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第一話 マドガ村

大幅に書き直しましたm(__)m



 ジュンさんのお陰で、五属性魔法(初級)と浄化魔法を習得する事が出来ました。


 習得って言っても、あくまで勉強しましたよってだけで、肝心な課題をクリア出来ていない。課題をクリア出来ないと、ハンターカードに書かれたスキルの文字がグレーのままだ。つまり、魔法が使えない。


 課題は魔物を討伐する事。


 討伐した時に得られる経験値を消費して、魔法を完全に習得するのが、この世界のルールだ。


 だから、魔法を完全に習得したと同時に、レベルが下がる事も当然ある。まぁそれは、全然構わないんだけどね。消費した経験値は直ぐに取り返せるだろうし。差して気にならない。


 という訳で、早速課題をクリアするために、私とサス君、そしてココと一緒に廃村になった、マドガ村に来ていた。



 マドガ村は、グリーンメドウから西に半日、乗合馬車で移動した場所にある。結構離れていると思うかもしれないが、位置的に考えると、マドガ村は大勢の人が暮らすグリーンメドウの直ぐ近くにある村だと認識されていた。


 元々、それほど大きくない農村だった。


 だが、何故か魔物に気に入られ、三年前、二度にわたりマドガ村は魔物に襲撃された。度重なる襲撃によって大打撃を受けた村人たちは、故郷の村を棄て、今この村は、人間が住まない廃村となっている。


 そして、廃村になった村の新しい村人となったのは、人間ではなく魔物だった。


 いつから棲みついたのかは分からないが、五日前、近くを通ったハンターの報告で発覚した。


 直ちに、ギルドは偵察部隊を送り、報告が間違いないと判断。直ぐにギルドは王都に報告。並行して、ギルドは依頼書を作成し、至急の案件として掲示板に載せた。


 依頼内容は、魔物の種類と数の把握だ。表向きはね。




【依頼内容 マドガ村の探索(ランクB)】

 廃村マドガ村に棲みつく魔物の種類と数の把握。

(※討伐含む)

〈依頼主〉 ハンターギルド本部

〈報酬〉  銀貨三枚(最低報酬)

      ※調べた箇所により、臨時報酬有り。

〈追記〉  最低レベル25以上が望ましい。

     ※但しシルバーカード保持者は要参加。




 レベル1の超、超~初心者の私だけど、一応シルバーカード保持者なのでこの依頼を承ける資格はあった。


 だけど、【シルバーカード保持者は要参加】って一文がなかったら、この依頼はパスするつもりだった。


 だってそうでしょ。シルバーカードだけど、超ド素人なんだよ、こっちは。いやいや、そんな期待のこもった目で見られても、こっちが困る。そもそもマドガ村の件がなかったら、薬草採取がベストと思ってたしね。それがこなせるようになってから、段々と仕事のレベルを上げていけばいいかなぁって、考えてた。でも、この一文のお陰で、マドガ村行きが決定したよ(涙)。


 でもまぁ、決定した事をいつまでも嘆いていても仕方ないし、気持ちを切り替えないとね。


 FからSS級まである依頼ランクの中で、Bランクは上から四番目のランクだ。


 ランク的に言うと真ん中ぐらいだけど、追記でレベル25以上と設定されてるから、本当の所、難易度はランク以上に高いって考えた方がいいかな。(※討伐含む)って、わざわざ記載してるしね。そこまで用心を重ねてるって事は、グリーンメドウに近いせいかもしれない。馬車で半日の距離だけどね。


 ランクの割りに難易度が高い依頼だけど、行くだけで最低銀貨三枚貰えるし、無理して、村の奥まで行く必要はない。いつでも逃げられる場所で、ちまちまと経験値を稼ぎ、魔法を完全に習得する。よし、決まった。この作戦でいこう。


 そうと決まれば、早速その足で、ギルドに依頼参加の手続きを済ませた。


 同時に、明日出発する乗合馬車の予約もしておいた。前払いで銀貨二枚を支払っておく。勿論、サス君とココの分も込みだ。


 依頼書が出ている大きなクエストは、現地まで行く乗合馬車が出ている事が多い。一つ勉強になった。


 にしても、往復の運賃支払ったら、最低報酬軽く越えるよね。魔物の討伐と落としたドロップアイテムで補填するしかないか。でもほんと助かった。係員のお姉さんが教えてくれなかったら、出発が二日ずれてたよ。


 それって、知らなかった事とはいえ、ギルドの応援要請を軽く無視する事になるからね。なったばかりで、心証を悪くさせるのは控えたい。それに本音を言えば、正直、これ以上目立ちたくないんだよね。良い意味でも悪い意味でも。


 取り合えず、急に決まったクエストの準備を、慌ただしく済ませる。


 そして次の日の早朝、ジュンさんに見送られ、サス君とココと一緒にマドガ村行きの乗合馬車に乗り込んだ。


 掲示板に依頼書が掲載されて数日なのに、そこまで行く乗合馬車が出てるのには、ちょっと驚く。


 お客さんは私たちしかいなかった。後ろを走っている乗合馬車はギュウギュウ詰めなのに。何で?



 半日馬車に揺られ、マドガ村に到着したのは夕方だった。陽はまだ傾いていない。


 後ろの乗合馬車に乗っていたハンターたちは皆、マドガ村の入口に向かっている。


 村の入口の脇に、ギルドの制服を着た係員がボードを持って立っていた。係員は素早くチェックし終えると、何かの用紙を配っていた。


 あっ、そうそう。地上や地下ダンジョンに関係なく、クエストの場所に足を踏み入れる事を〈潜る〉って言うんだって。ハンター特有の用語みたいなものかな。


 慣れない乗合馬車の移動に疲れた(お尻が痛かった)ので、無理をせず、一晩休憩をとってから潜る事にした。休憩をとったのは、私たちだけだったけどね。



 マドガ村の外は、ちょっとした広場のようだった。


 簡易食堂を中心に、道具屋、それに鍛冶屋が店を出している。少し離れた場所には、テントが幾つも設置されていた。あれが宿屋かな。


「凄い!! 何か楽しくなってきた!! 後で覗きに行ってもいいかな?」


「たかられるよ」


「えっ!? マジで?」


 まぁ、それ程の気概がなくちゃ、こんな所に店を出したりしないよね。覗きに行きたかったけど、諦めようかな。残念。


 にしても、アウェイ感半端ない。明らかに、子供が何しに来たんだって感がヒシヒシと伝わってくるよ。確かに、子供なんだけどね。それにどうも、この世界じゃ、二、三歳若く見られがちなんだよね。十一、二歳にしか見えない子供が、Bランクのクエストに参加しに来たんだもん、当然、場違いだと思うよね。分かるけどさ……。


「戦闘用の大きさになったら、おそらく大丈夫でしょう」


 そう言うと、サス君はセントバーナードぐらいの大きさに変異した。


 瞬間、周囲がギョッと息を飲む。だけど、騒がない。さすが、ハンターに関わりがある仕事をしている人たちだね。肝が据わってる。平然を装いながら、私を観察する者が大半だ。


 ハンターは良くも悪くも実力社会。私がいくらひよっこでド素人でも、一応シルバーだし、サス君やココがいる。完全に虎の威を借りた狐だけどね。


「サス君、小さくなっていいよ。ここに魔物は出ないしね」


 頭を撫でるとサス君が小さくなった。


 またしても、息を飲む周囲の人たち。


 うん。これで、少なくともたかられる心配はないだろう。子供がだからって、舐めて掛かられるのは不愉快だからね。


「中々やるね、ムツキ」


 小声でココが話し掛けてきた。


 猫って、ニヤリって笑えるんだ……初めて知ったよ。勿論、私もニヤリと笑い返す。


「先制パンチとしては良かったでしょ」


「まぁね」

「さすがです」


 誉めてもらえたよ。少し嬉しいかな。


「……食事の前に宿屋に顔を出してみる?」


 最悪とれなかったら、野宿かな。サス君たちがいるから、夜は寒くないよね。天然のモフモフ毛布があるから。

 

 予想通り、宿屋は満室でとれなかった。まぁ、仕方ないよね。野宿決定。


 それにしても、あの宿屋の人を小馬鹿にした顔、ほんと腹立つな。完全に子供だって舐めてたよね。あの位置なら、サス君が大きくなった姿は見えなかったかもしれないけど。だとしても、あの態度はないわ。


「噛みますか?」

「引っ掻く?」


 どっちもアウトだよ。一応、彼は民間人だからね。でも、気持ちは嬉しい。


「いいよ。もう二度と、あの男の宿屋には行かないから。それより、ご飯食べよ」


 という訳で、やって来ました。食堂に。


「……まさか、クエスト先でこんな食事がとれるなんて思ってもみなかったよ」


 メニューは一種類しかないけど、一枚の皿にバターライスと鶏肉のトマト煮、後サラダ。別にスープも付いている。別料金を払えばデザートも付く。結構な量だ。デザートも付けたかったけど、止めた。混雑を避けて早めに夕食をとる事にしたけど、失敗だったかな。


 勿論、サス君とココの分も注文したよ。変な顔をされるかなって思ったけど、別に変な顔はされなかった。それもそうだね。


 木製の椅子とテーブルが設置されている。空いてたが、端の方に座った。



「早速来たな、ムツキ。初めて来たクエストはどうだ? 驚いたか? 有名なダンジョンとか、遺跡の周りには、結構色々なお店が顔を出してるぞ」


 背後から急に声を掛けられ、ビックリした。さっきまで、人の気配はなかった。サス君もココも驚いている。慌てて後ろを振り返ると、そこに居たのは、私に冒険者を勧めてくれたギルマスだった。


「……どうして、ギルマスが?」


(ギルマスが出て来る程の案件なの?)


「向かいいいかな?」


 私の問いに答えず、同席を許可していないのに、ギルマスは私の向かいに腰掛ける。


 まぁ、いいけど。


 向かいに座るギルマスを観察する。


 薄茶色の短い髪に色素の薄い赤い瞳。美形だけど、それよりも精悍さが表に出て、どこか憎めない好青年の印象を受ける。でも、まとっている雰囲気は正反対だ。何か鋭いものを秘めているような、近寄り難い何かを発しているように感じた。


「ここの飯は旨いぞ」


 一口食べてみる。ほんとだ。美味しい。


「ムツキは今着いたばかりだよな。明日から潜るのか?」


 当たり前のように名前呼びされてるが、別に不快には思わないのでそのままにしとく。


「はい」


「……悪いな。戸惑ってるだろ」


 ギルマスの顔が歪む。


「初めてのクエストでBランクは酷だと思ったんだが……」


「それ程、早急に対処したい案件だったんですね」


 ギルマスは驚いたように目を見開く。


「まぁな。ここから、グリーンメドウまでは馬車で半日の距離だ。遠いと思うだろ? でもな、町の皆はそうは思わない。マドガ村の元住人も多く移住してるしな……。不安は早く解消した方がいいだろ」


 確かに、ギルマスの言う通りだ。納得出来る。


 グリーンメドウは〈はじまりの町〉と呼ばれている。


 唯一ここでしか、ハンター試験を受ける事が出来ない。つまりそれは、言い換えれば、ハンターになったばかりのひよっこが多いって事だ。そうなると、必然的に戦える人間は限られてくる。その中で対処しなければならない。シルバーカード保持者が要参加になるのは当然だと思えた。その中に、超ド素人が混じっていても。ギルマスでさえ討伐に加わるのだ。


「……依頼内容は、魔物の把握でしたよね?」


 一応訊いてみる。始めから、表向きだとは思ってたけど。


「ブロンズには魔物の把握を引き続きやってもらう。把握を六で討伐は四でだ。だが、シルバークラスは……討伐を重視してほしい」


(なるほど。やっぱりね……)


 ギルマスが目の前に現れた時、何となく嫌な予感がしたんだ。


「……でも、ムツキは……」

「そうです!! 睦月さんは……」


 ココとサス君が心配して口を挟む。


「分かりました。但し、一日時間を下さい。魔法を完全に習得したいので」


 サス君とココの気持ちは凄く嬉しい。嬉しいが、その願いを通すのは我が儘だと思った。


 無茶な事だと、ここにいる全員分かっていた。


 分かっていても、例外は許されないというギルドの方針も、そして、その決定を下したギルマスの気持ちも、全員理解していた。


「……分かった。討伐隊には明後日から入ってもらう」


「はい」


 ちまちまと魔物を倒して、魔法を完全に習得したら、速攻帰るつもりだったけど、どうやら素直に帰れないようだ。内心、大きな溜め息を吐いた。


 でもこんな時でも、ご飯は美味しかった。




 

 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 大幅に書き直しました。随時、書き直して行く予定です(〃⌒ー⌒〃)ゞ


 これからも宜しく!! 

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