お姫様の呪い
誤字報告、感想をありがとうございます!
ボロボロと泣きながら事情を話すレニー嬢の言葉を纏めると、幼少期にレニー嬢は呪いを受けて、それ以降長く人と話すと苦しくなって息が続かなくなるそうで、姫として公式行事等に出席しても、途中で退席しなくてはならない程体調が悪くなることが多く、病弱な姫としてミルリング国では有名になってしまっているのだとか。
今回の婚活も、部屋に籠りがちなレニー嬢の気分転換になれば、事情を知らない人ばかりの他国ならば、少しは改善されるのでは、と微かな希望を持ってこの国に来たのだそう。
幼少期から何度も見て貰った大神官の言葉では、呪いを解呪することは不可能で、命に関わる程の呪いではなく、日常生活には支障が出ていない事からも、放置しておいても悪化することはない。と断言されたそうだ。
でも、自分は呪われるような事をしてしまったかもしれない、とレニー嬢は長年悩み続け、その事からも婚約や結婚の話には踏み切れなかったそう。
話を聞いて、アールスハインが俺を見る。
首を横に振ると、アールスハインが、
「今までに呪いを見て貰ったのは、大神官殿一人だけだったのだろうか?」
「は、はい。一応姫としての立場もあり、呪われている等と吹聴する訳にもいきませんでしたので、お一人の大神官様だけに事情を話し見て頂いておりました」
「それならば、秘密を厳守出来るこの国の大神官にもう一度見て頂いたらどうだろうか?一人の意見だけを鵜呑みにするよりも、他の意見を聞けば解決策が見付かるかもしれないし」
「そうでしょうか?」
あまり気乗りはしてなさそうなレニー嬢。
「ああ、信頼できる大神官に来て貰おう」
「………………はい」
何とか合意の言葉を引き出せたので、シェルが地下にユーグラムを呼びに行きます。
魔道具は既に実証実験も終わり稼働してるんだけど、教会に協力を要請している以上、教会にも報酬が支払われる。
その交渉に来てるのがユーグラム。
何故か毎回地下の魔道具の前で交渉してる。
お茶を飲みながら暫く待ってると、ユーグラムと何故か居たテイルスミヤ長官まで来た。
予め事情を聞いていた二人は、レニー嬢に自分の立場を説明して同席を許され、まずユーグラムが呪いの有無を確かめる為に聖魔法を使う。
「…………………呪いの気配はありませんが?」
「え?そんな筈は?!」
レニー嬢が激しく取り乱して、レニー嬢付きのメイドに支えられてる。
次にテイルスミヤ長官も聖魔法を使ってみたけど、やはり結果は同じ。
「おかしいですね?大神官であれば呪いの有無は判断出来るでしょうに、痕跡も無いものを呪いだと断言するなど、何か別の意図でもあるのでしょうか?」
テイルスミヤ長官の言葉にユーグラムとアールスハインも考え込んでしまう。
「あ、あの、本当に呪いは無いのでしょうか?ならば何故わたくしは長く話をすることも歌うことも出来ないのでしょうか?」
不安いっぱいの顔で聞いてくるレニー嬢。
「歌?」
思わずシェルが声を出したら、ポポポッと顔を赤くしたレニー嬢が、もじもじしながら、
「あ、あの、わたくし、子供の頃から歌うことが大好きで、その、鳥族の方の歌声を聞いてから憧れておりましたの。それが出来なくなったと聞いて、とてもショックで…………」
今度はシューーンとしてしまった。
「呪いではなく、声の出ない原因は他にあるのかも知れませんね?医師の診断をお受けになった事は?」
「それは、ありません。最初に呪いと言われてしまったので、解呪の方法は色々と試しましたが、効果はなく…………」
「ケータ様、一度レニー嬢の診断を」
テイルスミヤ長官に言われたので、レニー嬢の体に聖魔法を使ってみる。
聖魔法を使っても見た目ではなんともないので、今度は手を繋いで治癒魔法で体に異常が無いかを確かめてみる。
レニー嬢はとても訝しげな顔をしてるけど、文句も言わずにおとなしく手を繋がれてる。
「む?」
「何かありましたか?」
「のどんとこ、ま~りょくかたまってんね?」
「魔力がかたまってる?失礼」
テイルスミヤ長官も直にレニー嬢の喉の辺りに手をかざし、
「ああ、確かに。魔力の滞りを感じますね。これでは声を出すのにも支障が出るでしょう」
テイルスミヤ長官も俺の意見に同意した。
それを聞いてアールスハインが、
「それはどう言う事だ?呪いではないのか?」
「いえ、呪いではないですね。魔力が滞っているだけで、体に支障はありません」
「治るのか?」
「体内の魔力を制御して治癒を行うのは大変に高度な魔力制御が必要ですが、ケータ様なら可能かと」
全員に見られた。
んじゃ治しますかね。
レニー嬢の首に両手で触れ、ゆっくりと体内の魔力を探る。
滞っているのは喉の真ん中辺り。
男なら喉仏のある辺りに、しこりのように魔力がかたまってる。
それ程大きくはないけど固そう。
じわじわと魔力を流して、塊を溶かしていくイメージ。
「ん?」
「どうしたケータ?」
「んーー?レニーちゃんじゃない、ま~りょく感じりゅね?」
「レニー嬢以外の魔力ですか?」
「うん。すこーしじゅつ重なってる感じ」
「少しずつ重なる感じ?術でも使われているのですか?」
「うーーーん?レニーちゃんのま~りょくに、なじましぇよ~として、かたまった感じ?」
「……………………それは、」
テイルスミヤ長官を始め部屋に居る全員が黙ってしまった。
え、なに?
「あー、ケータ様は知らないでしょうが、他者に自分の魔力を馴染ませる行為は、主に夫婦間で子供を作る時に行われる行為です。相性が合わず拒絶反応が起こることもあるので、もしかするとその拒絶反応で魔力の塊が出来てしまっているのかもしれません。しかし魔力を馴染ませるには性行為が適していると考えられ、レニー様にはそのご自覚がないようですが、触れる事でも時間はかかりますが馴染ませる事は可能でしょう」
触れているレニー嬢の体に一気に鳥肌がたった。
気持ち悪そうに前屈みになって口を抑えている。
「それは、誰かがわたくしに魔力を馴染ませ、子を産ませようとしている、と言うことでしょうか?」
震えるか細い声での質問に、
「おそらく」
テイルスミヤ長官が低い声で答える。
「今の状態で子玉を摂取し、性行為を行えば、間違いなく妊娠されるでしょう」
「うっ!いったい誰が?!」
「ミルリング国の姫であられるレニー様に、直接触れられる人物は限られているでしょう?」
「ですが!ケルビス大神官様は、お父様よりも年上で!」
「ケルビス?確か、もう何年も前に枢機卿から罷免されてリュグナトフ国の大神殿から追放された者の名もケルビスだったと記憶しておりますが」
「そんな人物が未だ大神官を名乗れるものですか?」
「あり得ません。神官を名乗る資格すら失っているのですから。同名の別人とも考えられるので、至急調べます!」
ユーグラムが一礼して部屋を出ていった。
「それで、ケータ様?そのレニー様以外の魔力を抜く事は可能ですか?」
「うん。できるよ~」
「おね、お願いいたします!残さず抜き取って下さいませ!」
「は~い」
もう一度首元に手をかけて、レニー嬢以外の異質な魔力を吸い出す。
じわじわと全身に漂っていた魔力も吸い出して、最後にかたまってる魔力も取り出す。
それに魔法をかけて固定して、玉の状態にしてからテイルスミヤ長官にパス。
「ああ、確かに。レニー様とは別人の魔力ですね」
取り出した塊を皆して凝視する。
レニー嬢は全身の魔力を操作されてぐったりしてる。
さて、この魔力の塊をどうしてやろうかね?
マジックバッグをゴソゴソして、目的のものを探す。
「お!あった!」
「ケータ様それは?見覚えがある気がするのですが?」
「うん。もとこくおーののりょいの部屋にあったうにょうにょ~」
実体を持ったウニョウニョ。何故かバッグに少しだけ入ってた。
「それは?」
アールスハインの疑問に、俺より先にテイルスミヤ長官が答える。
「元ササナスラ国王の呪いの欠片ですね」
「何故そんなものを?」
「わかんないけろー、バッグに入ってた!」
「で、それをどうされるのですか?」
「こ~しゅりゅ!」
テイルスミヤ長官が持ってる魔力の玉に元国王の呪いが籠った玉をぶつけて一個の玉にする。
何の魔法も籠っていない魔力の塊は、呪いをぶつければ呪いを強化しただけの玉になる。
そして魔力の持ち主の性質を受けて、その人の呪いのようになる。
「痛いとくるしいのがずっと取れないのりょい!」
「ククク、成る程、それを相手に返してやるんだな?」
皆してニヤリと悪い顔で笑い合いました!
やっっっと!すごしやすい気温になってきたので、読むだけでなく、書く気力も溜まってきた今日この頃。
考えてる時が一番楽しいのかも?




