玖、ニライカナイの暮らし午前
ニライカナイの一日。
神と人の境にあるニライカナイ。
現世とは視界が異なり、少しだけセピアがかって見え郷愁を覚える。
一面、広がる青い海と、白い砂浜、陸地は緑に覆われ、なんの目的か巨石群が散らばっている。
暁屋は砂浜にぽつりと一軒佇んでいる、さながら海の家のようだ。
桟橋の向こうは遙か彼方まで海が見える。
一郎は朝早く(元々年寄だから)起きると、桜と共に朝焼けのビーチを散歩する。
肉体が若い頃に戻り、あの頃のように動ける事は素晴らしい。
2人は手を繋いで駆けまわったり、海水をかけあってじゃれあったりする。
昔話に花を咲かせ暁屋へと戻ると、桜は朝食の準備へと家に戻る。
なにせ、暁屋と従業員一同が異世界×2に飛ばされ、共同生活を余儀なくされた。
皆のお腹を賄う為、桜、フィーネ、フレアは料理の腕を振るうのであった。
一郎は桟橋でいつものように紫煙をくぐらせる。
海の彼方をぼんやり眺める。
地平線の彼方より、鯨に乗ってやって来るのはサルタヒコだ。
旅神は左右に大きく一郎に手を振る。
そうして、桟橋手前まで来ると大きくジャンプをした。
「おはよう一郎」
「おはようサルタヒコ」
互いに挨拶を交わす。
「今日の仕事は」
「ふむ。印度の神御一行様じゃ」
「わかった」
一郎はそう言うと、煙管を吸った。
暁屋一同が、ミーティングルームに集まり、朝食がはじまる。
だし巻き卵、海苔、ジューシー御飯に、あおさの味噌汁、日本食が並ぶ。
「いただきます」
一郎は食事をとりながら皆に今日の仕事内容を伝える。
その隣でサルタヒコは飯をがっついている。
朝食が終わると、各々割り振られた仕事をこなす。
神舟担当である一郎、茜、ケンジ、アルバート、クレイブそれと依頼主サルタヒコは、ミーティングルームにて、航路や安全面について綿密な打ち合わせを行う。
桜、フィーネ、バリーはしばしの休憩雑談のあと引き続き昼食の準備へと取りかかる。
フレアはディド、ディジー子どもたちの世話をしている。
ギルモア、李はマイペースで舟のメンテナンスを行う。
ニライカナイでの時はゆっくりと流れる。
前半。




