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拾、ケンジ

 おたのしみタイム(汗)。


 暁屋の裏庭には、簡素な露天風呂がある。

 仕事あがりのひととき。

 茜、フィーネ、フレア、ディジーはひとっ風呂浴びていた。

「なんで急にお風呂なのよ」

 茜はバスタオルを全身に巻いて、露出サービスを拒みつつ言った。

「作者が思いだしたんじゃない」

 フィーネがおもむろに湯から立ち上がると、たわわなものがぷるるんぼよよん。

「だけど、これって、ねんれいせいげんありなんだもん」

 ディジーが元気に作者に言わされた。

「ね」

 と、フレア。


「迂闊なことは出来ないと、びびっちゃってた訳か」

 茜は口を湯につけると、ぶくぶく泡だてた。

「でも、お風呂大好き人間は我慢できなかった。だがしかし、思ったようにはできなかった」

 フレアはぼそりと呟く。

「てこいれーおもしろーい」

 ディジーは目を輝かせる。

「ま、性癖が発動しちゃった様で」

 フィーネは、ばいんぼよよんさせている。

「だけど、健全作品を目指す故、それもうまくいかず」

 茜は嘆息する。

「じれんまー、ひょうげんひかえめー」

 お子様はご機嫌だ。

「ね」

 と、フレア。

 微妙な空気感を残し、悩殺お色気露天風呂シーンは不完全燃焼のまま場面転換へと移る。



 ・・・おほん。

 翌日のことである。

(また、最終便かあ。あとで風呂にはいろ)

 お客を乗せた茜の舟は、夕方の外堀を巡っていた。

 舟は北側を進み、やがて城入水門橋へとさしかかろうとした時であった。

「え!」

 茜は驚いた。

 まさかの内堀側から、水門橋を抜けて舟がやってきたのである。


 同じどんこ舟だが、舟の色は真っ赤に塗装されている。

 お客も乗っている。

(誰?)

 茜はデッキの船頭を見た。

「ケンジ・・・ケンジっ!」

 彼女はその名を叫ぶ。


 名を呼ばれた船頭は茜をちらり一瞥するが、視線を先に見据え、彼女の舟の脇をすり抜けて行った。

「嘘・・・ケンジだよね」

 茜は呟き、しばし、驚いていたが、気を取り直し舟を進めた。




 ケンジとの再会は。

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