最終章 暁屋ここにあり 壱、花嫁舟
花嫁舟。
修復された世界。
暁屋はここにある。
いつもの変わらない日々を一郎たちはおくる。
巡る巡る季節は春。
そんなのどかでうららかな桜の花舞うある日。
暁屋は営業を一日休業する。
それは特別な日。
ディドはブレザーと半ズボン、デイジーはふりふりのドレスを着ている。
おめかししている2人は誇らしげに胸を張る。
2人は桟橋を歩き、籠から花びらを取り出し花吹雪をする。
後ろには、タキシード姿のクレイブと純白のウェディングドレス姿のフレア、桟橋の両端に暁屋の皆が一斉に拍手を起こる。
桟橋には花嫁舟仕様の舟が一隻係留されている。
「よっ。ご両人」
迎える一郎は片手をあげ微笑む。
「社長、恥ずかしいですよ」
クレイブは本音を言う。
「なに言ってるんだ。晴れの日だぞ。お前たち結婚式まだしてないって言うからだな、そ・れ・に・今はこういう素敵なことが必要なんだよ」
「はあ」
「そうだ、そうだ」
と、ディドとディジー。
「そうよ」
と、フレアが微笑む。
仲睦まじい家族は、笑顔で花嫁舟に乗り込んだ。
「では、うおっほん」
一郎は咳払いをする。
「本日はこのよき日に、めでたく新郎クレイブ、新婦フレア、その宝、息子ディド娘ディジーの改めて御結婚の儀整い真におめでとうございます。ここに一曲お祝い申し上げます」
「よっ、社長!」
ギルモアが茶化す。
一郎は一瞥すると朗々と歌いあげる。
船頭祝い唄
四海波平らかに瑞色の天
七宝を乗せ来る舟
明澄一曲高砂の舞
家運隆々として万年に及ぶ
「本日は真におめでとうございます。これより花嫁舟の出発でございます」
一郎は竿を水中にさし、舟を進める。
「さ、私たちも出発よ」
茜は皆にウィンクをする。
後に続くのは、暁屋の面々を乗せた舟が、彼女の操船で桟橋をでる。
「おめでとう!」
「こんぐらっちゅれいしょん!」
桜の花びら舞い散る中、花嫁舟はゆっくりと割割を巡る。
ライスシャワーに紙吹雪、岸辺からは多くの人々が手を振り拍手や「おめでとう」の祝福の言葉を頂き、エルフ家族は幸せな一日を過ごした。
めでたい一日。




