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第十三話 魔法

 

 


 ーー魔法。


 魔法など存在しない世界の住人たちにとって、その二文字はとても魅力的なものだ。


 そして、エルフやドワーフ、ドラゴンと同様に、非常に心踊らせるものに違いない。


 でも多くの住人は、それが仮想現実フィクションだと知っている。あくまで、物語の世界にしか存在しないものだと。私も実際に渡る(堕ちる)までは、その大多数の一人だった。


 中には、物語に登場するような主人公のように、異世界に渡る事が出来ると信じている人もいるかもしれないけど。まぁそれは、ほんの極々僅かな人たちだと思う。


 でももし、何かの拍子に別の世界、異世界に渡る方法を知り得たのなら、大半の人が絶対一度は切に渡ってみたいって願うだろう。


 ラッキーな事に渡った先で自分に魔力があったなら、一度は使ってみたい。大勢の人たちが憧れる、力の代表的なものだからね。魔法は。


 正直使えたら、カッコイイよね。物語の主人公になった気分かな。モブでもね。


 それで、もしこの世界に渡って来れたのなら、魔法の面では超ラッキーだと思うよ。


 だって、この世界の魔法の習得方法はものすごく簡単だから。ほんと、拍子抜けするほどにね。その気になれば、子供でも幼児でも習得出来る。習得するだけなら。魔力をほんのわずかでも持っていれば、習得可能だ。使えるのは別としてね。



 この世界の魔法の習得方法。


 それはーー見るか、体験するだけ。それだけで、魔法を習得出来る。超簡単。


 ……呆気にとられるよね。


 初めてこの事を知った時、あまりの簡単さに。私思わず「嘘でしょ……」と呟いてしまった。


 でもまぁ、現実はそんなに簡単じゃないんだけどね……。


 そもそも、この世界の人族は魔力が少ない種族だし。


 魔法を習得しても、使えるようにするには経験値を消費しなくちゃいけないし。


 つまり、魔物を狩って経験値を稼がないといけない。


 

 昔はどうだったか知らないけど、今は、魔物を狩る事が出来るのはハンターだけ。


 つまり、ハンターにならなければ、魔法を完全に習得する事は出来ないのだ。


 因みに免許のない者の討伐は、法律に違反する。正当防衛を除いてね。余談だが、王都を護る騎士たちは、全員ハンター資格を持っているのが条件らしい(ココ談)。騎士たちも魔物を討伐するしね。


 それは兎も角、極めつけは、ハンターになるためには朱の大陸の外れの町、グリーンメドウにわざわざ来なければならない事だ。そこでしか、ハンターの登用試験が行われていないからね。かなり、シビアでしょ。だって、試験を受けるためだけに、魔物に襲われる危険性を冒して旅して来てるんだから。


 この世界の住人たちにとって、ハンターという職は命を掛けてもいいくらい、魅力的で名誉職なのだ。


 

 正直、平和な世界で生まれ育った私にとって、その気持ちは理解し難い。けど、この世界ではそれが当たり前。それ程、魔物はこの世界の住人たちにとって、脅威な存在だと言えるんだと思う。町の外では、まだまだ危険が多いって事だ。


 とはいえ、無事グリーンメドウに到着しても、試験と明記していれ以上、当然不合格者も存在するわけて……。その合格率は四対六。四が合格者の比率だ。逆じゃないんだよね~~これが……。


 という訳で、結論。


 ハンターになれただけで、エリート。


 その上、魔法を完全に習得出来た者は、クラスに関係なく、かなりのエリートになる訳だ。


 その超エリート様の多くは王都にいるそうで……。まぁ、王都の方が商売に適してるよね。魔法は買うものだし。となると、私が完全に魔法を習得出来るようになるのは、王都に着いてからになるみたいです(涙)。



 師匠から貰った手引き書を読んで知った事だが、見ただけで覚えられるのは、初級クラスの五属性魔法と後方魔法の一部だけだ。


 それ以外の魔法、例えば、精霊魔法と闇魔法、光魔法(治癒魔法は除く)に関しては、特定の条件を満たさないと習得出来ないので、一般的ではない。


 五属性魔法とは、火、風、水、土、雷の五つの魔法の事だ。


 私たちが生活する上で、一番密接な要素を持つ魔法でもある。


 しかし、術者が持つ魔力によっては、扱える魔法に差が出るらしい。当然だよね。


 習得している種類も、雷魔法を除く他の四つの魔法は習得している者が多く、ポピュラーだ。雷魔法に関しては、習得者が少ないって、ココが教えてくれた。


 攻撃しか使えないのに、実際戦闘レベルで使えるようにするには、かなりのレベル上げが必要なんだって。確かに、効率悪いよね。人気がないのも頷ける。


 幸い魔力はチート並みにあるので、取り合えず五属性制覇です。










 今日はうみねこ亭の定休日。


 私がこの世界に来て、初めての定休日だ。


 ジュンさんにとって貴重な休みなのに、やらないといけない用事がある筈なのに、私の我が儘に付き合ってくれている。


 裏庭は通りから死角になっていて、道から裏庭の様子は覗けない。だから、ここが手近で最適な場所だった。


 ここで何をするかって。

 それは、魔法を習得するために実技を見せてもらうのだ。


 いやぁ~~完全に忘れてた。

 どんな魔術師よりも優れている魔法使いが、すぐ側に居る事を。


 当然、魔法使いのジュンさんが魔法を習得していないなんてある筈もなく、五属性魔法、完全に習得済みでした。勿論、他の魔法も。という訳で、急遽、五属性魔法を直々に教えてもらう事になりました。調整感謝です。



「それじゃ、まず、【ファイアーボール】ね」


 早速始まりました。まずは、ファイアー系から。


 ジュンさんの右掌の上に火の玉が浮かび上がる。明るい朱色だ。火の玉と掌の間に、小さな魔方陣が描かれているのに気付いた。簡単とは言えないが、瞬時に描ける程安易な陣には見えない。


(ジュンさんが【ファイアーボール】って言ったと同時に、魔法陣が完成したよね……?)


 考え込む私を観察しながら、ジュンさんは火の玉を握り込む。すると、火の玉は音もたてずに消えた。魔方陣も消える。あっという間だった。


「熱くないんですか!?」


 唖然としながらも尋ねる。


「全然! 私の魔力で作り出した炎だからね。私を攻撃することはないよ。……それじゃ、次ね! 【ウオーターボール】」


 ファイアーボールと同じで、今度は透明な玉が浮かび上がった。陽の光りに反射して、キラキラと輝いている。表面が波立っている。そして火の玉を消したように、直ぐに魔力を分散させ、魔法を打ち消した。


(やっぱりそうだ!! 発する言葉と同時に魔方陣が描かれてる! 反対に、魔法を消すのは、魔方陣の一部が欠ければいいんだね)


「(この子、本当に筋がいいわ。一回見ただけで、気が付いたみたいね)……次進んでいい?」


「はい!」


 風魔法の【ウインドボール】。

 土魔法の【アースウォール】。

 雷の【ライトボール】。


 土魔法だけ、ボールじゃなくて壁だった。


 次々と繰り出される魔法に、目を輝かせながら注意深く観察する。


(なるほど、そういう事か……。術者が発する言葉が魔方陣を描く筆なら、魔法を短い時間で発動させるには、言葉を短縮すればいいって事ね)


 ジュンさんみたいに単語にすれば、短時間で魔法を発動出来るって事か。確かに、短くすればするほど、魔物の討伐に有利に進む。理論上で出来ても、それが出来るとは限らない。つまり、日々訓練って事だよね。



 五属性魔法の初級を全部見せてもらったが、「後一つ、どうしても見せたい魔法があるの」と、ジュンさんが言った。


 首を傾げる私に見せてくれたのは、【浄化クリーン魔法】だった。


【浄化魔法】は簡単に言えば、汚れた体や場所を清める魔法だ。


 聞いて納得。うんうん。絶対必要だよね。汗でベトベトになったまま寝たくないし、ましてや、魔物の反り血を浴びたまま放置しとくのは嫌だ。ダンジョン内や町の外にお風呂なんてないし。 まぁ、あったとしても入りたくないけど。


「……これで、五属性魔法全部と浄化魔法を習得した訳だけど。一度、ハンターカードで確認してみてくれる?」


 ジュンさんに促され、私はハンターカードを取り出し確認した。




 〈スキル〉

 炎魔法 水魔法 風魔法 土魔法 雷魔法

 回復魔法 浄化魔法




〈スキル〉の項目に、さっき見た魔法が次々とグレーの文字で書かれていた。固定スキルは記載されていない。


「あれ? 回復魔法?」


 ジュンさんに見せてもらった魔法は、五属性魔法と浄化魔法だけだ。回復魔法は見せてもらってない。なのに、攻撃魔法の最後に回復魔法の文字がはっきりと記載されていた。但し、これもグレーの文字だ。


「デンのところで、回復魔法掛けてもらいましたよね」


「ムツキ、忘れてたの?」


 あっ! あの時か。

 ナイフで指先を切られた時だ。


 あの時、魔石に吸い込まれる血に気をとられ過ぎて、全く気付いてなかった。そう言えば、あの後全く痛くなかったよね。ココとサス君の視線が突き刺さる。勿論、無視無視。話題を変えよう。


「……ジュンさん。どうして、グレーの文字なんですか?」


「それは、まだ完全に魔法を習得していないからよ」


 成る程。これが、習っただけたの状態ね。


「見たり、体験したりするだけで、魔法は習得出来るけど。それはあくまで、習得出来るだけ。仮に過ぎないわ。実際に使用するためには、経験値が必要になるの。経験値を消費して、魔法を完全に習得する。それが、この世界の法則よ。使用可能なだけの経験値が稼げたら、グレーの文字は黒に変わる。黒い文字に変化したら、習得したい魔法の文字をタップしてみて。習得するかどうかの文字が現れるから」


 ジュンさんは分かり易く教えてくれた。


 経験値を得たら、早速試してみよう。でも、そのためには……


「……ジュンさん。……魔法を完全に習得するために、魔物を狩らなければならないってことですか?」


 手引き書や、ココ、サス君から、魔法を完全に習得する方法を知っていた。でも、言葉にして確かめずにはいられなかった。


「ええ。そういう事ね」


 肯定するジュンさんの言葉に、私は顔を歪めた。




      

    

        あれ、一択です【朱の大陸】完結



 お待たせしました。

 大幅に書き直しました!!


 今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 それでは、次回をお楽しみ(*^▽^)/★*☆♪

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