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6日目休み

 おはようございます。

 今日の天気は曇りです。

 今日は休日なのに、いつもと同じ時間に目覚めました。

 休日らしく、発声練習と準備体操を休んで、ベッドでコロコロしています。

 隣で黒猫もコロコロしてるのが、とても可愛いです。

 そう言えば、そろそろ黒猫の名前を考えた方が良いかな?

 黒猫をじっと見ると、黒猫もこっちを見てきます。


「んー、たま、まりゅ、くりょ、くりょひょー、ひょー、あお、あおい、ブリュー………」


 思い付く限りあげて見るが、しっくりこない。

 昔から名付けのセンスが無いのだ。

 怪しい呂律のせいで、半分も発音出来て無いし。


「んー、めーがあおいかりゃ、そりゃ?」

「ニャー」

「そりゃ?」

「ニャ?」


 名前はソラに決まりました。


「ソラか、良いんじゃないか」


 後ろからの声に驚く。

 いつの間に起きたのか、片肘立てて頭を支え、こっちを見て笑うアールスハインは、朝から無駄に色気満載。

 俺しか見ていないとは、本当に無駄使いである。

 気になる令嬢の前でこの顔を見せてやれば、一発で堕ちるだろうに。

 無自覚な所も残念な点である。

 起きてる時は、目付きの悪いヤンキー顔で、寡黙なせいで近寄りがたい雰囲気で、最近は幼児な俺を抱っこしているせいで、多少緩和されているとは言え、身分の事もあって、遠巻きに見られるだけで、友達もいなかったらしい。

 良い男なのに、モテないとは残念な男である。

 そんな観察に励んでいると、シェルが部屋に入って来たので、お着替えです。

 今日はお城に行くので、普段着?の耳と尻尾のついた、ソラとお揃いの黒い着ぐるみです。

 抱っこされて食堂に行くと、ユーグラムとディーグリー、何故かい~い笑顔の助が、同席を求めてきた。

 普段より大きなテーブルで食事をする。

 食事中は特に会話も無く、そのまま馬車に乗り城へ。

 助の膝に座って、


「たしゅきゅーも、まほーけんしゅんのー?(助も、魔法剣すんの?)」


「そりゃするだろ!知り合いの騎士に聞いたら、学園じゃまだ無理だけど、城に来れば教えてやるって言うから、こりゃ絶対けーたが何かやらかして、大事になったパターンだと思ったんだよ」


 黙って目を反らします。


「お二人は随分親しそうですが、ケータ様が御光臨された後知り合ったんですか?」


「え?あ、いやー」


 と、助が口ごもってアールスハインを見ると、


「実はティタクティスも降臨に巻き込まれた一人だ。ただティタクティスは何故か時間がずれてこの世界に生まれ変わった形で現れたんだ」


「ええー!スパーク殿も異世界人?!」


「あー、俺の場合、こっちの世界で育った記憶もあるので、異世界人と言われると、違和感がありますね」


「あ、ごめん」


「いや、謝ってもらうことでもないですし、完全に異世界の記憶を思い出したのも、けーた達が降臨したのと同じ時期なんで、けーたみたいな特別な力を授かったわけでも無いですし普通にしてください。あと騎士団に何人かスパーク姓の人が居るんで、俺の事は名前で呼んでもらえると有難いです」


「えぇ、それではティタクティス殿、親御さんには前世の事は?」


 遠慮がちにユーグラムが尋ねると、


「あ、殿もいらないです。話して無いですね、その前に鬼属の覚醒で大騒ぎになっちゃったんで、逃げてきました」


「鬼属の覚醒!それはおめでとうございます!辺境では多いと聞きますが、それでも10年振りくらいでしたか?」


「はい、12年振りですね。それで親父が俺を当主にするとか騒ぎだして、ケンカして逃げてきました」


「辺境伯なら、より強い者を~とかなったわけだ~、納得はするけど、確か辺境伯家の長男さんて、鬼のように強いって評判だよね?」


「そうですね、俺も鬼属の覚醒の後に手合わせしましたが、全く敵いませんでした」


「それでもティタクティスを当主にしようとしたの~?」


「うちの親父は、12年前の鬼属に覚醒した叔父への憧れが強過ぎるんですよ。なんで俺に当主になれとか無茶振りしてきやがって」


「あ~、憧れの人を重ねちゃった感じか~、それは厄介だね~、そんな父上からどうやって逃げられたの~?」


「兄より弱い俺では当主に相応しくないので、強くなるため修行してくる、等と言って出てきました」


「おお~頭いい~!」


「いやいやめんどくさい親ですよ。普段は臆病な程慎重で、現実主義なのに、鬼属の事となると、判断がおかしくなるんですから」


「ああー、俺の親も同じ感じ!新しい魔道具とか見ると、使い道も無いのに取り敢えず買っちゃったりして!ただ俺の親は欲が深いから、商売人になったらしいけどね~」


「貴方のご両親は、欲が深いと言うよりも仕事中毒と言った方が当て嵌まるのでは?」


「アハハハ!確かに~」


「お二人は昔から親しいんですか?」


「子供の頃に教会の集会で会ってからですからね、もう10年の腐れ縁ですね」


「腐って無いし~」


 そんな話をしている内に城に到着。

 今日は訓練に来たので、直接訓練場に向かう。

 お迎えも、何時ものデュランさんではなく、若い騎士の人が二人来ただけだった。

 訓練場に着くと、既に将軍とイングリードが打ち合いをしていて、その周りでも多くの騎士達が訓練に励んでいる。

 元々動きやすい服を着てるし、訓練用の革鎧を借りて、それぞれに身につけていく途中、


「なーなーけーた、なにこの空気、超こえーんだけど?」


「しょーね、こわーいにぇ」


「なんで皆笑ってんの?爆笑しながら戦ってんだけど、何なの?ヤバイ薬でもキメてんの?」


「ねー、せんしゅーかりゃじゅっとこんなんなん、せーしんこーげきらな(ねー、先週からずっとこんなんなん、精神攻撃だな)」


「………………………確かに、超こえー、俺あそこに入っていかねーといけねーの?」


「がんばりぇー」


 アールスハイン、ユーグラム、ディーグリーは既に用意がすんで、それぞれの場所に行ったが、助はいまいちこの空気に馴染めずに尻込みしている。

 そんな俺も怪我して血を流してるのに、爆笑してる騎士に捕獲されて救護所に連行されました。

 怪我人が次々運ばれて来るのに、皆笑ってて、ほんと怖い!

 魔物にこの精神攻撃が通じるとすれば、この国は最強になると思う。

 戦争とか起きても、戦う相手を恐怖で戦意喪失させられると思う。

 だって、戦う相手が全員、爆笑しながら血を流してるんだもの。

 新しいホラーだと思う。

 手の空いた時に、周りを見ると、流石にアールスハイン、ユーグラム、ディーグリーは笑ってはいないけど、対戦相手はゲラゲラ笑ってるし、それなのに全然敵わなくて、とても悔しそう。

 遠くの方では将軍とイングリードが、やっぱり爆笑しながら対戦して、剣から火花とか氷結とか出してて、周りの騎士にまで被害が出る始末。

 端っこの方で魔法剣の基礎を習っている助が、凄いへっぴり腰になってる。

 本当に、ヤバイ薬でもキメてんのかと思われても仕方無い状態。

 相手の技で吹っ飛ばされる人とかも出てるのに、皆満面の笑顔だし。

 骨折ったくらいじゃ痛がりもしていない。

 誰か一人くらい、冷静な人は居ないもんか。

 救護班は救護班で、杖を媒介にすれば、魔力反発を起こしにくくなることを、自力で発見したらしく、皆して杖を振り回していて危ないし、笑ってるし!

 仕方無いので、俺は隅の方でトンネル型バリア張って、その中を聖魔法で満たして通り抜けるだけで怪我が治るようにしてやったさ!

 救護班の練習にならないので、俺に回されるのは軽傷者だけなので、勝手に通って治れってスタイルでいきます。

 近寄ると、何かハイな気分が移りそうだし。

 バリアに背中預けて、ソラを揉みクシャにして遊んでました!


 多大な疲労を感じる精神攻撃を掻い潜り、やっと午前中の訓練が終了した。

 デュランさんが迎えに来てくれたんだけど、思わず半泣きでしがみついちゃったよね!

 食事室に移動して、リィトリア王妃様とアンネローゼも合流して食事が始まる。

 いつもよりも質素な食事に、不思議に思っていると、部屋の隅にシェルと以前に見た料理人さんが運んできたワゴンを見て理解した。

 小麦粉、卵、砂糖、ミルク、蜂蜜とバターが大量に載ったワゴン。

 あまりの量にウンザリしたが、周りの期待に輝く目を見て、仕方無く準備に取りかかる。

 将軍さんと宰相さんは、不思議そうな顔をしていたので、二人だけは俺が何をするのか知らなかったようだ。

 小さめの浴槽位の巨大バリアボウルを作り、料理人さんに手伝ってもらって卵を割り、卵白と卵黄に分けていく。

 流石プロ、卵はあっと言う間に分けられて、魔法で大量のメレンゲを作り、卵黄液と合わせ、鉄板型バリアに順次載せていく。

 料理人さんだけでなく、皆が集まって物凄く真剣な顔で見ていてちょっと引く。

 待ちきれないのか、アンネローゼがソワソワと体を揺らしているのが可愛い。

 隣で同じ様に揺れるイングリードは見ない方向で!

 次第に膨らんでいく生地に、皆が目を輝かせて、蓋を外した時の匂いを嗅いで、一様に恍惚とした表情になる。

 ひっくり返すのは、見本を見せると後は料理人さんがしてくれて、それは見事な手際だった。

 膨らみが収まって、生地が落ち着いた所で、デュランさんの登場。

 料理人さんと協力して皿に盛り付けて、全員に配っていく。

 料理人さんは、残った生地を更に焼いていく。

 初めて食べる面々は、恍惚とした顔で呆けていたが、アールスハインを始め食べた事のあるメンバーは、おかわりの速度が速い、それに気付いた他の人達も、次々おかわりの速度をあげていく。

 イングリードと将軍さんなんかは、笑いながら食べてるし、宰相さんは上品に静かに食べているのに、その速度は尋常じゃない。

 リィトリア王妃様とアンネローゼも負けてないのが凄いし、料理人さんが次々焼いているのに、足りない勢いだ。

 俺は一枚食べれば満足なので、少し離れてその様子を眺めているが、何枚か食べて勢いについていけなくなった助が、俺の方に来た。


「………何か凄くない?」


「プリンにょときもしゅごかった(プリンの時も凄かった)」


「へー、まぁ、この世界の菓子って、なぜか物凄い固い菓子しか無いからなー」


「しょー、かっっっったい!」


「材料は同じなのに、何でそうなる?ってなー」


「くっちーたびりらりないかりゃなー(クッキー食べられないからなー)」


「あぁ、子供には辛いよな」


「しょーしょー」


 料理人さんがやっと生地を焼き終わり、それを全て盛りつけ終わると、こっちに来た。


「ケータ様、今回の菓子も素晴らしい物でした!前回のプリンと違い、今回の菓子は何とか私共でも再現出来そうで、有難い事です!」


 プリンも再現出来るだろうが、試行錯誤は必要になるだろう。

 なので、プリンの時に渡せなかった作り方を書いたメモを渡してみたら、涙ぐんで感謝された。

 何でも、あの時あの場所にいなかったメンバーに、自分達だけ味見して、再現も出来ないなんて!って散々文句を言われてたんだって。

 一応蒸し器の絵も描いて説明しておいたけど、これは道具屋さんに特注しないといけないので、まずはオーブンでの作り方で頑張るってさ。

 作ったホットケーキは全て食べ尽くされ、使用人さん達の分は残されて無かった。

 使用人さん達の、若干恨めしげな目が隠しきれて無いのが、面白かった。

 料理人さん頑張って!



 昼過ぎも訓練。

 開き直ったのか、助も躊躇わずに仲間に入って行った。

 多少腰は引けてたけど。

 俺は、ソラに大きくなってもらって、巨大抱き枕にして昼寝してました。

 夕飯は学園に帰ってから食べるので、程好い時間に切り上げて帰ったよ。

 ずっと寝てたから覚えてないけど。

 あんまり良く寝てるので、起こせなかったらしく、夕飯を食いっぱぐれた。




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4巻の発売日は6月9日で、公式ページは以下になります。 https://books.tugikuru.jp/202306-21551/ よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
プリン、フライパンにお水浸して蒸せば出来るのでは?
幼児の一食抜きはビミョーに切ない気がする(・ัω・ั)
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