拾参、穿て
暁屋の行く手を遮る魔物たち。
宇宙空間のひずみを抜け、暁屋は最終目的地へと到達する。
眼前のモニターに映るのは、魔王が住まう星デス・クリムゾン。
フィーネは星の中心を指さす。
それは小さな点にしか見えないが、禍々しい黒い煙のようなオーラが包んでいた。
「ここへ」
一郎は頷く。
「全速前進っ!魔王の居城へ」
「了解」
ケンジは総舵輪に力を込める。
「待って。星からワラワラと来るっ!」
茜は双眼鏡で遠くを見つめ叫んだ。
「またかっ!」
「今度は小さいっ!暁屋よりずっと・・・あっ翼を持った魔物だっ!」
「ここに乗り込もうって言うのか」
ギルモアは言った。
「船頭は宇宙舟で応戦っ!ワシもでるっ!」
「・・・じぃじ・・・艦長まで出たら」
「構わん。出張っている先頭のやつらを一気に倒したら、怯む隙に一点突破を試みる」
「やってやろうじゃねぅか」
「おう!」
「艦長代理は桜、操舵はフィーネに任せて、バリーは引き続きの任を頼む」
一郎は告げ、艦橋を離れる。
「ラジャー」
暁屋の船頭達は、対宇宙魔物戦闘舟通称「宇宙舟」へと乗り込む。
甲板からカタパルトがせり上がり、舟が出撃へと備える。
「みんないくぞっ!数秒でカタをつける。10秒後に速やかに帰還」
「了解っ!」
「発進っ!」
船頭達は猛烈なGを感じながらも、デッキの上へと立つ。
宇宙舟は暁屋の舟を宇宙仕様に改造してあり、基本の操船スタイルは変わらないものとなっている。つまり立漕ぎで竿を使い進むのである。
巧みな竿さばきで、宇宙を駆ける船頭達。
一気に先頭の魔物へと距離を詰める。
「よしっ!今だ!思いっきり竿を払へっ!」
一郎の合図とともに、船頭達は渾身の竿を振るう。
宇宙空間で唸りをあげた竿たちは、放物線を描くと力の共鳴を起こし、前方の敵を一気に薙ぎ払い殲滅した。
「即、帰還っ!」
「はいっ!」
船頭達はすぐさま暁屋に戻る。
一郎はすぐさま、指令を伝えた。
「それ、主砲発射」
「ほい来たっ!」
ギルモアとアルバートは主砲を発射した。
敵を切り裂き、魔王の強場へと一筋の光の道が現れる。
「魔王の城へ全速前進っ!」
「了解」
暁屋は敵の居城へと、再び真っすぐに全速で進み始めた。
しかし、進むっ!




