弐、ディジーの神隠し其の二
ディジーは何処へ。
ディジーは泣きながら、森へとずんずん入って行った。
母フレアからは、一人では絶対知らない所に言っては行けないと言われていたことをふと思いだす。
足を止め、彼女は辺りを見渡す。
「・・・ここ、どこ?」
薄暗い森の中に、ぽつんと一人。
ディジーは我に返ると、その雰囲気に怖くなり、慌てて引き返そうと振り返る。
「おじょうちゃん」
どこからともなく声が聞こえた。
「こっち、こっちにおいで」
ディジーの耳にかすかに聞こえる。
彼女は何度も首を振って声を振り払う。
「さあ」
幼子の目が眠たい時のように、とろんとなり無意識にふらふらと声のする方へ歩きはじめた。
ディドは暁屋の医務室で目覚めた。
「よかった」
フレアは愛息を抱きしめる。
「かあさん、ディジーは!」
気がついたディドは、真っ先に妹の心配をする。
ふるふると首を振る母、
「行かなくっちゃ」
ベッドから跳ね起きようとする息子をフレアは両肩を押さえて止めた。
「大丈夫。お父さんと一郎さんたちがディジーを探しに行ったから」
「でも」
「あなたは、まだ寝ていなさい」
母は無理矢理、息子を押さえつけて、ベッドに寝かせた。
ディジーが森の中へ消えて1時間、皆は幼子を探すが見つからない。
本格的な捜索が必要と改めて、一郎、クレイブ、ケンジ、アルバートの一班、桜、茜、フィーネ、ギルモアの二班に分かれて(残りのメンバーは留守番)森の中を探し回る
「ディジーっ!」
父であるクレイブは先頭に立ち、何度も愛娘の名を呼び続ける。
「草木が生い茂って先が見えないし、進めない」
ケンジは木々を払いのけ歩く。
「気をつけろ。虫とか蛇とか噛まれるな」
一郎は、竿でまわりを払い安全を確認する。
「このままじゃ、埒が空きませんね」
アルバートは嘆息する。
「聖なる光」
フィーネは御業で二班の皆を取り囲む光の加護を与える。
薄暗い森に輝く光に、生い茂る木々は触れた瞬間、避けるように離れる。
「流石だな」
ギルモアは思わず感心して言った。
「ディジーっ!」
茜は叫ぶ。
「急がないと」
桜は皆を促す。
一行は焦燥感を覚えつつ、森の奥深く深くへと歩き続ける。
大捜索中。




