陸、新船頭長ケンジ
ケンジ受難。
船頭長が去ったあと、沈黙が訪れる。
はあはあ。
ユングの荒い呼吸だけが、部屋中に響く。
彼は言った。
「ケン、今日からお前が船頭長だ。頼んだぞ!なっ」
メルダはわざとらしく、慇懃に頭をさげ、
「・・・お願いします」
ケンジは無言のままその場に立ち尽くしていた。
もはや大柳舟屋の船頭はケンジを含め、3人という少数で営業を行う事態となってしまった。
チケットの販売を絞り、お客の調整を行うが、休憩もなく間断なく船頭は川下りへと赴く。
その表情には悲壮感を漂わせるほどだ。
(これじゃいけない)
ケンジは無理矢理、笑顔をつくって川下りに望むが、その顔は引きつってぎこちない。
船頭1日、5回の川下りのノルマが課せられる。
しかしながら、合間に王族たちの予約も入り、仕事は苛烈を極めた。
そんな最中、船頭の一人が体調を崩して長期離脱することになると、もう一人の船頭は次の日から忽然と姿を消したのだった。
大柳に残ったのは、とうとう社長夫妻とケンジだけとなってしまった。
「社長、やれる範囲でやりましょう」
ケンジは願いを込めた発言をする。
だが、返ってきた言葉は、
「馬鹿野郎。限界を越えた先に見えるものがあるんだよ」
ユングの異様な眼差しに、ケンジはあきらめを悟った。
どうなる?




