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玖、きゃっちあんどりりーす

 キャッチ。


 金色の道標は煌々と辺りを照らしながら、行く先を示す。

「おーい、キャッパさん」

 と、フィーネ。

「お前に逃げ場はないぞ!」

 と、ギルモア。

「そうだ。観念して投降しろ」

 一郎は続いた。

「ギッギッギッ!」

 遠くでキャッパが反応し叫ぶ声が聞こえる。

「このまま行こう」

 一郎は早足でダンジョンを行く。


 何度も何度も道を折れ曲がり、所々、狭い道なき道をかきわけて進む。

「でておいでー」

 フィーネは優しく口調で言う。

「早く出てこんと、ギッタン、ギッタンにしたるからな!」

 こちらは脅しのギルモア。

「お前は完全に包囲されている~」

 一郎は語尾を伸ばし、妖怪を煽る。

「ギッギッギィーッ!」

 巻くことの出来ない焦りのみえるキャッパは奇声をあげる。

 その声は近い。

「あと少しね」

 フィーネの言葉に2人は頷いた。

 ここからは、歩幅とスピードを下げ、慎重に動き遭遇に備える。

 

「そろそろだぞ」

 ギルモアは斧を大上段に構える。

「待て。ギル、捕獲する」

 一郎の言葉に、

「やっちまおうぜ!」

 ドワーフは返した。

「王に高く売り飛ばすのね」

 と、フィーネ。

「まあ、正解ではあるが、捕まえてあとの判断は、あいつに委ねようと思っている」

「ちっ!」

 ギルモアは舌打ちをした。


 気配を感じて、死角に隠れる3人。

 タイミングを計る。

「キシャアッ!」

 キャッパが雄叫びをあげる。

「いくぞ」

 一郎が飛びだす。

「ギッ!」

 不意を突かれ驚愕顔のキャッパの足を竿で払う。

 転倒する妖怪に、ギルモアが馬乗りに乗った。

「ギャッ!」

「つかまえた」

 フィーネはサムアップする。


 抵抗するキャッパだったが、ロープでぐるぐる巻きにされると観念しうな垂れる。

 その黒眼に薄ら涙が見える。

「悪戯カッパか・・・」

 一郎は呟き、キャッパに顔を近づけた。

「ギッ!」

「おい、お前、もう、悪さはしないか」

 一郎の言葉に、

「おい」

「ちょっと」

 と、ギルモアとフィーネは待ったをかける。

「見た感じ邪悪さは感じないんだよ。なあ、フィーネ」

 彼は正直なところを言った

「ま、まあね」

 フィーネは不承不承頷く。


「という訳だ」

 一郎は、竿の鋭利な先端でロープを切った。

「あ」

 と、ギルモア。

「今回だけだ。次また悪さをしたら、また捕まえる。いいな、次はこういかんぞ」

 彼は顔芸とジェスチュアで言わんとすることを妖怪に伝える。

 キャッパは自由になると駆けだし転びながら消えていった。


 一郎はパンと柏手を打つ。

「さ、帰ろうか」

 ギルモアは不満な顔を隠そうとしない。

「なにしに来たのか」

 フィーネは、ぐるりダンジョンを見渡し頷いた。

「ま、特に問題はなさそうだし、いいんじゃない」

「そういうことだ」

 一郎たちは柳のダンジョンを後にした。

 


 リリース。

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