肆、暁屋説明会ニライカナイの地にて
ニライカナイの地で。
ニライカナイへの逗留にて、暁屋の仕事は激変した。
以前の自転車操業のような忙しさとは打って変わり、一日に2、3件ほどの神々たちの川くだりを担っている。
そんなことで暇を持て余す一郎と桜は、ニライカナイの地を舟でぐるり周遊していた。
一郎は舟の中で煙管をふかす。
紫煙が空へと舞いあがる。
桜はゆっくりと竿をさし舟はのんびりと進んでいる。
「ふふふ」
不意に桜は笑った。
「どうした」
一郎は聞いた。
「いいえ、あなたを追いかけて、まさかこんなことになるとは」
「後悔している?」
「まさか、楽しい日々をありがとうですよ」
「そうか」
「止まっていた時が動き出したんです。こんなに素晴らしい事ありませんよ」
「ありがとう」
一郎は思わず、ぺこりと頭を下げた。
「あら、いやだ」
2人は顔を見合わせると笑った。
サルタヒコによってニライカナイへの逗留が言い渡された日、暁屋では、一郎と旅神の説明会が行われた。
「ワシはサルタヒコ神じゃ、縁があってお主たちは、しばらく生と死の境であるここニライカナイへの逗留となった・・・が、案ずるな元の世界の構築が済み次第、必ず帰すでの」
さらりとサルタヒコは言った。
おずおずとバリーは手を挙げる。
一郎が発言良しと頷く。
「それは、我々は死んだということですか」
「率直ないい質問じゃ。正確には死んでおらん。お主たちの世界が無いので、ここに来てもらっておる。そんなところじゃ」
続いて、フレアが手をあげる。
「私たちはここで何をすればいいのでしょう」
「ふむ。今まで通り。川下りをやってもらいたい」
「へへ、それなら簡単だ」
ギルモアは言った。
「だけど、相手は神さんだ」
一郎は返した。
「神っ!」
アルバートの声が裏返る。
「そうじゃ。だが、心配するでない。いつも通りやってもらうとええ」
サルタヒコは言った。
「そんな事、言っても・・・」
と、不安気な顔のクレイブ。
「ま、そこの神様がそう言うのならそうなんじゃろ」
と、李。
「ねーねー」
「ここであそんでいいのー」
無邪気なディドとディジー兄妹。
「ああ、いいとも」
サルタヒコは笑った。
「じゃあ、いつも通りでいいのね」
茜の言葉に一郎は頷き、
「やれることをやれ・・・か」
ケンジは呟く。
「なんか、楽しみだわ」
そういう桜に一郎は苦笑いをした。
それから、フィーネは一同を前にして言った。
「サルタヒコ様の多大なるご厚情で、かくなる処遇となりました。みんな感謝してお仕えするように」
「フィーネ堅苦しいぞ」
サルタヒコは言った。
「しかし・・・」
「まあまあ」
一郎と、サルタヒコは宥めた。
説明会。




