表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/126

参、変わる世界

 世界が・・・。


 ディドとデイジーは高熱にうなされ一進一退の重い病状となった。

 看病を続けるフレアにも感染し、クレイブもこの病に倒れ暁屋を休んでいる。


 一方、盛況な再スタートを迎えたかにみえた暁屋だったが、日を追うごとに客足が遠のいて行く。

 原因はこの世界を突如、流行病(はやりやまい)が襲ったのだった。

 瞬く間に全世界に広がった病は、早々熱と名づけられた。

 感染力が強く、子どもや老人、身体の弱い人など重篤化し死に至る恐れがあり、別名Soul(ソウル) steal(スチール)とも呼ばれるようになった。


 世界は大混乱に陥り、原因不明の病になす術が無いのが現状であった。

 その脅威が、ここヤナガーの国にも迫りつつあった。


 一郎は桟橋で煙管をふかせている。

 肺まで煙を吸い込むと、ゆっくりと空へ吐き出す。


「あなた、出番よ」


 桜が呼びに来る。


「何人?」


「家族連れで3人よ」


「そうか」


 一郎は、煙管を手すり叩き、葉を落とすと、頭をかきながら舟へと向かう。

 暗澹たる気持ちが込み上げるが、いざ乗り込むと、川下りへと集中する。

 

「いらっしゃいませ、ヤナガー川下りへ」


 舟は少人数で掘割を巡る。


「元々、うちの親も連れてくる予定でした」


 ぽつり、犬族獣人の奥さんが呟く。


「あれですか。例の・・・」


「はい。早々病って・・・魂奪いなんて名前なんて付いちゃって」


「おい、せっかくお義父さん、お義母さんが無理して、楽しんで来いって送り出してくれたのに」


「だって!」


 2人の幼い息子が不安気な顔をしている。

 一郎は、明るい声で、


「まあまあ、この舟の旅、楽しみましょう。では、一曲」


 ・・・・・・。

 船着き場へ到着。

 一郎は、家族を見送り、舟を係留させる。

 桜は慌てて走って来る。


「さっきのお客様のご家族が例の流行病ですって」


「ああ」


「コロナでしょ」


「なんだコロナって?」


「ああ、そうだった。あなたいなかったわね。今、私たちがいた世界中がパンデミックになっていてその病名よ」


「早々病が」


「そうよ」


「まさか」


「だって、症状がそっくりですもの」


「ふーん」


 煙草を吹かそうとする一郎に、桜は煙管を奪い睨みをきかせ、


「とにかく、うがいをして手を洗って」


 他人事のように振舞う夫に、妻は血相を変えて言った。


 ・・・・・・。

 ・・・・・・。

 暁屋が閑古鳥につき、半ドンとなりお役御免となった茜とケンジはルーン宅に見舞いに訪れた。

 エルフ家族全員がダウンしているとあって、家の中は崩壊していた。

 茜は食事をつくり、ケンジはせっせっと部屋の中を掃除する。

 

「ねえねぇ、アカねぇ、ケンジあそぼうよ」


「あそぼー」


 微熱は残るものの回復傾向にあるディドとディジーは、布団からしきりに声をかける。


「だーめ、まだ寝てなきゃ」


「また熱があがるぞ」


 茜とケンジが嗜める。


「ちぇっ」


「ね~」


 2人の来訪を喜ぶ子どもたち。

 だが、クレイブとフレアの症状は深刻だった。

 高熱が続き、立ちあがることもままならない。

 ケンジは、医者に診てもらうべく町へひとっ走り、夕方に医師の訪問診察を受けると家族は早々病と診断された。


 一変する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ