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伍、新人研修

 ボブの才能。


 ケンジはお客とボブを乗せ、ヤナガーの川下りへと出る。

 40分のコースを終え、ボブには一通りの流れを知ってもらった後、外堀から離れた掘割で操船指導を行う。

 みっちり1時間、その後は、再び川下り操船指導の繰り返し。

 陽がとっぷりと暮れても、ボブは熱心に竿さし舟の練習に取り組んだ。

 彼は筋がいいのか、はじめは蛇行していた舟の動きが真っすぐ進むようになった。

 ボブは懸命に竿をさした。

 辺りが暗くなり、見えなくなってようやく大柳の桟橋に2人は帰ってきた。


「今日はありがとうございました」

 ボブは充実した顔で、丁寧に年下のケンジに頭を下げた。

「いえいえ、熱心ですね。凄いです」

 ケンジは思ったことを口にした。

「はい。家族もいますので」

 ボブは、はにかみながら、嬉しそうに言う。

「そうですか」

 ケンジはつられて微笑む。

「はい」

 ボブはそう返事し、胸を張った。

「1日お疲れ様でした」

「お疲れ様でした」

 家路に着くボブを、ケンジは手を振って見送る。


「ケン」

 ケンジの背後から桟橋にひょっこりユングが現れた。

「社長」

「どうだった?」

「熱心でしたよ。筋もいいと思います」

「そうか、そうか」

 ユングは満足そうに頷くと、彼の肩をぽんぽんと叩いて去って行った。

「・・・・・・」


 2日目、ボブはメモを持参してきた。

彼は熱心に、川下りをするケンジの操船の仕方やガイドを細かにメモしていく。

 次第に熱が入るケンジの操船指導もあり、めきめきと上達していく。

 操船をはじめて2日目とは思えないほどの、舟の操り方である。

(これは凄い・・・俺の指導の賜物なんちって)

 と、ボブの帰って行ったあと、舟を片付けするケンジは上機嫌で鼻歌がでる。

「ケン」

 ユングの声がする。

「社長」

 ケンジが振り返ると、開口一番、

「あいつ凄いな」

 と、呟く。

「ですね」

 彼は頷いた。


 3日目、川下りの営業も終わり、ボブとの操船練習へと入る。

「ケンさん」

「はい」

「私、コースでやってみたいんですが」

「・・・コースですか」

 ケンジは一瞬、

(まだ早い)

 と思ったが、彼の真剣な眼差しとやる気に、こくりと頷いた。

「やった」

 笑顔を見せるボブ。

「ただし40分ですね。冬は陽が暮れるのが早いですから、真っ暗になると操船どころじゃないです」

「わかりました」

 果たして・・・。

 40分後、ボブは見事にコースを一周し大柳屋桟橋へと戻ってきた。

(・・・まさか)

 ケンジは驚きの眼差しをむける。

「いや、凄いです」

「やった」

 ボブはぐっと拳を握りしめる。

 

 2人が思わず握手をしようとしたところ、桟橋から拍手があがる。

「素晴らしい」

 ユングが声をかけ、メルダが拍手をし続ける。

「社長、おかみさん」

 ケンジは何故かよからぬ予感がした。

「ボブ」

「はい!」

「お前、明日からデビューだ」

 ユングは満面の笑みを見せる。

「おめでとう!」

 メルダは一際大きな拍手をする。

「社長、まだボブさんは早すぎ・・・」

 ユングはケンジ言葉を遮る。

「な、ボブやれるだろ」

 じっと社長は新人の目を見る。

「はい!やります。やらせてください」

 決意に満ちた表情でボブは言った。

「よし、まかせた」

 ユングはガッチリとボブの手を取り、その上にメルダは手を重ねる。

「・・・・・・」

 ケンジはもう黙るしかなかった。

 

 ケンジは途端に冬の風が寒い事に気づき、ぶるっと身震いした。



 しかし・・・。

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