6日目 会議室 その後
二話目です
会議室に戻って、メイドさんが淹れてくれたお茶を飲んでいると、王様、宰相さん将軍さん、テイルスミヤ長官が入って来た。
皆一様に疲れた顔をしている。
メイドさんがお茶を配り終わり、部屋から出ていく。
「妊娠とは………まだ彼女がこの世界に来て一月程だろうに」
「妊娠による魔力の変化から見て、妊娠一月程かと」
「とんだアバズレだったって事だな!んで、そのアバズレにコロッとやられたのが王子ってのも笑えねー」
娘を持つ父親としてなのか、複雑で、でも嫌悪の滲んだ声で言う宰相さんに、身も蓋もない率直で下品な物言いの将軍さん。
「テイルスミヤ長官、彼女は今後、魅了魔法しか使えぬと言うのは本当か?」
「はい、おそらく。あれ程統一された模様を描く魔力は、重罪犯人でも見たことがありません。それでも死に物狂いの努力の末に、他の属性を発現出来る可能性は有りますが、彼女の性格から言って、それは無理かと」
「そうか、テイルスミヤ長官、アールスハインが頼んだと言う魔道具は、完成しそうか?」
「はい、魅了魔法を封印する魔道具自体は完成しております。ですが宝飾品のほうはまだです」
「別に宝飾品はいらねーだろ、何でわざわざ金掛けてキレーなもんをやらなきゃならん?一目見て奴隷の首輪に見えなけりゃ、もうそれでいいだろ?どうせ男爵家には戻さず施設送りになるんだから!」
「そうですね、いくらアブ男爵が、異議申し立てしたとしても、魅了魔法を使った事実がありますし。利用しようとしても無理だな」
「万が一無理矢理にも外せるとしたらケータ様位魔力が無くては無理ですね」
「はじゅしゃなーし(外さないし)」
俺の声で場が和んで、
「そうだな、それならば、直ぐにでも彼女の魔力を封印し、最初の予定通り教会送りとしよう。男爵家の者が何か言ってきたら、魅了魔法の存在も発表して構わん。キャベンディッシュは暫く魅了魔法の影響を調べ、自我を失うようなら離宮に送る」
王様が締め括った。
書記先輩に協力してもらう前に終わった。
話も終わったので、また今度は王宮の馬車で学園に帰る。
学園に到着して、寮に向かって歩いていると、生徒会長が待ち構えていて、
「アールスハイン王子にお願いがあります。どうか私に王宮に入る許可を頂けませんか」
「理由は?」
「今日の昼頃、リナとキャベンディッシュ王子が騎士に連れられて行ったのを、ある生徒が目撃したと噂で聞きまして、リナの無事を確かめたいのです!」
「ん~?それならご自分のお父上に頼まれる方が早いのでは~?」
「そ、それは………」
「あぁ、あれかな~?昨日の大規模討伐戦闘に参加してないことが、お父上にばれた、とか~?」
「な、それは!急な事態でリナが心配になり、無事な事を確かめてから向かうつもりだっただけで!」
「ですが結局向かわなかった、と?貴方仮にも生徒会長でしょう、そんな事で許される訳が無い事くらい分かったでしょうに」
ユーグラムが呆れた視線と声で言えば、一瞬イラッとした視線をこっちに向けたが、
「それに俺、一個腑に落ちない点が有ったんだよね~」
「何ですそれは?」
「彼女が入ってたのは懲罰房。その鍵を開けられる人って、限られてるとおもわな~い?キャベンディッシュ王子がいくら王族だからって、学園内の懲罰房の鍵を開けられる訳無いし~」
言いながらディーグリーの視線がどんどん冷たくなっていく。
「……………………生徒会室になら有りますね、懲罰房の鍵」
ユーグラムの目も氷のよう。
「わ、私は鍵の事など知らない!」
疑いの目で見られても、知らぬ存ぜぬ、リナに会わせろとしつこい生徒会長。
だが、アールスハインが、
「残念だがそれは出来ない」
「なぜです!お願い致します!一目会いたいだけなのです!」
「彼女は魅了魔法を使った罪で教会の預りになり、施設送りが決定されている」
「な!み、魅了魔法などと!何かの間違いです!リナに限ってそんなはずは!」
「事実だ。体に印が出ていたのを、司祭が確認している。更に言えば、彼女は妊娠一月だそうだ」
「に、にんしん、わた、私が父親と言う事ですか?」
ブルブル震えながら聞いてくる生徒会長。
この男も二股女と肉体関係が有ったらしい。
「心当たりがあるらしいが、どうだろうな、妊娠一月となると、誤差として可能性が無い訳ではないか?」
「ひ、一月……………私では無いと、思います。彼女の誘いに乗ったのはせんしゅ!いえ!何でもありません!先程お願いしたことは取り消します。申し訳有りませんでした!失礼します!」
焦ったように足早に去って行く生徒会長。
「ほぼしゃべってたねー、父親はキャベンディッシュ王子で確定らしいけど、生徒会長も関係持ってたって~」
「呆れて何か言う気も起きませんね」
同じ生徒会役員として、何か思う所が有ったのか、ユーグラムが溜め息をついていた。
寮について一旦解散して、部屋へ。
部屋でマッタリしていると、タブレット型魔道具に、至急校長室に来るように、と連絡が入った。
校長室に向かう途中、ユーグラムとディーグリー、書記先輩と生徒会長に会った。
目的地は校長室。
ノックして入ると、エルフな校長がいて、既にお茶の用意がすんでいた。
促されるまま座ると。
「先程王宮から連絡が有りまして、本校の学生であるリナ・アブが魅了の魔法持ちであることが判明し、急遽教会に送られる事に決定致しました」
校長の話を聞きながら、生徒会長の顔色がどんどん青くなっていく。
「彼女は兼ねてからの問題行動の為、処分が決まるまでの間、懲罰房にて謹慎中でしたが、昨日の大規模討伐戦の中で、何者かに逃走の手助けをされ、キャベンディッシュ王子と共に、街中の高級宿に潜伏していたところを、騎士団によって確保されました」
何者かの手助けって言いながら、生徒会長を射殺しそうな目で見てますね。
生徒会長顔色が白いですよ。
「確保された時の様子が尋常ではなかった為、彼女を検診したところ、彼女の妊娠が発覚。更に詳しく調べた結果、魅了魔法を使用した印が出ていたそうです。今後、彼女の魅了魔法に掛かった者に、何らかの兆候が現れる心配が有ります。生徒会諸君には、生徒達の動向をそれとなく観察し、異常行動を発見した場合は、速やかに教師に連絡して頂くようお願いしますね」
白い顔でガタガタ震える生徒会長。
ワントーン明るい声で、
「ところで生徒会長エチェット・ハウアー君、君はキャベンディッシュ王子と留学生リナ・アブを巡ってよく争い事を起こしていましたね」
目も合わせられず、俯いてガタガタ震える生徒会長に、ニッコリと見惚れるような笑顔で、
「何か言い訳は?」
と、それはそれは優しい声で聞いた。
こっっっわっ!!
生徒会長と共に震えそうです!
そんなこっっっわい笑顔を向けられた生徒会長は、
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……………」
頭を抱え、震えながら呪文のように謝り出した。
こっちはこっちで怖いです!
その後、教師数人に連れられて、生徒会長は懲罰房へ連行され、俺達も校長室を後にした。
何となく食堂へ全員で向かい、全員で温かいお茶を飲んだ。
「あ~、校長ってあんなに怖い人だったんだね~、俺、あの笑顔直視しちゃって、息出来なかったよ~」
体が暖まったからか、ディーグリーが言ったことに、全員が頷いている。
「ああ、だが、魅了魔法の事が片付いてホッとした」
書記先輩が、力が抜けたように肩を落とした。
皆も心做しか何時もより背中が丸い。
「いや~でも、妊娠とはね~、会長もやることやっちゃってたらしいし、他にも被害者いそーじゃない?」
「そうですね、あと心当たりはキャベンディッシュ王子の取り巻き辺りですかね」
「取り巻きって!せめて側近とか言おうよ!」
「間違いを正せない側近がいてたまりますか!」
「ま~そうだけどさ~………………会長って~、これからど~なんのかね~」
「そうですね。魅了されてたとは言え、大規模討伐戦不参加と、私的な学園施設の不正利用ですからね、生徒会長は降ろされるでしょうが、後は親御さんを呼んでの話し合いが持たれるでしょうね」
「会長の親って、確か魔法庁の副長官だったっけ?」
「ええ、テイルスミヤ先生の部下ですね」
「うぇぇ!ふきゅちょーきゃん、じゃんでいしゅー?(うえぇ!副長官、ジャンディス?)」
「いや、もう一人の副長官の方だ。魔法庁には副長官が二人居るからな」
アールスハインの言葉に安心する俺。
良かった、怪しい男ジャンディスに妻子が居たら何か物凄くショックだ。
「へ~ケータ様ってば、魔法庁副長官も知り合いなんだ?」
「ちってはいりゅ(知ってはいる)」
「なんか含みの有る答え方ね?」
「あやちーおときょじゃんでぃしゅ!(怪しい男ジャンディス!)」
俺の言ってる意味が通じなくて、皆してアールスハインを見る。
「あー、仕事は人一倍出来るんだが、見た目と言動が怪しい、と言うかふざけてる?」
「ええ!それどんな男?」
「にゃんか、うごちもむちっぽい(なんか、動きも虫っぽい)」
「手足がひょろ長いからな」
アールスハインのフォローが全然フォローになってない。
いつの間にか背後の席に座ってたシェルが、声を出さずに爆笑してる。
怪しい男ジャンディスのお陰?で、沈んだ空気も戻ったので、そのまま皆で夕飯食って寝た。
二股聖女は居なくなりましたが、まだ話は終わりません!
引き続きよろしくお願いします!




