暇潰し
誤字報告、感想をありがとうございます!
さらに一年があっという間に過ぎた。
アールスハインは王様になってすぐに、獣人への奴隷制度を罰則付きで禁止して、違法に奴隷にされてた獣人を解放した。
そして魔物のせいで蹂躙され更地になった場所に、特区として獣人族の街を作った。
ダンジョンからも程近い街なので、獣人族の冒険者がまず住み着き、その冒険者相手の商売をする獣人が住み着き、教会の協力を得て奴隷にされてた人達のケアも行って街は徐々に大きくなりつつある。
そんな忙しい執務の合間に、バンバン送られてくるお見合いの釣書を処理したり断りの手紙を出したり、気乗りしなくても実際にお見合いしたり。
ついでに助にも釣書はかなりの数来てるそうな。
今のところ二人とも気になる人は現れていないようだけど。
ユーグラムも大神官になって忙しそう。
教会に併設されてる孤児院の状態がかなり酷いらしく、その改革をしたいそうで、付近の教会を巻き込んで動き回っている様子。
この国は元国王の意向で信仰心が薄いので、その分寄付金も少ない。
建て直したり改革するのにもお金はかかるので、そのやりくりにダンジョンに潜って資金調達等もしてるそう。
大変そうなので寄附しようとしたら断られた。
自分達の手で立て直さないと意味がないそうです。
教会は立て直しを図る事に一致団結してるので、大丈夫です!と誇らしそうにしてた。
ディーグリーもまたとても忙しそう。
この国には本当に最低限の仕入れくらいにしか来てなかったので、色々な街に行ってはラバー商会の支店を作れないか検討してる。
どの街で何が売れるか等の市場調査にも忙しいらしく、空飛ぶ幌馬車はディーグリーのポケットマネーで買い取りされました。
ちなみに、料理人育成の方は順調だそうです。
このお城の押し掛け料理長もたまに顔を出して講師をしてるそう。
海鮮料理も教えてるので、美味しいレストランがいずれ出来ると良いね!
偽王子改め政策担当大臣のドミニオール・センベスレン公爵は、無事公爵位を引き継いで、精力的に仕事に励んでいると同時に、魔法に夢中。
無駄に力をつけさせない為に、元ササナスラ王国の魔法技術は基本しか教えていなかったそうで、怪しい男とは言え、人並み以上に魔法を使いこなすジャンディスに習って新しい魔法を覚えるのが楽しくて仕方ないらしい。
俺を追いかけ回すジャンディスよりもしつこくジャンディスを追いかけ回すドミニオールの姿は、城のちょっとした名物のようになってる。
シェルも子育てしながら執事として働いている。
元々居た執事にこの国の事を色々教わりながら、その内立場を逆転させる事を目論んでるそうな。
追いかけ回されてるジャンディスの姿を見かけては爆笑してるところは相変わらずだけど。
そしてふと思ったんだけど、俺ってこの国に必要なくない?
国を導いて行くのはアールスハイン達の仕事だし、下手に俺が口出し出来るものでもないし。
まだまだ忙しそうだけど手伝える事はなさそうだし。
と思いながら元国王の部屋でぼんやりと地図を見てたら、
「おう、また引き込もってんのか?」
「たまには外に出ないとシェルが心配してるぞ?」
部屋に入ってきた助とアールスハインに声を掛けられる。
「ん~」
「何だよ?最近はジャンディスも追いかけられる側になったから追い回される事も減っただろ?」
「ん~」
「どうした?具合でも、聖獣って体調崩すのか?」
「いや、これは具合が悪い顔じゃない」
「ここ」
地図の一点を指差すと、
「ん?」
「ここむじんとう?」
「あ、ああ。資料では誰も住んでいないようだが?」
アールスハインが答えてくれる。
そこは海に浮かぶ地図上ではそれほど広くはない島。
「ここ買える?」
「買うってこの島をか?」
「うん」
「島を買ってどうすんだよ?」
助に尋ねられる。
「ここに~、すもうかと思って~」
「なんで?ここにいれば良いだろう?」
「ここで、ケータやることないもん」
「のんびりしてたら良いだろう?」
「ひましゅぎるのもつかれる」
「それはまた贅沢な問題だな?」
「みんな~、いそがし~のに、ケータらけひまなのつまんない」
「確かに最近は相手をしてやれなかったが」
アールスハインが困った顔をしてる。
「そ~じゃなくて~、ケータも何かちたい」
「何かって何したいんだよ?」
「ん~?の~ぎょ~とか?」
「「農業?」」
「そ。まーどーぐ作るのは面白いけど~、あきてきたし~、やしゃいとかくだものつくりたい!おいしくてあまいやちゅ!」
「あー、確かにこの世界の果物ってそんなに甘くね~よな?」
「ひんしゅかいりょ~とかしてみたい」
「そんな簡単なもんじゃね~だろ?」
「ま~ね」
でも俺は相当長生きするだろうし、その長い人生の内に何度かは成功するんじゃない?とも思う。空気が重くなりそうだから言わないけど。
「ケータがやりたいなら止めないが、皆も寂しがるからたまには顔を出せよ?」
「うん。おいしいの出来たらさしいれしゅるね!」
「ああ、楽しみにしてる。じゃあ手続きするか」
「ちゃんとてきせーかかくね!ケータつかーないお金いっぱいあるし」
「ああ、ぼったくってやるよ!」
アールスハインが笑いながら言う。
無人島は何の問題もなく俺の名義になったので、翌週には皆に見送られて出発した。
こう、沢山の尖った岩に囲まれた島は、波が荒く小舟のしかも相当手練れの船頭しか近付けない感じの島だった。
空を飛べるので何の問題もないけど。
島に上陸してまずやることは、拠点となる場所の確保と、水場の確認。
その次に島に住む動物や魔物の調査。
狂暴な魔物とか居たら退治しないとね。
野生の動物は暫くは放置。農作物を荒らされるようならバリア張ってやります。
島の広さはたぶん前世の神奈川県くらい?地図で見るよりかなり広い。
無人島なので貯金の半分で買えたけど!大金に驚いて、買ったあともまだ貯金が残ってる事に驚いたけど!
俺、いつの間にこんなに大金稼いでたの?!
島の形はペットボトル型?
リュグナスラ王国に近い側がキャップのある部分で、そこから長く海側に伸びてる感じ。
調査の結果、住めるのはキャップ部分と判明。
奥に行く程狂暴な魔物がウヨウヨ居る。
負ける気はないけど、面倒そうなのがいっぱい。
島の中央より奥側に火山があって、マグマがボコボコしてる活火山だった。
そしてさらに奥のペットボトルの底の方は断崖絶壁。
キャップ部分は辛うじて小舟なら接岸出来る部分と砂浜もあるけど、それ以外の場所は断崖絶壁。
何か見たことないツルツルなのにもろい石で出来てるのに、波には削られない不思議石で出来てた。
結論。空飛べる人しか近寄れない場所だった!
火山から手前キャップ方向は緩い坂になってるし。
島なのに湧き水も多くて、普通に美味しい水だったし。
まあ、聖獣チートがあれば普通に暮らせるだろう。
キャップ部分から程近い場所に少しずつ畑を作っていく。
体は幼児なので魔法もバンバン使っての開墾。
ちょっと楽しくて広げすぎたけどまあ良いだろう。
草取りは面倒なので全部燃やしちゃったし、倒した木は燃やしてから灰にして畑にすき込んだ。
魔法でガーーーーっとうなって、魔法で畝を作り、魔法で種をパラパラパラ~~~っと。
何と言う楽チン農業!
前世のトラクターや耕運機や種蒔き機械なんてなくてもあっという間に作業が終わってしまった!
畑の一角は実のなる木を植えて果樹園に、緩い坂なので上の方には水捌けの良い土地に合う野菜を、下の方には湿り気のある土を好む野菜を。
全部前世の知識だけどまあ何とかなるだろう。
さてさて、魔物から取れたさつま芋や栗やカボチャは育つかな?
暫くは家を作らずテントで暮らす予定。
テントを快適に作りすぎて家を建てる気にならない!
その内作るよ、たぶんね。
テントに戻り夕飯食べて風呂に入り、ベッドに入ってハッと気付く。
聖獣チートが便利すぎて、折角移住したのにここでも暇になりそうです!




