……)
サス君が倒した魔犬の経験値は加算されてない筈なのに。テイマーなら加算されるけど。これが、この職業の特徴なのね。これなら、レベル15になるのも、そんなに時間が掛からないかも。それはそれで、少し悲しい気持ちになる。
スキルに書かれていた文字が、全てグレーの文字から黒文字に変わっていた。
取り合えず、私は必要なものから習得する事にした。
一番必要なものは、回復魔法だよね。
限られた荷物の中で、持って行くポーションの数はどうしても限られている。そして、ちょっとした怪我で命取りになる現場だって、身に沁みて分かった。だから攻撃よりも、まずは回復魔法が大事だと痛感した。
私は回復魔法の文字をタップする。すると、ジュンさんが言ってた通り文字が浮かび上がった。
【回復魔法を習得しますか?】
【はい/消費経験値ー15】 【いいえ】
(習得するには、経験値を十五消費するって訳ね……)
大丈夫。全然構わない。私は躊躇うことなく、【はい】という文字をタップした。
「痛っ!」
然程痛くはなかったけど、吃驚して思わず声が出た。ハンター試験の時と似てるかな。ただ違うのは、全身がカーと熱を帯びたようになった事。変な感覚だ。
ハンターカードを見てみると、回復魔法の文字が変わっていた。
【初級回復魔法〈1/100〉】に。
(つまり、100を越えたら中級に上がれるって事ね)
うんうん。努力が見える形っていいよね。なんか、楽しくなってきた。本当に、ロールプレイングゲームみたい。現実の世界だけど。
幸いな事に、経験値を十五消費しても、レベルはまだ3のままだった。
後、二、三個習得出来るかな?
やっぱり、次に習得するのは攻撃魔法だよね。だとしたら、当然炎魔法でしょ。
ポチポチ。回復魔法の時と同じように習得した。まだ3のままだ。次は水魔法ね。同じ事を繰り返す。大丈夫。雷魔法は最後に習得するから……次は浄化魔法ね。これは大事。野宿が決定してるから、特にね。
あれ? 意外に消費しない。五属性魔法一つに消費するのは、五つだけ? 初期魔法だからかな。でも、これなら、全部習得出来るんじゃない? まぁ、下がってもいいかな。五つだし。
思いきってタップしてみる。
全部で経験値を45消費したが、レベルは下がらなかった。ラッキー!
レベルが下がらなかった事はラッキーだったけど、〈スキル〉の項目に記載されてる魔法の文字は、習得前とは違い、大きく変化していた。
〈スキル〉
初級炎魔法〈1/100〉
初級水魔法〈1/100〉
初級風魔法〈1/100〉
初級土魔法〈1/100〉
初級雷魔法〈1/100〉
初級回復魔法〈1/100〉
初級浄化魔法〈1/100〉
「魔法を使用する事で数字が増えていくよ。100を越えたら、中級魔法に昇格だね」
ココが解説してくれる。ほんと、先生だよね。
「レベルと一緒で、地道に経験値を積まなきゃいけないって事ね」
「何事も、地道が一番ですよ」
「そうだね。努力が一番大事」
だね。私もそう思う。どんだけ魔力が高くても、それを使いこなすには経験が大事。地道な努力が、強くなる一番の近道。
第一目標である、魔法の完全習得は達成したけど、これをスムーズとはいかなくても使えるようにしとかなきゃ。
ギルマスから与えられた時間は、今日一日。
明日から、本格的な討伐が始まる。
超ド素人の私が、討伐隊に参加する事は無謀な行為だって重々承知してる。でも、ギルマスが参加を決めた以上、今更嘆いても仕方がない。何も始まらない。
例え戦えなくても、最低限、足手まといにはなりたくない。
それは、他のハンターをも危険に晒す事だって十分理解しているから。
目標は、足手まといにならない程度。
猶予は、日没までーー。
大幅に加筆修正しました(*^▽^)/★*☆♪
最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
これからも、どんどん加筆修正していきますので、これからも宜しくお願い致しますm(__)m




