新学期一日目 更に続き
すいません、遅れました!
食べ物を扱う露店の通りを抜けて、今度は道具類の並ぶ通りへ。
食器、調理器具、農機具、武器、アクセサリー、布類、金具類、雑貨類、色々な露店が並ぶ。
調理器具をちょっと見たが、俺が使える物は無かった。
ステンレスやアルミの無い世界、鉄の鍋や釜は持ち上げられません。
武器屋に売ってる包丁も、中華包丁と同じくらいの巾で柳刃包丁くらい長い。
普通に武器。
雑多に並ぶ店の、アールスハインは武器に、ディーグリーはアクセサリーに、ユーグラムは本に各々反応したが、購入する程ではなかった。
何気なく目を向けた先に見付けたのは、黒いウニョウニョ。
気になって凝視してたら、
「ケータどうした?何か気になる物でも見付けたか?」
「んーあしゅこに、ウニョウニョいりゅねー(んーあそこに、ウニョウニョ居るねー)」
「……………ウニョウニョって呪いの事か?」
「しょー」
俺の指差す方に近寄っていくアールスハイン。
近付くと、ウニョウニョは店の複数の商品から出ていた。
一見雑貨屋に見える店は、しかし何に使うのか全く分からない品も多く並んでいる。
「すいませ~ん、ここって何屋さんですか~?」
「ああ、いらっしゃい。ここは中古の魔道具屋ですよ。少々危ない商品も有るんで、触る前に声をかけてくださいね」
黒いローブを着た、年齢不詳の男の人が柔らかい声で説明してくれる。
「へー、中古の魔道具。少々危ないと言うのは、呪われているからか?」
「ええ、これとかこれとかそれとかは、呪われてるんで、勝手に触らないで下さいね」
「ええー!呪われてる品を売っちゃうの?それって大丈夫なんですか?」
「呪いと言っても色々あって、ここの品物は命に関わるような怖いのは無いですよ。これなんかは、直接身に付けると二日程体が痒くなる呪い、こっちは一週間程運が悪くなる呪い」
「呪いって言うより、いたずらグッズ?」
「ハハ、まぁそんなもんです。元々はちゃんとした魔道具だったのが、無理な改造をしようとしたり、長年間違った使い方をされてるうちに、変な呪いがかかってしまったりね」
「そんなの売れるの~?」
「意外と思われるかもしれませんが、売れるんですねー。浮気男に嫌がらせをしたり、気に入らない上司にこっそり仕掛けたり、後はちゃんと呪いを解呪出来れば、元の機能が戻ったりしますんでね」
「へー、それなら例えば、この痒くなるメダルの元の機能は?」
「これは大人の男が抱えられるくらいの荷物を三つ分収納出来るマジックアイテムですね」
「ええ!それって凄い物じゃん!それをこんな値段で売っちゃっていいの?」
「これはですねー、呪いにかかってた期間が長いもんで、枢機卿様クラスでないと解呪に成功しないんですよー、下手に解呪しようとすると、なぜか更に痒みが増すってゆーね!」
「ぶふっ、何その面白機能!」
「ええ、もはや笑いを誘うアイテムですね、なんでこの値段なんですよ。他も同じようなもんです」
「なるほどー、んーでも収納アイテムは魅力的だなー、買って試して見たくなる値段でもあるしなー」
と言いながら、ディーグリーがこちらをチラチラ見てくるので、OKサインを送ると、
「これ買います!」
と言って、他の呪いのアイテムの元々の機能を聞き出した。
結果、一週間不運になるベルトのバックルは、剣のみ三十本収納出来るアイテム、他にも身に付けると、一月笑いが止まらないブレスレットが、紙類のみ狭い部屋一杯分収納出来るアイテムだったりで、それらを買って帰った。
何故収納アイテムが多いかと言えば、ダンジョンの宝箱から出たそのアイテムを、何とか拡張しようとしたり、個人所有の登録が出来ないかと試した結果らしい。
マジックバッグは貴重なので、改良しようとする人は滅多にいないが、限定的な機能の付いたマジックアイテムは、使わない人からしたら、ちょっと自分に都合の良いアイテムに変えられないか試してみたくなるらしい。
昔、有名な冒険者が試して、成功し、それを大層自慢して回ったもんだから、自分も!って人が多く現れ、一時期ブームになったそうだ。
結果、呪いのアイテムに変化しちゃって大損。
今は誰もやらないが、ブームだった頃のアイテムが呪いアイテム化して、未だに多く残っているそうだ。
一旦露店から路地に入り、チョチョイと解呪。
ユーグラムは一度自分で解呪の魔法を使ってみたが、途端に無表情で爆笑し出して、物凄く怖かったので、速攻で解呪したよ!
ディーグリーは、一度呪いの効果を試してから解呪してほしいそうです。
誰に仕掛けるつもりやら、ニシシと笑う顔が酷く楽しげだった。
また露店を回り、ブラブラと。
呪いのアイテムなんて言う、面白アイテムを扱っている店が他に二軒あったので、話を聞いて幾つか購入。
他は、アールスハインが双子王子用に、軽くて危なくない模造剣を買って、ユーグラムが書籍を何冊か、ディーグリーは綺麗な布を何巻き?か、俺は調味料を大量買いしました。
カフェで休憩して、学園へ帰った。
午後は訓練所を借りて魔法の訓練。
お城でもやってた様に、人形相手に魔法を剣から撃ち出す練習。
ユーグラムは元々撃ち出すのは得意なので、鉄パイプでの戦い方の訓練。
リモコンを操作すると、肉弾戦対応の人形が出てくる。
白くのっぺりしてるのに、ちょっとマッチョなのが嫌。
俺は、素早くて小さい蝶々みたいな人形に、追尾型の魔法を打ち込んでは破壊、それを修理してってのを繰り返してる。
魔改造して蝶々は蜂になった。
素早さも格段に上がった。
後は修理待ちの人形を直して、ちょっと丈夫にしといた。
何故かキャベンディッシュと元生徒会長に顔が似てて、ニシャシャシャシャって笑うのは気のせい。元々顔が無かったのに、何故か似てるのは気のせい。
アールスハインはお城でも訓練してたので、中々上手。
ディーグリーは短剣両手持ちなので、咄嗟に利き腕でしか攻撃が出来ないのが弱点。
ユーグラムは鉄パイプに振り回され気味。
修理する人形も居なくなったので、暇になった俺は、前から試してみたかった事を。
この世界には、肉体強化の魔法が無い。
それでも体内に有る魔力を、自分の意志で動かす事は出来るので、出来ない事はないと思う。
久々に四男秀太が脳内で、兄ちゃんなら出来るよ!と笑顔で勧めてくる。
兄ちゃん頑張るよ!暇だし!
普段、緩やかに巡っている体内の魔力の流れを、意識して早める。
ホカホカと体温が上がってきた所で、魔力を筋肉に流し強化するイメージ。
その場で軽くジャンプ。
普段よりは少し高く飛べました。
もう少し筋肉の強化、ジャンプ。
アールスハインの身長くらい飛べました!成功成功。
次に力を調べます。
さっきまで修理していた人形のパーツ、指二本分を握る。力を込めるとミシミシ音がなります。普段よりは大分力が強くなった模様。
ですがまだまだです!
更に筋肉を強化。
パキャッと音がして、人形の指二本が破壊されました。成功成功。
今度は走ってみましょう!普段なら、ちょっと走ると直ぐに転ぶけど、筋力アップしてれば転ばない、はず!
よーいドン!
たったか走れます!調子に乗ってジャンプして、側転して、バク転バク宙。
「ヒャハハハハハハ!」
調子に乗って走り回り跳ね回っていたら、何時の間に来たのか、インテリヤクザなカイル先生に、首根っこを掴まれ捕獲されました。
正面には、イ~イ笑顔のテイルスミヤ長官。
「ケー、タ、さ、ま?」
怖いです!笑顔が怖いです!
「ケータ様は、今朝まで走ろうとしてはよく転けてましたねー?不思議ですねー、子供の成長は早いと言いますが、ここまで劇的に早くなるものでしょうか?」
「おい、早いとこ吐いとけ!こいつしつこい上に根に持つぞ!」
インテリヤクザなカイル先生にまで、呆れた目を向けられています。
ふぅ、とひとつ息をつき、
「にきゅたーきょーかれしゅ!(肉体強化です!)」
ドヤ顔で答えてやりました!
「「にきゅたーきょーか?」」
大人二人の不思議顔。
「にきゅたい、うぉー、きょーかしりゅの!(肉体、を、強化するの!)」
俺の言葉が通じたのはカイル先生の方。
「肉体を強化する?」
「ええ!そんなことが可能なのですか?」
テイルスミヤ長官は、考えたことも無い方法なのか、ただただ驚いている。
「きーにきゅに、まーりょくにゃがしゅと、でちるよ?(筋肉に、魔力を流すと、出来るよ?)」
「筋肉に魔力を流す?」
「しょー、ちゅよくにゃれーって!(そー、強くなれーって!)」
インテリヤクザなカイル先生は、俺の言葉を聞くと、俺を下ろして少し離れた所で、体内の魔力をゆっくりと動かし始めた。
だが中々スムーズには動かせないらしい。
腹の辺りでグルグルしてる感じ。
少し離れた隣では、テイルスミヤ長官も体内に魔力を流し始めた。
テイルスミヤ長官の方が魔力を上手に流せているが、胴体部分のみで回ってる感じ。
「あちゃまかりゃ、あちのしゃきまでぐるぐるよー(頭から、足の先までグルグルよー)」
「頭から足先までですか、これは中々うまくいきませんね」
暫く奮闘した二人は、胴体部分以上に魔力を流せない様子。
「けちゅえきがー、にゃがりぇりゅよーにー、やりゅのよー(血液が、流れるように、やるといいよー)」
アドバイスしたのに、通じて無い様子。
「ケータ様、けちゅえきとは何ですか?」
そもそも血液を知らない。
「けちゅえきはー、ちーのこちょー、んで、ちーがにゃがれるよーにー、まーりょくにゃがすといーよ(血液は、血の事、んで、血が流れるように、魔力を流すと良いよ)」
「血が流れる様に魔力を流す?」
治癒魔法の時に、治癒担当の教師には話したが、テイルスミヤ長官は居なかったかな?
修理用の人形のパーツを取り出し、断面を見せる。
「こりぇがほにぇー、こりぇがちんけー、こりぇがけっきゃん、こりぇがちんにきゅー、こりぇがふぃふー(これが骨、これが神経、これが血管、これが筋肉、これが皮膚)」
一つ一つ指差して教えていると、後ろからクスクス笑い。
振り向くと助とシェルが、笑ってるのは助。
シェルは部位の名前を知らないから、笑いようがない。
「たしゅきゅーしぇちゅめー!」
「あーはいはい、今度は何やってんだ?」
「にきゅたーきょーか!(肉体強化!)」
言ってその場でジャンプして見せれば、助の目の色も変わる。
「出来るのか?」
「きょーりょくちろよ?(協力しろよ?)」
「了解!」
笑顔で了解したので、説明は助に丸投げ。




