参、掘割の紫水
異変。
梅雨のある日のことだった。
数日大雨が続く中、早朝、水かさの増した掘割を舟が運航できるのか、ケンジは確認をしに掘割へでる。
暁屋から舟に乗り竿をさし進めると、すぐに異変を感じた。
みるみる水の色が紫色へと変わる。
ケンジは即座に舟を反転させ引き返した。
社長室でケンジからの報告を受けた一郎は、すぐさま桟橋へ飛び出した。
すでにまわりの水が紫一色に染められていた。
「・・・・・・」
おりから叩きつける雨が激しさを増す。
「桜」
隣の嫁に声をかける。
「はい」
「フィーネに今日の川下りは中止と伝えてくれ」
「わかった」
桜は踵を返し、店内へと向かう。
「・・・じぃじ」
茜は不安気に一郎を見る。
「なぁに、この紫の液体がなにか分かるまでだ。もし、変なものだったらお客さんに迷惑がかかる・・・な」
「ええ」
ケンジは頷いた。
一郎は竿入れから竿を取り出すと、
「さてと」
舟のデッキに飛び乗った。
「じぃじ!」
「一郎さん!やめてください」
茜とケンジは驚き止めようとするが、すでに一郎は右手をひとすくいし紫の水に触れた。
「ま、大丈夫か・・・ちょっと原因を探ってくる。お前たちは久しぶりの休暇だ。ゆっくりしとけ・・・そうじゃな、デートでも」
一郎はおどけてみせる。
「一郎さん」
「じぃじの馬鹿っ!」
「以上」
一郎はそう言うと、竿を高速でさし爆速で舟を動かす。
掘割を進んでいくと、町はずれに行く狭い水路から濃い紫が流出していた。
(・・・ここか)
舟を90度、鋭角にターンさせ、ギリギリの幅を進んでいく。
どんどん色は濃くなっていく。
行き止まりに差し掛かかると、紫の直径1mくらいの大きさの球体がその場にあった。
球内でゆらゆらと紫炎が揺れている。
その直下から得体のしれない紫の液体が流れ続けている。
「くっ」
濃い液体に触れ一郎の腕に激痛が走った。
(こいつのせいか・・・壊していいのか・・・痛みの原因は間違いなくこいつ・・・ままよ)
彼は軽々と竿を持ち上げると、先端の銛部分で球体を突く。
四散し粉微塵になる。
瞬時に水に透明が戻り、彼の腕の傷みもおさまる。
「・・・・・・」
一郎は得体のしれないモヤッとしたものを感じた。
なにかが・・・。




