日常
誤字報告感想をありがとうございます!
おはようございます。
今日の天気は晴れです。
何時もの準備体操と発声練習をして、着替えて食堂へ。
ユーグラムとディーグリー、助に挨拶して朝食。
「ああああ、肉が固い臭い!」
ディーグリーの叫びに、慌てて防音バリアを張ります。
「昨日の朝までは、これを美味しいと思って食べていたのですよね」
ユーグラムが一口食べただけのベーコンをフォークでつつきながら切ない声を出します。
「人は一度贅沢を知ってしまうと戻れなくなると言いますからね」
助がしみじみと言います。
アールスハインとシェルは無言で食べてますが、眉間に皺がよってます。
「そうだね、そうやって没落貴族は借金を重ねるんだよね~」
問題を摩り替えながら、ディーグリーが呑み込むように朝食をたいらげます。
何時もより大分早く朝食をすますと教室へ。
早いもので今週いっぱいと一月の休みを終えると前期の終了です。
つまり学園に通うのも後5日。
演習漬けの日常は終わり、これからは座学が中心の授業になるそうです。
特に興味の無い授業が終わり、昼休みぞろぞろと食堂へ向かって歩いていると、
「なんか俺、こんなに食事が憂鬱なの初めてかも~」
「分かります。私もまた朝のような固くて臭い肉を口にするのかと思ったら」
愚痴を溢しながら、ユーグラムなんか口を押さえてしまいました。
その姿を見て令嬢達の悲鳴が聞こえます。
が、食堂への廊下の途中にシェルがい~い笑顔で立っています。
「どうした、何か有ったか?」
「はい、本日の昼食ですが、調理部屋を一つ押さえました」
ニ~ッコリと笑顔で告げるシェルに、全員が首を傾げます。
「昨日は急いでおりましたので、食堂の料理人に頼んでしまいましたが、今朝になって何度もあの肉の入手経路を尋ねられまして、城からだと誤魔化したのですが、すぐにも問い合わせる勢いでしたので、城の料理長に相談したところ、急遽学園に来てくださるそうで、ならば皆様の昼食を作ってくれる代わりに、肉をご馳走する約束をいたしました。ですからどうぞこちらへ」
そうシェルに先導されて行ったのは、正に調理部屋。
オープンキッチンのついたそれ程広くない部屋。
間も無く助も合流して、
「へ~こんな部屋有ったんだね~」
部屋に入りながらディーグリーが呟けば、
「食堂での食事が合わない方や、故郷の味が恋しくなって食事の取れなくなった方などの為に、ご自分で作ったり料理人を呼んだり出来るように作られた個室なんです」
とシェルが説明してくれた。
調理台の前には既に城から来た料理長がスタンバってる。
「ケータ様、早速問題の肉を出していただきましょう!」
問題ってなにさ!と思わないでもないが、美味しい料理のためにサクッと出したよ。
最初に味を知るために、料理長が肉の切れ端を焼いて一口。
カッと目を見開いて、猛然と料理し出しました。
その様子をポカーンと見る俺達。
ちゃっかり自分の分も確保して、全員でいただきます!
「ううううう~ま~っ、この柔らかい肉だけでも旨いのに、流石お城の料理長、この肉に合った最高のソース!やばい!俺、人生で一番旨いもの食ってる!!」
行儀は悪いが、立ち上がって叫ぶディーグリーの言葉に俺と助以外が全員頷いている。
ユーグラムは目を瞑ってひたすら噛み続けてるし、アールスハインとシェルも、食べながら恍惚とした顔をしてるし、料理長は泣いてる。
「ケータ様、私は世界中を廻って料理の修行をしてきましたっ!ですがこんなに柔らかく旨い肉を食べたのは初めてです!以前ご教示いただいた肉と、この肉は何が違うのでしょうか?」
泣きながらすがる様に聞いてくるゴリゴリのマッチョ。
怖いです!
「ちーぬきしゅりゅじきゃん?(血抜きする時間?)」
「血抜きをする時間、とは?」
「料理長、この肉は、ケータ様が仕留めた瞬間に血抜きをしたものです。ですから血の臭みが全く感じられないでしょう?」
「なんと!それだけの事でこんなにも肉の臭みが変わるのですか?」
「ちーにょにおいが、にきゅにうちゅりゅかりゃね!(血の匂いが、肉に移るからね!)」
本当は、血に繁殖した細菌のせいだけどね!細菌の知識の無い世界なので、便宜上そう言っておく。
「血の匂いが肉に移る。成る程、だから匂いが移る前に血抜きすることが重要なのですね!」
「ですが現状、仕留めてすぐに血抜きをすると言うのは、なかなか厄介ですよね?」
昨日の夕飯時に出た問題を、シェルが料理長に投げ掛ける。
経験豊富そうな料理長も、難しい顔をしている。
「そうですな、肉の為だけにその場で血抜きをしてこいと言うのも難しいでしょうな。この肉を食べさせれば、喜んで肉の確保に走りそうな者は何人か知っておりますが、それでは数が足りません」
類は友を呼ぶのか、料理長には旨いものの為には危険をかえりみない友達がいるらしい。
「少々相談してみます。ところでケータ様、この調理方法は広めても良いのですか?」
「どーじょー」
「分かりました、それならば私も微力ながらお力になりましょう!」
そう言って料理長は、夕飯の分の弁当まで作ってくれて帰って行った。
なんか頼りになりそうな人が味方についた!
午後も退屈な授業。
剣術大会も魔術大会も終わって、学園全体に弛んだ空気が流れてるのに、このクラスは全員が真剣に授業を受けている。
とても真面目。
俺は大きくなったソラをベッドに昼寝してたけど!今さら学生に交じって授業とか無理!
午後の授業も終わり放課後。
ディーグリーがソワソワと、
「この後どうします?さすがに食堂であの弁当を食べるわけにはいかないですし?」
「楽しみなのは分かりますが、まだ時間が早いでしょう」
ユーグラムに窘められる。
「まあそうなんだけど、人に邪魔されず、静かに味わいたいじゃない?」
「まあ、それは確かに」
「それならたぶんシェルが手配しているだろう」
「ああ、それなら安心ですね!」
ディーグリーが明るい顔で安心してる。
そこへ、
「ディーグリー・ラバー様、兄上様からお手紙が届いています」
学園の雑用を取り仕切っている侍従さんが、手紙を届けに来た。
普通は寮の部屋へ配達されるんだけど、至急の場合は侍従さんが直接持って来てくれる。
手紙を読んだディーグリーは、あちゃーとばかりにデコに手をあてて、それにユーグラムが、
「何か不味い事でも有りましたか?」
「う~ん、不味いって言うか~、昨日俺が書いた手紙を読んだ兄貴が、ガジルさんの所に押し掛けて肉を食ったらしく、大至急説明しろって、学園街のカフェに居るらしい」
「今ですか?」
「そう、今。本当は昼休みに来たかったらしいけど、流石にそれは遠慮したらしい」
「流石、国一番の大商人、商機は逃しませんね」
「ま~ね~、あの肉は普通の肉の10倍の値段付けたとしても売れるだろうしね~、って事で行ってきます~」
「ああ、付き合おう」
「え、良いんですか?俺は助かりますけど、時間とか大丈夫ですか?」
「ああ特に用事も無いしな」
「ありがとうございます!」
そして着いたカフェは、オシャレな内装のカフェで、個室も有る、貴族御用達って感じの店だった。
案内された個室には、見たことの無い、でも一目でディーグリーの身内と分かる男性が居て、物腰は柔らかいけど、やり手臭が半端なかった。
アールスハインの登場に動揺したのも一瞬で、人好きのする笑顔で、
「これはこれはアールスハイン王子、私などの呼び出しに足を運んで下さるとは!光栄の極みに御座います!」
と深々と頭を下げた。
「ああ、公式の場では無いし、気楽にしてくれ、それに今回の件、私達も関わっているからな」
「有り難う御座います。ガジルから粗方の事は聞いておりますが、処理の仕方一つであれ程の変化が起こるとは!私も今まで世界中を旅して多くの物を見て参りましたが、正に初めての体験で御座いました!」
「兄貴、兄貴、興奮するのはしょうがないけど、王子をいつまで立たせたままにしてんのさ!まずは座って話そうぜ!」
「ああ!これは失礼しました。どうぞお座り下さい」
やっと席に着いて、各々に注文し、一口お茶を飲んだところで、
「それで兄貴、あの肉を定期的に手に入れる方法は?」
「それなんだが、一つアールスハイン王子に確認したい事が有るのですが、宜しいですか?」
「ああ、構わない」
「有り難う御座います。それで確認したい事とは、本当にあの処理方法を広めてしまっても宜しいのですか?こう言っては何ですが、あの処理方法を秘匿し、王族主催のパーティーでのみ提供すれば、話題にもなり、ひいては王族への求心力にもなりましょう」
「あー、一つ誤解が有るようだが、あの処理方法はここに居るケータの知恵だ。王族だからとそれを奪う権利は無い。ケータが広めて構わないと言うのであれば、私達も止める理由はないな」
アールスハインが丁寧に説明してくれたので、どや顔してテーブルに立ったのに、ディーグリー兄は、唖然とこっちを見るだけ。
「……………………ガジルに説明を受けた時は信じられませんでしたが……………そうですか、こちらのケータ様が」
「ケータ様の知識はそれだけに留まらないけどね~」
ディーグリーに褒められたので、再びのどや顔。ユーグラムが拍手してくれた。
弟の言葉にやっと事態を呑み込んだのか、
「そ、そうですか、こちらのお子様が」
と困惑顔で俺を見る。
「ケータ様は、ただのお子様じゃなく突然変異の妖精族なんだよ、親父と同じくらいの歳だし、信じらんないよね~、こんなに可愛いのに~」
そう言って頬をツンツンするのは止めていただきたい。
「ああ、成る程。だからこそ人とは違う知識をお持ちなんですね!はー、感服致しました!」
なんか、微妙に違うけど納得してくれたしまぁいいや。アールスハインも苦笑してるけどまぁいいや。
「それでケータ様、本当に広めても宜しいのですね?」
「どーじょー」
軽く返すと、何度か頷いた後、分厚い書類を取り出して、
「それでは契約をしていただけますか?」
「にゃんのー?」
「新しい肉の処理方法と、それを販売する為の契約です。勿論ケータ様には販売数に応じて権利料を支払わせて頂きます」
なんとこの世界に特許みたいなものが有るそうです。
そう言えば、マジックバッグを作った時に、テイルスミヤ長官から聞いたような気はする。
自分の貯金がいくらあんのか知らんけど。
シェルがたまに減った分を補充してくれようとするけど、ほぼ減らないって言うね!
ディーグリー兄の言われるままにサインしていく。
隣でディーグリーが契約書を確認してくれてるけど、その辺は信用してるので、何も考えずサインだけしていく。
字が綺麗ねってユーグラムに褒められた。
そんなこんなで時間も丁度良くなったので、シェルの手配してくれた個室で、皆で旨い弁当を食べ、部屋へ帰って寝たよ。
ええと、感想で破邪の目の事と、臭い魔法が使えるなら、いい匂いも出来るのでは?と指摘を頂きました。
はい出来ます。が、それはもう少し先の話しになります。
ただし、おっさんなけーたに取っての良い匂いとは、生まれ育った山の中の緑の匂いとか、焼き鳥の焼ける匂いとかです。
フローラルな香りは期待出来ません。




