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弐、神の船頭

 神の舟は行く。


 舟は山々の間をぬうように進む。

 広大な世界だが、昔の日本の原風景を思いだせるような、なんとも郷愁をそそる景色に一郎は息を飲んだ。

 そんな彼の姿を見たサルタヒコは言った。


「どうじゃ、神世界は」


「悪くないな」


「そうじゃろ、そうじゃろ」


 旅の神はころころと笑った。


「サルタヒコ」


「ん」


「約束、分かっているな」


「分かっておる。子孫のお前たちには申し訳ないと思ってるでの」


「本当か」


「当然じゃ」


 ふと苦笑いをみせた一郎は、竿を川底に刺し、底をつき推進力を得る。

 竿を持ち上げ、再び川底を突く。

 その瞬間、舟が揺れた。

 激しく舟が揺さぶられ、一郎は咄嗟にデッキから舟の中へ降り、落水を免れる。


「一郎、お前、やったな」


「へっ」


「川の主神、やっただろう」

 サルタヒコは下を指さす。


「そういや、さっき刺した感触が・・・」


「怒っとるぞ」


 2人は川面を覗き込む。

 黒い影が揺らめている。

 体長5mはあるであろう大鯰がいた。

 目を光らせて船底に体当たりを仕掛ける。

 激しい衝突音とともに、直撃を受け、舟は宙を舞う。

 咄嗟に一郎は水底に竿を突きたて、なんとか舟を水面に戻す。

 激しい水飛沫が舟の中へ入り込む。


「こんなボロ舟じゃ、ひとたまりもないて」

サルタヒコは嘆息する。


「ボロ言うな・・・どうする?」


「どうする言うても。こんなに怒り狂ってはの、話なんぞ聞いてくれまいて」


「倒すか」


「それはマズイ言うて神じゃぞ」


「だったら・・・」


「三十六計逃げるが如かずじゃ、逃げるぞ。とりあえず必死に漕ぐのじゃ」

 サルタヒコはそう言うと、逆のデッキに立ち両手を広げた。


「天網恢恢漏ズ(てんもうかいかいもらさ)」


 サルタヒコがそう唱えると、光の網が現れ川の主を捕らえた。

 主が暴れるので、飛沫たち舟が揺れる揺れる。


「急げ御業の効力が消える前に」


 頷いた一郎は、高速で舟をさし、うねる波を乗り越え先へと進んだ。




 ん~サクナヒメの影響受けたな(笑)。

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