第100話 いざ、農地へ
帰ってきた俺は、まずは再び領主様に会いに屋敷に向かった。
麒麟芋を育てるのに際し協力を得られることにはなっているものの、そのために使っていい具体的な土地の範囲をまだ聞いてなかったからだ。
実際に領民の協力を得て、麒麟芋を植え始める頃には、使う土地全域にケサランパサランを行き渡らせておく必要があるからな。
ケサランパサランの培養開始地点を決めるために、今のうちに確認を取っておこうというわけである。
門番に声をかけると……「甲虫と昆虫の魔物が一匹ずつ……失礼いたしました!」と言ったかと思うと、すぐに昨日の応接室に案内してくれた。
領主様、俺が来たら中に通すようにと使用人たちに通達でもしてくれてたのだろうか。
そんなことを考えていると……領主様とライリさんが、応接室に入ってきた。
「これはこれはヴァリウス殿。先日は途方もない量のエリクサーを頂いてしまい、本当にかたじけない」
領主様は部屋に入ると、まずそう言って俺に一礼した。
「今日はまた何か相談があって来たのか? あれだけの物を貰ったんだ、何でもできる限りの助力はするつもりだぞ」
そして領主様は机の上にお茶を置きつつ、そう続けた。
「ありがとうございます。今回は、別に新たに何か頼みがあるわけではなく……昨日の土地の件で、具体的にどの辺を使用していいのか聞きに来ました。勝手に作業して、そこが誰かの私有地とかだったりするとまずいですし……」
単刀直入に、俺は本題に入ることにした。
「具体的な土地の範囲、か。……ちょっと待っていてくれ」
すると領主様は一旦応接室を出ていき……しばらくして、大きな紙の巻き物を抱えて戻ってきた。
「この辺一帯なら、自由に使ってもらって構わん。足りんなら、ちょっと場所は離れるがこの辺りにも誰も使ってない広い土地がある。これでいかがかな?」
領主様が持ってきた巻き物は、レトルガ領全体の地図だった。
彼は領内の二箇所を指で示しつつ、そう言って使っていい土地の範囲を教えてくれた。
千里眼で領内を俯瞰し、地図と照らし合わせる。
……あの辺とあの辺か。確かに、誰も使ってなくて閑散としている場所だな。
「ありがとうございます」
俺はそう言って、出していただいたお茶に口をつけた。
「今すぐ行くのか? よければ、ライリに案内させようと思うが……」
お茶を飲む間、領主様はそんな提案もしてくれた。
おそらく、レトルガ領に来て間もない俺を気遣ってのことだろう。
だが……その点なら、千里眼でも確認してるので問題ない。
「ああ、その点は大丈夫ですよ。先ほどの地図、実際の場所と照らし合わせて見ながら確認しましたので」
申し出はありがたいが、必要のないことでライリさんの時間を煩わせるのも申し訳ないので、俺はそう言って断った。
「実際の場所と照らし合わせて……? 一体どういう意味だ?」
しかし領主様は……俺の発言の意図が掴み切れなかったのか、ポカーンとしたような表情でそう聞いてきた。
「えーその……この土地全体を俯瞰する能力が俺にはある、と言いますか……。それを使って、地図と領地を照らし合わせたって意味です」
「そんな能力が……。それもテイマーの能力なのか?」
「厳密に言うとちょっと違いますが……」
千里眼もテイマーの能力、みたいな勘違いが広まっても困るからな。
俺はそんな感じで、ちょっとお茶を濁した。
まあ俺のように飛ぶ魔物をテイムしていれば、あらかじめ上空でホバリングしておいてもらえば、五感連動で似たようなことができなくはないが……。
そんなことを考えていると、今度はライリさんが口を開いた。
「あの……もしかして、私の手間が増えないようにとか思って、咄嗟にそれっぽい能力考えました? ヴァリウスさんが言えば、どんな突拍子もない能力にも説得力が出ちゃいますし、それを見越してそんな設定を考えた、とか……。私なら、遠慮しなくても全然大丈夫ですよ」
……今度は、能力をでっち上げたと思われてしまったようだ。
そういうわけじゃないんだがな。
というか、「どんな突拍子もない能力にも説得力が出る」って俺をどんな風に見てるんだよ。
……仕方がない。
「じゃあ……良かったら、地図で見せてもらった土地まで一緒にワープしますか? ちゃんと正しい場所に着いた確認が取れたら、またここに戻しますので」
地図上に示された場所は、幸い一回の空間転移で行ける場所だしな。
こうなったら、ライリさんも連れて一旦そこに行くとしよう。
一瞬行って帰ってくるだけなら、そう大した時間はかからないからな。
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