新学期一日目 続き
誤字報告ありがとうございます!
同じ所を何度も間違ってたアホさ具合。反省してます。
インテリヤクザな担任カイル先生と、テイルスミヤ長官が入って来て、皆が席に着くと。
「おう、揉めることも無く着席してて、このクラスは優秀だな!」
「そうですね、他のクラスは朝からずっと揉めてますからね」
「何で態々揉める必要があんのかねー、さっさと決めりゃーいいのに、揉めるくらいなら同じ席に座りゃーいいだろ?」
「教室のどこに座るかで、面子が左右されると勘違いする生徒は、まだ多くいますからね」
「そんなん気にするくれーなら、成績上げて上のクラスでデカイ顔すりゃいいのに」
「大概そういう生徒は、面子は大事ですが努力は嫌いなんですよ」
「しょーもな!」
盛大に愚痴り始めた。
「せんせー、俺達に関係無いことで、愚痴られても困りまーす」
ディーグリーが言えば、
「ああ、そうだな、悪かったよ。んじゃ、後期の予定だが、毎年後期は座学がほとんどだったが、今年からはちょいちょい実技も織り混ぜての授業になる」
「具体的にはー?」
「具体的には、魔法の授業が、座学半分実技半分になります」
テイルスミヤ長官が、軽く握り拳を作りながら言うと、
「魔法の実技ですか?」
名前を知らない令嬢が尋ねた。
「ええ、皆さんの習った魔法の理論には、抜けが有った事が発覚しまして、幼年学園では至急教科書の改訂を行い、抜けのある理論で魔法を使い続けている高等学園の生徒には、実践も込みで学習し直して貰います」
「抜けって何ですか?」
やはり名前を知らない男子生徒が聞けば、
「まず、皆さんも幼い頃から馴染みのある魔力錬成の玉での色変えですが、あの色変えの練習は、その後の魔法のコントロールと威力に大きな差が出ます」
そこまで聞くと、教室がザワッとした。
「そして、魔法の発動には明確なイメージが重要であるのはご存知でしょうが、皆さんがイメージする時に参考にするのが、大概身近な親や教師、友人等であるため、魔法の威力に差が出ます。その発想を補うのが、魔力錬成の玉に魔力を込めるときの、量や質のコントロールなのです」
シンとなる教室。
今までの授業では、魔力錬成の玉がそこまで重要なアイテムとは認識されてなかったので、皆がただ驚いている。
子供の頃から持たされる、玩具の一つと言う認識だったためだ。
「それは、確かに重大な抜けですわね。それで、テイルスミヤ先生が仰るように訓練をし直せば、誰でも威力の向上は出来るのですか?」
イライザ嬢の質問に、生徒の目の色が変わる。
流石Sクラスに入る生徒は向上心が半端ない。
「はい、それは既に検証され立証されております。威力の向上やコントロールに年齢や性別は関係がありません」
テイルスミヤ長官の答えに、皆の目がギラギラする。
「あー、まぁそう言う事で、魔法の授業は実践も多くなる。他の教科は昨年と変わらず座学中心になるがな。後はー、お前らには直接関係は無いが、Fクラスに後期から特別に編入生が入った。彼女は魔力はかなり低いが、精霊付きで、まだ制御が不安定だから、不用意に刺激しないように注意しとけー」
「せんせー、その精霊付きの彼女は、どうやって見分けたらいいですかー?」
ディーグリーの質問にはテイルスミヤ長官が答えた。
「精霊付きの生徒には、右腕に腕章を着けてもらっています。精霊の姿はボンヤリとした輪郭くらいは見える人もいるかも知れませんが、不用意に近付いては危険な場合も有りますので注意してくださいね」
「「「「は~い」」」」
何人かのよい子の返事に場が和み、本日は解散。
廊下を寮部屋に向かって歩いていると、他の教室の騒ぎが耳に入る。
カイル先生が言ったように、席順で揉めてる。
階段付近にあるFクラスも同様に揉めている様子。
以前の二股女の時のような、怒鳴り声は聞こえないが、ずっとザワザワしてる。
ディーグリーは噂の精霊付きが気になるのか、ちょっと覗こうとして、ユーグラムに止められている。
「しぇーりぇーちゅきって、めじゅらちーの?(精霊付きって、珍しいの?)」
素朴な疑問を投げてみると、
「そうですね、精霊付き自体が珍しい事もありますし、精霊付きであることに気付く事も珍しいですね」
ユーグラムが答えてくれた。
「ふちゅーはきづゅかにゃい?(普通は気付かない?)」
「そうですね、精霊は目に見えないので、普通は気付かないようですね」
「んじゃーしぇーりぇーて、にゃんでしとにちゅくの?(じゃあ精霊って、なんで人に付くの?)」
「精霊が人に付く理由は、分かっていないのですよ。ただ、稀に精霊と意志疎通の出来る人がいるらしく、そう言う人は精霊の力を借りて、絶大な力を発揮する事もあるそうです」
「ふぇー、よーしぇーとはにゃにがちぎゃうのー?(へー、妖精と何が違うの?)」
「妖精族は、実体が有ります。隠れたり姿を消す魔法が得意なので、あまり人の前には出てきませんが。それに比べて精霊は、実体を持たない力の塊のような存在と考えられていますね。今までに精霊付きになった上に、その力を引き出せた人が過去に数人しか記録されていないので、本当の所は分かりませんが」
「んーじゃー、しぇーじゅーは?(んじゃ、聖獣は?)」
「聖獣は、神の代弁者とも言われ、絶大な力を持ち、神の意志に反したものを裁くのが役目とされています。その姿を見たものは無く、空想上の生き物と考えている者も多くいます」
空想上の生き物だそうですよ俺?
ユーグラムの説明に、複雑な顔で俺を撫でるアールスハイン。
そうね、今空想上の生き物抱っこしてるしね!
まぁ、俺は俺なので、気にしない事にしよう。
「それで、この後どうする~?訓練所借りるのも時間が半端だし、街にでも行って昼ご飯食べる?祭りのついでに今月一杯は出店も多いから、珍しい物が食べられるかもよ?」
「まちゅり?」
「ああ、ケータ様はお城に居たから知らないか、新年のお祝いに毎年1月の前半はお祭りが有るんだよ、んで、地方から出てきた商人なんかは、今月一杯は王都で荷物が無くなるまで商売してから帰るから、普段は王都では見られない変わった物も売られてて、賑やかなんだよ」
「ふぇー、ハインみちゃことありゅ?(ふぇー、ハイン見た事ある?)」
「いや、新年の祭りは行ったことが無いな」
「いっちぇみよーよ!(行ってみよーよ!)」
「ああ、行って見るか」
「じゃー決まり!街に行こ~!」
「おー!」
街にはまだ二回しか来たことが無いが、通常よりも人が多いのは何となく分かる。
前回来た時は無かった多くの露店が並び、大声での呼び込みに、様々な匂い、皆が笑顔で食べ歩く姿に、前世の祭りを思い出した。
世界が変わっても、祭りの雰囲気は変わらないようだ。
ワイワイと賑やかな通りを、露店を覗きながら歩く。
露店は肉の串焼きが多いが、各々オリジナルの味付けをしているらしく、どの店も各々の匂いがする。
とてもいい匂いに食欲を刺激されて、皆は好みの露店で肉の串焼きを買い食べながら歩いているが、俺は一口も食ってない。
アールスハインは歩きながら食べる行為に驚いているが、直ぐに慣れて今もモグモグしてるけど、皆が食べてる肉が、漏れ無く硬そうで、食える気がしない。
表情を見ても、味もいまいちそう。
「うーん、匂いは良かったんだけどねー、肉が硬い臭いで味がビミョー」
「そうなんですよね、ディーグリーの紹介でラバー商会の肉屋で購入した肉を食べてから、街での食事に満足出来なくなりました」
「そ~なんだよね~、硬さは兎も角、この臭みが、どんな香辛料で誤魔化しても、気になっちゃうんだよね~」
「ええ、口が贅沢になってしまって、この肉を手に入れる為に、若い神官が盛んに狩りに出掛け始めました」
「処理の仕方は大丈夫?」
「ええ、肉屋の見習いが、神官の友人らしく教会の内部だけならと、処理の仕方を教えて下さいまして、教会の食事担当が張り切ってます」
「うちの肉屋も連日大盛況で、肉の仕入れが全然間に合わないって言ってた~、知り合いの冒険者に倍額で依頼出しても追いつかないって~」
「でぃーぐでぃー、けーたたちのにきゅはらいじょーぶ?(ディーグリー、けーた達の肉は大丈夫?)」
「そこは当然最優先で確保してます!ただ、このまま肉の仕入れが増えなければ、近い内に足りなくなるかもしれないけど~」
「んーじゃー、またにきゅかりいきゃないとらな!(んじゃぁまた肉狩り行かないとだな!)」
「お、ケータ様分かってる~!自分達の食い扶持は確保しないとね!でも新学期始まったばっかりだから、暫くは無理かな~?近場の肉は美味しいけどまだ持ってるのが有るしね~。午後は訓練でもしようよ~」
「しょ~なない」
「ハハ、ならケータもここで腹を満たさないとな!まだ何も食ってないだろう?あの辺の芋ならケータでも食えるんじゃないか?」
アールスハインが薦めてきたのは、大鍋で焼かれた白く巨大なさつま芋のような形の芋。
近寄って見ると、微かに甘い匂い。
流石に芋なら硬くは無いだろうと、
「いっこくらしゃい」
表示されてる金額を差し出すと、
「あいよー、あら可愛いお客さんだこと!可愛い子にはサービスしとくからね!」
縦にも横にも大きなおばちゃんが、バチンとウインク付きで渡された巨大芋。
「ありあーとう!」
お礼は言ったけど、とても食いきれる量では無い。葉っぱにくるまれて渡されたそれを、アールスハインが受け取って、三分の一を渡される。それでもデカイ。
先ずは一口。
ホックホクに焼かれた芋は仄かに甘く、シットリと柔らかい。
味は甘味の少ないさつま芋。
この世界に来て、初めて俺でも柔らかいと思える食べ物!それだけで旨く感じる!
「んまいね~」
ニコニコになるのは仕方ない。
「そうだろー、うちの芋は父ちゃん自慢の秘密の肥料を使ってるから、他と違って甘いんだよ!」
おばちゃんが自慢気に満面の笑顔で応える。
ディーグリーとユーグラムも興味を持ったのか、アールスハインから少し分けてもらって一口。
「あー、確かに甘いかも!これは芋だけでも売ってもらえるの?」
「それは構わないけど、今はそんなに持ってないよ?村まで来てもらえれば幾らでも売るけどね!」
「そっかー、んじゃ行商担当の人に言っとくね~」
早速村の場所と名前を聞いてメモするディーグリー。流石大商会の息子。
俺達の会話を聞いていたのか、周りの人も芋を買うために並び始めた。
邪魔にならないようにその場を後にして、芋を食うために道の端に寄る。
花壇の段差に腰かけたところで、マジックバッグからバターを出し、ホックホクの芋にのせて溶け出したところをパク。
「んふー」
と満足げに息をつくと、ディーグリーに芋を差し出される。
バターをのっけてやると一口。
「んんんーー!ケータ様、天才!更に旨くなった!俺、もう一個買ってくる!」
と言って走って行った。
アールスハインとユーグラムにもバターをのっけてやりましたよ!
「ああ、確かに更に旨くなった!バターの塩気が甘味を引き出す感じだな!」
「ええ、バターをのせただけで高級感が出ますね!今までもサーイモは食べた事がありましたが、これは別物ですね!」
さつま芋はサーイモって名前らしいです。
元女神の仕業なのか、野菜なんかは前世の名前で呼んでも通じそうな名前が多い。
この世界特有の物は無理だが、似たような物は何となく通じるようだ。
一個目の芋を食べ終わる頃、ディーグリーが更に芋を七個も買ってきて、そんなにいらないとユーグラムに怒られてた。
まあ、俺のマジックバッグに入れとけば、何時でもホックホクで食えるけどね!
ディーグリーは二個だけ味見用に持って、後は俺に預けてきた。
芋のお陰でお腹も満たされ、後は街をブラブラ見て回ることにした。




