森演習?4日目
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おはようございます。
グッスリ眠って気分爽快なのに、今日の天気は雨です。
日課の発声練習と準備体操を済ませると、シェルが部屋に入ってきて、お着替えです。
昨日の服は、すぐにシェルが洗ってくれて、今日も同じ服を着るのかと思ったら、今日の服はパーカーとスキニーパンツだった。
不思議に思ってシェルを見ると、今日は臨時で演習が1日休みになったんだとか。
昨日の演習では、森に出た魔物が一番酷く、強かったが、他の場所でも多くの魔物が出て、怪我人が沢山いるそうだ。
草原や街中にも厄介な魔物が出て、とにかく学園に逃げ帰れ!って学生達が治療もせずに学園に戻ってしまったので、多くの生徒が未だ治療が間に合っていないので、1日休み、完治してから演習を続けるらしい。
「けーたもてちゅだう?(けーたも手伝う?)」
「いいえ、ケータ様は昨日十分に活躍されたので、今日は1日お休みして下さい」
「あーい」
アールスハインに抱っこされて食堂へ。
ユーグラムとディーグリーと合流して朝食を食べた。
この後はどうするかを話していると、数人の生徒が近付いてきて、俺達に頭を下げて来る。
害は無さそうなのでバリアを解くと、
「「「「昨日は助けてくださってありがとうございました!」」」」
声を揃えてお礼を言われた。
彼等は深々と頭を下げると、すぐに去って行ってしまったが、その声は、俺にのみ向けられたものでは無く、俺達に向けられていたので、聞いてみると、俺がテント内で治療中に出た、魔物との闘いで助けた人達もいたらしい。
戦いに集中してて、皆あまり覚えて無いらしいけど。
食堂を出て、魔法の訓練でもしますか、って、職員室に向かうと、途中でテイルスミヤ長官と会って、
「昨日の計画は失敗しました。少々計画を見直す必要が出来まして、お時間を頂けますか?」
と告げられた。
テイルスミヤ長官の部屋に移動。
「昨日は皆さん大活躍されたそうですね!特に救護担当の教師が大興奮で、あの治癒魔法は何だ?と凄い勢いで迫られましたよ。ま、ケータ様特有の魔法だと言ったら渋々納得しましたがね」
テイルスミヤ長官が、納得して無い顔で言うので、皆で笑ってしまった。
「それでですね、彼女の件ですが、昨日は皆さんご存知の通り、各所で魔物被害が頻発しまして、彼女の演習場所は草原だったのですが、彼女は魔物が出るなり我先に逃げ出し、しかもその際、同じ班の令嬢を囮にしながら逃げました。幸い、囮にされた令嬢達も軽傷で学園に帰還出来たんですが、令嬢達は当然彼女との班を解消することを希望しまして、今日彼女のクラスで、新たな班を決める話し合いを持たれているのですが、他の令嬢達も誰一人彼女と班を組むことに同意せず、班決めは酷く難航しています。このままでは、彼女は演習に参加する事自体、不可能になる可能性が出てきたのですが、この学期は基本、演習が中心で進められるので、彼女は授業としての演習に参加出来ず、最悪退学処分になります」
「成る程、そうなれば魅了魔法の痕跡を調べる事は出来なくなるな」
「はい、その通りです。学園側としては、常に問題行動の多い彼女を退学処分にする事に、抵抗は有りません」
「それって何が問題なんですか?魅了魔法持ちだったとしても、退学になれば国に帰されるだろうし、後はそっちの国の問題になるんじゃ?」
ディーグリーの素朴な疑問は最もだが、そうは行かないのが現実である。
テイルスミヤ長官とアールスハインが目で会話をしている。
お互い頷きあっているので、二人には話すことにしたらしい。
「この話はまだ公にはされていないんだが、3週間程前に、異なる世界から聖女様が御光臨された」
「え?まさか、その話の流れから行って、聖女様って彼女のことだったり?」
「あぁ、残念だが正解だ」
「そんな馬鹿な!聖女様とは心清らかで慈悲深く、品行方正な方が選ばれると、過去の文献には書いて有りました!」
「だが、現実に御光臨されたのは彼女だ、そしてその御光臨に、ケータが巻き込まれた」
「ええ?巻き込まれた?え?てことはケータ様異世界から来たの?」
「しょーよー」
「え?ええ?異世界とは、魔法の無い世界では無いのですか?確か、過去の聖女様が残された文献には、そう書かれていたのを読んだように思うのですが……」
「まほーにゃかったよ?(魔法無かったよ)」
「ええええ!じゃあケータ様ってば、たった3週間であの数々の魔法を覚えたの?天才?」
「あー、それに関しては、ケータ様の住んでおられた世界は、この世界よりも随分と発展した世界らしく、魔法は無くとも、あらゆる面で想像力を育てられる環境が整っていて、ケータ様は、その知識を元にイメージして魔法を使われるので、威力が桁違いになることが有るんです」
「………………魔法はイメージが重要」
「ええ、その通りですね、ですから人族よりも長命なエルフの魔法は経験を積む分強いと言われています」
「…………んん!え?何か変!あれ?」
「ディーグリーどうしました?」
「何か、今、ちょっとおかしな事に気づいたような?……………………あ!そうだよ!おかしいじゃん!俺達は長命な妖精族だからって、ケータ様が42歳って納得したけど、異世界から来たなら、何で42歳でこの見た目なの?」
皆の目が疑問一杯に見てくるが、アールスハインとテイルスミヤ長官は、元々俺が大人だった事を知っていただろうに、何が疑問か?
「うまりぇかわっちゃかりゃ?(生まれ変わったから?)」
「向こうの世界で亡くなったと言う事ですか?」
ユーグラムが悼ましそうに聞いて来るが、そこにもう思う所は無いので、気にしなくても良いのに。
うんうん頷くと、アールスハインに頭を撫でられ、黒猫に頬を舐められる。
しんみりした空気を戻すため、
「いまは、せーじょーのことれしょ!(今は、聖女の事でしょ!)」
と言ってやれば、
「そうですね、話が脱線しましたが、今は聖女の話でした」
テイルスミヤ長官が言えば、途端に皆の顔が渋くなる。
「あれが聖女ってのは、正直認めたくないなー」
「同感です!他人を囮に自分だけ逃げるような人間を、聖女とは認められません!」
ユーグラムは、教会育ちなので聖女に思い入れでも有ったのか、鼻息が荒い。
「ええ、今は彼女は聖女ではありませんから」
「んえ?聖女として異世界から降臨されたんだよね?」
「…………………………………神々の代替わり」
重々しい声でユーグラムが言えば、テイルスミヤ長官が頷いて、
「ええ、代替わりとは発表されておりますが、前神であった女神は失格となり、人としてこの地上に落とされました」
「それは、私達が聞いてもいいことでしょうか?」
「彼女を調査するためには、事情を知っている人間も必要ですから」
ユーグラムの眉間に皺が寄る。
「………………あー、今、思い出したんだけど、会長が前に、変なこと言ってたんだよね、聖女様に無礼だぞ!とかなんとか?」
「あぁ言ってましたね、何言い出すのかと人格を疑いました」
「それってさ~、本人か、キャベンディッシュ王子が、彼女が聖女だって言ったってことじゃない?内緒だけど!とか言って」
「彼女の性格なら有り得ますね」
「でも、彼女自身、自分が聖女じゃなくなった事を知らないの?」
「いえ、知っていますよ。神々の代替わりが行われた時に、その事実を確認するために彼女を、魔力測定玉にかけましたから」
「当然結果は」
「ええ、聖女の証である白い帯の消失を確認しました」
「「………………………………………………………」」
ユーグラムとディーグリーが黙った。
「ですから彼女は、異世界から降臨されたとはいえ、今はただの平民として修道院へ送られる予定でしたが、キャベンディッシュ王子の独断で、男爵家の養子になりました」
「………………んー、それなら何で他国の王族としてこの学園に?」
「はぁ、キャベンディッシュ王子のゴリ押しと、問題行動の多い彼女を監視するため、ですね。学園内ならば、事が公になる前に対処出来ると判断したのですが」
「あー、そこに魅了の魔法の存在がちらついちゃったわけだ!」
「ええ、その通りです」
「実際彼女の魔力はどうだったんですか?聖女様に相応しい魔力をお持ちだったんですか?」
「いえ全く。聖女であった最初の時から魔力測定玉での、属性も判別出来ておりません」
「それは、更に聖女であった事も疑わしく思えてきますね」
「ええ、我々も彼女の行動や言動を見る度に、疑いを深めるばかりなので、公表は控え、学園で生活させる事で、この世界の常識を学んで頂こうかと思っての他国の王族設定だったのですがね……………」
「ケータ様を見てると、異世界の常識が、この世界の常識とそれ程違う感じはしないんだよね~」
「そうですね、文化の違い等はあるでしょうし、魔法の威力は異常ですが、それを除けば、普通に生活されていますね」
「あれはもう、彼女の個性だよ、性質って言うか。前に読んだ聖女様の物語には、異世界は身分制度の無い、平等な国で育ったって有るけど、こっちの世界に来て、周りを見てるのに、何の影響も受けずに好き勝手するのは、違うでしょ、あの態度見てれば、全く学ぶ気もないみたいだし」
「それでしたらいっそのこと、退学にしてしまってはどうでしょう?」
「それは、なぜそう思われたのですか?」
「彼女は既に、聖女の資格を失っていて、現在は我が国の男爵令嬢でしかないのですよね?」
「ええ、そうです」
「それでしたら、この学園での問題行動の数々を理由に退学にした後に、ただの男爵令嬢として、取り調べをしたほうが簡単に事は済むのではないですか?」
「それは難しいですね」
「どうしてですか?」
「彼女の養子に入った男爵家というのが、アブ家なんですよ」
「アブ家、ですか?」
「あ~なるほど!国外の輸入品を主に扱う商人が、男爵位を得て興った家で、クシュリア王妃の実家のルーグリア侯爵家の、御用達の商会なんだよ」
「それは、キャベンディッシュ王子の意向が通りやすい、と?」
「それだけじゃなくて、ルーグリア侯爵家の黒い噂にも深く関わってるんじゃないかってね」
「…………ですが、その話と聖女の話は別なのでは?」
「ん~、黒い噂のある家に、魅了魔法の存在を知られたら?」
「…………………悪い予感しかしませんね」
「そうなんだよね~、まず一番警戒すべきは、ルーグリア侯爵家だとおもうよ」
「ええ、今は特に、別の問題でもルーグリア侯爵家は警戒と監視の対象なので、刺激を与えるわけにはいかないのですよ」
「と、言うことは、彼女の事は学園内でかたをつけるしかない、と」
「ええ、まだ作戦が完全に失敗したわけではないので、折を見てもう一度試してはみます」
「そうですね、相手に察知されるまでは、何度か試してみるしかなさそうですね」
そんな感じで、結論はでないまま今日は解散になった。




