冒険者ルルー視点
誤字報告、感想をありがとうございます!
もう一ヶ月近く馬車に乗って移動し続けているが、目的地まではまだ二週間程かかるらしいと聞いてうんざりする。
この馬車に乗るのは顔見知りの冒険者ばかりで、気を使う必要はないが、明らかに運動不足から来るイライラがつのり馬車内の空気は悪い。
どうせならここら辺りで盗賊でもでないかと物騒な事を考えていたからか、馬車の急停車と御者の悲鳴に無様に転がりそうになったのを踏ん張って耐えた。
馬車内で特にイライラをつのらせていた若い奴等が、ヒャッホーとばかりに馬車から飛び出していくのを見て、俺も馬車から外を覗く。
そこにはウルフの群れがおり、先に出た若い奴等が嬉々としてウルフを討伐しているのが見えた。
事の起こりは二ヶ月前。
冒険者ギルドの掲示板に貼られた奇妙な依頼。
◇依頼内容・魔物の討伐
期限・二ヶ月~三ヶ月。延長の場合は応相談
資格・Cランク以上
報酬・討伐した魔物の数と強さによる
依頼主・リュグナトフ国 ◇
そんな意味のわからない依頼を見て、ザワザワとギルド内が騒がしくなり、受付嬢に事情を聞きに集まる奴等が多くなった頃、階段上からギルド長の野太い声が。
「聞けぃ!今回リュグナトフ国から直々に依頼が入った!ササナスラ王国のダンジョンから大量の魔物が押し寄せてくるらしい。その討伐依頼だ」
ギルド長の言葉にギルド中がザワッとなる。
「それってスタンピードか?」
誰かの疑問に、
「ササナスラ王国国王の陰謀によるものらしく、魔物は操られてる疑いがある」
「え?どうやって?そんなこと出来んのか?」
「知らん!兎に角その大量の魔物の討伐に参加するものを集めてる。移動は専用の馬車が用意され食料も配布される。報酬は現地に着いた時に一時金と討伐が終わった時にギルドを通して支払われる。タグに討伐数が記録されるから誤魔化しはきかん。一時金だけ貰って逃げ出すような腰抜けは、ギルドで名前を晒すことになるから心しておけ!受ける受けないは自由だ!以上!」
ギルド長が消えてもギルド内はザワザワと落ち着かない。
「ルルーお前さんはどう思うよ?」
知り合いの冒険者に声をかけられ、
「国からの依頼なら報酬を取りっぱぐれる心配はね~だろ~よ」
「だがよ、二、三ヶ月って拘束時間の長さが問題だよな。その間ずっと魔物が押し寄せてくんのか、休憩を取る時間くらいは取れんのか?そもそもササナスラから吹っ掛けて来たんだから、こりゃ戦争と似たようなもんだろ?兵士じゃなくて魔物が襲ってくるらしいけど」
「だな。なら拠点となる場所もあるだろうし、補給もあるだろう。だが戦いは引っ切り無しになるだろうな」
「ああ~、どうすっかな?かみさんに言ったら絶対反対されるだろうが、ここで出ないのもギルドの印象が悪くなるだろうしよ?」
「妻子持ちは参加しねぇ方が良いんじゃね~の?」
「だがな、ギルドの印象が悪くなんだろ?そしたらその後の依頼も受けづらくなんね~か?」
「そこまで心配する必要はね~だろ?これも一つの依頼なんだから、受ける受けないは俺らの判断だ」
「あー、そうだな。ちっと考えてみるわ!お前さんは受けるのか?」
「ああ。独り身は稼げる時に稼がないとな!」
「ハハッ、だな!」
そんな会話の後に早速依頼を受けて、ねぐらにしている宿へと向かい荷物の整理を始める。
大した荷物は無いが、それでも長期に渡る依頼となれば用意しておくべき物は多い。
出来るだけ小さく纏めた荷物を部屋の隅に置いて、足りないものの買い出しに向かう。
消耗品や携帯食を馴染みの店で買い、武器屋に寄ってナイフと剣の研ぎ直しを頼んで、露店の菓子を幾つか買ってスラムに向かう。
スラムもこの十年で随分と変わった。
道に横たわる浮浪者も見当たらず、目立つゴミもだいぶ少なくなって、崩れかけの建物も幾つか新しくなっている。
自分のガキの頃と比べれば随分と安全で清潔になったものだと感心する。
ガキ共の集まる家に向かえば、新しい顔ぶれと見慣れた顔ぶれに迎えられ、菓子を渡せば元気よくお礼を言われた。
安全に食える食堂があるせいで、ガキ共は顔色も良く着ている物もボロくはあるが清潔になった。
何人も何人も渡り歩いた服は丁寧にツギをあてられ縫われていて、多少サイズはあっていないが大事に着続けられてきた事がわかる。
十年前に国主導で出来た学校は、スラムだけでなく近隣の平民にも好評で、スラムの環境もだいぶ改善された。
ひょんな切っ掛けで知り合った珍妙なガキンチョは、俺の考え付きもしない方法で、スラムの環境を劇的に変えてみせた。
それが悔しくもあり嬉しくもあり。
ガキ共が学校に通いながらも仕事をする姿は、平民の意識も変えたようで、今では学校に依頼して仕事を頼む平民も多くなってきたと言う。
平民の行き来も頻繁になると、街全体も変化を見せ、スラムのガキ共の意識もまた変わっていく。
街が清潔になると、浮浪者は少なくなり悪事を働く大人達はより裏へと消えていった。
目に見える犯罪の少なくなったスラムは、貧しいながらも活気が出て住み良い環境になりつつある。
そんな街を歩きながら、新たに出された依頼の事を考える。
十年前の自分なら、国からの依頼など見向きもしなかった事だろう。
国が何もしてくれなかったから自分達は貧しく虐げられる存在なのだと、内に怒りを燻らせながら日々を送っていた。
幸い腕っぷしには自信があったんで、冒険者としてそれなりの実力を認められたが、そうなるまでにはそれなりの苦労もあった。
ガキ共に飯を運んでいたのは、自分がガキの時は常に飢えていたからで、それも稼ぎが良かった時だけの気まぐれのようなものでしかなかったし。
悔しさを覚えるのは見当違いにも思えるが、自分がガキの頃の記憶とは違う街を見るとどうしても複雑な思いに陥る。
だから敢えて依頼を受けた訳ではないが、多少、この国の為になることをしてみようという気にはなったのかも知れない。
ガタン、と馬車が揺れて目覚めた。
ウルフが討伐されてからは何事もなく進んだため、いつの間にか寝ていたらしい。
到着した場所には幾つもの大型テントが張られ、多くの兵士が既に到着して野営や拠点となる場所の確保に奔走していた。
俺達が到着した事を知った兵士が、案内のためにこちらに来て、冒険者ギルド所有のテントまで案内してくれる。
ギルド所有のテントも国の支給品のテントに負けず劣らずの大型テントで、物資も豊富に用意されているようで冒険者達は自己責任とばかりに放置される訳ではないことに安心した。
設置された臨時の受付で到着したことと名前とランクの登録、タグの表示の確認をされる。
怪我等で途中で依頼を抜ける時にも改めて確認され、その場で討伐数に応じて依頼料が計算され、帰った後にギルドで支払われるそうだ。
救護所と呼ばれる黄色い旗の立てられたテントでは無料で治療も受けられるらしい。
中々に手厚い対応だが、それだけ今回の依頼は厳しいものとなるのだろうか?
軽く受付で聞いてみたら、魔物の数や強さは未だ確認が取れていないらしい。
ここはリュグナトフ国とササナスラ王国の間にある緩衝地帯。
どちらの国のものでもない何も無い場所。
荒野としか言い様のない場所で、各国との間には必ず設けられる魔物も人も住めない場所。
もし万が一戦争になっても取り敢えずこの場所で戦闘が行われるといった場所。
上空には兵士達がチビッ子が発案し魔法庁が作ったボードと呼ばれる魔道具を使って偵察に出ている。
王都では見慣れた光景になりつつあるが、この荒野では飛ぶのも中々に楽しそうに見えるのは俺だけだろうか?
実は俺もチビッ子本人に貰ったボードを持っているが、あれは中々に厄介な代物で、兵士であれば見慣れた物だが冒険者ではまだ俺くらいしか持っていない。
一度街で乗り回していたら、それを見た冒険者に根掘り葉掘りどこで手に入れたのか、値段は?等何人にも付きまとわれた。
それ以来街では決して乗らず、依頼を受けて森へ行っても、周りに人が居ないことを確認してからでないと乗らないようにしている。
魔物が押し寄せてくるまでには間があるようなので、兵士の手伝いとして穴を掘ったり罠を仕掛けたりと色々な作業を手伝う。
迎え撃つ準備が着々と進むなか、上空を飛んでいる兵士が黄色の旗を靡かせて本陣へと向かった。
黄色の旗は馬車で三日の距離まで敵が近付いている合図。
魔物の種類にもよるが、足の早い魔物ならば一日半もあれば到着するだろう。
さて、いよいよ本格的な戦闘準備。
気合い入れねぇとなぁ!
ええと質問?を頂いたので。
ケータの乗ってる移動型魔道具ですが、卵を縦にして真ん中を横に割ったような形です。
上半分はバリアがあるので、まあ卵型そのままですけど。
中には座席とちょっとしたテーブル的な台があります。
分かりずらくて申し訳ありません!




