森演習2日目 第2モフモフとの接近遭遇
おはようございます。
今日の天気は快晴です。
昨日演習に着ていった服を、シェルが洗濯しておいてくれたので、今日も同じ服を着ていきます。
食堂で朝ご飯を食べて、馬車に乗り森へ。
スタート地点に移動する前に、拠点に集合する。
インテリヤクザな担任が、
「既に知っているだろうが、昨日の演習中この付近でロックリザードが出た。幸い昨日は生徒だけでも倒せたが、次もそうとは限らない、従って今日の演習からは、一班に一人冒険者をつける。基本的な戦闘はお前らだけで行うが、通常森には出現しない魔物が現れた場合は、冒険者の指示に従うように!」
それで解散となり、それぞれのスタート地点に移動して、昨日よりは30分遅れで演習がスタートした。
昨日と同じ道なので、迷う心配が無く進む。
俺達に付いた冒険者は、40代後半に見えるニスタさんと言う冒険者歴25年を越えるベテランだった。
「アールスハイン王子様に、ユーグラム様、ディーグリーさんか、んでこちらが妖精族のケータ様?へー、俺も冒険者やって長いが、こんなにハッキリと触れられる妖精族がいるとはねー、いやいや世の中は広いねー、よろしくなーケータ様」
「よーしきゅー」
「「「よろしくお願いします」」」
グリグリ頭を撫でられながら、挨拶されたので緩く返すと、3人も声を揃えて挨拶をする。
身長はそれ程高く無い。がっしりと筋肉に覆われた体は傷だらけだが、どれも古い傷で、若い頃は無茶をしたんだろうなと想像出来る。
昨日はアールスハインの背後を飛んでいたが、今日はニスタさんの肩に乗っかって移動する。
「にしゅたしゃん、ぼーけんしゃってなんしゃいからなりぇりゅのー?(ニスタさん、冒険者って何歳からなれるの?)」
「なんだ、ケータ様は冒険者になりてーのか?だがケータ様にはまだまだ早いなー」
「けーた、よんじゅーにしゃいよ?(けーた、42歳よ?)」
「は?いやいやいや、いや?妖精族はエルフよりも長寿って話をどっかで聞いたか?なら俺より年上って事もあるのか?」
「にしゅたしゃんなんしゃい?(ニスタさん何歳?)」
「俺は40になったとこだ!」
「とちちたー!」
「複雑な気分だなー、ケータ様は俺の孫と同じくれーに見えるのに、俺より年上かよ!珍妙な生き物だなー?」
「まごなんしゃい?(孫何歳?)」
「孫は去年生まれたばっかよ!まだ一才にもなってねーよ!だがな、将来が楽しみになるような美人なんだぞ!」
「じじばかだー!」
「そうだ!じじ馬鹿で何が悪い?孫は可愛いんだ!ガハハハハ」
体が揺れる程大声で笑うので、ウサギ魔物が逃げて行った。
狙っていたディーグリーが睨むが、悪い悪いと軽く流された。
話しながらも周りを警戒しているニスタさん、流石ベテラン冒険者。
ただ、俺が虫魔物を密かに捕っているのに、いちいち驚くのは止めて欲しい。
ユーグラムにばれたら、止められてしまうでしょ!
ウサギ魔物キツネ魔物、たまに猪魔物を危なげ無く狩る俺達を、暇そうに眺めるニスタさん。
ニスタさんの話では、冒険者と言うのはFからSまでのランクに分かれていて、ニスタさんはBランクまでいったことがあるんだけど、孫が生まれたので、今は自ら望んでランクをCランクまで落とし、後進の育成とか、日帰りの依頼のみ受けているんだって、結婚した時も子供が生まれた時も、依頼をセーブなんてしなかったのに!って奥さんには日々怒られてるらしい。
そんな話を聞きながら、昨日お昼を食べた小さな草原についたので、休憩を取りお昼を食べる事に。
それぞれに携帯食料を出して、笑顔で俺に差し出す3人に、ニスタさんが不思議そうな顔をしながら、自分の携帯食料にかじりつく、俺はバリアを張ってその中に携帯食料を入れ、蒸す!ホッカホッカになった携帯食料を3人に配ると、ニスタさんが唖然として、自分の携帯食料と俺の携帯食料を何度も見比べる。
俺がニスタさんに手を出すと、満面の笑顔で食いかけの携帯食料を差し出す、ホッカホッカにして返すと、一口かじり目を見開いた。
「何だこれ!魔法か?魔法にこんな使い方が有ったなんて!スゲーなケータ様!こんな旨くて柔らかい携帯食食ったことねーよ!魔法使いヤベーな!」
「いえ!魔法使い全員が出来る訳では有りませんから!誤解の無いように!こんな繊細な料理魔法など使えるのは、今のところケータ様だけですから!」
ユーグラムの勢いに顔を引き攣らせながら、
「そ、そうか?まぁケータ様は妖精族なんだろ?妖精族ってのは、息する様に魔法を使うって言うしな!」
「そうです!ケータ様が凄いだけで、いずれは私も使いこなして見せますがね!」
無表情で鼻息荒く奮起するユーグラムに、ニスタさんがドン引きしている。
食事が終わり、再出発。
魔物を危なげ無く狩りながら、支障無く進み、このままでは時間が余ってしまうので、地図を確認すると近くに泉がある事を知り、寄り道することにした。
丈の高い藪を越えてたどり着いた泉は、それ程広くは無いが美しい場所で、魔物では無い野生動物の水のみ場になっているらしく、多くの小動物がいた。
脅かさない様にそっと近づき、泉の近くの岩場で休憩する。
泉から流れ出る水で、小川になっている場所で水を汲み一口飲むと、ミネラルウォーターなんか目じゃ無い程旨かった!
排気ガスや工場排煙なんか無い世界の水は、前の世界の水よりも普通においしい水だけど、この泉の水はまた格別に旨かった!
俺が感動しながら水をがぶ飲みしていると、アールスハインに止められる。
タプタプになった腹を擦ると、皆に笑われたけど、懲りずに水筒の水を全部入れ換えた。
マジックバッグに入れとけば、時間が止まるので腐る心配も無いしね。
俺がご満悦でいると、ニスタさんが在らぬ方を見て警戒態勢になった。
何事?と思っていると間も無く、近くにいた野生の小動物達が、一斉に逃げ出した。
動物達の逃げ出した反対方向を見ると、黒い靄が近付いて来る。
黒い靄は魔物特有の物だが、今回の靄は今まで狩ってきた魔物の靄とはちょっと違う感じがする。
でもどこかで見た覚えもあるような?
姿を現したのは、大きな黒い豹の様な魔物。
全身が真っ黒で目だけが血の様に赤い、向こうは俺達にとっくに気付いていたらしく、涎を垂らした顔は、殺意に満ちていた。
ニスタさんが囁く様な小さな声で、
「こんな魔物は見たことねーが、ヤベーな、相当つえーぞ!迂闊に突っ込むなよ!」
………………!そこで俺は思い出した!あの意思の有るかのようにうねる靄は、以前アールスハインに生えていた呪いと同じウニョウニョに見える!俺は急いでアールスハインに近寄ると、
「ハイン、ハイン、ありぇ、のりょわれてりゅ!ハインにはえてたやちゅといっしょ!(ハインハイン、あれ呪われてる!ハインに生えてたのと一緒!)」
「!それは確かか?」
「まちゅがいない!(間違いない!)」
「皆、聞いてくれ、あの魔物は呪われている!」
「何?なぜそんな事が分かる?」
「ケータは以前、意識せずに呪いを解いてしまった事が有るんだ。ケータには呪いの魔力が見えるらしく、知らずに解呪の魔法を使ったらしい」
「………………それは凄い事ですが、ケータ様はあの魔物の呪いも解けるのですか?」
「それは………どうなんだ?」
「やりかちゃちなないし、あのまもにょ、のりょいおおい、ひっこぬくのたーへん!(やり方知らないし、あの魔物、呪いが多くて、引っこ抜くの大変)」
「………教会で呪いを解呪する場合は、相手をバリアで包み込み、その中を聖魔法で満たすと、時間を掛けて呪いが体内から抜け出ていきますが………」
「やってみりゅ!」
「分かった、もしもの時の為に、俺達はいつでも攻撃出来る様に態勢を整えよう!」
「「了解!」」
「おい!お前ら正気か?呪いを受けた敵と闘うのか?ここは何とか足止めして逃げるべきだろ!」
「いえ、1度だけ試させて下さい、無理なら足止めして、全力で逃げますんで!」
アールスハインの言葉に、何か言いたげだったが呑み込んで、1度だけチャンスをくれるらしい。
それでは五木恵太いっきまーす!
手を前に、普段よりも強力なバリアで黒豹を包み込み、バリア内を聖魔法で満たす。
それだけでは物足りない気がしたので、小川の水に聖魔法を溶かして、バリア内に流し込む!
ジョバジョバ流れ込む聖魔法水とバリア内を満たす聖魔法に、もがき苦しむ黒豹。
バリアに体当りや鋭い爪や牙での攻撃を繰り出すが、俺の特製バリアはそんな事では壊れません!
やがて、大量の聖魔法水を飲み過ぎて、グッタリし、ウニョウニョも大分薄れてきた頃、黒豹は急に震えだし、大量に呑み込んだ聖魔法水を吐き出した。吐く度に黒い呪いのウニョウニョは薄れ、バタンと倒れこむ頃には、黒い靄は綺麗に消えていた。
念のため、黒豹だけをバリアで包み直し、聖魔法水や聖魔法で満たされたバリアは、別に置いておく。
バリア越しに黒豹を見ると、グッタリはしているが呼吸も正常だし、何よりさっきまでと違い、目が青く澄んだ色をしていて、殺気も消えていた。
大丈夫そうなので、バリアを解き、皆に手招きすると、覗き込んだ面々がほっとした顔をした。
ニスタさんが、呆れた顔で、
「うはー、こいつとんでもねーことやりやがった!あんな呪いの塊みてーな奴を、一人で浄化するとか、あり得ねーから!いくら妖精族だからって、魔力大丈夫かよ?」
「ちょっちょ、ちゅかりぇたよ(ちょっと、疲れたよ)」
「ちょっちょって、ちょっとかよ!?スゲーなケータ様!ヤベーな!」
誉められてるのか微妙な、引き攣った顔のニスタさん。
アールスハイン達は、またかって顔してるし、何さ?俺結構頑張ったよ?
誰も誉めてくれないので、拗ねながら黒豹を見ると、黒豹も俺を見てたので、つい頭を撫でてしまった。
一瞬ビクッとしたが、大人しく撫でられているので、調子に乗った俺は、黒豹を撫で繰り回した!本来はツルスベだったろう毛並みは、呪いのせいかゴワついてあまり撫で心地は良くなかったよ残念。




