魔法大会当日 その後
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会場につくと、貴賓席の周りは黒いウニョウニョで埋め尽くされていた。
床が一面黒いウニョウニョ。
毛足の長い絨毯にも見える程、埋め尽くされていた。
「ちょっちょ、しゅちょーっぷ!うにょうにょだいはんしょくー!(ちょっと、ストップ!ウニョウニョ大繁殖!)」
「…………これは、見えはしませんが分かりますね」
そう答えたのは教皇様。
床を凝視して気持ち悪そうな顔をしている。
「これ程の塊なら私も感じ取れますね」
テイルスミヤ長官は口許を押さえて言う。
気持ち悪いよね。
「どーすりゅー?じょーかちていい?(どうする?浄化して良い?)」
「これ程の呪いを1度に消せるのですか?私もお手伝いいたしますが?」
「じょーかは、だーじょーびゅ、はんげちはたーへん(浄化は大丈夫、反撃は大変)」
「成る程、なら頼めるか?一気に消してしまって構わない」
「あーい」
俺はバリアの外に更にもう一枚バリアを張ってウニョウニョを包囲すると、その中に聖魔法の雨を降らせる。
俺がバリアでウニョウニョを包囲した時点で、皆にもウニョウニョの姿が見えたようで、オェッてしてる人もいた。
ウニョウニョは俺が降らせた聖魔法の雨に触れた途端消えて無くなった。
「……………はー、話には聞いてましたが、これ程のお力をお持ちとは」
教皇様が溜め息のように感想を述べる。
王様はさっきから俺をずっと撫で回している。
綺麗になった席につくと、丁度選手が舞台に上がる所だった。
第一試合は名前を知らない令嬢と、ガチガチに緊張してた三年先輩の対戦だったが、両者激しい魔法の撃ち合いで、三年先輩の魔法を令嬢が魔法で相殺しようとして失敗、令嬢のスカートに着弾してビリビリに破けてしまった所で令嬢が降参。
凄く悔しそうだったけど、恥ずかしさには敵わなかったらしい。
第二回戦は、助対イライザ嬢。
鐘が鳴って試合開始。
体質的なものなのか、男性よりも女性の方がバリアは強い傾向にあるが、俺達に影響を受けて、助も日常的にバリアを張って生活しているので、女性であるイライザ嬢のバリアに負けない位の強力なバリアを張れている。
その上イライザ嬢は、バリアと攻撃魔法の同時発動が出来ないので、バリアを張っての防戦一方になる。
体質的に攻撃魔法の強い男性である助が、バリアとの同時発動が出来る時点で結果は明確。
バリアを張りながらの魔法ゴリ押しで、イライザ嬢のバリア割って助が勝利で試合終了。
イライザ嬢が凄く悔しそうだけど、握手して挨拶してたから大丈夫そう。
宰相さんとイングリードが、イライザ嬢以上に悔しそうだったのは笑ったけどね。
三回戦は、ディーグリー対令嬢。
鐘が鳴って試合開始。
ディーグリーは、基本女の子に優しいので戦いづらそう。
それに比べて令嬢の方は、色んな種類の魔法玉をガンガン撃っている。
まぁ全部ディーグリーのバリアに防がれてるんだけど。
ガンガン撃ってた令嬢が、突然止まりそのまま倒れた。
何事?と思ってたら、いつの間にかディーグリーが令嬢の背後から眠りの魔法を当てていたらしい。
気持ちよさげに舞台の真ん中で眠る令嬢。
相手も自分も無傷で勝ったのは良いけど、とてもシュールね。
四回戦、アールスハインと令嬢。
鐘が鳴って試合開始。
アールスハインはバリアを張りながら、最初から中級魔法の魔法槍でガンガン攻めてる。
珍しい事も有るもんだ。
令嬢はバリアで防ぐので精一杯。
それでも流石に中級魔法を何度もは防げないので、破られる度に張り直す。
その張り直すちょっとの時間差に、アールスハインの魔法がカスって、場外負け。
二人は握手して試合終了。
五回戦、ユーグラムとガチガチだった三年先輩。
鐘が鳴って試合開始。
先に攻撃したのは三年先輩。
ユーグラムに反撃の隙を与えないようにか、絶え間無く魔法を撃ち続けている。
だがユーグラムのバリアは、弱いとは言え反撃バリア。
三年先輩の撃った魔法は漏れなく反撃され、結果三年先輩の自爆のようななにか。
気絶して運ばれて行く三年先輩。
暫くの休憩の後、決勝戦。
五人同時対戦。
決勝進出者達が舞台に上がり、外側を向いて礼。
内側に向かい合う。
鐘が鳴って試合開始。
全員が同時にバリアを張って、様子を見るのかと思ったら、三年先輩が舞台中央に。
ここからじゃ何の魔法を使ったのか分からなかったけど、開始早々バリアの間に合わなかった助とディーグリーが倒れ、戦線離脱。
残ったアールスハインとユーグラムと三年先輩、と思ったら数分の時間差で三年先輩が倒れた。どうやらユーグラムのバリアの反撃にあったらしい。三年先輩が舞台から運び出される。
改めて向き合ったアールスハインとユーグラム。
どちらもバリアを張りながら魔法を撃つ。
アールスハインは魔法玉と、たぶん麻痺系の魔法。
ユーグラムはガンガンに魔法槍を撃っている。
アールスハインのバリアに罅が入り、咄嗟に張り直したのは前方のみ守る半円のバリア。
前方のみなので強度は先程の倍。
そのバリアで魔法槍を防ぎながら自分も魔法玉を撃っている。激しい魔法の攻防に観客も盛り上っている。
お互いの魔法がぶつかり合って煙が立ち込め、視界が悪くなった所で、ユーグラムの放った魔法玉がアールスハインの背後から襲い、アールスハインは反応はしたものの、いつもの癖で剣で切ろうとして脇腹に着弾、戦闘不能。
ユーグラムの勝利。
盛り上がり過ぎて、会場が揺れる様な歓声が響く。
負傷したアールスハインは運び出され、無表情なユーグラムが舞台中央に立つ。
鐘が鳴って試合終了。
そんな大盛り上がりの中、カツンと微かな音を立ててバリアに何かが当たる。
直ぐ様反撃されたので、何が当たったのかは分からないが、攻撃されたらしい。
王様に訴えようとしたが、歓声に邪魔されて声が届かなかった。
王様はこの後表彰式があるので、舞台に向かわないと行けないんだけど、もし狙われたのが王様だったら、舞台に上がったら狙われるだろうか?
まあ遠隔でバリア張ればいいんだけど、遠隔のバリアは反撃効果が無いのが不満。
一応なるべく近くでバリア張った方が、多少は強くなるので、王様についてって、てか抱っこされたまま会場入口まで、そこで王様にバリア張って、入口から見張りの体勢。
王様が舞台に上がったら会場中から歓声が。
王様が人気者って安心するよね。
歓声が凄すぎて、ユーグラムに何か言ってるけど全然聞こえないし。王様がユーグラムの片手を高く掲げると、更に歓声が。
相変わらず安定の無表情なユーグラム。
カツンカツンカツン、歓声に紛れてバリアに何かが当たる感触。
王様の足元を見ると矢が数本落ちている。
王様も気付いたらしいが、何食わぬ顔でユーグラムと共に舞台を降りてきた。
ーーーガガーンガーンガーンーーー
魔術大会閉会。
ユーグラムも連れて王様と昼食を食べた部屋へ。
係の人に頼んで、アールスハイン達も呼んでもらう。
部屋には既に、教皇様、宰相さん、テイルスミヤ長官が居て、デュランさんの淹れてくれたお茶を飲んで一息ついてると、怪我の治療の終わったアールスハイン達も到着。
皆が席に着いて落ち着いてから、
「父上、何か有りましたか?」
「ああ、今日は朝から何度か襲撃に遭った。先程は私を狙っていたが、必ずしも私だけを狙ったとは限らない。対応を考えようと思ってな」
「…………………ええと、それはおれ、いや、私達が聞いてもいい話なんですか?」
助と並んだディーグリーが恐る恐る尋ねると、
「ああ、君達はアールスハインと共に居ることが多いだろう、巻き込まれない為にも聞いていてくれ」
「「は、はい」」
助とデイーグリーの返事が被った。
「それにしても、呪いに毒矢ですか、毒の分析はまだ済んではおりませんが、ケータ様のバリアで返された呪いは、ジワジワと時間を掛けて病気のように進行していくタイプの呪いでした」
テイルスミヤ長官が言えば、宰相さんが、
「今すぐに命を狙っている訳ではない、と言う事か」
「おそらく。徐々に弱っていく間に、何がしかの企みを為そうとしているのでしょう」
「それならば犯人は絞りやすくなるのではないですか?」
教皇様の意見に、難しい顔で黙り込む宰相さん。
「犯人の目的が分からない事には、何とも。それにあの呪いの範囲を見る限り、ハッキリと陛下だけを狙った訳ではないでしょう」
テイルスミヤ長官の言葉に、
「そう言う事だ。あの場に居た陛下、教皇猊下、私、テイルスミヤ長官、ケータ殿、デュラン、誰が本来の目的だったのかは分からぬ。こう言っては何だが陛下一人を狙ったのなら、あれ程広範囲に呪いをばら蒔く必要はない。陛下の席は当然決まっているのだから」
「ですが舞台に立った陛下を狙ったのも事実」
「そうだ、それが目的の場合もあるが、本当の目的を誤魔化す為の陽動とも取れる。陛下を狙ったのは呪いではなく毒矢だったのだから」
「………………現状、自分の身の回りを警戒するしかないと言う事ですね」
犯人の目的が分からない以上、貴賓席に居た全員が警戒する必要がある。
俺と常に一緒に居るアールスハインも、王子と言う立場から狙われる可能性もゼロではない。
「勿論、怪しい動きをする貴族の監視も行うがな」
宰相さんの言葉でこの会議は終わり、かと思ったら、教皇さんが、
「……………ケータ殿にお願いがございます」
深刻な顔で声をかけてきた。
「にゃにー?」
「昼過ぎに将軍に渡されていた、解呪の魔法玉をここに居られる全員に御用意いただけないでしょうか?犯人が不明な以上、何時狙われるか分からないのです。手遅れになる前に少しでも備えが有れば、最悪の事態は避けられるかと」
「そうだな、備えてさえいれば、敵を欺く事も出来るかも知れん。ケータ殿、私からも頼む」
王様にまで頼まれたよ。
「あーい、でゅらんしゃー、おみじゅくらしゃい(はい、デュランさん、お水ください)」
俺が声を掛けると、すぐに用意されたコップの水。
「あとしゃんばい(あと三杯)」
「ケータ殿、魔法で出した水ではダメなのですか?」
近距離から教皇様に聞かれる。
この人距離感おかしいよね。
「まほーのみじゅは、じかんたちゅと、へりゅのはやーいよ?あと、まほーにまほーときゃすのむじゅかちー(魔法の水は、時間がたつと、減るの早いよ?あと、魔法に魔法溶かすの難しい)」
「ああ確かに、バリアに包んでも魔力は抜けますからね。水魔法に聖魔法を溶かすより、ただの水に聖魔法を溶かせば、魔法同士の反発も考えなくて良いですからね!」
反対側の近距離から今度はテイルスミヤ長官。
教皇様は呪いの解呪に、テイルスミヤ長官は魔法自体に興味津々なのね。
やんわりとだが王様押し退けてズイズイ来る。
デュランさんの用意してくれたグラスの水に、指先から聖魔法を注いで、混ぜるようにクルクル。水がラメ入りみたいで不味そう。だが光れば成功。
それを一口大の大きさにバリアで包んで完成。
隣で子供の様に目をキラッキラさせている教皇様に渡す。
次々作って全部で20個くらい。
皆に配って、
「にょりょいかかっちゃりゃー、たべちぇ、ウニョウニョいっぱーのとちは、ばりあはっちぇ、じーめんにたたきちゅけて(呪いに掛かったら、食べて、ウニョウニョがいっぱいの時は、バリア張って、地面に叩きつけて)」
説明しといた。
両隣に居た二人は、俺の真似して解呪の玉を作ってみてるので、聞いてたかは知らんけど。
会議が終わって、部屋を出る時に、皆に撫でながら誉められた。
後は食堂行って飯食って寝たよ。




