第101話 農耕
千里眼で場所は確認できているので、そのままそこへ転移。
「え!? 景色が一瞬で……一体これは?」
すると……ライリさんは上ずった声で独り言を発しつつ、周囲をキョロキョロと見回しだした。
「ね? 俺が案内はいらないって言ったのは、こういうことですよ」
そう説明してみるものの、返事は無い。
……どこか納得のいかない部分でもあるのだろうか。
「こ、こういうことって、ことも無げに……。わ、私は変な病気で悪夢でも見ているのでしょうか……」
しばらく待っていると、ライリさんはようやく口を開いたが……どうやら自分が幻覚を見ているかのように、勘違いし始めてしまったようだった。
あちゃー。「百聞は一見にしかず」って事で、良い案かと思ったのだが……こういう副作用があったとは。
相変わらずキョロキョロし続けるライリさんを見て、俺は頭を抱えた。
おそらく……このままライリさんを領主館に帰しても、そちらで話に尾ひれがついて騒ぎになってしまうだろう。
そう思い、俺は対応策として、先に耕作予定地を耕しつつライリさんが落ち着くのを待つことにした。
今、この土地が様変わりする様子を目に入れておいてもらえれば……後日ここを訪れるなどして、自分が見た物が現実だと確認することもできるだろうからな。
収納魔法で如意棒を取り出し、地面に三回突き刺す。
そして筋斗雲に乗りつつ……俺は地面に開けた三箇所の穴の中に、鋭利な逆三角形の対物理結界を展開した。
この対物理結界は相対座標固定型……すなわち、俺が動くと結界もその分ついてくる。
これを利用して、対物理結界を鍬代わりに地面を耕そうというわけだ。
時速四キロくらいで徐行を始めると……追随して動く対物理結界により、地面がどんどん掘り起こされていった。
使っていい土地全体を耕すべく、往復すること数回。
地表から30cm辺りの深さまでの土壌は、完全に農業に適した柔らかさ、きめ細かさになった。
あとは、耕した土地の中心にケサランパサランを埋めておけば。
何日かすれば、ケサランパサランは耕した場所全体にまで繁殖し、地中の塩分を消化し始めるだろう。
だいたい中心あたりと思われる場所にケサランパサランを埋めると……俺は一部始終を見ていたライリさんの元に近寄った。
「あー、大丈夫ですか?」
上の空で耕した土地を眺めているライリさんを心配して、そう声をかける。
「あのー、私にはヴァリウスさんが通った地面がひとりでに耕されたように見えたんですが……あれは一体何だったのでしょうか?」
「あれは相対座標固定型対物理結界で工夫して耕したんですよ。効率良いでしょう?」
するとライリさんは耕した場所指しつつ質問してきたので……俺はその問いにそう答えた。
「聞いたこともない農法ですよ……。そんな発想力まであるなんて、天はヴァリウスさんに何物を与えたら気が済むんでしょうね……」
「考えるのを諦めた」と言わんばかりの表情で、そう口にするライリさん。
天……天から貰ったのは神通力と重覚醒進化くらいだな、などと思考を巡らせつつも、俺はそれは口には出さなかった。
……さて。
予定より時間食っちゃったし、そろそろライリさんを連れて領主様の屋敷に戻るか。
俺は再び空間転移を用い、みんなで応接室に戻った。
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