草原での演習1日目
おはようございます。
今日の天気は、今にも雨の降りそうな曇りです。
発声練習と準備体操をしながら、シェルが来るのを待ってます。
いつものように部屋に来たシェルですが、よーく見ると、機嫌が悪いのが分かります。
それはきっと、昨日のホットケーキをシェルだけが食べられなかったせいでしょう。
王様を始め、リィトリア王妃様とアンネローゼは、俺が作ったホットケーキを爆食いしたけど、デュランさんとシェルは給仕の方に回ったので、食べられなかったからね。
他のメイドさんなんかも、食べられなかったけど、今回は料理人さんに作り方のメモを渡してあるので、あの後にでも作って貰ったと思う。
てか、作れよ!って言う無言の圧力を料理人さんに送っていたよね!特にメイドさんの目力は、ビームが出そうだった。
夕飯前に学園に帰って来たので、料理人さんお手製のホットケーキも食べられなかったのはシェルだけ。
ちょっと可哀想になってきた。
なので俺が森での演習の時密かに確保しといたホットケーキを、シェルに進呈しましょう。
シェルの所に飛んでって、シェルの腰につけてるマジックバッグを開ける。
シェルのマジックバッグは、俺が作ったので、誰でも出し入れ出来る。
時間停止は付いてないので、時間停止をバリアに掛けて、その中に俺のマジックバッグから取り出したホットケーキを、ササッと入れてあげると、それはそれは嬉しそうにお礼を言われた。
機嫌がなおったようで何よりです。
いつもの冒険用の服に着替え食堂へ。
食堂中央では、ここ何日かご無沙汰だった、二股女劇場が開演しており、キャベンディッシュと生徒会長が、二股女を挟んで睨み合っている。
が、周りのスルー力が半端ない。
誰にも注目されること無く、騒ぐ人達を横目に、端の方の席でのんびりと朝食を頂く。
今日からは森ではなく、草原での演習になる。
馬車に乗る時間も半分ですむので、ブランコを設置せずとも、何とか耐えられた。
令嬢達が若干残念そうだったがスルーした。
草原での演習は、一班に一人冒険者がつくのではなく、間隔をおいて冒険者が立って、ピンチの時は駆けつけるようになっているらしい。
背の高い草に囲まれたスタート地点に立つ。
この草原も虫魔物が多いのか、ユーグラムの機嫌が悪い。
最近は、虫魔物避けの香がユーグラムの体臭のように香る。
悪い匂いでは無いが、虫魔物避けの匂いは誰もが知っているので、自分は虫魔物が苦手って宣伝している様なものである。
スタートの鐘が鳴り、拠点に向けて歩き出す。
初めて来た場所なので、多少緊張して、警戒しているが、森程歩きづらくは無いので、速度はそこそこ。
やはり虫魔物が多く、ユーグラムには近づいて来ないが、ちょっと離れた所にはワサワサいる。
全部を狩ると大変な事になるので、黒い靄が濃い物を中心に狩って行く。
出てくる魔物は、兎魔物、狼魔物、狐魔物と森でも見掛けたものから、狸魔物、鼠魔物等の見たことの無い魔物も出る。
森と違って、一匹一匹の力は弱いが数が多い。
そして異世界と言えば最初に出てくると思っていた魔物の定番が、ここに来てやっと見られた!
「しゅりゃいむー!(スライムー!)」
つい興奮して叫んでしまった。
初めて見たスライムは、水色では無く、目は胡麻のような点でしかなかったが、緑色の半透明のグミを大きくしたような体は、ポヨポヨと跳ねていて、魔物にしてはとても可愛らしく見えた。
俺が近付いて繁々と眺めていると、ササッと後ろから捕獲され、ディーグリーが酷く警戒した声で、
「こんな所にスライムが出るなんて!」
って、臨戦態勢を取った。
驚いて俺を捕獲しているディーグリーを見ると、警戒した顔で、片手に短剣を構えている。
「しゅりゃいむって、ちゅよいの?(スライムって、強いの?)」
答えてくれたのはアールスハイン。
「あぁ、力は弱いがとても厄介な魔物だ。無闇に近付いてはダメだ」
「スライムは、あの体の中にある核と呼ばれるちょっとだけ色の濃い部位を破壊しなければ倒せませんが、核を自由に動かす事が出来るので、中々攻撃が通らないんです。そして体から出す触手での攻撃は、時にスライミヤ嬢の鞭以上の威力を持ちます!」
この世界のスライムは強敵だったよ!
緑色のスライムは、強くなると風魔法まで使ってくるから、より厄介な魔物だそうでビックリだね!
ユーグラムが魔法で触手を切り落とし、ディーグリーとアールスハインが核を狙って攻撃するが、一向に核に当たらない。
二人掛りで素早い攻撃を繰り出すが、息切れしてきたので、一旦距離を取り、ユーグラムの魔法で牽制する。
可愛らしい見た目なのに強敵。
しかも黒い靄が濃い。
核と呼ばれる体内の小さな塊が真っ黒だ。
初スライムに興奮して見てなかったが、靄の濃さから考えると、確かに厄介な魔物だ。
なので俺も参戦してみよう!
スライムに向かって魔法を放つ。
俺の魔法が着弾した所からスライムの体が凍りついて行く。
表面が凍りついてスライムが動きを止める。
その隙にディーグリーが素早く近付き、核に向かって一突き、見事核を貫いて、スライムは形を崩し、ビニールみたいな表皮?を残し溶けた。
「うえーい!俺初めてスライム倒した~!」
「いえ、今のはケータ様が倒したも同然です!」
「まぁそれは確かにそうだけど!良いじゃん、初討伐だよ!ケータ様うえーい」
とハイタッチを求めてくるので、
「うえーい!」
と答えたら、ユーグラムが、ちょっと悔しそうだったのに笑ったけどね。
その後も順調に魔物を狩りながら、昼休憩を取って更に進む。
俺の魔法を見て、ユーグラムも色々工夫したので、スライムも危なげ無く倒すことが出来て、森よりも範囲は広いけど、サクサク進んだ。
拠点につくと、半分位の班が揃っていて、何やら査定場所で騒いでいる奴がいる。
俺達も査定の為に近寄っていくと、騒いでいたのはキャベンディッシュ。
「これだけの希少な魔物の数々を、正当な査定が出来ぬのなら、査定員の交替をしろ!貴様はクビだ!」
とか叫んでる。
それに返すのは、アニメに出てくる典型的な市役所職員みたいな、布製アームカバーを着け、七三分けにしたテカテカの髪、メガネをキランと光らせた、細面の男。
「ですから何度も申し上げている通り、この魔物からは素材が取れません。これだけの傷や焼け跡があれば、どれ程希少な魔物でも、査定が下がるのは当然です。それと私は副ギルドマスターなので、私以上に査定に詳しい者は、この王都にはおりません。それでも御納得頂けないなら、他国にでも持っていったらいかがです?」
副ギルドマスターさんだそうです。
揉めてる声を聞き付けたのか、やっと教師が駆けつけて、キャベンディッシュは去って行った。
とても不貞腐れた顔してたけどね。
俺達が査定の列に並ぶと、遠巻きに騒ぎを眺めていた皆が寄ってきて、覗き込んできた。
次々魔物を出していくと、副ギルドマスターな査定員さんは顔を輝かせ、最後にスライムの皮?を出すと、踊り出しそうな程喜んだ。
魔法で固めて一突きされたスライムの皮?は、傷が一ヶ所しかなく、最高査定になるという。
続いて俺の出した虫魔物は、靄の濃い魔物を選んだだけあって、希少な虫魔物も混ざっていて、更に喜ばれた。
勿論俺の獲物も、魔法で頭を一突きしたので、最高額査定いただきましたよ!
今日からは、二・三年生は本格的に泊まり込みなので、学園に帰っても、キャベンディッシュに絡まれる事も無くなる。
1日目にしては、トラブルもなく順調に過ぎた1日目でした。




