でっけ~~~な!
誤字報告、感想をありがとうございます!
見上げた先に居たのは、洞窟の壁と見まごう程に巨大な、壁と同化するような色合いのドラゴンだった。
「でっっけーーーーー!」
思わず叫べば、洞窟内が震えるように空気が揺れた。
さっきからゴワーーーンゴワーーーンなってたのって、ドラゴンの声?
「こんちゃ~!」
挨拶って大事よね!
ゴワーーーンゴワーーーンと鳴った後に、少し時間を置いて、
『聖獣殿、よう参られた。この老いぼれのお迎えにしては、格別の計らい。有り難く存じる』
ドーーンと腹に響く重低音の声で、それでも聞きやすいように絞られた声で話しかけてくるドラゴンさん。
「お迎え?」
『我は長く生きた、終いの時はもう目の前まで来ておる。姿を縮める事も出来なくなった。聞き苦しいだろうが許して欲しい』
「カッコいい声よ?」
……………っっ、………っ、……………っっ、
空気が震えるのは笑ってんのか?
『聖獣殿はまだ幼いようだ。我の過去を知らぬと見える。我はかつて暴龍と恐れられ、この地に封じられた者。死期を確認するために来られたのではないのか?』
「ん~ん、ぐうぜん。寝ぼけてあなに、落ちた」
………っっ、…………………っっ、………………っっ!……っっ?
また洞窟内が震える。意外と笑い上戸?それとも長年誰とも喋ってないせいで、変なところがツボってる?
『そうか、偶然か、なれば我は運が良い。幼き聖獣殿、どうか我の魔力を食らってはくれぬか?』
「まーりょく食う?」
『我の寿命は間も無く尽きる。だがこの肉に残った魔力は暫しの間残る。それをつまらぬ魔物どもに食い散らかされるのは面白くない。長の年月溜め込んできた我の魔力は、魔物に取っては毒にも等しい、制御出来ずに暴走するだろう。それは我の本意ではない。聖獣殿に食われるならば、望外の誉れ』
こんなでっかいドラゴンの魔力食って俺大丈夫?聖獣だから平気?
「おにゃかいっぱいなりすぎて、はらやぶりぇない?」
っ…………っっっ、………………っっ!
また笑われました。
『すぐに大風が来よう。ゆるりと寛がれよ。暫しの間我の話し相手になってくれ』
ああ、そんな季節ね。
ドラゴンさんの予告通り夜には大風が来て、遠くの穴から雨が落ちる音が聞こえてくる。
ドラゴンさんは機嫌よく色んな昔話や何処へ行ったかとか、どんな魔物と戦ったかとかを饒舌に話した。
よくよく話を聞いてみると、異世界召喚される前の、この世界出身の聖女に討伐されたとされる魔王だった!まあ、完全に討伐はされなかったからここに居るんだけど、弱ってるところをここに封じられたそうです。
え?誰に?クソバカダメでも一応女神だった奴にチート能力貰ってた聖女でも倒せなかったのに、誰がこのドラゴンさん封じたの?
聞いてみたら『知らん』て言われた。
人間には興味がないらしく、なんか強力な魔法を掛けられて眠らされ、起きたらここに封じられてたらしい。
人間だった事は確かなので、今はもう寿命が尽きて死んでるだろうが、だって!
微妙な謎だけ置いてかれた。
ドラゴンさんはご飯は食べなくても空気中の魔力を食って生き延びてきたらしく、俺達が料理してご飯食べる?って聞いても『食道が塞がって食うことは出来ぬ』とか言われた。
治癒魔法で治す?って聞いても断られるし、匂いだけ楽しむから良いとも言われた。何だか切なくなった。
一週間、ずっと機嫌よくお喋りしてたドラゴンさんは、大風がおさまった朝に息を引き取った。
パリーーンとどこかで金属の壊れるような澄んだ音がなって、ほぅぅーーと長い溜め息を吐いたと同時に、そのまま眠るように亡くなった。
亡くなると同時にその体からは溢れるように魔力が滲み出てきて、空気中に溶けていく。
ドラゴンさんのお願い通りに、その体に触れてその魔力を吸い取っていく。
確かに膨大な魔力だけど、感覚的には俺の方が魔力は多い感じ。
うん、これは全部吸い取れるね。
時間はかかったけど全部の魔力を吸収して、ドラゴンさんの死体もマジックバッグにしまう。
話し合いの中で、魔物に食い荒らされるのがとても嫌そうだったので、ドラゴンの死体も有効に使わせて貰うことに。
若かりし頃は、世界中を飛び回って多くの命を散らしたそうなので、死した後でも誰かの助けになるならば、と快く体を使うことを許してくれた。
ただし魔力は俺が全部吸い取っちゃったので、魔石は無いし、その肉体に魔力も残ってないけど。
頑丈な鱗や皮膚や爪や歯、内臓も薬にはなる。
流石に肉は食えないかな?と思ってたら、是非食べて欲しいとの希望。
次を生きる者の糧になれるならば、喜ばしい事だそうです。
まあ、どっちみち解体しなきゃいけないんだけどね。
物凄くでっかいドラゴンでも、俺のマジックバッグには入るので、持って帰ります。
外に出ると、真っ青な空と澄んだ空気に迎えられ、しんみりした気持ちを吹き飛ばされた。
長く生きたドラゴンさんの死は、殊更嘆くような事でもなく、本人も気分よくお喋りして笑ってたし。
俺達が落ち込むことでもない。
それよりもまずやらなければいけないのは、ドラゴンさんの死期を嗅ぎ付けたのか、洞窟入り口の穴付近に集まった多くの魔物を討伐する事。
いつも以上にギラギラと欲望丸出しの目で俺を見てくる魔物の数々。
なので俺は穴中央に浮かんで囮役。
空を飛べる魔物は極わずかなので、俺が宙に浮いてるだけで、魔物達は穴付近から移動できない。
そこを皆が狩り放題。
凄く楽しそう。
だいぶ馴染んできて、もう肉体強化全開でも馬鹿笑いしなくなってきたのに、久々の戦闘でヒャッハーしてます。
我がペット達もだいぶはしゃいでるね?
ルクスちゃん、全部穴に落としたら素材が手に入らないでしょ!
注意したら、今度はズボッとしてから俺の方に投げ飛ばして来ました!それ怖いから止めてよ!とは思うけど、マジックバッグの口を開けて受け止めてるので、文句が言えない。
半日程戦い続けて、死屍累々の死体の山を築き、回収作業に追われております。
皆のマジックバッグは既にパンパンなので、俺しか回収出来ない。
どんなに大きな物でも、手を触れて回収、と念じれば全部入ってしまうマジックバッグ。
便利だけど!便利なんだけど!いちいち触らないといけないのが面倒だね!死体が多すぎるのも考えものだね!
残り香のように残るドラゴンさんの魔力に惹かれて続々と集まる魔物。
切りがないので皆が戦うのを横目に洞窟に戻り、辺りの魔力を全力で吸い取ってやった!
普通に空気中に漂ってる魔力よりも薄くなるように吸い取ってやった!
ルクスちゃんが放り投げた複数転がる魔物の死体を回収して上に戻ると、辺りの魔物はバラバラに森に散って行く所だった。
皆も肩で息をするくらい疲れているので、ちょっと早いけどここで夕飯。
魔力を吸い取っちゃったので魔物ももう集まってこないだろう。
お疲れの皆を休ませて夕飯作り。
魔力がすっからかんのドラゴンさんの尻尾の肉をちょっとだけ使う。
元々が巨大なので尻尾の先っちょと言ってもかなりデカイ。
それを鉄板の上でジュージュー焼くだけだけどね。
後はサラダとご飯と味噌汁。
でっかい尻尾の輪切りをそのまま焼いたので、切り分けて食べる。
巨大ドラゴンさんの肉は、熟成肉な味がしました。
旨味が半端なくて、大変美味でした。
ドラゴン肉特有のドバッジュワッと溢れる肉汁も健在で、ちょっと切なくなりながら腹一杯食べました。
次話からは話の展開が、ちょっと変わってくるので、一週お休みさせて頂きます。
その後は通常通り週一更新を続けます。
よろしくお願いいたします!




