玖、しのぎを削ったあの攻防戦・・・そして
戦いは佳境へ。
アマテラスは太陽を照らし、八咫大鏡にあてる。
「今じゃ、北東に放てい」
「はっ」
神兵たちは、鏡を北東に向けると、眩く光の熱線が放たれる。
一筋の熱線は獄竜を貫いた。
「グモモモ~っ!」
竜は哭く。
「なんのこれしき、獄竜よ。我らの悲願今こそ果たす時、ひるむな行けっ!」
「キシャアーっ!」
獄竜は雄叫びをあげ、速力をあげる。
サルタヒコは目を凝らし、彼方の様子をアマテラスに伝える。
「まだです。迫ってきます」
「ふむ。流石に一撃では仕留められまいか。降り注げ天の光よ」
アマテラスは両手を掲げ太陽に祈る。
八咫大鏡は光りを吸い込み、次の攻撃へ備える。
「よいか。北北東にひとつ。続いて北西にひとつ。北の斜め上にひとつじゃ。間断入れずに放て」
一撃は獄竜の左翼に被弾する。
竜は方角を変えるが、次の一撃が頭部に食らう。
しかし竜は前後不覚になりながらも、最後の力を振り絞り天高く舞いあがった。
そこへトドメの一撃、黄泉の軍勢を乗せた獄竜は真っ逆さまに落ちていく。
「やった!」
サルタヒコは叫んだ。
「まだじゃ」
アマテラスは言った。
「獄竜の落ちたる場所は高天原じゃ。必ず黄泉の軍はやってくる。戦いはこれからじゃ、なんとしても侵攻をくい止めよ」
「はっ!」
サルタヒコはイズモ大神殿の天まで届く階段を駆けおりて飛んだ。
旅神は空を舞い、一郎たちの元へと降りたった。
「サルタヒコ」
「逃げろ、黄泉の軍勢がやって来る」
サルタヒコは皆に告げると、他の神々と共に決戦の地へと向かおうとする。
「どこへ逃げるんだよ」
一郎は言った。
侵攻を食い止めに無ければ、逃げ場などない、それは誰しもが分かっていることである。
「何処なりとも果ての果てまでも逃げよ」
「・・・ワシも・・・」
サルタヒコは一郎の言葉を遮った。
「これは神々の戦い・・・お前たちは絶対に戦ってはならぬ・・・我々の問題だ」
旅神はそういうと神軍の中へと消えて行った。
「・・・あなた」
桜は呟く。
「くそっ!」
一郎は消えて行ったサルタヒコの方角をずっと眺め、拳を震わせた。
一郎はどうする?




