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玖、ユング猛る

 怒りで・・・。


 大柳社長室。

 一郎とユング、重苦しい空気が2人を包んでいた。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「あなたっ!」

 そこへメルダが駆けこんで来た。

「どうした!」

 怒りで荒々しい口調で彼は怒鳴りつける。

「お客さんがたくさん・・・待ってるの」

「臨時休業にしなかったのか」

 舌打ちするユング。

「だって・・・ケンがもうすぐ帰って来るかと・・・」

「もういい」

 ユングは立ち上がると、歩み出した。


 一郎は腕組みをしたまま、

「どうするんだ」

「知れた事、俺が行く」

「やめておけ」

「なにいっ!」

「お前じゃ駄目だ」

「五月蠅いっ!」

 ユングは肩をいからせ、社長室を飛びだして行った。

「・・・・・・」

 一郎は彼を追う。


 船頭室にて、ユングはしっかめ面、無言で足袋を履き、法被を着ると、ばっちょ笠を頭に被った。

「おい、ユング頭を冷やせ」

 一郎は彼の肩に手を置く。

「五月蠅いっ!貴様に関係ないことだ」

 ユングはその手を振り払う。

「お客さんを危険に晒すのか」

「誰がだっ!」

「お前だ」

「ふん」

 大柳社長は暁屋社長にわざと肩をぶつけ外へ出た。


 ユングは桟橋にでて、出発を待つお客に深々と頭を下げた。

「お待たせしました。これより川下りをはじめます」

「おいユング、知らねぇぞ」

「言ってろ、三下っ!」

「な、おまっ!・・・・・」

「それでは、大柳川下り出発します」

 モゴモゴと言葉を返そうとする一郎を横目にユングの舟は、夕方曇りの堀へ進んでいった。



 我を忘れる。

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