伍、大連合
掘割を進む。
暁屋の舟たちが壮観に外堀を経由し、かつての大柳桟橋へ向かっている。
王族から大口の予約が入り、多くの舟を移動させている。
今回は30分の片道コースとなり大柳桟橋から城門桟橋まで、一旦そこで舟を係留し、バリーが船頭達を大柳までピストン輸送する。
計27回に及ぶ川下りである。
その日は、通常営業を休みにして、こちらの仕事をする手筈となっている。
総27隻の舟が縦7列、横3列にロープに繋がれ連合され掘割を行く様はまさに圧巻であった。
一郎、茜、ケンジ、アルバート、ギルモアが舟を運んでいる。
先頭に茜とケンジ、次の舟にアルバートとギルモア、後方に一郎が左右に振れる舟
をコントロールしながら息を合わせて舟をおしている。
「ち、なんで俺が若手に入って、こんなことしなきゃなんねぇんだよ」
ギルモアが愚痴ると、アルバートは苦笑する。
「ギルさん、これも仕事ですよ・・・もう、まんざらじゃないくせに」
「ばっ、馬鹿野郎」
老ドワーフは顔を赤らめて怒鳴った。
「ふふふ、やってる」
茜は後ろの2人のやりとりを見て思わず言った。
「アルバートさんとギルさんの相性はいいもんな」
「ね」
「ああ、俺たち・・・みたい」
「あんだって」
ケンジの顔を茜がのぞき込むように見る。
彼はドキリとしてそっぽを向いた。
一郎の大声が先頭の2人に聞こえた。
「次の曲がり角、狭いぞ気をつけろ」
「はいっ!」
「茜、ギリギリまで待って竿をさせ」
一郎の声が響く。
「わかった」
先頭の舟右側の茜は、掘割の左カーブにさしかかり、眼前に迫る壁を茜はギリギリまで待つ。
「茜」
隣のケンジが接触の危険を知らせる。
「もうちょっと」
茜は竿を横に構えその時を待つ。
(今だ)
竿を壁に突くと、力を込めて舟をおしやる。
ゆっくりと着実に先頭の舟は、壁に接触することなく曲がり角をくぐり、後続の舟たちも続いた。
一郎は右手をあげサムアップした。
茜は軽く右手をあげ返す。
そうして、およそ、30分をかけ連合した舟は大柳の桟橋へと到着した。
大連合の舟々。




