学園生活3日目
おはようございます。
雨降りの朝です。
いつもの日課をこなし、シェルが来るのを待って着替えを手伝って貰います。
いつもより涼しいので、今日の服はモコモコのさわり心地の、半袖の着ぐるみみたいな服で、何故か耳と尻尾が付いているんだが、耳はゴールデンレトリバーで、尻尾が猫の尻尾な上に背中が水色、腹側が真っ白って何の生き物ですか?魔物?魔物ですか?
アールスハインが俺を暫く無言で見た後頭を撫でて、何時ものように抱っこして食堂へ。
途中いつも以上に注目を浴びて、いつも以上に色んな人に手を振られた。
手を振り返したら、キャーキャー言われたよ!
食堂のいつもの端の席に行くと、ディーグリーとユーグラムが既にいて手を振ってきたので、挨拶と共に席に着く。
ユーグラムが着ぐるみの俺を、キラッキラの目で見てくるので、頬っぺたをペシペシしてみたら、幻の天使の羽を飛ばしまくってた、無表情でそれやるの器用ね。
中央の席では、恒例の二股女が騒いでいるが、周りも慣れつつあるのか、既に見向きもされていない。
俺達も関わる気が無いので、ご飯が済んだらさっさと退散。
助とシェルは、ご飯食べたら各々の教室に行った。
教室にはまだ人が疎らで、ディーグリーが教科書をパラパラしながら、コレが得意、コレが苦手などと感想を言っている。
俺もアールスハインの教科書をパラパラしてみたら、数学の教科書が、予想以上に簡単で、大丈夫これ?と驚いたり、魔法学とか言う教科の意味が分かんなかったり、この世界の地図を初めて見て、人口の少なさに驚いたり、国語らしい教科書は、貴族の手紙の書き方とか、嫌味を言われた時の正しい返し方とか、貴族面倒くさいとしか思えない内容だった。
社会の教科書に、頻繁に魔物と冒険者ってのが出てくるので、ちょっと興味を引かれたが、内容が血生臭過ぎて読む気が失せた。
ディーグリーは、Sクラスで生徒会にも選ばれる位なので、成績は常に上位らしいが、社会の血生臭いのは苦手だし、国語は、基本貴族の事ばっかりなので、国一番の大商人の子息でも、よく分からない事も多いらしい。
ユーグラムは、全般的に成績が良く、苦手もそれ程無いが、実戦で野外に出ると、虫系の魔物に異常に反応して、時々パニクるらしい。
アールスハインは?と聞けば、成績は常にトップを争う成績で、ただ、今までは魔法の理論は好成績でも、実践が出来なかったので、全体の成績になると、上位では有るけど、Sクラスに在籍するギリギリだったらしい。
Sクラスは他のクラスとは違って、成績が下がると、すぐにA以下のクラスに落とされるので、人数が決まって無いんだって。
そんなクラスで、1教科丸々成績が付かないって、他がどれだけ出来んのって事ね。
ちなみに、キャベンディッシュは2年Cクラス、ププッ。
教室に生徒が揃い、始業の時間。
教師が二人入ってきて、我等がインテリヤクザな担任が、
「昨日も言った通り、今学期は演習が中心となるため、今日はまず演習場所の抽選と、場所の確認、日程の調整、持ち物の準備、それらを今日中に済ませる事。分かったらさっさと班の代表者を決めてクジを引け」
教卓に置かれたのは、前世でも見慣れたクジで、筒の中に棒が入っていて番号が書かれている物だった。
ディーグリーとユーグラムがこっちを見たが、代表者はすんなりとユーグラムに決まった。
生徒会の時と同じ理由で、学園では何か特別な理由が無い限り、王族はどんな些細な事でも代表者にはならないそうだ。
ユーグラムがクジを引きに行って、すぐに戻って来る。
ユーグラムの引いたクジには、7の数字だけが書かれている。
全班長さんがクジを引き終わると、インテリヤクザな担任が指パッチンした。
すると黒板の色が一瞬で変わり、大きな3D地図になった!
あまりに驚いたので、飛んで近寄って、ペタペタ触っちゃったよね!
インテリヤクザな担任が、ぬるーい視線を向けて頭を撫でて来て、後ろの生徒達にクスクスされました。
アールスハインの所に戻ると、頭をポンポンされて、ディーグリーにクスクスされ、ユーグラムに微笑ましい目で見られました。
地図は幾つかの区域に分けられ、線で囲まれた場所に番号が書かれている。
一番が学園内に有るダンジョン、二番三番が市街地、四番五番が街の外の平原、六番七番が森となっている。
各班は、それぞれにクジで当たった場所に行き、課題をこなす。
行く場所によって、当然持ち物や、地形の下調べも違う為に、今日は1日その準備に費やされる。
隣に座ったユーグラムが、無表情で項垂れている。
不思議に思って声をかけようとすると、ディーグリーが理由を教えてくれた。
「あの地図の中で、一番虫系の魔物が多いのが六番七番の地域だからねー」
「あぁ、最悪だ、最初から森を当ててしまうなんて!」
頭まで抱え出したユーグラム。
本当に虫が苦手らしい。
「まーでもさ、最初に嫌な事を片付けちゃえば、後は気が楽になるよ!」
「はぁぁぁぁぁ、そうですね、その様に前向きに考えないと、やってられませんからね!」
「そーそー、んじゃあ準備に取り掛かりますか!先ずは、地形の下調べと出没する魔物の状況把握って事で、図書館だね~」
自分を慰めるためなのか、俺の頭を撫でていたユーグラムも、渋々腰を上げて、皆で図書館に向かいます。
通りかかった教室では、未だに班決めで揉めている様子。
こうして見ると、うちのクラスはとても進行が速いのね。
インテリヤクザな担任が、ニヤニヤするのも頷ける。
他のクラスは、とても面倒くさそう!
図書館に到着。
初めて入った図書館は、前世の図書館と同じ、古い紙とインクの匂いがして懐かしく思ったが、見た目が違い過ぎて、懐かしさが一瞬で吹っ飛んだ。
何とかの塔みたいな巨大な円筒形の建物、ど真ん中に太い柱形の本棚があり、塔の内側にビッシリと本棚が並ぶ。
足元は緩く広い螺旋階段になっていて、天辺が見えないくらいの高さがある。
空中に浮く照明。所々に置かれているアンティークっぽい一人掛けソファー、毛足の長い絨毯。
まさにファンタジーな世界。
感動しつつも、この中から目的の本をどうやって探すのかがまるで分からない。
区分は有るだろうが、探し当てるのに恐ろしく時間がかかりそうだ。
アールスハインに抱っこされながら、ぼんやりと周りを眺めていると、ユーグラムが真ん中の柱に近寄って、柱に埋め込まれた透明な板に触れる。
透明な板は、微かに光り文字が表れる。
フム、タッチパネルですな。
一気に現実感を感じました。
ユーグラムが必要な項目を選びタッチすると、足元に光る線が表れて、本の下まで誘導してくれる。
ファンタジーでなくハイテクになった。
微妙な気持ちになりながら、抱っこされてるので歩かずとも進んで行く。
目的の本は、螺旋階段を暫く登った先にあり、その周辺には誰も居なかった。
アールスハインとユーグラムが何冊かの本を取り出している間に、ディーグリーが壁のタッチパネルを操作して、テーブルと椅子の収納されている棚を開け、セットしていく。
セットされた机と椅子は当然学生用なので、俺が座っても机に届かない。
アールスハインは、自分は椅子に座り、俺をテーブルの上に座らせる。
ユーグラムとディーグリーが集めた本をどんどん机にのせていく。
魔物図鑑、地形図、昨年の演習レポート、最新の魔物の分布情報が机に置かれ、粗方集め終わったのか、ユーグラムとディーグリーも椅子に座る。
「去年までの演習で、大体の状況は分かっていますが、一応最新の情報も確認しておきましょう」
「そーだねー、王都の森は危険が少ないとは言え、ユーグラムがパニクって同士討ちとか洒落になんないからねー」
「………それを言うなら、ディーグリーだって、去年の演習で、突然現れたブルーベアにパニクって、火魔法と風魔法を撃ちまくり、危うく周辺を焼け野原にしかけたじゃないですか!」
「あれは!突然後ろから雄叫びをあげられれば驚くのは仕方ないと思うよ!」
「焼け野原はやり過ぎです!水魔法の属性持ちが居なかったら、大変な事になっていましたよ!」
「それを言うなら、ユーグラムだって!頭上から落ちて来た魔物でもない普通の蜘蛛にパニクって、雷魔法撃って大木を真っ二つにしたじゃん!逃げ遅れた奴が下敷きになって大変な事になったじゃん!」
二人の言い合いに苦笑しているアールスハインに聞いたところ、幼年学園の最終学年では、遠足的に森に演習に行くらしい。
アールスハインは、去年は魔法を使えなかったので、淡々と剣で切り伏せるだけだったので、大した失敗談が無いらしく、特に面白エピソードはないらしい。
アールスハインに苦笑されているのに気付いた二人は、気不味そうにお互いを見て、苦笑したあと、話を戻した。
「特に去年までと変わった兆候は見られないようですが?」
「………これは、まだ公式な発表にはなっていないが、一部、魔物が凶暴化又は強力になっている、と軍に報告があったらしい」
「ええ!それって大変な事じゃないですか!?何で公式発表されないんですか?」
「まだほんの一部の報告でしかなく、凶暴化、強力化の度合いも、兵士によって感じ方が違うらしい。調査は続けているが、確実な情報では無いので軍以外には知らされていない。しかし、この演習は、多くの生徒が魔物と対峙する事になるので、学園側には報告、というか忠告されているだろう。流石に王都の森にまでは影響は及んで無いだろうが、油断はしない方がいい」
「そうですね、どのような魔物が出てきても油断は禁物ですね」
3人で手分けして、必要な地図に出没する魔物の大体の分布を書き込んで、図書館での用事は終了。
次に行きまーす。




