陸、一郎の決断
英雄たちと・・・。
4人が見た光景は信じ難いものだった。
遥か彼方に宇宙に魔王がいる。
英雄たちが刃を交えた時より、桁違いの力と増悪と怒りを携えている。
この世界に向けて、吐きかける息が混沌混濁を生んでいる。
彼等はすぐに分かった。
魔王は生きている。
異変すべての元凶だと。
・・・・・・。
・・・・・・。
四守護天星探索を解き、しばらく呆然とする英雄たち。
「あの野郎、宇宙と同化してやがった」
「なんということだ」
クリュサオルは絶句し、オスカーは頭を抱える。
勇者ベルは拳を震わせる。
「今こそ、我等が立ちあがる時!」
曇りなき眼で宣言する。
「おう!」
戦士は呼応する。
「じゃが、どうやって・・・」
大魔導士は眉間の深い皴を震わせる。
「俺たちが立ち上がればなんとかなる」
ベルは根拠のない自信に胸を張った。
「・・・・・・」
一郎は先程から押し黙っている。
「どうしたイチロー?」と、ベル。
「イチ」と、クリュサオル。
「舟人よ」と、オスカー。
「みんな、ここから先はワシが戦う」
一郎は口を開くとゆっくり告げた。
「は」
クリュサオルが明らかに不満げに彼を睨む。
「笑止」
オスカーは大きく首を左右へ振った。
「一人で何が出来る。皆で戦うんだ。今度こそ勝利と平和を取り戻すんだ。お前一人が背負い込む事ではない。焦るな・・・な」
ぽんとベルは一郎の右肩に手を置く。
「・・・いや、ここからは俺に任せてもらう」
一郎は頑なに言葉を曲げない。
「お前ひとりでなにが出来る」
ベルは言った。
「やってみるか」
彼は皆に言い捨てた。
「調子に乗るな」
クリュサオルは柄に手を当てる。
「舟人、呆れて物も言えぬぞ」
オスカーは杖を彼に向ける。
「イチロー、ここは皆が気持ちを一つにする時ぞ」
ベルは大きく手を広げた。
「・・・・・・」
一郎は寂し気に皆を見ると、深く空気を吸い込む。
「はああああああっ!」
気合を一閃。
刹那。
空気が変わる。
神の域に到達した者の力が発動する。
「な」
英雄3人は瞬く間に、吹き飛ばされ壁に叩きつけられてしまう。
「ワシに・・・いや、暁屋に任せてもらおう」
力のインフレ。




