捌、星空チェイス再会
星空浪漫。
ケンジの舟が天の川にさしかかると、上から星が次々と降ってくる。
「流星群ね・・・全速力で避けてたも」
織姫は空を見上げS調で言った。
「了解」
ケンジは竿を持つ手に力を込め、天の川を渡りはじめる。
流れ星を避け、星の川を進む。
「行け行け~」
織姫は流星群の煌めきと待望の再会にテンションがあがり、身を乗り出して鼓舞する。
彼女を無事に届けるケンジはその一点に集中し、竿を操る。
「茜さん、安全運航でお願いします」
彦星は数多流れ落ちる星を見つめ不安気に言った。
「了解です」
茜は上空を見上げ頷くと、口角をあげ笑った。
「それっ」
天の川を駆ける舟は、スイスイと流れ落ちる星々をかわし、グングンとスピードをあげる。
「もう少し、ゆっくりで・・・」
あまりの舟の速さに、彦星は舟縁にしがみつきながら言った。
「大丈夫。彦星さん、織姫さんに早く会いたいんでしょ」
「勿論・・・ですが」
「じゃあ、任せて」
眼下に星々の大河、上には流星群、幻想的で不思議な光景に、茜の心は踊っていた。
「いくぞ~」
「は・・・はい」
出会いの地へと向かう織姫と彦星が同時に指さす。
「カササギよ」
織姫は喜びの声をあげた。
真上にカササギたちが羽ばたいている。
カササギの群れが舟の上をぐるりと旋回し、再会の地へと導く。
「行こう」
彦星はカササギたちに向かって大きく手を振る。
2人を乗せた暁屋の舟はスピードを緩めかの地の桟橋へ着いた。
舟を飛び降りる織姫と彦星。
「織姫っ!」
「牽牛っ!」
駆けだした2人は、桟橋で一年ぶりの再会を喜び抱きしめ合った。
その様子を見つつ、腰に手をあて、満足そうに頷くケンジ。
額の汗を拭い、笑顔を見せる茜。
ふと2人の目が合い、思わず互いにサムアップをした。
我に返った織姫と彦星は、茜とケンジに礼を伝える。
「お二人に感謝します」
丁重に頭を下げる彦星からは、星の竿が茜とケンジに手渡された。
「よく出来ましたわ」
織姫からは、2人に星糸で編まれた腰帯が贈られた。
「ありがとうございます」
感謝の言葉を伝え大きく手を振り、2人に別れを告げる。
茜とケンジは充足感に満たされ、天の川を舟で戻る。
星々が瞬き天の河を、しばしクルージングして楽しんだ。
こんな回もええんでないの。




